23.Snape's blood
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その新校長であるアンブリッジは試験の前日の夕食後、校外からやって来た試験官の一行を迎え入れた。彼女は試験官との会話にかなり神経質になっているようだった。試験官がダンブルドアの不在を嘆いたことに加え、彼らの機嫌を損ねないよう注意を払っていたことも関係しているようだった。
「魔法省が間もなくダンブルドアの居場所を突き止めると思いますわ」
アンブリッジの言葉に、試験官の内の一人である小柄で年老いた魔女のマーチバンクス教授が苛立った大声で返答した。
「さて、どうかね。ダンブルドアが見つかりたくないのなら、まず無理だね!私には分かりますよ……この私が、ダンブルドアの『いもり試験』の変身術と呪文学の試験官だったのだから……あれ程までの杖使いは、それまで見たことがなかった」
試験官が学校に到着したその翌日は、とうとうふくろう試験当日となった。初日は呪文学で、朝食では五年生はみんな口数が少なかった。それはフォーラもドラコも、その友人たちも例外ではなかった。
朝食後、他の学年の生徒は授業の教室に向かったが、五年生は九時半まで玄関ホールでうろうろと屯した。そして時間になると再び大広間に入ったのだが、四つの寮テーブルは片付けられており、代わりに生徒全員分の個人用の小さな机が奥の教職員テーブルの方を向いて並んでいた。机の上には問題用紙と答案用紙が伏せて置かれている。全員が着席すると、前にいたマクゴナガルの合図で一斉に用紙が裏返る音が響いたのだった。
「二時間も机に向かうのが、後二週間弱も続くと思うと吐き気がするかも」筆記試験の後、ルニーが問題用紙を握りしめて項垂れた。「まだ実技試験の方が性に合っている気がするわ」
「私は正直、どっちも嫌……」パンジーがルニーの隣でため息を吐いた。
フォーラたち五年生は、他の学年の生徒と共に少々憂鬱な気分で昼食を摂った。この時は既に寮テーブルは元の位置に戻っていた。そして食事が終わると五年生は実技試験のために大広間の脇にある小部屋に移動し、名簿順に名前が呼ばれるのを待った。
何組かの生徒が呼ばれた後で、フォーラは他の数名と共に呼び出された。実技試験は他の生徒と同時進行となっていて、生徒一人につき試験官一人が採点を受け持っていた。実技を行っている生徒の後列には少数の生徒が待機していて、試験中の生徒の様子をじっと見守っていた。
呪文学の試験内容は、ゆで卵を魔法でコロコロと転がす『浮遊呪文』や、ネズミをオレンジ色にする『変色呪文』などだった。試験官の目や後ろの生徒からの視線など、いつもと違う状況での呪文は緊張することこの上なかったが、フォーラはこの日の実技を無事に終えたのだった。
しかしゆっくりしている暇などなかった。生徒たちは夕食後には談話室に直行し、翌日に控えた変身術の復習を行った。この学科はそもそものセンスが問われる上に、最も複雑な呪文モデルや理論が入り乱れているものだから、談話室では常に何処かしらで五年生の唸り声が度々聞こえてきた。
さて、あっという間に翌日を迎えたわけだが、フォーラはこの日の試験対象である変身術を最も得意としていた。そのため彼女は午前中の筆記試験を比較的落ち着いてこなすことができた。そして午後の実技試験では、フォーラは試験官のマーチバンクス教授の所で受験することとなった。
マーチバンクスは耳が遠いのか自身の声も聞こえにくいようで、少々声を張り上げて話すのが特徴的だった。そのせいか彼女の声はどこか威圧的な様子を感じさせ、実技で彼女に当たった生徒は一層緊張を露わにした。フォーラも漏れなくその内の一人だった。
しかしそのような緊張は、最早フォーラの変身術の前では何の妨げにもならなかった。フォーラはアヒルを完璧なウサギに変身させてから元の姿に戻すことにも成功したし、キツネ丸々一匹の『消失』を完璧にやって見せた。
「ふむ、完璧だ」マーチバンクスはクリップボードに何やら書き込んだ後で、フォーラをじっと見て尋ねた。
「その様子だと、もしかすると出現呪文の方はどうかね!まだ習っていない範囲だろうけども」
フォーラはマーチバンクスの要求に応え、先程のキツネを机の上に『出現』させた。
「とても良い!」マーチバンクスの声量は相変わらず大きかったが、フォーラの出来が良かったお陰で最初よりも声色が和らいでいるような気がした。
「確か君は、アニメ―ガスに登録されているね?」マーチバンクスの目が最初よりもずっと興味深くフォーラに向けられた。
「はい、そうです。」
「一度お願いしてもいいかね?」
フォーラは今度も言われるがまま変身し、あっと言う間に黒猫の姿でテーブルに飛び乗ると、姿勢を正して座った。これにはマーチバンクスだけでなく、フォーラを偶然視界に入れた他の何人かの試験官も、名前順で試験を待つ他の生徒―――ゴイルやハーマイオニーらも釘付けになった。
「この若さで……」マーチバンクスが声を漏らした。「それに、これまでの身のこなし、まるでエメリック・スイッチを思わせる」
「!」
これにはフォーラも少々驚いてしまった。以前、彼女はマクゴナガルにも同じようなことを言われたからだ。フォーラが人の姿に戻る間、マーチバンクスは手元のクリップボードにフォーラの成績を書き残した。その手の動きが止まったタイミングを見計らい、フォーラは尋ねた。
「あの、一つだけよろしいでしょうか……私の、具体的にどういったところが、ミスター・スイッチに似ていましたか?」
「ふむ、何だろうねえ。正直一言では言い表しにくい。どちらかというと私は、単に優れた変身術師の代名詞として奴の名が浮かんだと言った方が正しいかもしれないね!」
「そ、そうですか……。あの、ありがとうございました。」
今が試験中というのもあり、フォーラはそれ以上その場に留まることはできないと判断した。先程のマーチバンクスの言葉からして、彼女がエメリック・スイッチの名を挙げたのは偶然だったに違いない。現にマクゴナガルだってそうだった。以前彼女がフォーラのことを同じような例えで褒めたのは、スイッチ氏の名がそういった褒め言葉に使われる存在なのだろう。スイッチ氏の先祖にあたるエメリア・スイッチ女史が残した書籍の魔法をフォーラが解除できることと、今回のことはきっと関係がない筈だ。
「魔法省が間もなくダンブルドアの居場所を突き止めると思いますわ」
アンブリッジの言葉に、試験官の内の一人である小柄で年老いた魔女のマーチバンクス教授が苛立った大声で返答した。
「さて、どうかね。ダンブルドアが見つかりたくないのなら、まず無理だね!私には分かりますよ……この私が、ダンブルドアの『いもり試験』の変身術と呪文学の試験官だったのだから……あれ程までの杖使いは、それまで見たことがなかった」
試験官が学校に到着したその翌日は、とうとうふくろう試験当日となった。初日は呪文学で、朝食では五年生はみんな口数が少なかった。それはフォーラもドラコも、その友人たちも例外ではなかった。
朝食後、他の学年の生徒は授業の教室に向かったが、五年生は九時半まで玄関ホールでうろうろと屯した。そして時間になると再び大広間に入ったのだが、四つの寮テーブルは片付けられており、代わりに生徒全員分の個人用の小さな机が奥の教職員テーブルの方を向いて並んでいた。机の上には問題用紙と答案用紙が伏せて置かれている。全員が着席すると、前にいたマクゴナガルの合図で一斉に用紙が裏返る音が響いたのだった。
「二時間も机に向かうのが、後二週間弱も続くと思うと吐き気がするかも」筆記試験の後、ルニーが問題用紙を握りしめて項垂れた。「まだ実技試験の方が性に合っている気がするわ」
「私は正直、どっちも嫌……」パンジーがルニーの隣でため息を吐いた。
フォーラたち五年生は、他の学年の生徒と共に少々憂鬱な気分で昼食を摂った。この時は既に寮テーブルは元の位置に戻っていた。そして食事が終わると五年生は実技試験のために大広間の脇にある小部屋に移動し、名簿順に名前が呼ばれるのを待った。
何組かの生徒が呼ばれた後で、フォーラは他の数名と共に呼び出された。実技試験は他の生徒と同時進行となっていて、生徒一人につき試験官一人が採点を受け持っていた。実技を行っている生徒の後列には少数の生徒が待機していて、試験中の生徒の様子をじっと見守っていた。
呪文学の試験内容は、ゆで卵を魔法でコロコロと転がす『浮遊呪文』や、ネズミをオレンジ色にする『変色呪文』などだった。試験官の目や後ろの生徒からの視線など、いつもと違う状況での呪文は緊張することこの上なかったが、フォーラはこの日の実技を無事に終えたのだった。
しかしゆっくりしている暇などなかった。生徒たちは夕食後には談話室に直行し、翌日に控えた変身術の復習を行った。この学科はそもそものセンスが問われる上に、最も複雑な呪文モデルや理論が入り乱れているものだから、談話室では常に何処かしらで五年生の唸り声が度々聞こえてきた。
さて、あっという間に翌日を迎えたわけだが、フォーラはこの日の試験対象である変身術を最も得意としていた。そのため彼女は午前中の筆記試験を比較的落ち着いてこなすことができた。そして午後の実技試験では、フォーラは試験官のマーチバンクス教授の所で受験することとなった。
マーチバンクスは耳が遠いのか自身の声も聞こえにくいようで、少々声を張り上げて話すのが特徴的だった。そのせいか彼女の声はどこか威圧的な様子を感じさせ、実技で彼女に当たった生徒は一層緊張を露わにした。フォーラも漏れなくその内の一人だった。
しかしそのような緊張は、最早フォーラの変身術の前では何の妨げにもならなかった。フォーラはアヒルを完璧なウサギに変身させてから元の姿に戻すことにも成功したし、キツネ丸々一匹の『消失』を完璧にやって見せた。
「ふむ、完璧だ」マーチバンクスはクリップボードに何やら書き込んだ後で、フォーラをじっと見て尋ねた。
「その様子だと、もしかすると出現呪文の方はどうかね!まだ習っていない範囲だろうけども」
フォーラはマーチバンクスの要求に応え、先程のキツネを机の上に『出現』させた。
「とても良い!」マーチバンクスの声量は相変わらず大きかったが、フォーラの出来が良かったお陰で最初よりも声色が和らいでいるような気がした。
「確か君は、アニメ―ガスに登録されているね?」マーチバンクスの目が最初よりもずっと興味深くフォーラに向けられた。
「はい、そうです。」
「一度お願いしてもいいかね?」
フォーラは今度も言われるがまま変身し、あっと言う間に黒猫の姿でテーブルに飛び乗ると、姿勢を正して座った。これにはマーチバンクスだけでなく、フォーラを偶然視界に入れた他の何人かの試験官も、名前順で試験を待つ他の生徒―――ゴイルやハーマイオニーらも釘付けになった。
「この若さで……」マーチバンクスが声を漏らした。「それに、これまでの身のこなし、まるでエメリック・スイッチを思わせる」
「!」
これにはフォーラも少々驚いてしまった。以前、彼女はマクゴナガルにも同じようなことを言われたからだ。フォーラが人の姿に戻る間、マーチバンクスは手元のクリップボードにフォーラの成績を書き残した。その手の動きが止まったタイミングを見計らい、フォーラは尋ねた。
「あの、一つだけよろしいでしょうか……私の、具体的にどういったところが、ミスター・スイッチに似ていましたか?」
「ふむ、何だろうねえ。正直一言では言い表しにくい。どちらかというと私は、単に優れた変身術師の代名詞として奴の名が浮かんだと言った方が正しいかもしれないね!」
「そ、そうですか……。あの、ありがとうございました。」
今が試験中というのもあり、フォーラはそれ以上その場に留まることはできないと判断した。先程のマーチバンクスの言葉からして、彼女がエメリック・スイッチの名を挙げたのは偶然だったに違いない。現にマクゴナガルだってそうだった。以前彼女がフォーラのことを同じような例えで褒めたのは、スイッチ氏の名がそういった褒め言葉に使われる存在なのだろう。スイッチ氏の先祖にあたるエメリア・スイッチ女史が残した書籍の魔法をフォーラが解除できることと、今回のことはきっと関係がない筈だ。