21. Brief Kisses
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そして二人が間もなくして階段を上がり始めると、フォーラが気恥ずかしそうに尋ねた。
「それにしても私って、……ドラコとキスをした時、そんなに無防備な表情を―――人に見せられないような顔をしていたのね。」
「それは」ドラコは一瞬にして脳裏にある光景が浮かんだ。初めてフォーラとキスを交わした日、唇を離した彼女は恍惚とした顔でドラコの方を見つめていたのだ。実のところ、ドラコはあの時のことを何度思い返したか分からない程で、その度に若干動悸がした。「まあ……僕が独り占めしたくなるような感じだった。……もし君のその表情を他の奴が見たら、きっとそいつも君にキスしたくなっただろうから」
「!そ、そんなこと……。」
フォーラは『そんなことない』と言いかけたが、彼女もふとドラコとキスを交わした時のことを思い出した。あの時のドラコは切なそうな、切羽詰まったような表情をしていて、随分胸の辺りがざわついた記憶がある。
「……確かに私も同じだわ。私、ドラコの特別な視線を他の女の子に見せたくないみたい。だって、すっごくドキドキしたんだもの。」
フォーラは隣を歩くドラコにその照れた表情を向けた。そしてその拍子に二人の視線が合わさると、ドラコは思わず眉を下げ、軽く口角を上げた。
「なんだ、僕たちは同じことを考えていたんだな」
ドラコは先程からフォーラを愛でたくて仕方がない状態だったため、喜びに身を任せてその衝動を昇華するように、彼女の頭を何度か優しく撫でた。そうして間もなく二人は玄関ホールに続く階段を登り切り、明るい空間に出たのだった。
ドラコはフォーラの髪から手を下して前を向いたのだが、すると今度はフォーラがドラコの腕に軽く手を添えた。彼はフォーラが腕を組むようなことをしてくるとは思わず、少々その腕を強張らせた。
フォーラはドラコと歩みながら玄関ホールを軽くキョロキョロと見渡した。本来なら今がまだ授業時間なのも相まって、ホールには誰一人いなかった。
「ねえドラコ。……私たち二人とも、あまり人前での恋人らしいスキンシップを望んでいないのは、よく分かったわ。だけど……。」
フォーラはドラコと並んで校庭へ続く樫の大扉の前まで来ると、少々緊張気味にじっと彼を見上げた。
「二人っきりの時は、キスの一つくらいはしてもいいのよね?」
「!」
その時、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。その音に驚いてかもしくはフォーラの発言に驚いたのか、ドラコの心臓はドキリと強く脈打った。彼はその場で足を止め、先程のフォーラ同様、自分たち以外誰もここにいないことを確かめるべく、無意識に辺りをサッと見渡した。
ドラコはほんの少し緊張気味にフォーラの方へ視線を戻した。すると程なくして彼は僅かに首を前に傾け、彼女の頬に一つキスを落としたではないか。フォーラは自分からドラコに口付けようと思って先程の質問をしたため、彼の方からアクションがあったことに少々驚き、その場に固まってしまった。
ドラコはフォーラの不意を突けたことに幾らか満足そうに彼女を見つめた。そして次に彼は、自らの片方の頬を彼女に軽く差し出した。フォーラは彼の様子から、彼が自分に何を求めているかを即座に理解した。
フォーラはドラコの腕に添えている手をきゅっと握り、彼の頬にそっと唇を触れさせた。程なくして彼女がドラコからパッと顔を離すと、二人は少々赤みの差した互いの顔を見つめた。この場所はいつ誰が訪れてもおかしくない玄関ホールであるが故に、二人とも敢えてお互いの頬に触れる程度に留めた。しかし授業が終わったばかりの今なら、生徒の集団がここを通過するまでまだギリギリ時間がある。その言い訳に加え、頬へのキスで燻っている心臓の鼓動に後押しされるようにして、二人は短く唇を触れ合わせた。
そうしていたのは本当に僅かの間だけだったが、顔を離したフォーラが気恥ずかしそうに微笑んだ。
「ありがとう。」
彼女のそんな姿に、やはりドラコは自分の口元が緩む感覚がした。彼は気を引き締め直して表情を整えると、姿勢も正した。
「あ、ああ」ドラコはこれ以上自分の表情筋が崩れるのを恐れてフォーラから視線を逸らした。彼女にあまり格好悪いところを見せるわけにはいかない。それに上階で生徒の群衆が廊下を歩く音や、その生徒たち目掛けて恐らくピーブズがイタズラ騒ぎを起こす音が大きくなってきた。あまりお互いに近づき過ぎていては、ピーブズにこの場を見つかったが最後、格好の餌食になってしまうのは目に見えていた。
ドラコはフォーラから一歩退くと、軽く咳払いをして再び彼女の方を見た。
「こちらこそ、僕の我儘でここまでついてきてくれてありがとう。……それじゃ、僕はもう競技場に行くことにするよ」
「ええ、あまり無理せずにね。」
フォーラが胸の辺りで小さく手を振る姿をドラコは名残惜しそうに見ながら、彼も軽く片手を上げて挨拶を返した。そうして彼は校庭の方へと立ち去って行った。そんな彼をフォーラはその姿が見えなくなるまで眺め、笑顔をこぼした。その後間もなくして彼女は校内の方に振り返り、行く予定では無かった図書室に向かったのだった。
「それにしても私って、……ドラコとキスをした時、そんなに無防備な表情を―――人に見せられないような顔をしていたのね。」
「それは」ドラコは一瞬にして脳裏にある光景が浮かんだ。初めてフォーラとキスを交わした日、唇を離した彼女は恍惚とした顔でドラコの方を見つめていたのだ。実のところ、ドラコはあの時のことを何度思い返したか分からない程で、その度に若干動悸がした。「まあ……僕が独り占めしたくなるような感じだった。……もし君のその表情を他の奴が見たら、きっとそいつも君にキスしたくなっただろうから」
「!そ、そんなこと……。」
フォーラは『そんなことない』と言いかけたが、彼女もふとドラコとキスを交わした時のことを思い出した。あの時のドラコは切なそうな、切羽詰まったような表情をしていて、随分胸の辺りがざわついた記憶がある。
「……確かに私も同じだわ。私、ドラコの特別な視線を他の女の子に見せたくないみたい。だって、すっごくドキドキしたんだもの。」
フォーラは隣を歩くドラコにその照れた表情を向けた。そしてその拍子に二人の視線が合わさると、ドラコは思わず眉を下げ、軽く口角を上げた。
「なんだ、僕たちは同じことを考えていたんだな」
ドラコは先程からフォーラを愛でたくて仕方がない状態だったため、喜びに身を任せてその衝動を昇華するように、彼女の頭を何度か優しく撫でた。そうして間もなく二人は玄関ホールに続く階段を登り切り、明るい空間に出たのだった。
ドラコはフォーラの髪から手を下して前を向いたのだが、すると今度はフォーラがドラコの腕に軽く手を添えた。彼はフォーラが腕を組むようなことをしてくるとは思わず、少々その腕を強張らせた。
フォーラはドラコと歩みながら玄関ホールを軽くキョロキョロと見渡した。本来なら今がまだ授業時間なのも相まって、ホールには誰一人いなかった。
「ねえドラコ。……私たち二人とも、あまり人前での恋人らしいスキンシップを望んでいないのは、よく分かったわ。だけど……。」
フォーラはドラコと並んで校庭へ続く樫の大扉の前まで来ると、少々緊張気味にじっと彼を見上げた。
「二人っきりの時は、キスの一つくらいはしてもいいのよね?」
「!」
その時、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。その音に驚いてかもしくはフォーラの発言に驚いたのか、ドラコの心臓はドキリと強く脈打った。彼はその場で足を止め、先程のフォーラ同様、自分たち以外誰もここにいないことを確かめるべく、無意識に辺りをサッと見渡した。
ドラコはほんの少し緊張気味にフォーラの方へ視線を戻した。すると程なくして彼は僅かに首を前に傾け、彼女の頬に一つキスを落としたではないか。フォーラは自分からドラコに口付けようと思って先程の質問をしたため、彼の方からアクションがあったことに少々驚き、その場に固まってしまった。
ドラコはフォーラの不意を突けたことに幾らか満足そうに彼女を見つめた。そして次に彼は、自らの片方の頬を彼女に軽く差し出した。フォーラは彼の様子から、彼が自分に何を求めているかを即座に理解した。
フォーラはドラコの腕に添えている手をきゅっと握り、彼の頬にそっと唇を触れさせた。程なくして彼女がドラコからパッと顔を離すと、二人は少々赤みの差した互いの顔を見つめた。この場所はいつ誰が訪れてもおかしくない玄関ホールであるが故に、二人とも敢えてお互いの頬に触れる程度に留めた。しかし授業が終わったばかりの今なら、生徒の集団がここを通過するまでまだギリギリ時間がある。その言い訳に加え、頬へのキスで燻っている心臓の鼓動に後押しされるようにして、二人は短く唇を触れ合わせた。
そうしていたのは本当に僅かの間だけだったが、顔を離したフォーラが気恥ずかしそうに微笑んだ。
「ありがとう。」
彼女のそんな姿に、やはりドラコは自分の口元が緩む感覚がした。彼は気を引き締め直して表情を整えると、姿勢も正した。
「あ、ああ」ドラコはこれ以上自分の表情筋が崩れるのを恐れてフォーラから視線を逸らした。彼女にあまり格好悪いところを見せるわけにはいかない。それに上階で生徒の群衆が廊下を歩く音や、その生徒たち目掛けて恐らくピーブズがイタズラ騒ぎを起こす音が大きくなってきた。あまりお互いに近づき過ぎていては、ピーブズにこの場を見つかったが最後、格好の餌食になってしまうのは目に見えていた。
ドラコはフォーラから一歩退くと、軽く咳払いをして再び彼女の方を見た。
「こちらこそ、僕の我儘でここまでついてきてくれてありがとう。……それじゃ、僕はもう競技場に行くことにするよ」
「ええ、あまり無理せずにね。」
フォーラが胸の辺りで小さく手を振る姿をドラコは名残惜しそうに見ながら、彼も軽く片手を上げて挨拶を返した。そうして彼は校庭の方へと立ち去って行った。そんな彼をフォーラはその姿が見えなくなるまで眺め、笑顔をこぼした。その後間もなくして彼女は校内の方に振り返り、行く予定では無かった図書室に向かったのだった。