4. 親愛なるフリージアの君
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そして迎えたその日、リプトニアは予定通り客人二名を出迎えた。彼らは厳戒態勢が敷かれるこの敷地の門の前で合言葉を伝え、初めて訪れる屋敷や温室に足を踏み入れた。
「「すっげえ」」温室に入るなり、短髪の赤毛にそばかすまでそっくりな顔立ちの二人が声を揃えた。
「滅茶苦茶広大ですね」「お伺いしていたとおり、珍しい魔法植物ばっかりだ」身綺麗な濃い紫のベストとパンツスーツに身を包んだ男性らが、キョロキョロと辺りを見渡しながら夫人に言った。
彼らは今日、自分たちが経営する悪戯用品専門店のアイテムに使う魔法薬の材料を受け取るべく、店が休みのこの日にファントム邸を訪れていた。取引の契約に至ったきっかけは、一年前にまだ彼らが学生だった頃、フォーラを通じてこの屋敷に彼らの欲する珍しい植物が育てられていると知ったことにあった。
さて、双子は温室で夫人から必要な分の品々を受け取り、その後は別室で今後の予定に関する商談を無事終えた。彼らはこの屋敷に足を踏み入れてから今までの間、夫人以外にも庭師やメイドの姿を目に入れていたのだが、この屋敷の一人娘については一度もお目にかからなかった。
仕事が終わるまではこの高貴な取引相手に失礼が無いようにと構えていた双子だったが、予定を終えてようやく肩の荷が下りると片方が尋ねた。
「マダム、ところで娘さんの姿が見えませんが、彼女はお元気ですか?」ジョージが至って朗らかに落ち着いた声色で言った。
とはいえジョージ・ウィーズリーはこの屋敷に行くと決まった日から今も、内心はずっとソワソワとした気分で落ち着かなかった。学生時代の彼は、長い間この屋敷の一人娘のことを想い続けてきて、彼が双子の兄と共に学校を去る時にようやくその気持ちを昇華できた。しかしあれ以来彼女と対面していない分、本人を目の前にした場合、本当にこれまでと違う気持ちで話ができるのか不安なのが正直なところだった。
するとジョージの問いに夫人が頷いた。
「ええ、娘は元気ですよ。何なら今頃、庭の方で本を読んで過ごしているかと。情勢が悪くて全くここの敷地の外へ出してあげられていなくって……。だからもしお二人の時間が許すようであれば、是非話し相手になってあげてもらえませんか。それから実は今日、お二人がここへ来ることを娘には伝えていないんです。あの子を驚かせたかったので」
そう言って微笑むファントム夫人の少々茶目っ気を含んだ様子に、双子はフォーラの面影を感じた。この屋敷の親子は血が繋がっていない筈だが、それでも確実に彼女たちが親子関係にあるのだと誰もが思える程だった。
その後、双子が夫人に連れられて庭の方に出てみると、花や緑に囲まれた広い庭の一角に、吹き抜けのガゼボが鎮座しているのが見えた。そしてその中に一人の女性の後ろ姿があり、彼女はアイアンチェアに腰掛けてテーブルの上に開いた本を、瞳を伏せって静かに眺めていた。背中の大きく開いた白いワンピースは夏の装いに相応しくも少々大胆で、十六歳の彼女がすっかり大人の佇まいをしていた。その姿にジョージは息を呑んだし、もう一方の双子であるフレッドはその美しさに思わず一陣の風のような口笛を吹いた。
するとそのピュウッという音によってフォーラが自身以外の存在に気付き、こちらを向いた。その途端に彼女の瞳は驚きで大きく見開き、加えて反射的にガタッと椅子から立ち上がった。
「えっ……、フレッドとジョージ……?」
「やあ、お久しぶりですお嬢さん」フレッドが如何にも紳士っぽい仕草で会釈して朗らかに言った。隣でジョージは軽く片方の口角を上げてウインクした。
「えっ、えっ!?ええと」途端にフォーラはその場で慌てながら母の方を見たり、開きっぱなしの本を閉じたりとせわしなくなった。双子はそんな彼女を見て、先程までの高貴で幾らか近寄りがたい雰囲気と違い、やはり彼女は二人がよく知っている可愛らしい人と同一人物なのだと分かって少々安堵した。
双子がフォーラの方に歩み寄っていくと、彼女も彼らの方へ駆け寄った。
「二人とも、どうしてここに?まさか母様の今日のお客様って、二人のことだったの?」
その問いにリプトニアがクスクスと笑って頷いた。
「ええ、そうよ。とても良いサプライズになるかと思ったの」
「間違いなく素敵な驚きだわ!二人とも、お仕事とはいえここまでお越しくださってありがとう……!」
フォーラはその喜びに任せ、挨拶のために先ずはフレッドと胴が触れない程度の親しみのある一般的なハグを交わした。その流れで自然にジョージとも全く同じようにしたのだが、彼女はこれまで彼が自分に特別な好意を寄せていたことを忘れたわけではなかった。しかし彼らが学校を途中退学して大胆に去ったあの日、ジョージが最後の最後に自分に向けた言葉や様子、そして直に手渡されたフリージアの赤い花から、もうきっと彼が自分への想いに区切りを付けたのだと信じて疑わなかった。
そしてジョージの方はというと、以前の自分ならフォーラとの抱擁を気恥ずかしく思い、平静を装うのが少々難しかっただろうと思った。しかし今の彼はその感覚よりもどこかスッキリとした気持ちで、純粋に彼女と再会できたことを喜べている自覚があった。するとハグを終えた彼が口を開いた。
「ここへ来た目的の本音を言うと、仕事が半分、君に会いに来たのが半分だ。聞かせたい話が山ほどある」
「「すっげえ」」温室に入るなり、短髪の赤毛にそばかすまでそっくりな顔立ちの二人が声を揃えた。
「滅茶苦茶広大ですね」「お伺いしていたとおり、珍しい魔法植物ばっかりだ」身綺麗な濃い紫のベストとパンツスーツに身を包んだ男性らが、キョロキョロと辺りを見渡しながら夫人に言った。
彼らは今日、自分たちが経営する悪戯用品専門店のアイテムに使う魔法薬の材料を受け取るべく、店が休みのこの日にファントム邸を訪れていた。取引の契約に至ったきっかけは、一年前にまだ彼らが学生だった頃、フォーラを通じてこの屋敷に彼らの欲する珍しい植物が育てられていると知ったことにあった。
さて、双子は温室で夫人から必要な分の品々を受け取り、その後は別室で今後の予定に関する商談を無事終えた。彼らはこの屋敷に足を踏み入れてから今までの間、夫人以外にも庭師やメイドの姿を目に入れていたのだが、この屋敷の一人娘については一度もお目にかからなかった。
仕事が終わるまではこの高貴な取引相手に失礼が無いようにと構えていた双子だったが、予定を終えてようやく肩の荷が下りると片方が尋ねた。
「マダム、ところで娘さんの姿が見えませんが、彼女はお元気ですか?」ジョージが至って朗らかに落ち着いた声色で言った。
とはいえジョージ・ウィーズリーはこの屋敷に行くと決まった日から今も、内心はずっとソワソワとした気分で落ち着かなかった。学生時代の彼は、長い間この屋敷の一人娘のことを想い続けてきて、彼が双子の兄と共に学校を去る時にようやくその気持ちを昇華できた。しかしあれ以来彼女と対面していない分、本人を目の前にした場合、本当にこれまでと違う気持ちで話ができるのか不安なのが正直なところだった。
するとジョージの問いに夫人が頷いた。
「ええ、娘は元気ですよ。何なら今頃、庭の方で本を読んで過ごしているかと。情勢が悪くて全くここの敷地の外へ出してあげられていなくって……。だからもしお二人の時間が許すようであれば、是非話し相手になってあげてもらえませんか。それから実は今日、お二人がここへ来ることを娘には伝えていないんです。あの子を驚かせたかったので」
そう言って微笑むファントム夫人の少々茶目っ気を含んだ様子に、双子はフォーラの面影を感じた。この屋敷の親子は血が繋がっていない筈だが、それでも確実に彼女たちが親子関係にあるのだと誰もが思える程だった。
その後、双子が夫人に連れられて庭の方に出てみると、花や緑に囲まれた広い庭の一角に、吹き抜けのガゼボが鎮座しているのが見えた。そしてその中に一人の女性の後ろ姿があり、彼女はアイアンチェアに腰掛けてテーブルの上に開いた本を、瞳を伏せって静かに眺めていた。背中の大きく開いた白いワンピースは夏の装いに相応しくも少々大胆で、十六歳の彼女がすっかり大人の佇まいをしていた。その姿にジョージは息を呑んだし、もう一方の双子であるフレッドはその美しさに思わず一陣の風のような口笛を吹いた。
するとそのピュウッという音によってフォーラが自身以外の存在に気付き、こちらを向いた。その途端に彼女の瞳は驚きで大きく見開き、加えて反射的にガタッと椅子から立ち上がった。
「えっ……、フレッドとジョージ……?」
「やあ、お久しぶりですお嬢さん」フレッドが如何にも紳士っぽい仕草で会釈して朗らかに言った。隣でジョージは軽く片方の口角を上げてウインクした。
「えっ、えっ!?ええと」途端にフォーラはその場で慌てながら母の方を見たり、開きっぱなしの本を閉じたりとせわしなくなった。双子はそんな彼女を見て、先程までの高貴で幾らか近寄りがたい雰囲気と違い、やはり彼女は二人がよく知っている可愛らしい人と同一人物なのだと分かって少々安堵した。
双子がフォーラの方に歩み寄っていくと、彼女も彼らの方へ駆け寄った。
「二人とも、どうしてここに?まさか母様の今日のお客様って、二人のことだったの?」
その問いにリプトニアがクスクスと笑って頷いた。
「ええ、そうよ。とても良いサプライズになるかと思ったの」
「間違いなく素敵な驚きだわ!二人とも、お仕事とはいえここまでお越しくださってありがとう……!」
フォーラはその喜びに任せ、挨拶のために先ずはフレッドと胴が触れない程度の親しみのある一般的なハグを交わした。その流れで自然にジョージとも全く同じようにしたのだが、彼女はこれまで彼が自分に特別な好意を寄せていたことを忘れたわけではなかった。しかし彼らが学校を途中退学して大胆に去ったあの日、ジョージが最後の最後に自分に向けた言葉や様子、そして直に手渡されたフリージアの赤い花から、もうきっと彼が自分への想いに区切りを付けたのだと信じて疑わなかった。
そしてジョージの方はというと、以前の自分ならフォーラとの抱擁を気恥ずかしく思い、平静を装うのが少々難しかっただろうと思った。しかし今の彼はその感覚よりもどこかスッキリとした気持ちで、純粋に彼女と再会できたことを喜べている自覚があった。するとハグを終えた彼が口を開いた。
「ここへ来た目的の本音を言うと、仕事が半分、君に会いに来たのが半分だ。聞かせたい話が山ほどある」