24. I hope you are safe. (完)
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しかしそのように一時的に回復したフォーラの気分も、翌朝には予想外の形で一変してしまうとは。この時の彼女はそれをまだ十分に予想できていなかった。
翌朝、フォーラは昨日からの不安な気分を抱えていたせいで、まだ誰も起き出していない時間に目が覚めた。昨日はあれ以来、夕食の時間も含めスネイプの姿を見ることはなかった。それに彼から何の連絡もなかったこともあって、フォーラにはハリーや騎士団員たちがどうなったのかは分からず仕舞いだった。
フォーラは隣のベッドで眠る友人たちを起こさないように、はやる気持ちを落ち着かせようと一足早く談話室へと足を踏み入れた。するとそこには意外な人物が一人、静かな談話室の隅の肘掛け椅子に座り、前屈みになって頭を抱えている姿が目に入った。
「……ドラコ……?」
フォーラが声をかけると、彼はピクリと肩を震わせた。彼は恋人に名前を呼ばれても、いつものように振り返らなかった。唯々頭を抱えるように椅子の上にうずくまったまま、僅かに身体を震わせていた。
「ドラコ、どうしたの……!?」
フォーラは急いでドラコの元まで駆け寄り、彼の足元の絨毯に両膝をついた。そして彼の頬に手を添えて顔を覗き込むように上げさせると、彼は大粒の涙を流していた。
「!」フォーラは驚いて咄嗟に声を出せなかった。ドラコは彼女の手を払って顔を背け、涙でグショグショになった顔を隠そうとした。彼の片手には、涙で滲んだ手紙のようなものが握られていた。
ドラコが顔を背けて俯いたまま、震えた声を発した。
「父上が……、父上が捕まった」
「えっ?」
「父上は、アズカバンに入れられてしまう……。」
窓の外に見える湖の底の深い青色が、ドラコの弱々しい声と姿を一層物悲しく照らした。フォーラは彼から差し出された手紙に目を通した。それはナルシッサ・マルフォイからのもので、走り書きが綴られていた。
『我が子へ
昨晩、お父様が敵に捕まりました。貴方のお友達の父親たちも。お父様はあの方のご命令に失敗してしまったのです。ポッターを筆頭にダンブルドアとその一味が邪魔立てしました。
近々お父様はアズカバンに投獄されるでしょう。とはいえ看守の吸魂鬼はあのお方側についているので、きっと直ぐに戻って来られる筈です。ただし仮にお父様が牢獄から出られたとしても、私たち一家はこれから厳しい目に晒されてしまうでしょう。世間からも、何よりあのお方からも……。
今回の詳細と今後のことは貴方が家に戻れば早急に伝えます。何があったかは新聞がある程度を報じてしまうでしょうが……。
ホグワーツでの残りの日数は静かに過ごすこと。いいですね。
母より』
フォーラはそれを読んで、昨日の自分の想像力の乏しさをひしひしと感じた。心配する対象は何もハリーたちだけではなかった。ヴォルデモート側のルシウス・マルフォイも渦中の存在だったのだ。
ルシウスを危険に晒したくないという思いは、ドラコは勿論フォーラも持ち合わせていた。そしてそれはフォーラの両親も同じだった。
「……ポッターは昨日、僕やパーキンソンたちが気絶している間に、恐らくあいつの取り巻きと……ホグワーツの外に出たんだろう。僕は父上含む大人たちが何を計画していたか知らないが、母上がそんな風に書くということは……その計画を父上が主導していた筈だ」ドラコが涙を拭いながら言った。「父上は……あいつのせいで……」再びドラコの瞳から悔しさと哀しみの混じった涙が零れた。
「ドラコ……」
フォーラは動揺した手でドラコの腕を取り、膝立ちになってドラコを抱き寄せた。彼はされるがまま彼女の方に身を寄せて頭を彼女の肩にもたせ掛け、震える腕で彼女の背中に手を廻した。
「フォーラ……僕は……」
ドラコは手だけでなく声も震えていた。彼は彼女を抱き締める力を強めた。
「あいつを、ポッターを許さない。父上を貶めた敵を許さない……」
ドラコの中に満ちていく怒りや哀しみは、フォーラにも自然と涙を流させた。彼女は本来不死鳥の騎士団側だが、それでもドラコの気持ちが十分に理解できたのだ。
騎士団にとって、死喰い人を拘束した今回の出来事は大変喜ばしいに違いない。そしてフォーラはそれを喜ぶべき立場の人間だった。しかし彼女は騎士団に対して以上に、そもそもマルフォイ家への思い入れが強すぎた。
『私たち一家はこれから厳しい目に晒されてしまうでしょう。世間からも、何よりあのお方からも……。』
ナルシッサの手紙に書かれていた内容がフォーラの頭の中で渦巻いた。フォーラにはルシウスが具体的にどういった失敗をしたのかドラコ同様分からなかった。しかし昨日のスネイプの話からして、少なくともルシウスがハリーをおびき寄せて捕まえ損ねただろうことは理解できた。もしナルシッサの手紙の内容が本当ならば、今後マルフォイ家はその失敗を主人のヴォルデモートから責められるのではないだろうか?それこそ目の前のドラコも含め……。
翌朝、フォーラは昨日からの不安な気分を抱えていたせいで、まだ誰も起き出していない時間に目が覚めた。昨日はあれ以来、夕食の時間も含めスネイプの姿を見ることはなかった。それに彼から何の連絡もなかったこともあって、フォーラにはハリーや騎士団員たちがどうなったのかは分からず仕舞いだった。
フォーラは隣のベッドで眠る友人たちを起こさないように、はやる気持ちを落ち着かせようと一足早く談話室へと足を踏み入れた。するとそこには意外な人物が一人、静かな談話室の隅の肘掛け椅子に座り、前屈みになって頭を抱えている姿が目に入った。
「……ドラコ……?」
フォーラが声をかけると、彼はピクリと肩を震わせた。彼は恋人に名前を呼ばれても、いつものように振り返らなかった。唯々頭を抱えるように椅子の上にうずくまったまま、僅かに身体を震わせていた。
「ドラコ、どうしたの……!?」
フォーラは急いでドラコの元まで駆け寄り、彼の足元の絨毯に両膝をついた。そして彼の頬に手を添えて顔を覗き込むように上げさせると、彼は大粒の涙を流していた。
「!」フォーラは驚いて咄嗟に声を出せなかった。ドラコは彼女の手を払って顔を背け、涙でグショグショになった顔を隠そうとした。彼の片手には、涙で滲んだ手紙のようなものが握られていた。
ドラコが顔を背けて俯いたまま、震えた声を発した。
「父上が……、父上が捕まった」
「えっ?」
「父上は、アズカバンに入れられてしまう……。」
窓の外に見える湖の底の深い青色が、ドラコの弱々しい声と姿を一層物悲しく照らした。フォーラは彼から差し出された手紙に目を通した。それはナルシッサ・マルフォイからのもので、走り書きが綴られていた。
『我が子へ
昨晩、お父様が敵に捕まりました。貴方のお友達の父親たちも。お父様はあの方のご命令に失敗してしまったのです。ポッターを筆頭にダンブルドアとその一味が邪魔立てしました。
近々お父様はアズカバンに投獄されるでしょう。とはいえ看守の吸魂鬼はあのお方側についているので、きっと直ぐに戻って来られる筈です。ただし仮にお父様が牢獄から出られたとしても、私たち一家はこれから厳しい目に晒されてしまうでしょう。世間からも、何よりあのお方からも……。
今回の詳細と今後のことは貴方が家に戻れば早急に伝えます。何があったかは新聞がある程度を報じてしまうでしょうが……。
ホグワーツでの残りの日数は静かに過ごすこと。いいですね。
母より』
フォーラはそれを読んで、昨日の自分の想像力の乏しさをひしひしと感じた。心配する対象は何もハリーたちだけではなかった。ヴォルデモート側のルシウス・マルフォイも渦中の存在だったのだ。
ルシウスを危険に晒したくないという思いは、ドラコは勿論フォーラも持ち合わせていた。そしてそれはフォーラの両親も同じだった。
「……ポッターは昨日、僕やパーキンソンたちが気絶している間に、恐らくあいつの取り巻きと……ホグワーツの外に出たんだろう。僕は父上含む大人たちが何を計画していたか知らないが、母上がそんな風に書くということは……その計画を父上が主導していた筈だ」ドラコが涙を拭いながら言った。「父上は……あいつのせいで……」再びドラコの瞳から悔しさと哀しみの混じった涙が零れた。
「ドラコ……」
フォーラは動揺した手でドラコの腕を取り、膝立ちになってドラコを抱き寄せた。彼はされるがまま彼女の方に身を寄せて頭を彼女の肩にもたせ掛け、震える腕で彼女の背中に手を廻した。
「フォーラ……僕は……」
ドラコは手だけでなく声も震えていた。彼は彼女を抱き締める力を強めた。
「あいつを、ポッターを許さない。父上を貶めた敵を許さない……」
ドラコの中に満ちていく怒りや哀しみは、フォーラにも自然と涙を流させた。彼女は本来不死鳥の騎士団側だが、それでもドラコの気持ちが十分に理解できたのだ。
騎士団にとって、死喰い人を拘束した今回の出来事は大変喜ばしいに違いない。そしてフォーラはそれを喜ぶべき立場の人間だった。しかし彼女は騎士団に対して以上に、そもそもマルフォイ家への思い入れが強すぎた。
『私たち一家はこれから厳しい目に晒されてしまうでしょう。世間からも、何よりあのお方からも……。』
ナルシッサの手紙に書かれていた内容がフォーラの頭の中で渦巻いた。フォーラにはルシウスが具体的にどういった失敗をしたのかドラコ同様分からなかった。しかし昨日のスネイプの話からして、少なくともルシウスがハリーをおびき寄せて捕まえ損ねただろうことは理解できた。もしナルシッサの手紙の内容が本当ならば、今後マルフォイ家はその失敗を主人のヴォルデモートから責められるのではないだろうか?それこそ目の前のドラコも含め……。