3. リーマス
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フォーラは恥ずかしそうに彼を見上げた。
「え!・・えっと、その。お台所を使っても、大丈夫なら・・。」
すぐにルーピンはその旨をモリーに伝えると、もちろん彼女からはオーケーの返事が返って来た。
「ありがとう」
ルーピンは笑顔になると、「いってきます」と残してアーサーと玄関ホールへ向かって行った。すると彼らが食堂から出て扉を閉めたすぐ後に、モリーがテーブルを見てあっと息を呑んだ。
「リーマスったら、お昼のサンドイッチをすっかり忘れているわ!」
テーブルを見ると、たしかにアーサーとルーピンにそれぞれ渡された紙袋のうち一つだけが取り残されていた。
「私、渡してきます」
紙袋の一番近くにいたフォーラがそれを手に取って急いで玄関へと向かった。
「ルーピン先生」
フォーラはアーサーとルーピンがちょうど屋敷の玄関扉を開いたところに間に合った。彼女はシリウスの母親の肖像画を起こしてしまわないよう気をつけつつ彼に声をかけた。
「?フォーラ、どうしたんだい?」
「あの、これを忘れていました。」
お昼の入った紙袋を差し出せば、ルーピンは驚いた顔をした後に申し訳なさそうに笑顔を見せた。
「いやあ、これはすまなかったね」
フォーラは微笑んだ。
「いえ、間に合ってよかったです。」
「ありがとう。助かったよ。
それじゃ、また今夜」
ルーピンは玄関を出てすぐの階段にいるアーサーを追いかけようと踵を返したーーーしかし少しの間その足を止めたかと思うと、彼はアーサーに声をかけた。
「アーサー、すまないが先に行っていてくれないか。フォーラに用があるのを忘れていてね」
「ああ、わかった。それじゃあまた後で落ち合うことにしよう。私の事務所を訪ねてきてくれないか」
「そうするよ」
アーサーが玄関を離れ、ルーピンは扉を静かに閉じると、きょとんとした様子のフォーラに向き直った。
「急にすまない、少し気になったことがあって」
「何でしょう?」
ルーピンは少し間を置いてから、静かに話した。
「フォーラ、気のせいだったら申し訳ないんだが・・。
君はご両親や自分の、特に血の事で相当思い悩んでいるんじゃないかと思って。」
「!・・・」
彼にとってこれは鎌をかけたも同然な質問だった。気のせいならそれで構わなかった。しかしフォーラは何と答えればいいかわからない様子だった。ルーピンは彼女の無言を肯定と捉えて続けた。
「ここ数日の君を見ていてそう感じていたんだ。どうしても気になってしまって」
フォーラはざわざわとした心でルーピンの瞳から視線を下ろし、無意識のうちに自身の瞳を揺らしていた。「そんなことありませんよ。」その一言は口から突いて出てこなかった。朝食前に彼と会った時には上手くごまかせたと思っていたのに。彼にはきっと全てお見通しなのだろう。私が純血主義に対して猫を被っていたことも。
「・・・わ、私・・・。」
彼女は少しの間俯いた後、その視線をルーピンに戻すと小声ではっきりと伝えた。
「自分で何とかできます。皆んなには大丈夫と伝えているんです。
私が自分で何とかしなくちゃいけないから・・・」
ルーピンはついさっきまでフォーラの見せていた微笑みがみるみるうちに迷いの色に崩れるのを見た。ひた隠しにしていたのに、ルーピンに気づかれたことが恥ずかしくて仕方がない。次第に彼女は彼の瞳を見れなくなり俯いた。そして気が付けば、何故か彼女はここに来た初日にジョージや皆んなに話さなかった事をルーピンに打ち明けていた。
彼女は呟くように漏らした声を震わせていた。
「私が純血じゃない事をこんなに気にしてるなんて、あんなに純血主義を嫌っていたくせに、
こ、こんなに狡いなんて、先生にも、皆んなにも知られたくない・・・。」
ルーピンはフォーラが相当思い悩んでいたと分かって少しばかり驚いたが、直ぐに優しく頷いた。
「フォーラ、突然驚かせてすまない。大丈夫だ。私はフォーラが狡いだなんて思わないよ。それにもちろん誰にも言うつもりもない。
ただ、私は君に一つお願いがあって声をかけたんだ」
フォーラにはルーピンが何を言おうとしているのかわからなかった。彼は少しだけ腰を曲げてフォーラの目線まで屈むと、彼女の手を取り小さく息を吸ってから尋ねた。
「フォーラ、ここにいる間だけ、ご両親やスリザリンの事を忘れてみないか」
「え・・・?」
突然の提案に困惑して当然だと思った。ルーピンは続けた。
「忘れると言うか、考えないようにすると言った方が正しいかもしれない。
もちろん難しい事だと思う。けれど、もし君が今、自分で何をすればいいかわからなくなっているなら、
だったら一度、全部考えるのをやめてみてほしいと思ったんだ」
「で、でも、そんなこと」
「フォーラ、そうすることで気づける事だってある」
彼は彼女の言葉を遮ってそう言った。
自分が厳しい事を言っているのはわかっていたが、少しでもフォーラの辛い様子が和らげばと思っての提案だった。逃げるだけで何の解決があるわけでもない。ただ、今の彼女がずっと同じ様に悩み続けるよりは・・・。そう思った。
フォーラは不安に駆られた。本当にルーピンの言う通りにしていいのだろうか?悩んできちんと向き合って、やっと解決できることではないのだろうか?
だがそう思う反面、ホグワーツ城で両親と自分の関係を知ってから今まで、ずっと、毎日悩んでいた。なのに自分は何も解決できていない。
それなのに、まだこれ以上悩み続けて意味があるのだろうか?
「え!・・えっと、その。お台所を使っても、大丈夫なら・・。」
すぐにルーピンはその旨をモリーに伝えると、もちろん彼女からはオーケーの返事が返って来た。
「ありがとう」
ルーピンは笑顔になると、「いってきます」と残してアーサーと玄関ホールへ向かって行った。すると彼らが食堂から出て扉を閉めたすぐ後に、モリーがテーブルを見てあっと息を呑んだ。
「リーマスったら、お昼のサンドイッチをすっかり忘れているわ!」
テーブルを見ると、たしかにアーサーとルーピンにそれぞれ渡された紙袋のうち一つだけが取り残されていた。
「私、渡してきます」
紙袋の一番近くにいたフォーラがそれを手に取って急いで玄関へと向かった。
「ルーピン先生」
フォーラはアーサーとルーピンがちょうど屋敷の玄関扉を開いたところに間に合った。彼女はシリウスの母親の肖像画を起こしてしまわないよう気をつけつつ彼に声をかけた。
「?フォーラ、どうしたんだい?」
「あの、これを忘れていました。」
お昼の入った紙袋を差し出せば、ルーピンは驚いた顔をした後に申し訳なさそうに笑顔を見せた。
「いやあ、これはすまなかったね」
フォーラは微笑んだ。
「いえ、間に合ってよかったです。」
「ありがとう。助かったよ。
それじゃ、また今夜」
ルーピンは玄関を出てすぐの階段にいるアーサーを追いかけようと踵を返したーーーしかし少しの間その足を止めたかと思うと、彼はアーサーに声をかけた。
「アーサー、すまないが先に行っていてくれないか。フォーラに用があるのを忘れていてね」
「ああ、わかった。それじゃあまた後で落ち合うことにしよう。私の事務所を訪ねてきてくれないか」
「そうするよ」
アーサーが玄関を離れ、ルーピンは扉を静かに閉じると、きょとんとした様子のフォーラに向き直った。
「急にすまない、少し気になったことがあって」
「何でしょう?」
ルーピンは少し間を置いてから、静かに話した。
「フォーラ、気のせいだったら申し訳ないんだが・・。
君はご両親や自分の、特に血の事で相当思い悩んでいるんじゃないかと思って。」
「!・・・」
彼にとってこれは鎌をかけたも同然な質問だった。気のせいならそれで構わなかった。しかしフォーラは何と答えればいいかわからない様子だった。ルーピンは彼女の無言を肯定と捉えて続けた。
「ここ数日の君を見ていてそう感じていたんだ。どうしても気になってしまって」
フォーラはざわざわとした心でルーピンの瞳から視線を下ろし、無意識のうちに自身の瞳を揺らしていた。「そんなことありませんよ。」その一言は口から突いて出てこなかった。朝食前に彼と会った時には上手くごまかせたと思っていたのに。彼にはきっと全てお見通しなのだろう。私が純血主義に対して猫を被っていたことも。
「・・・わ、私・・・。」
彼女は少しの間俯いた後、その視線をルーピンに戻すと小声ではっきりと伝えた。
「自分で何とかできます。皆んなには大丈夫と伝えているんです。
私が自分で何とかしなくちゃいけないから・・・」
ルーピンはついさっきまでフォーラの見せていた微笑みがみるみるうちに迷いの色に崩れるのを見た。ひた隠しにしていたのに、ルーピンに気づかれたことが恥ずかしくて仕方がない。次第に彼女は彼の瞳を見れなくなり俯いた。そして気が付けば、何故か彼女はここに来た初日にジョージや皆んなに話さなかった事をルーピンに打ち明けていた。
彼女は呟くように漏らした声を震わせていた。
「私が純血じゃない事をこんなに気にしてるなんて、あんなに純血主義を嫌っていたくせに、
こ、こんなに狡いなんて、先生にも、皆んなにも知られたくない・・・。」
ルーピンはフォーラが相当思い悩んでいたと分かって少しばかり驚いたが、直ぐに優しく頷いた。
「フォーラ、突然驚かせてすまない。大丈夫だ。私はフォーラが狡いだなんて思わないよ。それにもちろん誰にも言うつもりもない。
ただ、私は君に一つお願いがあって声をかけたんだ」
フォーラにはルーピンが何を言おうとしているのかわからなかった。彼は少しだけ腰を曲げてフォーラの目線まで屈むと、彼女の手を取り小さく息を吸ってから尋ねた。
「フォーラ、ここにいる間だけ、ご両親やスリザリンの事を忘れてみないか」
「え・・・?」
突然の提案に困惑して当然だと思った。ルーピンは続けた。
「忘れると言うか、考えないようにすると言った方が正しいかもしれない。
もちろん難しい事だと思う。けれど、もし君が今、自分で何をすればいいかわからなくなっているなら、
だったら一度、全部考えるのをやめてみてほしいと思ったんだ」
「で、でも、そんなこと」
「フォーラ、そうすることで気づける事だってある」
彼は彼女の言葉を遮ってそう言った。
自分が厳しい事を言っているのはわかっていたが、少しでもフォーラの辛い様子が和らげばと思っての提案だった。逃げるだけで何の解決があるわけでもない。ただ、今の彼女がずっと同じ様に悩み続けるよりは・・・。そう思った。
フォーラは不安に駆られた。本当にルーピンの言う通りにしていいのだろうか?悩んできちんと向き合って、やっと解決できることではないのだろうか?
だがそう思う反面、ホグワーツ城で両親と自分の関係を知ってから今まで、ずっと、毎日悩んでいた。なのに自分は何も解決できていない。
それなのに、まだこれ以上悩み続けて意味があるのだろうか?