2. ベラトリックスの教え
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ところで、ナルシッサはドラコの恋人が誰なのかを聞いた途端、両手で口元を覆い、驚きと喜びと悲しみを織り交ぜたような表情になっていた。ここ最近の彼女が情緒不安定なことも相まって、たった今聞かされた情報は彼女の涙腺を容易く緩めた。
(遂にこの時が来たのね、来てしまったのね……。いつかそうなれば良いのにと、ルシウスと話したこともあった。彼がこのことを聞いたらどれ程喜ぶでしょう!ああ、私の親友リプトニアの娘が、私の娘同然のフォーラさんが、ドラコの恋人だなんて!……母としてはドラコが離れていくようで寂しいけれど、それ以上に喜びが勝っているわ……!)ナルシッサは更に大粒の涙を流した。
(それなのに、こんなにも嬉しい知らせなのに、何故このタイミングでドラコがあの方のご命令を遂行しなければならないの?どうしてドラコにダンブルドアが殺せるとお思いなの?闇の帝王すら成し得ないことなのに?)
ナルシッサが完全に両手で顔を覆ってしまったものだから、ドラコは母を心配して寄り添った。
(……この子があの方のご命令を受けた時、とでもではないけれど私の口から『不可能だ』とは伝えられなかった……。この子が私たちのために折角やる気に満ちているのに、それを否定したが最後、ホグワーツに行く前にこの子を怖気づかせてしまうかもしれなかったから……)
ナルシッサは息子に背中をさすられても、むせび泣くのを我慢できなかった。
(だけど、どう考えても無理なものは無理なのよ。きっとあの方だってドラコが失敗すると分かっている筈。あの方がドラコを選んだのは、ルシウスが失敗したことへの復讐なんだわ……!だってあの方は私たちの前で表面上こそ取り繕っていたけれど、相当お怒りの時に見せる蔑みの雰囲気を強く纏っていた……。あの方は私が恐怖でご命令を拒否できないのをいいことに、甘い期待の言葉でドラコを誘惑したのよ。そして―――ドラコが成功できないと判断したその時には……闇の帝王は、この子を殺してしまうかもしれない……。これからこの子の将来に待っている筈の、沢山の幸せを奪ってしまう……)
ドラコは自分の恋人が誰なのかを打ち明けた途端に母が泣き出したものだから、彼女の心境がいまいち理解できずに戸惑った。
「母上、その……。ご存知かと思いますが、僕は四年生の終わりに父上から『僕の弱みになるような大切な人を作るな』ということを言われていました。それが僕のための言葉だということも理解していました。だから僕はこの一年弱の間、フォーラと心の距離を取ろうと何度も試みたんです。だけど僕にとってそれは無理なことでした……。何故なら、彼女はもうとっくに僕にとって特別な人になっていたんですから。だから、言いつけを守らなかった僕のことを母上が残念に思っていたとしても、こればっかりは譲れません」
するとナルシッサは顔を覆っていた両手をゆっくりと離し、何度も自身の目元の涙を拭ってドラコを見た。彼女は息子に無理に笑ってみせていた。
「いいんですよ……もういいんです。いつかはそんな日が来るかもしれないと、いえ、そうなれば良いのにと、私もルシウスも何年も思ってきたから……」
「そ……そうだったのですか?」ドラコが少々驚いた様子で尋ねた。
「ええ……貴方の言うとおりルシウスが貴方に『大切な人を作るな』とお願いしたのは、知ってのとおり貴方のお相手が誰であれ、今後二人のどちらかが戦いに巻き込まれて何かあった時に、少しでもお互いの心の傷が軽く済むようにしていてほしかったから。特にそのお相手がフォーラさんだった場合には、猶のことそれが難しくなったでしょうから……。それ程に死喰い人側でいることは、人との繋がりに深入りしない割り切りの良さが求められる……。だけど貴方には、もうすっかりそんなことは関係なく、彼女を守って貴方自身も生き抜くという強い気概があるのね?」
ナルシッサが見据えた息子の瞳は、すっかり覚悟を決めた色をしていた。
「ええ、おっしゃるとおりです。僕は父上や母上のためは勿論、彼女のためにも、必ずマルフォイの名声を取り戻します。もう誰にも後ろ指をさされないために」
息子の返答を受け、ナルシッサも弱々しかった表情の奥深くに決心の色を滲ませていた。そんなことに気付かないベラトリックスはとうとう二人の会話に水を差した。
「しかしまあ、お前たち一家が揃って入れ込んでいるなんて、それは一体どんな娘っ子なんだい?私はファントム夫妻のことは軽く把握しているが、是非一度娘の方もお目にかかりたいものだね。……とはいえドラコ、その娘はお前が死喰い人になったと知ったら、恐れをなしてお前から離れてしまうかもしれないよ。純血同士の貴重な婚姻の機会を逃すようなことがあってはならないんだからね」
「!ベラ、まだ今はドラコの将来を急かすようなことを言わないで。それから、このことは絶対にあの方へはお伝えしないで頂戴。まだ何も決まっていないのに後々状況が変わってしまったら、それこそあの方からどんなお仕置きが待っているか分からないわ」
ナルシッサの言葉にベラトリックスは少々不服そうな顔をしたが、「ご主人様には、当然今はまだお話しないさ」と言って妹を軽くあしらった。そしてベラトリックスはドラコに向き直った。
「しかしねドラコ、先に純血同士の結婚をした者として、私から一つ忠告だけはさせてもらうよ。お前は愛だの何だのという以前に、最終的にはその大層貴重な血を絶やさないことに賛同してくれる相手を選ばなくてはならないよ。何せお前はブラックとマルフォイという二つの優良な純血の家の間に生まれた、唯一の生き残りの男子なんだからね」
それを聞いたナルシッサは姉が息子に説教を垂れているのが気に食わないようだった。
「ベラ、よく言えたものね。あなたは結婚後、ロドルファスとの間に子をもうけようとせず、闇の帝王にばかり愛情を向けていたくせに」
(遂にこの時が来たのね、来てしまったのね……。いつかそうなれば良いのにと、ルシウスと話したこともあった。彼がこのことを聞いたらどれ程喜ぶでしょう!ああ、私の親友リプトニアの娘が、私の娘同然のフォーラさんが、ドラコの恋人だなんて!……母としてはドラコが離れていくようで寂しいけれど、それ以上に喜びが勝っているわ……!)ナルシッサは更に大粒の涙を流した。
(それなのに、こんなにも嬉しい知らせなのに、何故このタイミングでドラコがあの方のご命令を遂行しなければならないの?どうしてドラコにダンブルドアが殺せるとお思いなの?闇の帝王すら成し得ないことなのに?)
ナルシッサが完全に両手で顔を覆ってしまったものだから、ドラコは母を心配して寄り添った。
(……この子があの方のご命令を受けた時、とでもではないけれど私の口から『不可能だ』とは伝えられなかった……。この子が私たちのために折角やる気に満ちているのに、それを否定したが最後、ホグワーツに行く前にこの子を怖気づかせてしまうかもしれなかったから……)
ナルシッサは息子に背中をさすられても、むせび泣くのを我慢できなかった。
(だけど、どう考えても無理なものは無理なのよ。きっとあの方だってドラコが失敗すると分かっている筈。あの方がドラコを選んだのは、ルシウスが失敗したことへの復讐なんだわ……!だってあの方は私たちの前で表面上こそ取り繕っていたけれど、相当お怒りの時に見せる蔑みの雰囲気を強く纏っていた……。あの方は私が恐怖でご命令を拒否できないのをいいことに、甘い期待の言葉でドラコを誘惑したのよ。そして―――ドラコが成功できないと判断したその時には……闇の帝王は、この子を殺してしまうかもしれない……。これからこの子の将来に待っている筈の、沢山の幸せを奪ってしまう……)
ドラコは自分の恋人が誰なのかを打ち明けた途端に母が泣き出したものだから、彼女の心境がいまいち理解できずに戸惑った。
「母上、その……。ご存知かと思いますが、僕は四年生の終わりに父上から『僕の弱みになるような大切な人を作るな』ということを言われていました。それが僕のための言葉だということも理解していました。だから僕はこの一年弱の間、フォーラと心の距離を取ろうと何度も試みたんです。だけど僕にとってそれは無理なことでした……。何故なら、彼女はもうとっくに僕にとって特別な人になっていたんですから。だから、言いつけを守らなかった僕のことを母上が残念に思っていたとしても、こればっかりは譲れません」
するとナルシッサは顔を覆っていた両手をゆっくりと離し、何度も自身の目元の涙を拭ってドラコを見た。彼女は息子に無理に笑ってみせていた。
「いいんですよ……もういいんです。いつかはそんな日が来るかもしれないと、いえ、そうなれば良いのにと、私もルシウスも何年も思ってきたから……」
「そ……そうだったのですか?」ドラコが少々驚いた様子で尋ねた。
「ええ……貴方の言うとおりルシウスが貴方に『大切な人を作るな』とお願いしたのは、知ってのとおり貴方のお相手が誰であれ、今後二人のどちらかが戦いに巻き込まれて何かあった時に、少しでもお互いの心の傷が軽く済むようにしていてほしかったから。特にそのお相手がフォーラさんだった場合には、猶のことそれが難しくなったでしょうから……。それ程に死喰い人側でいることは、人との繋がりに深入りしない割り切りの良さが求められる……。だけど貴方には、もうすっかりそんなことは関係なく、彼女を守って貴方自身も生き抜くという強い気概があるのね?」
ナルシッサが見据えた息子の瞳は、すっかり覚悟を決めた色をしていた。
「ええ、おっしゃるとおりです。僕は父上や母上のためは勿論、彼女のためにも、必ずマルフォイの名声を取り戻します。もう誰にも後ろ指をさされないために」
息子の返答を受け、ナルシッサも弱々しかった表情の奥深くに決心の色を滲ませていた。そんなことに気付かないベラトリックスはとうとう二人の会話に水を差した。
「しかしまあ、お前たち一家が揃って入れ込んでいるなんて、それは一体どんな娘っ子なんだい?私はファントム夫妻のことは軽く把握しているが、是非一度娘の方もお目にかかりたいものだね。……とはいえドラコ、その娘はお前が死喰い人になったと知ったら、恐れをなしてお前から離れてしまうかもしれないよ。純血同士の貴重な婚姻の機会を逃すようなことがあってはならないんだからね」
「!ベラ、まだ今はドラコの将来を急かすようなことを言わないで。それから、このことは絶対にあの方へはお伝えしないで頂戴。まだ何も決まっていないのに後々状況が変わってしまったら、それこそあの方からどんなお仕置きが待っているか分からないわ」
ナルシッサの言葉にベラトリックスは少々不服そうな顔をしたが、「ご主人様には、当然今はまだお話しないさ」と言って妹を軽くあしらった。そしてベラトリックスはドラコに向き直った。
「しかしねドラコ、先に純血同士の結婚をした者として、私から一つ忠告だけはさせてもらうよ。お前は愛だの何だのという以前に、最終的にはその大層貴重な血を絶やさないことに賛同してくれる相手を選ばなくてはならないよ。何せお前はブラックとマルフォイという二つの優良な純血の家の間に生まれた、唯一の生き残りの男子なんだからね」
それを聞いたナルシッサは姉が息子に説教を垂れているのが気に食わないようだった。
「ベラ、よく言えたものね。あなたは結婚後、ロドルファスとの間に子をもうけようとせず、闇の帝王にばかり愛情を向けていたくせに」