2. いい子のふり
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「どんな感じの方なの?」その問いに、ハーマイオニーは悩ましげに言葉を選びながら言った。
「えーと、大きくて、黒くて……まあ兎に角、人相はあまり良くないかもしれないわ。でも私たちの味方なの。だから落ち着いて聞いてね、彼は」
その時、部屋の扉からコンコンと鈍い音が二回響いたため、その場にいたみんなが飛び上がった。ガチャリ音がして扉が開くとモリーが顔を覗かせた。その向こうから、階下の方で微かに人々の囁き合う声が聞こえてきた。
「みんな、会議が終わりましたよ。もう少ししたらお夕食の準備を始めますからね。何人かお手伝いに来てちょうだい。ああ、フォーラはゆっくりくつろいでいて構わないのよ。今日はあなたの歓迎会も兼ねていますからね」
「いっいいえ、あの、私も行きます!」
「ありがとう。それじゃあ下の人混みが落ち着いた頃にいらっしゃいな。ホールでは声を低くしてね。面倒なことになってしまうから」
モリーがそう言って扉を閉めようとした時だった。玄関の方で誰かが何かを倒した鈍い音が響き渡ってきた。するとそのすぐ後に、耳をつんざくような血が凍る恐ろしい叫び声が響き渡った。フォーラはびっくりしてその場に固まってしまったが、他のみんなはモリーが急いで下の階に駆けていくのをやれやれと慣れた様子で見送った。部屋の扉が閉められても、その向こうから老女の叫び声が引き続きはっきりと聞こえた。
『穢らわしい!クズども!塵芥 の輩 !雑種、異形、出来損ないども。ここから立ち去れ!我が先祖の館を、よくも汚してくれたな―――』
そして階下から別の怒鳴り声が老女の叫びに押し殺されながらも微かに聞こえ、やがて静寂が訪れた。フォーラはまだ固まったままだったが、ジョージが彼女の目の前で手をひらひらと動かして意識をこちらに引き戻した。
「あ……えっと、今のは一体……?」フォーラの問いにジョージが回答した。
「ここの家主の母親の肖像画さ。純血主義の怨念みたいな絵なんだ。ホールで物音をたてると、あんな感じになるから気をつけろ」
一行は静かに階下に向かった。フォーラがその道中で螺旋階段の手摺から下を見やると、彼女が両親と別れたホールの床が目に入り、擦り切れたカーペットが敷かれているのが見えた。そして階段を下りて二つの踊り場を過ぎ、しなびた屋敷しもべ妖精の首の飾り板が並ぶ壁の前を通り過ぎた。扉という扉のノブは全て蛇をかたどっていたし、装飾品は正直言って趣味が悪かった。フォーラは通路を通り過ぎるたび、ここの家主に上手く挨拶できる自信がなくなっていった。
みんながホールの一番奥にある食堂と騎士団の会議室を兼ね備えた部屋へ入る頃には、騎士団のメンバーはとっくに玄関から出ていってしまった後だった。フォーラは扉を通る際、一度だけホールの方を振り返った。彼女は既に両親の姿がないことに安堵しつつも、そんなことを感じている自分に罪悪感が押し寄せて複雑な気持ちになった。
フォーラが視線を食堂に戻すと、中は長テーブルと長椅子が並んでおり、この屋敷の中で一番綺麗な空間のようだった。そして少しもしない間に彼女の目にはある人物の姿が飛び込んできた。彼女のすぐそばに並んだ長テーブルにもたれて誰かと話すその人は、こちらに気が付くと驚いた様子で反射的にテーブルから腰を離した。
「……フォーラ?」
名前を呼ばれた彼女も随分驚いた表情をしていて、それ故に直ぐには声が出てこなかった。しかし彼女はみるみるうちに自然と笑顔を浮かべ、彼の名を呼んだ。
「ルーピン先生!」
最後に彼に会ってからもう丸一年が過ぎていた。大好きな先生とこうして一年振りに会えた嬉しさで、フォーラはすぐさま彼に掛け寄って挨拶の抱擁をした。
「っ!」ルーピンが思わず声にならない声を漏らした。フォーラは彼が突然の事態に固まってしまっているなんて気付かず、笑顔のまま抱擁を解いて彼を見上げた。ジョージもロンも、まさかフォーラがルーピンに抱きつくなんて思ってもみなかったため、正直気が気でなかった。
「まさかお会いできるなんて、本当に、お久しぶりです!」
ルーピンとフォーラの背は頭一つ分くらい違っていた。ルーピンはそんな彼女を間近に見て、一年前に比べて彼女と自分の目線が近くなったと思った。それに……。
「やあ、フォーラ!そうか、君が来るのは今日だったね。久しぶりに会えて本当に嬉しいよ。楽しみにしていたんだ」
ルーピンは慌てて言葉を取り繕ったが、自分の発言で彼女の表情がさらに明るくなったのを見るに、何も気取られなかったのだと分かって安堵した。自分がホグワーツに居た頃に見た彼女と、今の彼女は随分と印象が違っていた。自分の前では恥ずかしがり屋だった姿しか知らなくて、彼女がこの一年で随分成長したのだと直ぐに分かった。ルーピンはそんな彼女を見て自然と微笑んだ。そして不思議そうにこちらを見上げる彼女にルーピンは目を細めた。
「以前より随分と雰囲気が大人っぽくなったし、明るくなった。フォーラ、綺麗になったね。」
そう言って彼はフォーラの頭に自身の手のひらをポンと優しく数回置いた。少し恥ずかしがりながら微笑む彼女を見た時、ルーピンはハッと我に返ってその手を自然な動作で引っ込めた。周りを全く気にしていない自分に今更気付いたのだ。しかし幸い、直ぐにハーマイオニーとジニーが割って入ってきたお陰で、彼は周りにまさかフォーラが挨拶してきた瞬間から既に彼女に見惚れていたなんて思われずに済んだ。
「ルーピン、私たちだって見ない間に綺麗になったわ!」
「私たちに会った時にも伝えてくれていたら百点だったのに」
「ごめんごめん、勿論そう思うよ。あの時はみんなバタバタしていたから、言いそびれてしまったね」
そう言ってルーピンがジニーとハーマイオニーの頭もフォーラ同様に撫でると、二人は満足そうな表情を見せた。すると、先程までルーピンと話をしていた長身で肩幅の広い黒人の魔法使いが、ルーピンに深みのある落ち着いた声色で話し掛けた。片耳につけた金色のリングピアスがキラッと光り、彼のスキンヘッドと肌の色によく似合っていた。
「えーと、大きくて、黒くて……まあ兎に角、人相はあまり良くないかもしれないわ。でも私たちの味方なの。だから落ち着いて聞いてね、彼は」
その時、部屋の扉からコンコンと鈍い音が二回響いたため、その場にいたみんなが飛び上がった。ガチャリ音がして扉が開くとモリーが顔を覗かせた。その向こうから、階下の方で微かに人々の囁き合う声が聞こえてきた。
「みんな、会議が終わりましたよ。もう少ししたらお夕食の準備を始めますからね。何人かお手伝いに来てちょうだい。ああ、フォーラはゆっくりくつろいでいて構わないのよ。今日はあなたの歓迎会も兼ねていますからね」
「いっいいえ、あの、私も行きます!」
「ありがとう。それじゃあ下の人混みが落ち着いた頃にいらっしゃいな。ホールでは声を低くしてね。面倒なことになってしまうから」
モリーがそう言って扉を閉めようとした時だった。玄関の方で誰かが何かを倒した鈍い音が響き渡ってきた。するとそのすぐ後に、耳をつんざくような血が凍る恐ろしい叫び声が響き渡った。フォーラはびっくりしてその場に固まってしまったが、他のみんなはモリーが急いで下の階に駆けていくのをやれやれと慣れた様子で見送った。部屋の扉が閉められても、その向こうから老女の叫び声が引き続きはっきりと聞こえた。
『穢らわしい!クズども!
そして階下から別の怒鳴り声が老女の叫びに押し殺されながらも微かに聞こえ、やがて静寂が訪れた。フォーラはまだ固まったままだったが、ジョージが彼女の目の前で手をひらひらと動かして意識をこちらに引き戻した。
「あ……えっと、今のは一体……?」フォーラの問いにジョージが回答した。
「ここの家主の母親の肖像画さ。純血主義の怨念みたいな絵なんだ。ホールで物音をたてると、あんな感じになるから気をつけろ」
一行は静かに階下に向かった。フォーラがその道中で螺旋階段の手摺から下を見やると、彼女が両親と別れたホールの床が目に入り、擦り切れたカーペットが敷かれているのが見えた。そして階段を下りて二つの踊り場を過ぎ、しなびた屋敷しもべ妖精の首の飾り板が並ぶ壁の前を通り過ぎた。扉という扉のノブは全て蛇をかたどっていたし、装飾品は正直言って趣味が悪かった。フォーラは通路を通り過ぎるたび、ここの家主に上手く挨拶できる自信がなくなっていった。
みんながホールの一番奥にある食堂と騎士団の会議室を兼ね備えた部屋へ入る頃には、騎士団のメンバーはとっくに玄関から出ていってしまった後だった。フォーラは扉を通る際、一度だけホールの方を振り返った。彼女は既に両親の姿がないことに安堵しつつも、そんなことを感じている自分に罪悪感が押し寄せて複雑な気持ちになった。
フォーラが視線を食堂に戻すと、中は長テーブルと長椅子が並んでおり、この屋敷の中で一番綺麗な空間のようだった。そして少しもしない間に彼女の目にはある人物の姿が飛び込んできた。彼女のすぐそばに並んだ長テーブルにもたれて誰かと話すその人は、こちらに気が付くと驚いた様子で反射的にテーブルから腰を離した。
「……フォーラ?」
名前を呼ばれた彼女も随分驚いた表情をしていて、それ故に直ぐには声が出てこなかった。しかし彼女はみるみるうちに自然と笑顔を浮かべ、彼の名を呼んだ。
「ルーピン先生!」
最後に彼に会ってからもう丸一年が過ぎていた。大好きな先生とこうして一年振りに会えた嬉しさで、フォーラはすぐさま彼に掛け寄って挨拶の抱擁をした。
「っ!」ルーピンが思わず声にならない声を漏らした。フォーラは彼が突然の事態に固まってしまっているなんて気付かず、笑顔のまま抱擁を解いて彼を見上げた。ジョージもロンも、まさかフォーラがルーピンに抱きつくなんて思ってもみなかったため、正直気が気でなかった。
「まさかお会いできるなんて、本当に、お久しぶりです!」
ルーピンとフォーラの背は頭一つ分くらい違っていた。ルーピンはそんな彼女を間近に見て、一年前に比べて彼女と自分の目線が近くなったと思った。それに……。
「やあ、フォーラ!そうか、君が来るのは今日だったね。久しぶりに会えて本当に嬉しいよ。楽しみにしていたんだ」
ルーピンは慌てて言葉を取り繕ったが、自分の発言で彼女の表情がさらに明るくなったのを見るに、何も気取られなかったのだと分かって安堵した。自分がホグワーツに居た頃に見た彼女と、今の彼女は随分と印象が違っていた。自分の前では恥ずかしがり屋だった姿しか知らなくて、彼女がこの一年で随分成長したのだと直ぐに分かった。ルーピンはそんな彼女を見て自然と微笑んだ。そして不思議そうにこちらを見上げる彼女にルーピンは目を細めた。
「以前より随分と雰囲気が大人っぽくなったし、明るくなった。フォーラ、綺麗になったね。」
そう言って彼はフォーラの頭に自身の手のひらをポンと優しく数回置いた。少し恥ずかしがりながら微笑む彼女を見た時、ルーピンはハッと我に返ってその手を自然な動作で引っ込めた。周りを全く気にしていない自分に今更気付いたのだ。しかし幸い、直ぐにハーマイオニーとジニーが割って入ってきたお陰で、彼は周りにまさかフォーラが挨拶してきた瞬間から既に彼女に見惚れていたなんて思われずに済んだ。
「ルーピン、私たちだって見ない間に綺麗になったわ!」
「私たちに会った時にも伝えてくれていたら百点だったのに」
「ごめんごめん、勿論そう思うよ。あの時はみんなバタバタしていたから、言いそびれてしまったね」
そう言ってルーピンがジニーとハーマイオニーの頭もフォーラ同様に撫でると、二人は満足そうな表情を見せた。すると、先程までルーピンと話をしていた長身で肩幅の広い黒人の魔法使いが、ルーピンに深みのある落ち着いた声色で話し掛けた。片耳につけた金色のリングピアスがキラッと光り、彼のスキンヘッドと肌の色によく似合っていた。