6. 冷徹なスリザリン生
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……ん?トランクが一つ多くないか」ドラコが棚に既に置かれている荷物を見て、近くに座っていたゴイルに尋ねた。
「ああ、それはザビニのやつだ。荷物を置かせてくれと言って入ってきてすぐ、他の女子の所へ行った」
ブレーズ・ザビニは、ここにいるメンバーと同学年かつ同じ寮の男子だ。基本的にドラコたちと群れることはなく、美人の女子生徒と常に何かしらの噂が立つ人だった。前の学年の時はドラコとフォーラが互いに距離を置いたのをいいことに、何度か彼女の気を引こうとしていたこともあった。ドラコは当時のことを一瞬思い出して少々気分を害した。
「フン、まあいい。あいつがいない方がコンパートメントを広く使える」
ところでドラコとパンジーは監督生のため、この後二人は車内見回りの指示を受けるために先頭車両へ向かう必要があった。しかしドラコは荷物を置き終えてもその場を立ち去るどころか、フォーラの隣の通路側の席に腰を落ち着けたではないか。
「ドラコ、そろそろ先頭車両に行かないと。列車が発車してしまうわよ」パンジーが立ち上がって呼び掛けたが、ドラコは彼女を一瞥して顎をクイと座席の方へやった。
「パーキンソン、別に僕は監督生の業務が重要だとは思わないね。一組減ったところで何も変わりやしない。少しくらいさぼったって何の問題もないんだから、君もここで自由な時間を過ごせばいいさ」
その回答に一同は目を丸くしたし、すかさずパンジーが尋ねた。
「ドラコ、どうしちゃったの?去年はそこそこ真面目にやっていたじゃない」
「……まあ、この夏に色々と思うところがあってね。何も真面目に学生業に勤しむだけが重要じゃないと気付いたんだ」
「だけど、打ち合わせに行かなかったら後でお小言をくらうかもよ?」
「欠席を問われたら、僕の調子が悪いからとでも理由を並べればいいさ。このご時世、もうすぐ闇の帝王がホグワーツを掌握するかもしれない時に、監督業に勤しんで評価を上げることに何の意味がある?」
その言葉に場の空気は少々緊張感に包まれたし、苦言を呈していた筈のパンジーですら漏れなく興味の色を覗かせた。そしてフォーラはドラコの発言から、確実にこの夏の間、彼の身に何か変化が起こったのだと思わずにはいられなかった。
ドラコは五年生の終わり頃、ルシウスが投獄されたことで死喰い人への道を歩むことを決心していた。それにフォーラが母のリプトニアから聞いた話だと、指名手配中のベラトリックス・レストレンジがマルフォイ邸を出入りしていた可能性が高いという。となると、この夏にドラコとその叔母であるベラトリックスが何らかの繋がりを持ち、彼が何か入れ知恵された可能性は十分あり得る。フォーラはそのように考えた。
だがフォーラとしてはそれを探るよりも、今あるべきはドラコが課されている目の前の仕事をこなすことだと思った。するとパンジーが「闇の帝王の件は、確かにあり得ない話じゃないけど……」と先程のドラコの話題に関心を示し、この場に残って続きを聞きたそうに迷っている様子を見せた。そのためフォーラは隣に座っているドラコの方を向き、彼を優しく諭すことにした。
「ねえドラコ?これ以上、私の大切な友人を悩ませないであげて?」
ドラコはフォーラが眉尻を下げてこちらを見るその表情から、自分の発言が彼女の倫理感に抵触したのだと察した。
「貴方が色々と思うところを持っているのは、何となく理解するけれど。でも、私の大切な人を困らせるような人は、私はあまり好きじゃないの……。」
その言葉と表情はドラコにとって効果てきめんだった。彼は軽く視線を逸らしてばつが悪そうな顔をすると、改めてフォーラの方を見て「分かったよ」と返答した。そしてサッとその場から立ち上がると、パンジーに「悪かった」と告げて、二人揃ってコンパートメントを後にした。その去り際にパンジーがガラス越しにフォーラに向かって『さすが!』と口の動きだけで伝えてきたため、フォーラは安堵のため息を吐いたのだった。
二人が去ってからは、フォーラがすっかりドラコを手のひらで転がしているとルニーが茶化したり、ドラコは一体どんな心境の変化があってあんな発言をしたのだろうという会話が飛び交ったりした。しかし後者については推測の域を出ず、監督生の仕事が終わってから聞く方が良さそうだと結論付けるしかなかった。
さて、とうとう列車がキングス・クロス駅を出発し、残った四人は引き続きお喋りをしたり、本や漫画を読んだりして過ごした。そうして昼前になると、ようやくドラコとパンジーが仕事を終えてコンパートメントに戻ってきた。ドラコは引き戸を開けて中に入るや否や、先程と同じく出入口に一番近いフォーラの隣に腰を落ち着けた。そこまでは特段気にする事でもなかったのだが、次に彼は自身の頭を彼女の方に傾けたではないか。
「フォーラ、疲れたよ。……君のお願いどおり頑張ったんだ」
どう見ても『甘えている』という言葉がぴったりな状況に、フォーラは思わず周囲の友人に目配せした。これには彼女たちも少々驚いたようだった。何せ以前のドラコは人前どころか、友人の前ですら堂々と恋人に甘えるのを避けていた程なのだから。
すると痺れを切らしたドラコが、フォーラの肩に頭をグイと押しつけるようにして載せた。彼が何を求めているのか理解した彼女は、人前であるという状況に気恥ずかしさを感じて視線を泳がせつつも、彼のプラチナブロンドの柔らかい髪に触れ、その頭を何度か撫でた。
「お疲れ様、偉かったわね。」
「あーあ、ドラコばっかり狡いんだから。私だって頑張ったのに」パンジーが向かいの空席に座ってため息を吐いたその時、唐突にコンパートメントの引き戸が開く音がした。
「おいおい、廊下から丸見えだっていうのに、そこにおわす監督生様は随分な甘えん坊だな」
その声にドラコがパッと頭を上げて出入口の方を見やると、そこにはブレーズの姿があった。彼は片手に紫のリボンが巻かれた巻紙を二束持っていて、アフリカ系特有の甘いマスクでニヤニヤとした笑みをドラコに向けていた。一方のドラコはザビニの煽り文句を無視して尋ねた。
「ああ君か、久しぶりだな。目当ての女子に振られて、慰めてほしくてここまで戻ってきたのか?」
「そんなんじゃない」途端にブレーズの顔が不機嫌に歪んだ。「これを届けに来たんだ」
ブレーズは手に持っていた巻紙を軽く振ってみせた。
「ああ、それはザビニのやつだ。荷物を置かせてくれと言って入ってきてすぐ、他の女子の所へ行った」
ブレーズ・ザビニは、ここにいるメンバーと同学年かつ同じ寮の男子だ。基本的にドラコたちと群れることはなく、美人の女子生徒と常に何かしらの噂が立つ人だった。前の学年の時はドラコとフォーラが互いに距離を置いたのをいいことに、何度か彼女の気を引こうとしていたこともあった。ドラコは当時のことを一瞬思い出して少々気分を害した。
「フン、まあいい。あいつがいない方がコンパートメントを広く使える」
ところでドラコとパンジーは監督生のため、この後二人は車内見回りの指示を受けるために先頭車両へ向かう必要があった。しかしドラコは荷物を置き終えてもその場を立ち去るどころか、フォーラの隣の通路側の席に腰を落ち着けたではないか。
「ドラコ、そろそろ先頭車両に行かないと。列車が発車してしまうわよ」パンジーが立ち上がって呼び掛けたが、ドラコは彼女を一瞥して顎をクイと座席の方へやった。
「パーキンソン、別に僕は監督生の業務が重要だとは思わないね。一組減ったところで何も変わりやしない。少しくらいさぼったって何の問題もないんだから、君もここで自由な時間を過ごせばいいさ」
その回答に一同は目を丸くしたし、すかさずパンジーが尋ねた。
「ドラコ、どうしちゃったの?去年はそこそこ真面目にやっていたじゃない」
「……まあ、この夏に色々と思うところがあってね。何も真面目に学生業に勤しむだけが重要じゃないと気付いたんだ」
「だけど、打ち合わせに行かなかったら後でお小言をくらうかもよ?」
「欠席を問われたら、僕の調子が悪いからとでも理由を並べればいいさ。このご時世、もうすぐ闇の帝王がホグワーツを掌握するかもしれない時に、監督業に勤しんで評価を上げることに何の意味がある?」
その言葉に場の空気は少々緊張感に包まれたし、苦言を呈していた筈のパンジーですら漏れなく興味の色を覗かせた。そしてフォーラはドラコの発言から、確実にこの夏の間、彼の身に何か変化が起こったのだと思わずにはいられなかった。
ドラコは五年生の終わり頃、ルシウスが投獄されたことで死喰い人への道を歩むことを決心していた。それにフォーラが母のリプトニアから聞いた話だと、指名手配中のベラトリックス・レストレンジがマルフォイ邸を出入りしていた可能性が高いという。となると、この夏にドラコとその叔母であるベラトリックスが何らかの繋がりを持ち、彼が何か入れ知恵された可能性は十分あり得る。フォーラはそのように考えた。
だがフォーラとしてはそれを探るよりも、今あるべきはドラコが課されている目の前の仕事をこなすことだと思った。するとパンジーが「闇の帝王の件は、確かにあり得ない話じゃないけど……」と先程のドラコの話題に関心を示し、この場に残って続きを聞きたそうに迷っている様子を見せた。そのためフォーラは隣に座っているドラコの方を向き、彼を優しく諭すことにした。
「ねえドラコ?これ以上、私の大切な友人を悩ませないであげて?」
ドラコはフォーラが眉尻を下げてこちらを見るその表情から、自分の発言が彼女の倫理感に抵触したのだと察した。
「貴方が色々と思うところを持っているのは、何となく理解するけれど。でも、私の大切な人を困らせるような人は、私はあまり好きじゃないの……。」
その言葉と表情はドラコにとって効果てきめんだった。彼は軽く視線を逸らしてばつが悪そうな顔をすると、改めてフォーラの方を見て「分かったよ」と返答した。そしてサッとその場から立ち上がると、パンジーに「悪かった」と告げて、二人揃ってコンパートメントを後にした。その去り際にパンジーがガラス越しにフォーラに向かって『さすが!』と口の動きだけで伝えてきたため、フォーラは安堵のため息を吐いたのだった。
二人が去ってからは、フォーラがすっかりドラコを手のひらで転がしているとルニーが茶化したり、ドラコは一体どんな心境の変化があってあんな発言をしたのだろうという会話が飛び交ったりした。しかし後者については推測の域を出ず、監督生の仕事が終わってから聞く方が良さそうだと結論付けるしかなかった。
さて、とうとう列車がキングス・クロス駅を出発し、残った四人は引き続きお喋りをしたり、本や漫画を読んだりして過ごした。そうして昼前になると、ようやくドラコとパンジーが仕事を終えてコンパートメントに戻ってきた。ドラコは引き戸を開けて中に入るや否や、先程と同じく出入口に一番近いフォーラの隣に腰を落ち着けた。そこまでは特段気にする事でもなかったのだが、次に彼は自身の頭を彼女の方に傾けたではないか。
「フォーラ、疲れたよ。……君のお願いどおり頑張ったんだ」
どう見ても『甘えている』という言葉がぴったりな状況に、フォーラは思わず周囲の友人に目配せした。これには彼女たちも少々驚いたようだった。何せ以前のドラコは人前どころか、友人の前ですら堂々と恋人に甘えるのを避けていた程なのだから。
すると痺れを切らしたドラコが、フォーラの肩に頭をグイと押しつけるようにして載せた。彼が何を求めているのか理解した彼女は、人前であるという状況に気恥ずかしさを感じて視線を泳がせつつも、彼のプラチナブロンドの柔らかい髪に触れ、その頭を何度か撫でた。
「お疲れ様、偉かったわね。」
「あーあ、ドラコばっかり狡いんだから。私だって頑張ったのに」パンジーが向かいの空席に座ってため息を吐いたその時、唐突にコンパートメントの引き戸が開く音がした。
「おいおい、廊下から丸見えだっていうのに、そこにおわす監督生様は随分な甘えん坊だな」
その声にドラコがパッと頭を上げて出入口の方を見やると、そこにはブレーズの姿があった。彼は片手に紫のリボンが巻かれた巻紙を二束持っていて、アフリカ系特有の甘いマスクでニヤニヤとした笑みをドラコに向けていた。一方のドラコはザビニの煽り文句を無視して尋ねた。
「ああ君か、久しぶりだな。目当ての女子に振られて、慰めてほしくてここまで戻ってきたのか?」
「そんなんじゃない」途端にブレーズの顔が不機嫌に歪んだ。「これを届けに来たんだ」
ブレーズは手に持っていた巻紙を軽く振ってみせた。