24. I hope you are safe. (完)
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それからのハリーは鬱々とした気持ちを晴らすべく外へ出た。しかし校庭にいる生徒たちから熱心な視線を向けられたり、英雄のように扱われたりして落ち着かなかった。そのため彼は逃げるようにハグリッドの小屋を訪れて幾らか会話を弾ませたのだが、気分が良くなることはなかった。彼は何だかその場に居づらくなってしまい、今度は独りで湖の畔を歩くことにした。
ハリーは心が落ち着かなかった。最も信頼していたシリウスを亡くしてしまい、それが自分をきっかけにして起こったことであるのを随分後悔していた。加えて、戦いの後にダンブルドアから聞かされた話もハリーの心を抉っていた。ハリーとヴォルデモートのどちらか一方が生きる限り、もう一方が死ぬ。ハリーとダンブルドアのみが知る予言だ。
神秘部に保管されていたのは球体の形をした大量の『預言』の記録だった。その一つ一つが誰かに関する預言で、本人のみが保管棚から取り出せるよう管理されていた。そしてその中の一つはハリーに関するもので、ヴォルデモートはそれを唯一持ち出せるハリーを誘い出し、預言の内容を聞こうと企てていたのだった。
しかし先日の戦いでハリーに関する預言の記録は割れてしまい、結果としてその場の誰も予言の内容を聞くことはできなかった。ただしダンブルドアだけは、その昔に預言の内容を予見者から直接聞かされていた。ハリーとヴォルデモートはどちらかの手に掛かって死なねばならないということを。
ハリーはシリウスの死を受け入れられない内に、ダンブルドアからそのショッキングな予言の内容を伝えられ、今も尚心を落ち着けられずにいた。そのためハリーは、魔法省で何があったのかという話題を他の生徒から聞かれないように避けたし、かといって一人になるとシリウスの死や自分に課せられた宿命を考えてしまうという悪循環を繰り返していた。
ハリーは湖の岸辺にある低木林を見つけ、これ以上誰かにジロジロ見られないためにその陰に座ろうと足を踏み入れた。
「!」
するとそこには何と先客がいた。ハリーの視線の先にはフォーラが膝を抱えるようにして座っていた。彼女は手元の羊皮紙をじっと眺めていて、ハリーがやって来たことに気付いていないようだった。
ハリーはフォーラに声を掛けるか迷った。彼女との会話は自然とシリウスに関することになってしまうだろう。彼は今誰かとあまりシリウスの話をしたいと思わなかった。しかし何時かはフォーラと今回の件について話さなくてはならない。ハリーはそのように思い、意を決して彼女に近付いた。
「フォーラ」
彼女は突然の呼びかけにパッと声のした方を振り向いた。彼女はまさかハリーとこんなところで出会うとは思わず、少々驚いた表情を見せて手紙をポケットに仕舞った。
「ハリー、こんにちは。偶然ね。……隣に座る?」
フォーラの呼びかけに、ハリーは芝生の上に腰を落ち着けた。二人は最初こそ互いに無言だったが、その内にフォーラがぽつりと尋ねた。
「シリウスのこと、辛かったわね……。」
「……そうだね。ダンブルドアからあの日のことを聞いたよ。アンブリッジの部屋で出会ったスネイプは、ポリジュース薬を飲んだ君だったって。それに僕と君があの女の部屋で出会う少し前、君が偶然クリーチャーの動きをスネイプに伝えていたことも。それから……僕が君に例の羊皮紙でメッセージを残した後、君が……シリウスは無事だと返信してくれていたことも」
「そうだったのね、ダンブルドア先生が……。……私、あの時は十分に貴方の力になってあげられなくて本当にごめんなさい……。」フォーラが自身の膝をギュッと抱え直した。「アンブリッジ先生の部屋で貴方から聞いた『パッドフッド』が誰なのかを知らなくて。ただ仮に知っていたとしても、彼女の前で『分かった』と言うわけにはいかなかったでしょうけど……。
だからアンブリッジ先生の尋問が終わった後なら、貴方があれだけ焦っていた理由が聞けると思って罰則をでっち上げたの。だけど……色々とタイミングが嚙み合わなかった。」
「君がそうするしかなかったことは冷静になった今ならよく分かるし、君が謝ることじゃないよ。……ただ、確かにタイミングは合わなかった。君が部屋を出て行った後、僕やハーマイオニーはアンブリッジを撒くためにあの女を禁じられた森に連れて行っていた。そしてあの女を撒いた頃にはもう、シリウスを助けるには時間が経ちすぎていると思った。だからスネイプのところ―――いや、君のところに戻らなかったんだ」
「そう……。……その後はどうやって魔法省まで行ったの?」
「森に棲むセストラルという生き物に乗って、ホグワーツの敷地を出たんだ。物凄い加速で……」ハリーは続きを言うのを躊躇った。「その拍子に、君と連絡を取っていた羊皮紙を落としたんだ。君の返信を見る前に」
ハリーは息の詰まるような声だった。
「あの時、君の返信を見られていれば、僕らは……」
ハリーはそれ以上シリウスを失った後悔の念を口に出せないようだった。『僕らは魔法省へ行かずに済んだのに』。そのような言葉が後に続きそうだとフォーラは思った。
ハリーは心が落ち着かなかった。最も信頼していたシリウスを亡くしてしまい、それが自分をきっかけにして起こったことであるのを随分後悔していた。加えて、戦いの後にダンブルドアから聞かされた話もハリーの心を抉っていた。ハリーとヴォルデモートのどちらか一方が生きる限り、もう一方が死ぬ。ハリーとダンブルドアのみが知る予言だ。
神秘部に保管されていたのは球体の形をした大量の『預言』の記録だった。その一つ一つが誰かに関する預言で、本人のみが保管棚から取り出せるよう管理されていた。そしてその中の一つはハリーに関するもので、ヴォルデモートはそれを唯一持ち出せるハリーを誘い出し、預言の内容を聞こうと企てていたのだった。
しかし先日の戦いでハリーに関する預言の記録は割れてしまい、結果としてその場の誰も予言の内容を聞くことはできなかった。ただしダンブルドアだけは、その昔に預言の内容を予見者から直接聞かされていた。ハリーとヴォルデモートはどちらかの手に掛かって死なねばならないということを。
ハリーはシリウスの死を受け入れられない内に、ダンブルドアからそのショッキングな予言の内容を伝えられ、今も尚心を落ち着けられずにいた。そのためハリーは、魔法省で何があったのかという話題を他の生徒から聞かれないように避けたし、かといって一人になるとシリウスの死や自分に課せられた宿命を考えてしまうという悪循環を繰り返していた。
ハリーは湖の岸辺にある低木林を見つけ、これ以上誰かにジロジロ見られないためにその陰に座ろうと足を踏み入れた。
「!」
するとそこには何と先客がいた。ハリーの視線の先にはフォーラが膝を抱えるようにして座っていた。彼女は手元の羊皮紙をじっと眺めていて、ハリーがやって来たことに気付いていないようだった。
ハリーはフォーラに声を掛けるか迷った。彼女との会話は自然とシリウスに関することになってしまうだろう。彼は今誰かとあまりシリウスの話をしたいと思わなかった。しかし何時かはフォーラと今回の件について話さなくてはならない。ハリーはそのように思い、意を決して彼女に近付いた。
「フォーラ」
彼女は突然の呼びかけにパッと声のした方を振り向いた。彼女はまさかハリーとこんなところで出会うとは思わず、少々驚いた表情を見せて手紙をポケットに仕舞った。
「ハリー、こんにちは。偶然ね。……隣に座る?」
フォーラの呼びかけに、ハリーは芝生の上に腰を落ち着けた。二人は最初こそ互いに無言だったが、その内にフォーラがぽつりと尋ねた。
「シリウスのこと、辛かったわね……。」
「……そうだね。ダンブルドアからあの日のことを聞いたよ。アンブリッジの部屋で出会ったスネイプは、ポリジュース薬を飲んだ君だったって。それに僕と君があの女の部屋で出会う少し前、君が偶然クリーチャーの動きをスネイプに伝えていたことも。それから……僕が君に例の羊皮紙でメッセージを残した後、君が……シリウスは無事だと返信してくれていたことも」
「そうだったのね、ダンブルドア先生が……。……私、あの時は十分に貴方の力になってあげられなくて本当にごめんなさい……。」フォーラが自身の膝をギュッと抱え直した。「アンブリッジ先生の部屋で貴方から聞いた『パッドフッド』が誰なのかを知らなくて。ただ仮に知っていたとしても、彼女の前で『分かった』と言うわけにはいかなかったでしょうけど……。
だからアンブリッジ先生の尋問が終わった後なら、貴方があれだけ焦っていた理由が聞けると思って罰則をでっち上げたの。だけど……色々とタイミングが嚙み合わなかった。」
「君がそうするしかなかったことは冷静になった今ならよく分かるし、君が謝ることじゃないよ。……ただ、確かにタイミングは合わなかった。君が部屋を出て行った後、僕やハーマイオニーはアンブリッジを撒くためにあの女を禁じられた森に連れて行っていた。そしてあの女を撒いた頃にはもう、シリウスを助けるには時間が経ちすぎていると思った。だからスネイプのところ―――いや、君のところに戻らなかったんだ」
「そう……。……その後はどうやって魔法省まで行ったの?」
「森に棲むセストラルという生き物に乗って、ホグワーツの敷地を出たんだ。物凄い加速で……」ハリーは続きを言うのを躊躇った。「その拍子に、君と連絡を取っていた羊皮紙を落としたんだ。君の返信を見る前に」
ハリーは息の詰まるような声だった。
「あの時、君の返信を見られていれば、僕らは……」
ハリーはそれ以上シリウスを失った後悔の念を口に出せないようだった。『僕らは魔法省へ行かずに済んだのに』。そのような言葉が後に続きそうだとフォーラは思った。