19. You are very special to me: 3rd volume
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こんなこと、本来なら絶対に許されることではない。しかし彼女はこの本を長く手元に置いておかなければならない気がしていた。この本からは学べることが多い上に、フォーラが成し遂げようとしている術を完成させるには、詳細確認のために長く借りておく必要がある。貸出期限が来るたびに禁書の棚を何度も出入りするのは、マダム・ピンスにいつ不審に思われてもおかしくない。とはいえ、フォーラにとってそれらの理由はおまけに過ぎない。彼女がこの本を手元に置きたかった真の理由は、それらのどれでもなかった。
フォーラがその手元の本に「レべリオ、現れよ!」と唱えると、例のごとく白紙だったページにはエメリア・スイッチが書いた、異質な変身術の数々の詳述が浮かび上がった。相変わらずわけが分からない様子のスネイプに、フォーラは順を追って説明した。
フォーラの父親の覚書からエメリアの名前を追った結果、禁書の棚でこの本に引き寄せられたこと。その本には、ポリジュース薬を使わなくとも特定の誰かに変身できる呪文について書かれていたこと。それはこれまでエメリア以外誰も成し遂げたことのない呪文だったが、フォーラは自分ならできると信じて、それに必要な変身術を習得していったこと……。そして術の仕上げに、変身したい相手の血がエスプレッソカップ1杯分程必要だということ。
そこまでの一連の話を聞いたスネイプは、フォーラの馬鹿げた考えに心底怒りを露わにしていた。
「馬鹿者……!お前がそんなに必死になって倒れる程、勉学に邁進していた理由がこれか。N.E.W.Tレベルまで変身術を上達させたのは良いとして、こんな眉唾に惚れこむなど!!」
「惚れこんだことは否定しません。ですが、勉強を頑張っていた理由はそこではありません!いつかもお伝えしたように、私はドラコを闇の陣営との関りから引き剥がしたいだけなんです。騎士団の力になることで、少しでも早くそれを実現できれば……。
きっとこの魔法が使えれば、必ず騎士団の活動の幅が広がる筈です。それこそ私がセブルスさんになることで、貴方のスパイ活動の時間を作ることだって、アリバイ作りだって……幾らでも使い道がある筈です。ポリジュース薬も必要ないし、『人の変身』より確実に完璧に変身できる、そうなればきっと、確実に便利になる筈です。
それに目先の話で言えば、ドラコは私のことを随分避けているから、彼の置かれている状況がいつ変化しても知ることは叶いません。それなら別の誰かになってしまえば―――それこそセブルスさんになれればと思ったんです。」
スネイプはフォーラがここまで熱弁している姿を本当に珍しいと思った。彼からすればフォーラの話は非現実的で粗削りで、隙だらけの信用に値しない妄想だった―――しかしその必死さから、彼女が本気でそんなヘンテコな術を信じる程にドラコを助けたがっていることは理解できた。そして彼女にとってのドラコが、それ程までに大切な存在だということも。
スネイプはそんなフォーラを見て、過去の記憶を自然と思い出していた。十数年前にヴォルデモートが力を振っていた時代、スネイプは片想いしていた幼馴染の女性を助けるため、ヴォルデモートとダンブルドアの間で二重スパイをするというとんでもなく無理な仕事を買って出たのだ。今も彼はあの時と同じように二重スパイをしているが、今と当時で違うのは、その女性がもう既に亡くなっているということだった。
当時のスネイプはその無理に近い仕事をこなすことを決心してしまうくらいに、その女性のことを大切に想っていた。彼がこの度の戦いで再び二重スパイをしているのだって、その女性の大切な子を守りたかったからだ。その子の黒いクシャクシャ髪と規則を守らない姿勢は『彼女』に似ても似つかないが、緑色の瞳は彼女そのものだったから……。
そのようなことがあったからこそ、スネイプにはフォーラにとってのドラコがどれだけ守りたい存在か本当によく理解できた。こうして頑張っているフォーラの努力を無下にすることは、彼女にとって相当辛いことだというのも同じ目線で十分に汲み取れた。
とはいえスネイプはフォーラと同じく幼馴染を愛した立場である前に、フォーラの教師であり、生徒を守る立場の人だった。誰も成し得ていない魔法の習得など危険極まりないし、ましてや自分に変身するなど以ての外だ。
スネイプはため息交じりに口を開いた。
「フォーラ。まずドラコのことだが、現状なにも心配することはない。彼は闇の帝王やルシウスから命令を受けてなどいないし、一介の学生風情に無茶なことは頼まない。それにそういった状況や情報はお前が我輩に変身せずとも、我輩自ら把握し、お前が望むなら伝えてやることくらいできる」
「では、どうしてドラコは私に何かを隠すようにわざと避けているんでしょうか?私の目には、彼が何か危険から私を遠ざけようとしているようにしか見えないんです。ドラコは本当に安全なんですか……?」
スネイプは以前、倒れたフォーラをドラコが運んできた日、ドラコの口からフォーラに対する想いを直接この場所で聞いた。あの時のドラコはこう言っていた。
『僕は今、フォーラに随分冷たく当たっています。僕は彼女に嫌われたいし、彼女を嫌いたい―――僕がいつか闇の陣営側に加担して戦うことになっても、彼女が幼馴染の僕のことで悲しまないようにするためです。
父上が戦う限り僕もきっと加勢することになる。その時に備えて、自分の弱みを作るなとも言われています。マグル擁護派に僕の弱みを突かれることが無いように……。僕の弱みは、フォーラなんです。
彼女が僕に嫌われたと思って完全に離れてくれれば、無関係の彼女はきっと巻き込まれない』
フォーラがその手元の本に「レべリオ、現れよ!」と唱えると、例のごとく白紙だったページにはエメリア・スイッチが書いた、異質な変身術の数々の詳述が浮かび上がった。相変わらずわけが分からない様子のスネイプに、フォーラは順を追って説明した。
フォーラの父親の覚書からエメリアの名前を追った結果、禁書の棚でこの本に引き寄せられたこと。その本には、ポリジュース薬を使わなくとも特定の誰かに変身できる呪文について書かれていたこと。それはこれまでエメリア以外誰も成し遂げたことのない呪文だったが、フォーラは自分ならできると信じて、それに必要な変身術を習得していったこと……。そして術の仕上げに、変身したい相手の血がエスプレッソカップ1杯分程必要だということ。
そこまでの一連の話を聞いたスネイプは、フォーラの馬鹿げた考えに心底怒りを露わにしていた。
「馬鹿者……!お前がそんなに必死になって倒れる程、勉学に邁進していた理由がこれか。N.E.W.Tレベルまで変身術を上達させたのは良いとして、こんな眉唾に惚れこむなど!!」
「惚れこんだことは否定しません。ですが、勉強を頑張っていた理由はそこではありません!いつかもお伝えしたように、私はドラコを闇の陣営との関りから引き剥がしたいだけなんです。騎士団の力になることで、少しでも早くそれを実現できれば……。
きっとこの魔法が使えれば、必ず騎士団の活動の幅が広がる筈です。それこそ私がセブルスさんになることで、貴方のスパイ活動の時間を作ることだって、アリバイ作りだって……幾らでも使い道がある筈です。ポリジュース薬も必要ないし、『人の変身』より確実に完璧に変身できる、そうなればきっと、確実に便利になる筈です。
それに目先の話で言えば、ドラコは私のことを随分避けているから、彼の置かれている状況がいつ変化しても知ることは叶いません。それなら別の誰かになってしまえば―――それこそセブルスさんになれればと思ったんです。」
スネイプはフォーラがここまで熱弁している姿を本当に珍しいと思った。彼からすればフォーラの話は非現実的で粗削りで、隙だらけの信用に値しない妄想だった―――しかしその必死さから、彼女が本気でそんなヘンテコな術を信じる程にドラコを助けたがっていることは理解できた。そして彼女にとってのドラコが、それ程までに大切な存在だということも。
スネイプはそんなフォーラを見て、過去の記憶を自然と思い出していた。十数年前にヴォルデモートが力を振っていた時代、スネイプは片想いしていた幼馴染の女性を助けるため、ヴォルデモートとダンブルドアの間で二重スパイをするというとんでもなく無理な仕事を買って出たのだ。今も彼はあの時と同じように二重スパイをしているが、今と当時で違うのは、その女性がもう既に亡くなっているということだった。
当時のスネイプはその無理に近い仕事をこなすことを決心してしまうくらいに、その女性のことを大切に想っていた。彼がこの度の戦いで再び二重スパイをしているのだって、その女性の大切な子を守りたかったからだ。その子の黒いクシャクシャ髪と規則を守らない姿勢は『彼女』に似ても似つかないが、緑色の瞳は彼女そのものだったから……。
そのようなことがあったからこそ、スネイプにはフォーラにとってのドラコがどれだけ守りたい存在か本当によく理解できた。こうして頑張っているフォーラの努力を無下にすることは、彼女にとって相当辛いことだというのも同じ目線で十分に汲み取れた。
とはいえスネイプはフォーラと同じく幼馴染を愛した立場である前に、フォーラの教師であり、生徒を守る立場の人だった。誰も成し得ていない魔法の習得など危険極まりないし、ましてや自分に変身するなど以ての外だ。
スネイプはため息交じりに口を開いた。
「フォーラ。まずドラコのことだが、現状なにも心配することはない。彼は闇の帝王やルシウスから命令を受けてなどいないし、一介の学生風情に無茶なことは頼まない。それにそういった状況や情報はお前が我輩に変身せずとも、我輩自ら把握し、お前が望むなら伝えてやることくらいできる」
「では、どうしてドラコは私に何かを隠すようにわざと避けているんでしょうか?私の目には、彼が何か危険から私を遠ざけようとしているようにしか見えないんです。ドラコは本当に安全なんですか……?」
スネイプは以前、倒れたフォーラをドラコが運んできた日、ドラコの口からフォーラに対する想いを直接この場所で聞いた。あの時のドラコはこう言っていた。
『僕は今、フォーラに随分冷たく当たっています。僕は彼女に嫌われたいし、彼女を嫌いたい―――僕がいつか闇の陣営側に加担して戦うことになっても、彼女が幼馴染の僕のことで悲しまないようにするためです。
父上が戦う限り僕もきっと加勢することになる。その時に備えて、自分の弱みを作るなとも言われています。マグル擁護派に僕の弱みを突かれることが無いように……。僕の弱みは、フォーラなんです。
彼女が僕に嫌われたと思って完全に離れてくれれば、無関係の彼女はきっと巻き込まれない』