3. 幸福な愛、信じあう心
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その後、フォーラとリプトニアは庭先の門の所で、スラグホーンとダンブルドアが『姿くらまし』するのを見届けた。彼女たちが家へ続く道を戻る中、リプトニアがスラグホーンについて話した。
「彼は少し癖のある先生だったでしょう?」彼女がクスクスと笑った。
「ええと、少なくとも今まで見た先生の誰とも違っていたように思うわ。」
「ええ、そうかもしれないわね。きっと今日でスラグホーン先生はあなたのことを気に入ってくださったと思うわ。正直、彼のお話に付き合うのは少し骨が折れる時もあるのだけど……それでも私は、彼の『コレクション』に加わった時の恩恵の方が大きいと思うの。実際、私自身が学生の頃からそちら側で、沢山甘やかしていただいたわ。だからこそ今日は先生にしっかりフォーラを自慢しておかなくちゃと思ったのよ」
「そうだったのね。だけど私、新学期が始まってもアニメーガスの力を取り戻せなかったら、先生をがっかりさせてしまうかも。それに、六年生の魔法薬学はとっても難しくなると聞いたわ。先生の様子だと、きっと難易度の高い課題を用意なさるんじゃないかしら……。母様は私に能力があると話してくださったけれど、それこそ授業についていけなくて、先生に期待外れだと思われることがあるかもしれないわ。」
少々自信なさげなフォーラに、リプトニアは微笑んで見せた。
「大丈夫よ。スラグホーン先生はきっと、ありのままのあなたを愛してくださるわ。あなたは何でも一生懸命取り組める子だし、気を遣いすぎるくらい気遣い上手だし、それに……何より私とシェードの子ですもの」
リプトニアが娘の髪をそっと撫で、フォーラは嬉しさと気恥ずかしさに肩を竦めて幾らか口角を上げた。
「ありがとう、母様。」
この時、フォーラは母が発した『愛』という言葉を機に、つい先程ダンブルドアから伝えらえた言葉を自然と芋づる式に思い出していた。
「……ねえ母様。私、今しがたダンブルドア先生からこっそり言われたの。ドラコを心から愛して、心の支えになってあげてほしいって。彼に危険があればすぐ気付けるように、信頼関係を築きなさいという意味だったと思うわ。でも具体的に何をどうすべきかまでは教えていただけなかった。勿論、答えのないことだから当然なのだけどね……。」フォーラは不安に駆られる気持ちを耐えつつも続けた。
「それでね、私、数日前にドラコからふくろう便を受け取ったとお話したでしょう?その文面から察するに、彼はとっても疲れているようだったわ。ルシウスさんやナルシッサさんのことを気に病んでいるのは勿論でしょうし、既に何か危険なことに巻き込まれかけている可能性だってあるかもしれない。だから本当は返事を送りたかったのだけど、彼の手紙には『返事は書かないでほしい』とあったの」
「それは確か、ドラコ君が『親戚』に手紙を拾われたくないから、だったわよね。それはもしかすると……投獄されていた彼の叔母のベラトリックスが屋敷を出入りしている可能性があり得るわね。魔法省は今も定期的にマルフォイ邸に顔を出しているみたいだけど……。」
ベラトリックスの名を聞いたフォーラの瞳には相変わらず不安の色が伺えたが、同時に強い意志も感じられた。
「ええ、きっとそうなんだわ。私はドラコの叔母様にお会いしたことがないから、アズカバンに投獄されるくらい残酷なことをした人だということしか知らないけれど。だけどそれなら猶の事、私は先程のダンブルドア先生がおっしゃったとおり、ドラコの心を支えるために何らかの方法で少しでも気持ちを伝えたいわ。身勝手なのは分かっているけれど、今まさに彼は疲れている様子だし、それこそお手紙が駄目なら何か別の方法で元気づけてあげたいと思ったの……。母様、駄目かしら……。」
リプトニアは少々思案した。どういった手段を使うかはさておき、あちらに何かメッセージを伝えること自体がこちら側の危険に繋がるかもしれない。しかし娘はドラコのことを大層気にかけているし、自分も同じく彼やナルシッサが心配ではある……。彼女は検討した結果、一つの思いつきを提案した。
「そうね、それじゃあ……お花だけ贈るのはどうかしら。花には文字が書かれていないけれど、フォーラも知ってのとおりそれ自体にメッセージ性があるものだから。たとえドラコ君があなたの伝えたかった意味に気づかなかったとしても、贈物をされて喜ばないわけはない筈よ。温室や庭の花から好きなのを選んで贈ってあげて」
「!母様、どうもありがとう!」フォーラは母の提案に喜びの笑みを零し、彼女の手を取ったのだった。
それからのフォーラは母が所有している植物図鑑を借りて、一人で温室を訪れた。順に辺りを見て回りながら、好みの花を見つけては図鑑に書かれた花言葉を確認し、ドラコの手紙の返事に相応しいものを探した。
そうしてフォーラは温室を一通り歩いた後、温室から庭へと続く扉を出た。そして庭先にも植えられている花々に目を向けた時、少し奥まっている所に視線が惹きつけられた。近づいてみると、そこには細長い茎の先に薄水色の小さな花を幾つも咲かせている植物が植わっていた。その花弁の集まりはまるで星が幾つも瞬いているような形をしていた。
自身の住む屋敷の敷地であるため以前から何度かその花を目にしたことはあったが、改めて見るとその花は素朴で美しく、涼しげで、まるでドラコの瞳の色を思わせた。フォーラが図鑑で調べると、その花についての記載があった。
「ブルースターという名なのね。本当に星が咲いているみたいだわ。そして花言葉は……『幸福な愛、信じあう心』……。」
フォーラはその花言葉を読んだ時、ドラコの手紙の返事にピッタリだと思った。何せ彼は『僕のことを少しでも想っていてほしい。僕も、いつでも君を想っている』と書いていた。彼に想われることに喜びを感じ、そんな彼を信じて想い続けていることを返事として伝えるには、十分に良い品だろうと感じたのだ。
しかしそう思うと同時に、フォーラは心に暗い影を落としていた。幸福な愛、信じあう心。マグル生まれであることをドラコに隠している自分にとって、そのどちらもの意味が重くのしかかった。今この瞬間、彼とは一時的な幸せや愛情を共有しているだけに過ぎない。それに、彼に嘘を吐いて騙している時点で『信じあう』などというのは矛盾していて到底おかしなことだった。
この花の持つ意味はドラコへの返事に最適であると同時に、フォーラが本心から手に入れられていない事柄しか含まれていなかった。そしてその花言葉全てが、彼女が欲しくてたまらないものだった。
(ドラコの瞳の色に似たこの花を、私が贈ってもいいのかしら)
ふと図鑑に改めて目を落とすと、どうやら目の前のブルースターはまだ咲き始めたばかりのようだった。というのも、この花は咲いてから日が経つにつれて段々と今の薄水色から青色、そして最後にはピンク色へと変色していくらしい。となると、ドラコに似合う色を贈るならこうして躊躇っている時間が勿体ない。
フォーラはその場に座り込むと、美しい薄水色をした花弁を見つめた。そして少しの間、その花の色を通じて愛しい人の瞳に思いを馳せたのだった。
「彼は少し癖のある先生だったでしょう?」彼女がクスクスと笑った。
「ええと、少なくとも今まで見た先生の誰とも違っていたように思うわ。」
「ええ、そうかもしれないわね。きっと今日でスラグホーン先生はあなたのことを気に入ってくださったと思うわ。正直、彼のお話に付き合うのは少し骨が折れる時もあるのだけど……それでも私は、彼の『コレクション』に加わった時の恩恵の方が大きいと思うの。実際、私自身が学生の頃からそちら側で、沢山甘やかしていただいたわ。だからこそ今日は先生にしっかりフォーラを自慢しておかなくちゃと思ったのよ」
「そうだったのね。だけど私、新学期が始まってもアニメーガスの力を取り戻せなかったら、先生をがっかりさせてしまうかも。それに、六年生の魔法薬学はとっても難しくなると聞いたわ。先生の様子だと、きっと難易度の高い課題を用意なさるんじゃないかしら……。母様は私に能力があると話してくださったけれど、それこそ授業についていけなくて、先生に期待外れだと思われることがあるかもしれないわ。」
少々自信なさげなフォーラに、リプトニアは微笑んで見せた。
「大丈夫よ。スラグホーン先生はきっと、ありのままのあなたを愛してくださるわ。あなたは何でも一生懸命取り組める子だし、気を遣いすぎるくらい気遣い上手だし、それに……何より私とシェードの子ですもの」
リプトニアが娘の髪をそっと撫で、フォーラは嬉しさと気恥ずかしさに肩を竦めて幾らか口角を上げた。
「ありがとう、母様。」
この時、フォーラは母が発した『愛』という言葉を機に、つい先程ダンブルドアから伝えらえた言葉を自然と芋づる式に思い出していた。
「……ねえ母様。私、今しがたダンブルドア先生からこっそり言われたの。ドラコを心から愛して、心の支えになってあげてほしいって。彼に危険があればすぐ気付けるように、信頼関係を築きなさいという意味だったと思うわ。でも具体的に何をどうすべきかまでは教えていただけなかった。勿論、答えのないことだから当然なのだけどね……。」フォーラは不安に駆られる気持ちを耐えつつも続けた。
「それでね、私、数日前にドラコからふくろう便を受け取ったとお話したでしょう?その文面から察するに、彼はとっても疲れているようだったわ。ルシウスさんやナルシッサさんのことを気に病んでいるのは勿論でしょうし、既に何か危険なことに巻き込まれかけている可能性だってあるかもしれない。だから本当は返事を送りたかったのだけど、彼の手紙には『返事は書かないでほしい』とあったの」
「それは確か、ドラコ君が『親戚』に手紙を拾われたくないから、だったわよね。それはもしかすると……投獄されていた彼の叔母のベラトリックスが屋敷を出入りしている可能性があり得るわね。魔法省は今も定期的にマルフォイ邸に顔を出しているみたいだけど……。」
ベラトリックスの名を聞いたフォーラの瞳には相変わらず不安の色が伺えたが、同時に強い意志も感じられた。
「ええ、きっとそうなんだわ。私はドラコの叔母様にお会いしたことがないから、アズカバンに投獄されるくらい残酷なことをした人だということしか知らないけれど。だけどそれなら猶の事、私は先程のダンブルドア先生がおっしゃったとおり、ドラコの心を支えるために何らかの方法で少しでも気持ちを伝えたいわ。身勝手なのは分かっているけれど、今まさに彼は疲れている様子だし、それこそお手紙が駄目なら何か別の方法で元気づけてあげたいと思ったの……。母様、駄目かしら……。」
リプトニアは少々思案した。どういった手段を使うかはさておき、あちらに何かメッセージを伝えること自体がこちら側の危険に繋がるかもしれない。しかし娘はドラコのことを大層気にかけているし、自分も同じく彼やナルシッサが心配ではある……。彼女は検討した結果、一つの思いつきを提案した。
「そうね、それじゃあ……お花だけ贈るのはどうかしら。花には文字が書かれていないけれど、フォーラも知ってのとおりそれ自体にメッセージ性があるものだから。たとえドラコ君があなたの伝えたかった意味に気づかなかったとしても、贈物をされて喜ばないわけはない筈よ。温室や庭の花から好きなのを選んで贈ってあげて」
「!母様、どうもありがとう!」フォーラは母の提案に喜びの笑みを零し、彼女の手を取ったのだった。
それからのフォーラは母が所有している植物図鑑を借りて、一人で温室を訪れた。順に辺りを見て回りながら、好みの花を見つけては図鑑に書かれた花言葉を確認し、ドラコの手紙の返事に相応しいものを探した。
そうしてフォーラは温室を一通り歩いた後、温室から庭へと続く扉を出た。そして庭先にも植えられている花々に目を向けた時、少し奥まっている所に視線が惹きつけられた。近づいてみると、そこには細長い茎の先に薄水色の小さな花を幾つも咲かせている植物が植わっていた。その花弁の集まりはまるで星が幾つも瞬いているような形をしていた。
自身の住む屋敷の敷地であるため以前から何度かその花を目にしたことはあったが、改めて見るとその花は素朴で美しく、涼しげで、まるでドラコの瞳の色を思わせた。フォーラが図鑑で調べると、その花についての記載があった。
「ブルースターという名なのね。本当に星が咲いているみたいだわ。そして花言葉は……『幸福な愛、信じあう心』……。」
フォーラはその花言葉を読んだ時、ドラコの手紙の返事にピッタリだと思った。何せ彼は『僕のことを少しでも想っていてほしい。僕も、いつでも君を想っている』と書いていた。彼に想われることに喜びを感じ、そんな彼を信じて想い続けていることを返事として伝えるには、十分に良い品だろうと感じたのだ。
しかしそう思うと同時に、フォーラは心に暗い影を落としていた。幸福な愛、信じあう心。マグル生まれであることをドラコに隠している自分にとって、そのどちらもの意味が重くのしかかった。今この瞬間、彼とは一時的な幸せや愛情を共有しているだけに過ぎない。それに、彼に嘘を吐いて騙している時点で『信じあう』などというのは矛盾していて到底おかしなことだった。
この花の持つ意味はドラコへの返事に最適であると同時に、フォーラが本心から手に入れられていない事柄しか含まれていなかった。そしてその花言葉全てが、彼女が欲しくてたまらないものだった。
(ドラコの瞳の色に似たこの花を、私が贈ってもいいのかしら)
ふと図鑑に改めて目を落とすと、どうやら目の前のブルースターはまだ咲き始めたばかりのようだった。というのも、この花は咲いてから日が経つにつれて段々と今の薄水色から青色、そして最後にはピンク色へと変色していくらしい。となると、ドラコに似合う色を贈るならこうして躊躇っている時間が勿体ない。
フォーラはその場に座り込むと、美しい薄水色をした花弁を見つめた。そして少しの間、その花の色を通じて愛しい人の瞳に思いを馳せたのだった。