5. 土日のダイアゴン横丁
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さて、フォーラがウィーズリーの双子と過ごす間、時を同じくしてファントム邸から遠く離れたマルフォイ邸では、ドラコがダンブルドア殺害に向けて準備を続けているところだった。彼はこれまで定期的に行ってきた叔母のベラトリックスとの『許されざる呪文』の訓練は勿論のこと、最近は叔母がいない日に父ルシウスの書斎を度々訪れていた。
ドラコがホグワーツから帰宅する前、魔法省は家宅捜索としてルシウスの書斎にあった怪しげな品々を片っ端から回収していった。とはいえその対象とならなかった本は書棚に多く残されたままで、中にはドラコにとって今後の活動のヒントになり得るものも確認できた。
そのためドラコは父の書斎から自室に何冊かの本を順に持ち込んでおり、本日もそのうちの一冊に目を通しているところだった。そしてその本のそばには栞が一枚置かれていて、彼の指先がそこに触れるように載せられていた。その表面に施された水色の星が輝いているように見える押し花は、一週間と少し前にフォーラがドラコに宛てて送ったブルースターの一部だった。
フォーラの梟であるアイシーがこの花を運んできたのだが、彼は大層賢く、わざわざ屋敷からベラトリックスが出払っているタイミングでドラコの自室の窓から滑り込んできたのだ。ドラコがアイシーの存在に気付いた時は本当に驚いたものの、花だけが送られていると知るや否や、彼はそれが間違いなくフォーラからのメッセージなのだと信じて疑わなかった。
(僕からの手紙の返事は要らないって、そう書いたのに)
花を受け取った時のドラコはそのように思いつつも、確かに自身の叔母に万が一恋人からの手紙を先に拾われて読まれるよりは、花の贈物の方がよっぽど漠然としていて有難かった。そして何より『僕のことを少しでも想っていてほしい。僕も、いつでも君を想っている』と手紙に綴った身としては、その返事の花言葉こそ調べようがなく分からなかったものの、その花の繊細な見た目が良い意味を持たない筈がないと思えた。加えて自身の瞳の色に似たものを選んでくれているとあっては、彼がそれらにどれだけ喜びを与えられ、元気付けられたかは計り知れないだろう。
実際、その染みるような嬉しさから、ドラコはこの花が届くや否や自室に花瓶を用意して活け、特にその日と翌日は大半を部屋に籠って過ごした。そして何度もその水色の小さな花弁を眺めては、フォーラから思われ励まされていることを実感し、自分は彼女との幸せのために必ず使命を遂行できるのだという、自信や意欲を奮い立たせていった。
そして花がすっかり枯れてしまった現在、ドラコは引き続き例の押し花に片手を触れたまま本を読み込んでいた。その本は、かつてヴォルデモートが最初に死喰い人を結成した『第一次魔法大戦時代』のことを綴っていた。内容は民衆目線で書かれているが故、如何に世間が死喰い人によってひどい目に遭わされてきたかが文章の大半を占めていた。
これは死喰い人であるドラコからすれば面白い話ではなかったため、彼はこの本を半分程読んだところで収穫なしと判断し、最後に途中の一ページだけを何の気なしにめくった。するとそこには当時流行していた護身グッズなんかの紹介が載っていて、その中に『姿をくらますキャビネット』という文字があった。
(キャビネット?)
途端にドラコの手がピタリと止まり、彼の瞳がそこに書かれた文章を追った。どうやらそのキャビネットは普通の収納家具とは異なるようで、二つセットで扱い、どちらか一方の中に入ればもう一方から出られるという移動機能を主とした代物だった。当時の民衆は死喰い人やその手下から逃れたり隠れたりする手段として、至る所に対のキャビネットを設置していたらしい。そしてこの本が書かれた時には大戦はすっかり終結していたようで、お役御免となったキャビネットたちは廃棄されるか本来の用途で使われるようになり、現在はその特殊な機能付きの状態では殆ど残っていないらしかった。
この本には『姿をくらますキャビネット』の作り方も載っていた。用意したキャビネットに『双子の呪文』を掛けて複製し、そして仕上げに別の呪文を掛ければ、二つの空間を繋げられるようだった。そして何とご丁寧にも、その後者の呪文については杖の振り方などの詳細な記述もあった。
(これは、モンタギューが押し込まれたキャビネットが正にそれなんじゃないか?)
五年生の後半、スリザリン生のグラハム・モンタギューという上級生が、ウィーズリーの双子によってホグワーツの廊下の片隅に置かれたキャビネットに押し込まれ、それから数日間姿を見せなかったことがあった。彼の話によれば、彼本人は何処か別のキャビネットから出てきたわけではなく、何故か身動きの取れない謎の空間で過ごすことになった。そしてその時にホグワーツの廊下を生徒が行き交う声と、何処かの店で老人と客らしき人物が話す声が度々聞こえていたそうだ。
最終的にモンタギューはその異空間のような暗闇から『姿くらまし』し、ホグワーツのトイレに詰まっているところを救出された。何があったか問われた彼の回答は、まるで二ヶ所の音が一緒に流れているようだったと話した。しかしそのことを語った場所が医務室で、かつ彼が長期入院を必要としていたことから、見舞いに来た誰もその話を信じようとしなかった。
ドラコは当時モンタギューの話を聞いた後、ホグワーツの廊下でそのキャビネットの存在を視認した。そしてそのキャビネットと殆ど似たような形の物が、確かダイアゴン横丁のボージン・アンド・バークスという店に据え置かれていたような気がしてならなかった。
(まだ同じ物かは確証がないが、もしそうだとしたら……。二つを使えばホグワーツとあの店を移動できるんじゃないか?だが、モンタギューが双方の音だけ聞いて移動できなかったのは何故だ?やっぱり『姿をくらますキャビネット』とは別物か、もしくは壊れているか……。いずれにせよ、ダイアゴン横丁に学用品を買いに行くタイミングで、ボージンの店に行って確かめるしかない)
ドラコがホグワーツから帰宅する前、魔法省は家宅捜索としてルシウスの書斎にあった怪しげな品々を片っ端から回収していった。とはいえその対象とならなかった本は書棚に多く残されたままで、中にはドラコにとって今後の活動のヒントになり得るものも確認できた。
そのためドラコは父の書斎から自室に何冊かの本を順に持ち込んでおり、本日もそのうちの一冊に目を通しているところだった。そしてその本のそばには栞が一枚置かれていて、彼の指先がそこに触れるように載せられていた。その表面に施された水色の星が輝いているように見える押し花は、一週間と少し前にフォーラがドラコに宛てて送ったブルースターの一部だった。
フォーラの梟であるアイシーがこの花を運んできたのだが、彼は大層賢く、わざわざ屋敷からベラトリックスが出払っているタイミングでドラコの自室の窓から滑り込んできたのだ。ドラコがアイシーの存在に気付いた時は本当に驚いたものの、花だけが送られていると知るや否や、彼はそれが間違いなくフォーラからのメッセージなのだと信じて疑わなかった。
(僕からの手紙の返事は要らないって、そう書いたのに)
花を受け取った時のドラコはそのように思いつつも、確かに自身の叔母に万が一恋人からの手紙を先に拾われて読まれるよりは、花の贈物の方がよっぽど漠然としていて有難かった。そして何より『僕のことを少しでも想っていてほしい。僕も、いつでも君を想っている』と手紙に綴った身としては、その返事の花言葉こそ調べようがなく分からなかったものの、その花の繊細な見た目が良い意味を持たない筈がないと思えた。加えて自身の瞳の色に似たものを選んでくれているとあっては、彼がそれらにどれだけ喜びを与えられ、元気付けられたかは計り知れないだろう。
実際、その染みるような嬉しさから、ドラコはこの花が届くや否や自室に花瓶を用意して活け、特にその日と翌日は大半を部屋に籠って過ごした。そして何度もその水色の小さな花弁を眺めては、フォーラから思われ励まされていることを実感し、自分は彼女との幸せのために必ず使命を遂行できるのだという、自信や意欲を奮い立たせていった。
そして花がすっかり枯れてしまった現在、ドラコは引き続き例の押し花に片手を触れたまま本を読み込んでいた。その本は、かつてヴォルデモートが最初に死喰い人を結成した『第一次魔法大戦時代』のことを綴っていた。内容は民衆目線で書かれているが故、如何に世間が死喰い人によってひどい目に遭わされてきたかが文章の大半を占めていた。
これは死喰い人であるドラコからすれば面白い話ではなかったため、彼はこの本を半分程読んだところで収穫なしと判断し、最後に途中の一ページだけを何の気なしにめくった。するとそこには当時流行していた護身グッズなんかの紹介が載っていて、その中に『姿をくらますキャビネット』という文字があった。
(キャビネット?)
途端にドラコの手がピタリと止まり、彼の瞳がそこに書かれた文章を追った。どうやらそのキャビネットは普通の収納家具とは異なるようで、二つセットで扱い、どちらか一方の中に入ればもう一方から出られるという移動機能を主とした代物だった。当時の民衆は死喰い人やその手下から逃れたり隠れたりする手段として、至る所に対のキャビネットを設置していたらしい。そしてこの本が書かれた時には大戦はすっかり終結していたようで、お役御免となったキャビネットたちは廃棄されるか本来の用途で使われるようになり、現在はその特殊な機能付きの状態では殆ど残っていないらしかった。
この本には『姿をくらますキャビネット』の作り方も載っていた。用意したキャビネットに『双子の呪文』を掛けて複製し、そして仕上げに別の呪文を掛ければ、二つの空間を繋げられるようだった。そして何とご丁寧にも、その後者の呪文については杖の振り方などの詳細な記述もあった。
(これは、モンタギューが押し込まれたキャビネットが正にそれなんじゃないか?)
五年生の後半、スリザリン生のグラハム・モンタギューという上級生が、ウィーズリーの双子によってホグワーツの廊下の片隅に置かれたキャビネットに押し込まれ、それから数日間姿を見せなかったことがあった。彼の話によれば、彼本人は何処か別のキャビネットから出てきたわけではなく、何故か身動きの取れない謎の空間で過ごすことになった。そしてその時にホグワーツの廊下を生徒が行き交う声と、何処かの店で老人と客らしき人物が話す声が度々聞こえていたそうだ。
最終的にモンタギューはその異空間のような暗闇から『姿くらまし』し、ホグワーツのトイレに詰まっているところを救出された。何があったか問われた彼の回答は、まるで二ヶ所の音が一緒に流れているようだったと話した。しかしそのことを語った場所が医務室で、かつ彼が長期入院を必要としていたことから、見舞いに来た誰もその話を信じようとしなかった。
ドラコは当時モンタギューの話を聞いた後、ホグワーツの廊下でそのキャビネットの存在を視認した。そしてそのキャビネットと殆ど似たような形の物が、確かダイアゴン横丁のボージン・アンド・バークスという店に据え置かれていたような気がしてならなかった。
(まだ同じ物かは確証がないが、もしそうだとしたら……。二つを使えばホグワーツとあの店を移動できるんじゃないか?だが、モンタギューが双方の音だけ聞いて移動できなかったのは何故だ?やっぱり『姿をくらますキャビネット』とは別物か、もしくは壊れているか……。いずれにせよ、ダイアゴン横丁に学用品を買いに行くタイミングで、ボージンの店に行って確かめるしかない)