3. リーマス
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さてその日のフォーラは一日、これまで以上にいつもどおりの自分に見えるように振る舞った。しかし、頭の片隅には今朝ルーピンと話した内容が何度も思い出されては消えていた。みんなで埃だらけの屋敷を住めるようにするためにホールの掃除をしていても、ふとした瞬間に手が止まってしまったりした。
ジョージはフォーラに大丈夫かと声を掛けようかと何度も考えたが、その度に今朝見た玄関での二人を思い出して言葉が憚られた。あの時、ハーマイオニーが食堂から出てくる直前にジョージが上階からホールに下りてくると、ルーピンが涙を流すフォーラへの抱擁を解いているところだった。
ジョージはそれを見ただけでフォーラがこれまでずっと苦しんでいたのだと理解した。そして何より、彼女にああしていたのが自分でないのを見せつけられた気分だった。彼女がこの館へやって来た日に自分と彼女の二人だけで話した際、彼女はほんの少しの涙こそ見せたものの、比較的気丈に振舞っていた。しかし、ああして彼女の不安を引き出せているルーピンを見ていると、明らかに自分と彼とでは彼女に与える影響や本音の聞き出し方が違うのだろうと思い知らされた。
『みんなといれば、きっと気持ちの整理がつく気がする。』
フォーラは自分と二人きりの時にそう話してくれた。今の自分には、その言葉を信じて接するしか彼女にしてやれることはないのだろう。それ以上にお節介をしたいと思っているのに反して、彼女はきっと自分には多くを望んでいないのだとジョージは思った。
その日の夕食前にルーピンは館へ戻ってきた。彼はどこかで買い物でもしてきたのか片手に茶色の薄い紙袋を抱えていた。夕食後、彼はフォーラの正面の席にやってくると、その紙袋の中身を取り出して彼女に渡した。
「今朝のお願いのことだけど、仕事の帰りに本屋に寄っていてね。どれをお願いしようか迷ったんだ」
そう言いながらルーピンは嬉しそうにケーキや焼き菓子のレシピが載った本をパラパラとめくった。
「先生、あのご発言は本気だったんですね。」フォーラは少しばかり驚いて尋ねた。
すると彼は至極真面目な顔で「勿論!」と頷いた。
「僕としては、ほら、このチョコレートケーキとかが最高だな。あとはこっちのチョコレートサンドなんかもいいね。それからチョコレートプディングなんかも」
目を輝かせてページをめくるルーピンの姿にフォーラが気を取られていると、二人の隣からジニーの手が伸びてきて、ルーピンの手の動きを制した。
「ルーピンったらチョコレートばっかり。私、このアップルパイが気になるわ!」
すると今度はそれを聞きつけたウィーズリー家の双子とロンが、ルーピンの後ろからグイとこちらを覗き見た。
「フォーラ、お菓子を作るのか?」
「おいおい、そういう事は早く教えてくれなくっちゃ」
フレッドとジョージはフォーラに自分たちの好物を語った。みんながワイワイと話す中、フォーラは最初こそ戸惑っていたものの、次第に笑顔を見せて会話を楽しんだ。
「フォーラ、これとかどう?ちゃんとルーピンの好きなチョコレートも入ってるし」ハーマイオニーが尋ねた。
「ええ!とっても美味しそう。作ってみたいわ!」
その日、みんながすっかり就寝準備で解散してしまった頃、フォーラはルーピンの部屋の扉をノックした。部屋の中から現れた彼は突然の来客に少々驚いた様子だったが、快い表情で挨拶して尋ねた。
「やあフォーラ。どうしたんだい?」
「あの、先生。今お時間よろしいですか?今朝の件で少しお話があって。」
ルーピンはこんなに早くフォーラが自らその話をしにくるとは思っていなかったが、静かに頷いた。
「そうか。丁度暇していたところだよ。中で話そう」
フォーラがこくりと頷いて部屋に入った時、ふとルーピンはこの狭い空間に彼女と二人きりだと気付いたが、軽く咳払いをして扉を閉めた。彼女を椅子に座らせるとルーピンはベッドに腰掛けて彼女と向かい合った。すると彼女がおもむろに話しだした。
「私……今朝の、先生の提案どおりにしてみようと思います。」
「!本当に?大丈夫かい」
「大丈夫かは、正直まだ分かりません。だけど今日、先生とお話してから私自身がどうしたいのかを沢山考えて……。だけど結局、答えは出ませんでした。」フォーラはそこで一旦言葉を止めたが、少しの間を置いてから続けた。
「でも、今日の夕食時に先生やみんなが楽しそうにしているのを見て、こんなにもみんなが明るく接してくれているのに、自分だけこのままじゃいけないって、私も心から一緒に楽しく過ごせるようになりたいって、そう思ったんです。だから……。」
フォーラの言葉を真剣に聞いていたルーピンは、彼女が言い終えると微笑みを向けた。
「フォーラ、信じてくれてありがとう。きっと上手くいく。私やみんなが付いている。きっと、純血とのしがらみを解決できる」
「……はい。」フォーラはそのように返答しつつも、心の片隅では『それでも結局今の複雑な感情が解消されなかったら?』と自分自身に疑問を投げ掛けた。しかし彼女はルーピンから向けられた笑顔によって、無意識のうちにその疑問をどこかへやってしまっていた。
ルーピンは先程よりも柔らかい声色でまっすぐ言葉を発した。
「フォーラ。ご両親は、君を純血主義の者たちと密接な環境で過ごさせたことを、本当に申し訳なく思っていらっしゃった」
「!」フォーラは返す言葉に戸惑った。ルーピンはそんな彼女を見てベッドから立ち上がると、椅子に座る彼女の前に屈んで、その両手を自身の手で包むようにして優しく笑った。
「私は君の疎外感がどういうものか少なからず分かる。そして、それは必ず時間が解決してくれる。それだけは確かだ。ただ、私としては君には時間に任せず少しでも早く元気になってほしいと思っているし、フォーラのご両親だってその気持ちは同じだよ」
フォーラは『両親だって同じ』と聞いた途端、心の中にモヤモヤとした気持ちを抱えた。それが何なのか言い表すのは難しかったが、思わず彼女はルーピンから視線を逸らしてしまった。何となくだが、その言葉の後には自分の欲しくない言葉が続く気がした。しかしルーピンには彼女の反応の理由が分かった。
「フォーラ、大丈夫だよ。何も『ご両親を責めるな』とか、『ご両親のためにも』だなんて言いたいわけじゃない」
「えっ」フォーラは困惑した。まるで、自分の心の奥に閉ざしている部分をルーピンにノックされたかのようだったからだ。
ジョージはフォーラに大丈夫かと声を掛けようかと何度も考えたが、その度に今朝見た玄関での二人を思い出して言葉が憚られた。あの時、ハーマイオニーが食堂から出てくる直前にジョージが上階からホールに下りてくると、ルーピンが涙を流すフォーラへの抱擁を解いているところだった。
ジョージはそれを見ただけでフォーラがこれまでずっと苦しんでいたのだと理解した。そして何より、彼女にああしていたのが自分でないのを見せつけられた気分だった。彼女がこの館へやって来た日に自分と彼女の二人だけで話した際、彼女はほんの少しの涙こそ見せたものの、比較的気丈に振舞っていた。しかし、ああして彼女の不安を引き出せているルーピンを見ていると、明らかに自分と彼とでは彼女に与える影響や本音の聞き出し方が違うのだろうと思い知らされた。
『みんなといれば、きっと気持ちの整理がつく気がする。』
フォーラは自分と二人きりの時にそう話してくれた。今の自分には、その言葉を信じて接するしか彼女にしてやれることはないのだろう。それ以上にお節介をしたいと思っているのに反して、彼女はきっと自分には多くを望んでいないのだとジョージは思った。
その日の夕食前にルーピンは館へ戻ってきた。彼はどこかで買い物でもしてきたのか片手に茶色の薄い紙袋を抱えていた。夕食後、彼はフォーラの正面の席にやってくると、その紙袋の中身を取り出して彼女に渡した。
「今朝のお願いのことだけど、仕事の帰りに本屋に寄っていてね。どれをお願いしようか迷ったんだ」
そう言いながらルーピンは嬉しそうにケーキや焼き菓子のレシピが載った本をパラパラとめくった。
「先生、あのご発言は本気だったんですね。」フォーラは少しばかり驚いて尋ねた。
すると彼は至極真面目な顔で「勿論!」と頷いた。
「僕としては、ほら、このチョコレートケーキとかが最高だな。あとはこっちのチョコレートサンドなんかもいいね。それからチョコレートプディングなんかも」
目を輝かせてページをめくるルーピンの姿にフォーラが気を取られていると、二人の隣からジニーの手が伸びてきて、ルーピンの手の動きを制した。
「ルーピンったらチョコレートばっかり。私、このアップルパイが気になるわ!」
すると今度はそれを聞きつけたウィーズリー家の双子とロンが、ルーピンの後ろからグイとこちらを覗き見た。
「フォーラ、お菓子を作るのか?」
「おいおい、そういう事は早く教えてくれなくっちゃ」
フレッドとジョージはフォーラに自分たちの好物を語った。みんながワイワイと話す中、フォーラは最初こそ戸惑っていたものの、次第に笑顔を見せて会話を楽しんだ。
「フォーラ、これとかどう?ちゃんとルーピンの好きなチョコレートも入ってるし」ハーマイオニーが尋ねた。
「ええ!とっても美味しそう。作ってみたいわ!」
その日、みんながすっかり就寝準備で解散してしまった頃、フォーラはルーピンの部屋の扉をノックした。部屋の中から現れた彼は突然の来客に少々驚いた様子だったが、快い表情で挨拶して尋ねた。
「やあフォーラ。どうしたんだい?」
「あの、先生。今お時間よろしいですか?今朝の件で少しお話があって。」
ルーピンはこんなに早くフォーラが自らその話をしにくるとは思っていなかったが、静かに頷いた。
「そうか。丁度暇していたところだよ。中で話そう」
フォーラがこくりと頷いて部屋に入った時、ふとルーピンはこの狭い空間に彼女と二人きりだと気付いたが、軽く咳払いをして扉を閉めた。彼女を椅子に座らせるとルーピンはベッドに腰掛けて彼女と向かい合った。すると彼女がおもむろに話しだした。
「私……今朝の、先生の提案どおりにしてみようと思います。」
「!本当に?大丈夫かい」
「大丈夫かは、正直まだ分かりません。だけど今日、先生とお話してから私自身がどうしたいのかを沢山考えて……。だけど結局、答えは出ませんでした。」フォーラはそこで一旦言葉を止めたが、少しの間を置いてから続けた。
「でも、今日の夕食時に先生やみんなが楽しそうにしているのを見て、こんなにもみんなが明るく接してくれているのに、自分だけこのままじゃいけないって、私も心から一緒に楽しく過ごせるようになりたいって、そう思ったんです。だから……。」
フォーラの言葉を真剣に聞いていたルーピンは、彼女が言い終えると微笑みを向けた。
「フォーラ、信じてくれてありがとう。きっと上手くいく。私やみんなが付いている。きっと、純血とのしがらみを解決できる」
「……はい。」フォーラはそのように返答しつつも、心の片隅では『それでも結局今の複雑な感情が解消されなかったら?』と自分自身に疑問を投げ掛けた。しかし彼女はルーピンから向けられた笑顔によって、無意識のうちにその疑問をどこかへやってしまっていた。
ルーピンは先程よりも柔らかい声色でまっすぐ言葉を発した。
「フォーラ。ご両親は、君を純血主義の者たちと密接な環境で過ごさせたことを、本当に申し訳なく思っていらっしゃった」
「!」フォーラは返す言葉に戸惑った。ルーピンはそんな彼女を見てベッドから立ち上がると、椅子に座る彼女の前に屈んで、その両手を自身の手で包むようにして優しく笑った。
「私は君の疎外感がどういうものか少なからず分かる。そして、それは必ず時間が解決してくれる。それだけは確かだ。ただ、私としては君には時間に任せず少しでも早く元気になってほしいと思っているし、フォーラのご両親だってその気持ちは同じだよ」
フォーラは『両親だって同じ』と聞いた途端、心の中にモヤモヤとした気持ちを抱えた。それが何なのか言い表すのは難しかったが、思わず彼女はルーピンから視線を逸らしてしまった。何となくだが、その言葉の後には自分の欲しくない言葉が続く気がした。しかしルーピンには彼女の反応の理由が分かった。
「フォーラ、大丈夫だよ。何も『ご両親を責めるな』とか、『ご両親のためにも』だなんて言いたいわけじゃない」
「えっ」フォーラは困惑した。まるで、自分の心の奥に閉ざしている部分をルーピンにノックされたかのようだったからだ。