1. 印(しるし)
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そこまで考えた時、ドラコは頭の中に自然と最愛の幼馴染の姿を思い浮かべていた。キングス・クロス駅で別れた彼女とは、一年間弱のすれ違いの末にずっと互いを想い合っていたことをようやく確認できた。それはほんの数か月前の出来事だった。
ドラコはそのフォーラ・ファントムという女性を心から愛していた。そして彼女の方も同じようにドラコを愛していたし、マルフォイ家自体を心から好いていた。そんな彼女は他者の気持ちを尊重できる人で、マグルの血が混ざるのを忌み嫌う純血主義や、その純血主義に拒否反応を示す反純血主義、それぞれに信念があるのだからと、そのどちらの考えにも傾倒してこなかった。そのためルシウスが純血主義の極みである死喰い人として悪事を働き捕まったと知った時も、それによってドラコが遺恨の涙を流した時も、彼女はそれらから目を背けずに悲しみを分かち合っていたし、心からドラコたちを心配していた。
ドラコはそれを機に、これ以上自分のせいで大切な人に不安の涙を流させまいという想いを強くしていった。そして彼女に安心して自分の隣に立ってもらうには、自分こそが父の失敗による汚名を返上し、後ろ指を差されない確固たる地位に就き、魔法界が純血優位となるような環境を整える必要があると考えていた。
そのためドラコは、自身が父の代わりに死喰い人となって活躍することに心を燃やしていた。自身のような未成年の魔法使いなど『あの方』が相手にしない可能性が高いことは重々承知の上だったが、家族のために、彼女のために、彼女の家族のために……ドラコにとっては必要なことだった。
その後、ドラコは再びダイニングルームの方に戻ろうと階段を下りた。すると先程まではなかった筈の第三者の声が、そちらの部屋の中から聞こえてきた。ドラコが恐る恐るダイニングルームに踏み入ってみると、そこにはナルシッサの他にもう一人、別の女性の後ろ姿があった。彼女はドラコが発した足音に気付き、黒髪を振るようにしてサッとドラコの方を見た。
「おや、おやおや。お前がドラコだね?まあこんなに大きくなって」
その来客と思しき女性は両手を少々広げてドラコの方へスタスタと近付いた。彼女はナルシッサやドラコのような色素の薄い髪色とは対照的な黒髪を持ち、瞼は厚ぼったく、顎はがっちりしていた。そんな彼女は黒髪に似合う見栄え良い黒の衣服を纏っていた。
「ベラ、あなた、ここに戻るのは数時間後になると言っていたでしょう」
名を呼ばれた来客は、自身の後方からナルシッサに投げられた質問に少々顔をしかめた。ドラコは彼女がどうやら誰かに会ってきた後で、ここへは到着したばかりなのだろうと思った。
「あの方は……私に早くここへ戻るようおっしゃった」ベラと呼ばれた女がもの悲しそうに軽く下を向いた。しかし彼女は直ぐに顔を上げると、目の前のドラコをまじまじと眺めた。
「それはそうと、ドラコ、お前は本当に大きくなった……あの男、ルシウスの若い頃にそっくりだ」
ドラコは母よりも年上と思しき目の前の女性が、自分を品定めするように間近に見てくる状況に身構えた。ドラコは彼女のことを日刊預言者新聞の写真や、ホグズミードに貼りだされていた指名手配のポスター、そして母のアルバムという媒体の中でのみ見た記憶があった。困惑した様子のドラコを見かねてナルシッサがその女性に注意した。
「ベラトリックス、ドラコを困らせないで頂戴。ドラコはほんの一時間前に長旅から帰ったばかりで疲れているのよ。それにあなたがここへ戻る前に、ドラコには落ち着いた状態であなたのことを説明しておこうと思っていたのに」
その言葉を受けて、ベラトリックスはゆっくりとドラコから離れると、長いダイニングテーブルのそばにある椅子に腰掛けた。
「挨拶をするまでもなく、お前はもう私のことを知ってるね?」ベラトリックスの問い掛けに、ドラコはまだ幾らか困惑した様子で返答した。
「え、ええ。ベラトリックス・レストレンジ。母上の姉君だ」
「そうだとも。私がお前を最後に見たのはもう十五年も前のことさ。お前がこーんなちっちゃなベイビーの時以来だよ。それからは、ついこの間までずっとアズカバンにいた。その後のことも当然知ってるだろう」
ドラコは母と彼女の姉を交互に見てから、恐る恐るダイニングテーブルの方に近付きつつ返答した。
「先日の魔法省で、あなたと闇の帝王の二人だけがダンブルドアの手を逃れたと、新聞にはそう書かれていたけど」
「そのとおり」ベラトリックスはにっこり笑った後、直ぐにその笑みを消した。「あの場にいた他の死喰い人は、お前の父親含め全員が捕まった。私と一緒にアズカバンを脱獄していた夫のロドルファスも残念ながらあの監獄に出戻りだ。『わが君』と私だけが、ダンブルドアや不死鳥の騎士団の手から逃れた!」ベラトリックスが最後の部分を繰り返して強調した。
ドラコはベラトリックスから少し距離を取った位置で立ち止まっていた。そわそわとした彼の片手が、直ぐ近くにあるダイニングテーブル用の椅子の背を無意識に握った。
「どうしてあなたはこの屋敷に?闇の帝王は……一緒じゃないのか?」ドラコが恐る恐る尋ねた。
「何だいシシー、お前はこの子にまだ本当に何にも話していないんだね」ベラトリックスが呆れの声を投げると、ナルシッサは声を荒げた。
「さっきも伝えたでしょう!この子は屋敷に返ってきたばかりなのよ。それに駅からここに戻るまでの間にそんな話ができる筈ないわ。誰に聞かれているか分かったものではないのに」
「ふん、まあいいさ……」ベラトリックスはさもどうでもよさそうに言うと、ドラコの方に向き直った。
「闇の帝王は今、御用がおありで様々な土地を転々としていらっしゃる。味方を増やそうとしていらっしゃるんだ……。私は二週間前に旅の同行を申し出たが、その際あの方は私に他の責務をお与えになった。そのうちの一つとして、今は傷心のナルシッサのそばにいてやってくれと命じられたんだ」
ドラコはそのフォーラ・ファントムという女性を心から愛していた。そして彼女の方も同じようにドラコを愛していたし、マルフォイ家自体を心から好いていた。そんな彼女は他者の気持ちを尊重できる人で、マグルの血が混ざるのを忌み嫌う純血主義や、その純血主義に拒否反応を示す反純血主義、それぞれに信念があるのだからと、そのどちらの考えにも傾倒してこなかった。そのためルシウスが純血主義の極みである死喰い人として悪事を働き捕まったと知った時も、それによってドラコが遺恨の涙を流した時も、彼女はそれらから目を背けずに悲しみを分かち合っていたし、心からドラコたちを心配していた。
ドラコはそれを機に、これ以上自分のせいで大切な人に不安の涙を流させまいという想いを強くしていった。そして彼女に安心して自分の隣に立ってもらうには、自分こそが父の失敗による汚名を返上し、後ろ指を差されない確固たる地位に就き、魔法界が純血優位となるような環境を整える必要があると考えていた。
そのためドラコは、自身が父の代わりに死喰い人となって活躍することに心を燃やしていた。自身のような未成年の魔法使いなど『あの方』が相手にしない可能性が高いことは重々承知の上だったが、家族のために、彼女のために、彼女の家族のために……ドラコにとっては必要なことだった。
その後、ドラコは再びダイニングルームの方に戻ろうと階段を下りた。すると先程まではなかった筈の第三者の声が、そちらの部屋の中から聞こえてきた。ドラコが恐る恐るダイニングルームに踏み入ってみると、そこにはナルシッサの他にもう一人、別の女性の後ろ姿があった。彼女はドラコが発した足音に気付き、黒髪を振るようにしてサッとドラコの方を見た。
「おや、おやおや。お前がドラコだね?まあこんなに大きくなって」
その来客と思しき女性は両手を少々広げてドラコの方へスタスタと近付いた。彼女はナルシッサやドラコのような色素の薄い髪色とは対照的な黒髪を持ち、瞼は厚ぼったく、顎はがっちりしていた。そんな彼女は黒髪に似合う見栄え良い黒の衣服を纏っていた。
「ベラ、あなた、ここに戻るのは数時間後になると言っていたでしょう」
名を呼ばれた来客は、自身の後方からナルシッサに投げられた質問に少々顔をしかめた。ドラコは彼女がどうやら誰かに会ってきた後で、ここへは到着したばかりなのだろうと思った。
「あの方は……私に早くここへ戻るようおっしゃった」ベラと呼ばれた女がもの悲しそうに軽く下を向いた。しかし彼女は直ぐに顔を上げると、目の前のドラコをまじまじと眺めた。
「それはそうと、ドラコ、お前は本当に大きくなった……あの男、ルシウスの若い頃にそっくりだ」
ドラコは母よりも年上と思しき目の前の女性が、自分を品定めするように間近に見てくる状況に身構えた。ドラコは彼女のことを日刊預言者新聞の写真や、ホグズミードに貼りだされていた指名手配のポスター、そして母のアルバムという媒体の中でのみ見た記憶があった。困惑した様子のドラコを見かねてナルシッサがその女性に注意した。
「ベラトリックス、ドラコを困らせないで頂戴。ドラコはほんの一時間前に長旅から帰ったばかりで疲れているのよ。それにあなたがここへ戻る前に、ドラコには落ち着いた状態であなたのことを説明しておこうと思っていたのに」
その言葉を受けて、ベラトリックスはゆっくりとドラコから離れると、長いダイニングテーブルのそばにある椅子に腰掛けた。
「挨拶をするまでもなく、お前はもう私のことを知ってるね?」ベラトリックスの問い掛けに、ドラコはまだ幾らか困惑した様子で返答した。
「え、ええ。ベラトリックス・レストレンジ。母上の姉君だ」
「そうだとも。私がお前を最後に見たのはもう十五年も前のことさ。お前がこーんなちっちゃなベイビーの時以来だよ。それからは、ついこの間までずっとアズカバンにいた。その後のことも当然知ってるだろう」
ドラコは母と彼女の姉を交互に見てから、恐る恐るダイニングテーブルの方に近付きつつ返答した。
「先日の魔法省で、あなたと闇の帝王の二人だけがダンブルドアの手を逃れたと、新聞にはそう書かれていたけど」
「そのとおり」ベラトリックスはにっこり笑った後、直ぐにその笑みを消した。「あの場にいた他の死喰い人は、お前の父親含め全員が捕まった。私と一緒にアズカバンを脱獄していた夫のロドルファスも残念ながらあの監獄に出戻りだ。『わが君』と私だけが、ダンブルドアや不死鳥の騎士団の手から逃れた!」ベラトリックスが最後の部分を繰り返して強調した。
ドラコはベラトリックスから少し距離を取った位置で立ち止まっていた。そわそわとした彼の片手が、直ぐ近くにあるダイニングテーブル用の椅子の背を無意識に握った。
「どうしてあなたはこの屋敷に?闇の帝王は……一緒じゃないのか?」ドラコが恐る恐る尋ねた。
「何だいシシー、お前はこの子にまだ本当に何にも話していないんだね」ベラトリックスが呆れの声を投げると、ナルシッサは声を荒げた。
「さっきも伝えたでしょう!この子は屋敷に返ってきたばかりなのよ。それに駅からここに戻るまでの間にそんな話ができる筈ないわ。誰に聞かれているか分かったものではないのに」
「ふん、まあいいさ……」ベラトリックスはさもどうでもよさそうに言うと、ドラコの方に向き直った。
「闇の帝王は今、御用がおありで様々な土地を転々としていらっしゃる。味方を増やそうとしていらっしゃるんだ……。私は二週間前に旅の同行を申し出たが、その際あの方は私に他の責務をお与えになった。そのうちの一つとして、今は傷心のナルシッサのそばにいてやってくれと命じられたんだ」