3. 幸福な愛、信じあう心
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このいわゆる闇の魔術をフォーラが使えると知っているのは、スネイプとダンブルドアだけだった。それはスネイプの判断であり、この能力を知る人が敵味方関係なく少なければ少ない程、役立てられると考えてのことだった。加えて血を飲むという行為自体が、周囲に心配やあらぬ誤解を生みかねないというのも秘密にしている理由の一つだった。
ところで、フォーラはその他にも特殊な能力を持ち合わせていた。それは彼女が黒猫に変身できる『動物もどき 』ということだった。しかし先日、ホグワーツからの帰路を行く列車の中で、彼女は自分がその力を使えなくなっていることに気が付いた。初めての経験で原因も何も分からなかったが、とはいえそれは一時的なものだろうと想像していた。
ところが自宅に帰って数日間、フォーラは何度か変身を試みたものの結局これまでのようには一度も成功しなかった。正直、自分の特殊な力が失われてしまったのは本当にショックだったし、心底落ち込んだ。そのため彼女はこの件については家族に相談した。
「うーん、私もシェードも、薬草学や魔法薬学の専門だから、十分に参考になる意見を言ってあげられるか分からないけれど……」母のリプトニアが眉を下げて続けた。「アニメーガスは、その人の特徴を捉えた動物に変身するのよね。似ている動物になるだけではなくて、人によっては精神面を反映した動物を形作るとか」
「ええ、そうみたい。私の場合は後者の方が顕著に表れていたのかもしれないわ。」
「そう……。それならフォーラは最近、何か気持ちの面や考え方で大きく影響を受けたことはなかった?とは言っても、今はルシウスやナルシッサ、ドラコ君が心配でしょうし、それに先日はブラックさんがお亡くなりになった。そして『例のあの人』は公 に姿を現したし……。あなたの気持ちが揺らぐ出来事が沢山起こったから、どれも変身に不安定さを及ぼした可能性は大いにあり得るわね」
フォーラは思案したが、母の言うとおりそのどれもが心に暗い影を落としていることは間違いなかった。しかし強いて言うならば、つい先程母の口からシリウスの名を聞いた時に、少しばかりその影が色濃くなるのを感じた。
今は亡きシリウスが自身の屋敷しもべ妖精であるクリーチャーを気遣ってあげられていたら、クリーチャーが騎士団を裏切って闇の陣営に要らぬ情報を流すことはなかっただろう。そしてその情報を利用されなければ、ハリー・ポッターが嘘の誘いに翻弄されて魔法省へ行くこともなく、闇の陣営と戦うこともなかっただろう。そして何より、争いの結果ルシウスが騎士団に捕まって投獄され、ドラコが復讐心に苦しむこともなかっただろう……。
フォーラの脳裏にそれらの考えが通り過ぎた。それと同時に、彼女は以前からそのように故人を責めたり、ハリーや騎士団の功績を非難したりしている自身の考えに罪悪感を抱いていた。しかし、元々は両親が別の方法でルシウスを死喰い人から脱却させるつもりで動いており、今回の事でその計画が頓挫 した。そのため彼女はマルフォイ家が当初の計画よりも危機的状況に陥っていることに強い憤 りを感じずにはいられなかった。
フォーラはそこまで考えて、母が呼ぶ声でハッと意識を引き戻した。
「あ……ごめんなさい母様 。私がアニメーガスの力を使えなくなってしまったのは、やっぱり何か気持ちの面が大きいのかもしれないわ。だけど具体的な因果関係まではよく分からないの……。」
リプトニアはそれを聞いて幾らか思案した後、一つ提案した。
「実は今度、うちにダンブルドアがいらっしゃる予定なの。私のお客様をお連れになってね。ダンブルドアは変身術の名手でいらっしゃるから、何か打開策をご存知かもしれないわ」
フォーラはその知らせを聞いて随分驚いた。この屋敷にダンブルドアが来たことは一度もなかったからだ。彼女は自身の抱える問題を解決する糸口を掴めるかもしれないと、彼の来訪を心待ちにしたのだった。
それからほんの数日後、父が仕事で家を出た数時間後の昼前に、予定どおりファントム邸への来客があった。母は来客を玄関まで出迎え、久しぶりの再会を喜ぶように会話を弾ませつつダイニングにやってきた。そこでフォーラが見たのは、ダンブルドア校長と、その後に続く老人の姿だった。ご老人は堂々と太った身体に上等な紺色の衣服を纏っており、スキンヘッドのてっぺんはダンブルドアの顎に届かないくらいだった。そして口の上には立派な銀色のセイウチ髭を蓄えていた。
「リプトニア、それにしても本当に久しぶりだ。相変わらずお綺麗で―――おや、そちらのお嬢さんは?もしかして……」
その男性の大きな瞳が幾らか驚いたようにフォーラの姿を捉え、陽気な声があがった。するとリプトニアが頷いた。
「ええそうです。娘のフォーラですよ先生。さあフォーラ、こちらへ。ダンブルドア先生と、先日伝えていたお客様がお越しくださったわ」
フォーラは母の呼ぶ声に、おずおずと二人の客人の前に歩み出た。
「こんにちは、ようこそおいでくださいました。フォーラと申します。ダンブルドア先生は数週間ぶりにお目にかかりますね。」彼女は両手をへその辺りで組むと、深々と礼儀正しくお辞儀した。彼女が顔を上げてダンブルドアともう一人の男性に微笑むと、その人は興味津々で笑みを返してきた。するとリプトニアがフォーラに説明した。
「こちらはホラス・スラグホーン先生ですよ。お二方は今日、うちの温室に御用があって足を運んでくださったの」
「そうでしたか、スラグホーンさん、ダンブルドア先生、お忙しい中お越しくださりありがとうございます。今日はお昼ごはんをご一緒してくださると伺っています。どうぞごゆっくりなさってくださいね。」
フォーラの大変礼儀正しくも柔らかな挨拶に、スラグホーンは感心した様子で更にニッコリ笑った。
「いやはや、驚いた!リプトニア、君の娘さんは見ないうちに本当に大きくなったし、すっかり立派なレディの仲間入りを果たしているじゃないか」
ところで、フォーラはその他にも特殊な能力を持ち合わせていた。それは彼女が黒猫に変身できる『
ところが自宅に帰って数日間、フォーラは何度か変身を試みたものの結局これまでのようには一度も成功しなかった。正直、自分の特殊な力が失われてしまったのは本当にショックだったし、心底落ち込んだ。そのため彼女はこの件については家族に相談した。
「うーん、私もシェードも、薬草学や魔法薬学の専門だから、十分に参考になる意見を言ってあげられるか分からないけれど……」母のリプトニアが眉を下げて続けた。「アニメーガスは、その人の特徴を捉えた動物に変身するのよね。似ている動物になるだけではなくて、人によっては精神面を反映した動物を形作るとか」
「ええ、そうみたい。私の場合は後者の方が顕著に表れていたのかもしれないわ。」
「そう……。それならフォーラは最近、何か気持ちの面や考え方で大きく影響を受けたことはなかった?とは言っても、今はルシウスやナルシッサ、ドラコ君が心配でしょうし、それに先日はブラックさんがお亡くなりになった。そして『例のあの人』は
フォーラは思案したが、母の言うとおりそのどれもが心に暗い影を落としていることは間違いなかった。しかし強いて言うならば、つい先程母の口からシリウスの名を聞いた時に、少しばかりその影が色濃くなるのを感じた。
今は亡きシリウスが自身の屋敷しもべ妖精であるクリーチャーを気遣ってあげられていたら、クリーチャーが騎士団を裏切って闇の陣営に要らぬ情報を流すことはなかっただろう。そしてその情報を利用されなければ、ハリー・ポッターが嘘の誘いに翻弄されて魔法省へ行くこともなく、闇の陣営と戦うこともなかっただろう。そして何より、争いの結果ルシウスが騎士団に捕まって投獄され、ドラコが復讐心に苦しむこともなかっただろう……。
フォーラの脳裏にそれらの考えが通り過ぎた。それと同時に、彼女は以前からそのように故人を責めたり、ハリーや騎士団の功績を非難したりしている自身の考えに罪悪感を抱いていた。しかし、元々は両親が別の方法でルシウスを死喰い人から脱却させるつもりで動いており、今回の事でその計画が
フォーラはそこまで考えて、母が呼ぶ声でハッと意識を引き戻した。
「あ……ごめんなさい
リプトニアはそれを聞いて幾らか思案した後、一つ提案した。
「実は今度、うちにダンブルドアがいらっしゃる予定なの。私のお客様をお連れになってね。ダンブルドアは変身術の名手でいらっしゃるから、何か打開策をご存知かもしれないわ」
フォーラはその知らせを聞いて随分驚いた。この屋敷にダンブルドアが来たことは一度もなかったからだ。彼女は自身の抱える問題を解決する糸口を掴めるかもしれないと、彼の来訪を心待ちにしたのだった。
それからほんの数日後、父が仕事で家を出た数時間後の昼前に、予定どおりファントム邸への来客があった。母は来客を玄関まで出迎え、久しぶりの再会を喜ぶように会話を弾ませつつダイニングにやってきた。そこでフォーラが見たのは、ダンブルドア校長と、その後に続く老人の姿だった。ご老人は堂々と太った身体に上等な紺色の衣服を纏っており、スキンヘッドのてっぺんはダンブルドアの顎に届かないくらいだった。そして口の上には立派な銀色のセイウチ髭を蓄えていた。
「リプトニア、それにしても本当に久しぶりだ。相変わらずお綺麗で―――おや、そちらのお嬢さんは?もしかして……」
その男性の大きな瞳が幾らか驚いたようにフォーラの姿を捉え、陽気な声があがった。するとリプトニアが頷いた。
「ええそうです。娘のフォーラですよ先生。さあフォーラ、こちらへ。ダンブルドア先生と、先日伝えていたお客様がお越しくださったわ」
フォーラは母の呼ぶ声に、おずおずと二人の客人の前に歩み出た。
「こんにちは、ようこそおいでくださいました。フォーラと申します。ダンブルドア先生は数週間ぶりにお目にかかりますね。」彼女は両手をへその辺りで組むと、深々と礼儀正しくお辞儀した。彼女が顔を上げてダンブルドアともう一人の男性に微笑むと、その人は興味津々で笑みを返してきた。するとリプトニアがフォーラに説明した。
「こちらはホラス・スラグホーン先生ですよ。お二方は今日、うちの温室に御用があって足を運んでくださったの」
「そうでしたか、スラグホーンさん、ダンブルドア先生、お忙しい中お越しくださりありがとうございます。今日はお昼ごはんをご一緒してくださると伺っています。どうぞごゆっくりなさってくださいね。」
フォーラの大変礼儀正しくも柔らかな挨拶に、スラグホーンは感心した様子で更にニッコリ笑った。
「いやはや、驚いた!リプトニア、君の娘さんは見ないうちに本当に大きくなったし、すっかり立派なレディの仲間入りを果たしているじゃないか」