3. 幸福な愛、信じあう心
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さて、それからスラグホーンが温室内を見て回りながらリプトニアに買い取り希望の薬草を指定する間、フォーラはダンブルドアと並んで手頃なベンチに腰掛けて話をした。その際に彼女はこの間の帰りのホグワーツ特急から今日まで、すっかりアニメーガスの力を使えなくなっていることを相談した。
「未遂とはいえ、学校外で魔法を使おうとしたことは謝罪します……。ですが先生、もう私はアニメーガスではなくなってしまったんでしょうか?そういった事例について、何かご存知ではないでしょうか?」
フォーラが少々落ち込み気味に尋ねると、ダンブルドアは自身の白く長い口髭を何度か撫でて思案した。
「残念ながら儂はアニメーガスではないので、明確な答えを示せぬかもしれん。ただ、既にもう猫に変身できる見込みが立っていないのであれば、それはお主の言うとおりアニメーガスの力を失ってしまったか、あるいは変身対象が他の動物に変わってしまったのかもしれぬ」
「えっ……別の動物ですか?」フォーラは想定外の答えに少々目を見開いた。
「ああそうじゃ。世間ではアニメーガス自体の数が少ない故に、変身対象が変わるという例は殆ど聞かぬがのう。じゃが、お主が何らかの動物に変身する力を失っておらず、かつ儂の仮説が正しいとするならば、現状何に変身できるか確認する方法が一つある。それは守護霊の呪文を習得することじゃ」
「守護霊……?」
「ああ、そうじゃ。守護霊は銀色の霞 のようなもので、吸魂鬼を追い払える唯一の魔法での。強い力を持つ守護霊は、動物の形となって現れる。ほれ、このように」
ダンブルドアが杖を振ると、何処からともなく不死鳥の形をした銀色の霞が現れた。その守護霊は部屋を一周して飛ぶと消えてしまった。
「この動物の形というのが一人ひとりそれぞれ異なる。そしてその形はアニメーガスの力で変身できる動物と同じなのじゃ。例として、マクゴナガル先生がトラ猫に変身できるのはフォーラも知っておろうが、守護霊も同じくトラ猫での。他にはハリーの父親は牡鹿の守護霊を持ち、公表はしていなかったものの牡鹿のアニメーガスだったそうじゃ」
フォーラは不意にハリーの名を聞いて少々ピクリと反応した。しかし彼女はそんなことは一先ず無視してダンブルドアに質問した。
「その守護霊というのは、どのように習得すればいいのでしょう?私にもできるでしょうか?」
「そうじゃのう、霞程度のものなら練習すれば出せるようになるかもしれんが、動物の姿を作り出すとなると、並の大人でも相当難しい。それでも練習してみる価値はあるじゃろうの。やり方としては、呪文を唱える前に幸福な思い出や感情といった、プラスのエネルギーを頭の中に呼び覚ますのじゃ。そしてこのように杖を振り、『エクスペクト・パトローナム・守護霊よ来たれ』と唱える。上手くいけば、お主を闇の魔法生物から守るための動物の形が現れる筈じゃ」
「『守護霊よ来たれ』……。分かりました、ありがとうございます先生。ですが、それを練習するには新学期が始まってからでないといけませんね。学校外では魔法を使ってはいけない決まりですし……。」
するとダンブルドアは幾らか茶目っ気のある表情でそっぽを向き、フォーラに見えるようにウインクした。
「これは儂の独り言じゃが、成人した魔法使いや魔女のご家族の監視の元、未成年が魔法を使うことは暗黙の了解じゃったのう。じゃからしてその行為を誰にも咎められることはない。しかし儂は校長で生徒にそれを勧める立場ではないからして、この話をフォーラに伝えるべきではないじゃろうの」
「!」フォーラはダンブルドアが暗に、夏休み中に守護霊の呪文を練習するよう勧めていることを理解した。彼のわざとらしい一人芝居が何だか可笑しくも有難くて、彼女はクスクス笑うと感謝の意を述べた。
「何、当然ながら、儂のただの独り言にお礼の言葉なぞ不要じゃよ」ダンブルドアがフォーラの方を見て続けた。「それにしても、何がお主に影響を与えたのか、心当たりはあるのかね?」
フォーラはその問いを受け、数日前の自分が母と話していた時に浮かんだ考えが再び思い出された。それは、ハリーやシリウスという存在によって、『マルフォイ家を闇の帝王から引き離す』という両親の計画を結果的に台無しにされたことへの静かな怒りだった。
「さあ、どうでしょう……。」
フォーラはこの時ダンブルドアとしっかり目を合わせていたのだが、何というべきか、彼の瞳に心の内を探られているような……いや、寧ろすっかり見透かされているような感覚に陥っていた。そんなことがある筈ないのに、フォーラにはそれがあまりにも居心地悪く感じられた。何せ物分かりの良さを売りにしている自分が、死喰い人を一網打尽に導いたヒーローたちに、そのような恨みの感情を募らせていると知られてしまった気がしたからだ。しかも騎士団を代表するダンブルドアという存在に……。
そのためフォーラは咄嗟にその恨みの感情を心の奥底に閉じ込め、当然ながら何も悟られてはいないのだと思い直してダンブルドアを見つめ返した。自分は何も後ろめたいことなど考えていない。単にマルフォイ家の面々の身を案じていて、安全から遠ざかってしまった状況を悲しんでいるだけだ。けっして騎士団に対する怒りや裏切りの感情など持ち合わせてはいない……そのように取り繕わなければ。すると彼女の瞳の奥はすっかり怒りの色を失って、普段以上の冷静さを取り戻していた。
この時ダンブルドアは、フォーラの瞳を通して彼女の心の中をうごめく感情の波を垣間見ていた。つまり開心術で彼女の心境を読み取り、アニメーガスの力が使えなくなった原因を探る手助けをしようとしていた。するとその中には、彼女が如何にドラコを想い、一方でハリーやシリウスに対する怒りの炎をチラつかせているかがはっきりと感じ取れた。しかし途端にその炎は消え去り、先程まで見えていた様々な彼女の感情すらも霞となって消えたではないか。
(……何と、まさか今の一瞬で、無意識のうちに?)
「未遂とはいえ、学校外で魔法を使おうとしたことは謝罪します……。ですが先生、もう私はアニメーガスではなくなってしまったんでしょうか?そういった事例について、何かご存知ではないでしょうか?」
フォーラが少々落ち込み気味に尋ねると、ダンブルドアは自身の白く長い口髭を何度か撫でて思案した。
「残念ながら儂はアニメーガスではないので、明確な答えを示せぬかもしれん。ただ、既にもう猫に変身できる見込みが立っていないのであれば、それはお主の言うとおりアニメーガスの力を失ってしまったか、あるいは変身対象が他の動物に変わってしまったのかもしれぬ」
「えっ……別の動物ですか?」フォーラは想定外の答えに少々目を見開いた。
「ああそうじゃ。世間ではアニメーガス自体の数が少ない故に、変身対象が変わるという例は殆ど聞かぬがのう。じゃが、お主が何らかの動物に変身する力を失っておらず、かつ儂の仮説が正しいとするならば、現状何に変身できるか確認する方法が一つある。それは守護霊の呪文を習得することじゃ」
「守護霊……?」
「ああ、そうじゃ。守護霊は銀色の
ダンブルドアが杖を振ると、何処からともなく不死鳥の形をした銀色の霞が現れた。その守護霊は部屋を一周して飛ぶと消えてしまった。
「この動物の形というのが一人ひとりそれぞれ異なる。そしてその形はアニメーガスの力で変身できる動物と同じなのじゃ。例として、マクゴナガル先生がトラ猫に変身できるのはフォーラも知っておろうが、守護霊も同じくトラ猫での。他にはハリーの父親は牡鹿の守護霊を持ち、公表はしていなかったものの牡鹿のアニメーガスだったそうじゃ」
フォーラは不意にハリーの名を聞いて少々ピクリと反応した。しかし彼女はそんなことは一先ず無視してダンブルドアに質問した。
「その守護霊というのは、どのように習得すればいいのでしょう?私にもできるでしょうか?」
「そうじゃのう、霞程度のものなら練習すれば出せるようになるかもしれんが、動物の姿を作り出すとなると、並の大人でも相当難しい。それでも練習してみる価値はあるじゃろうの。やり方としては、呪文を唱える前に幸福な思い出や感情といった、プラスのエネルギーを頭の中に呼び覚ますのじゃ。そしてこのように杖を振り、『エクスペクト・パトローナム・守護霊よ来たれ』と唱える。上手くいけば、お主を闇の魔法生物から守るための動物の形が現れる筈じゃ」
「『守護霊よ来たれ』……。分かりました、ありがとうございます先生。ですが、それを練習するには新学期が始まってからでないといけませんね。学校外では魔法を使ってはいけない決まりですし……。」
するとダンブルドアは幾らか茶目っ気のある表情でそっぽを向き、フォーラに見えるようにウインクした。
「これは儂の独り言じゃが、成人した魔法使いや魔女のご家族の監視の元、未成年が魔法を使うことは暗黙の了解じゃったのう。じゃからしてその行為を誰にも咎められることはない。しかし儂は校長で生徒にそれを勧める立場ではないからして、この話をフォーラに伝えるべきではないじゃろうの」
「!」フォーラはダンブルドアが暗に、夏休み中に守護霊の呪文を練習するよう勧めていることを理解した。彼のわざとらしい一人芝居が何だか可笑しくも有難くて、彼女はクスクス笑うと感謝の意を述べた。
「何、当然ながら、儂のただの独り言にお礼の言葉なぞ不要じゃよ」ダンブルドアがフォーラの方を見て続けた。「それにしても、何がお主に影響を与えたのか、心当たりはあるのかね?」
フォーラはその問いを受け、数日前の自分が母と話していた時に浮かんだ考えが再び思い出された。それは、ハリーやシリウスという存在によって、『マルフォイ家を闇の帝王から引き離す』という両親の計画を結果的に台無しにされたことへの静かな怒りだった。
「さあ、どうでしょう……。」
フォーラはこの時ダンブルドアとしっかり目を合わせていたのだが、何というべきか、彼の瞳に心の内を探られているような……いや、寧ろすっかり見透かされているような感覚に陥っていた。そんなことがある筈ないのに、フォーラにはそれがあまりにも居心地悪く感じられた。何せ物分かりの良さを売りにしている自分が、死喰い人を一網打尽に導いたヒーローたちに、そのような恨みの感情を募らせていると知られてしまった気がしたからだ。しかも騎士団を代表するダンブルドアという存在に……。
そのためフォーラは咄嗟にその恨みの感情を心の奥底に閉じ込め、当然ながら何も悟られてはいないのだと思い直してダンブルドアを見つめ返した。自分は何も後ろめたいことなど考えていない。単にマルフォイ家の面々の身を案じていて、安全から遠ざかってしまった状況を悲しんでいるだけだ。けっして騎士団に対する怒りや裏切りの感情など持ち合わせてはいない……そのように取り繕わなければ。すると彼女の瞳の奥はすっかり怒りの色を失って、普段以上の冷静さを取り戻していた。
この時ダンブルドアは、フォーラの瞳を通して彼女の心の中をうごめく感情の波を垣間見ていた。つまり開心術で彼女の心境を読み取り、アニメーガスの力が使えなくなった原因を探る手助けをしようとしていた。するとその中には、彼女が如何にドラコを想い、一方でハリーやシリウスに対する怒りの炎をチラつかせているかがはっきりと感じ取れた。しかし途端にその炎は消え去り、先程まで見えていた様々な彼女の感情すらも霞となって消えたではないか。
(……何と、まさか今の一瞬で、無意識のうちに?)