18. 特別な君②
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「ねえフォーラ、ドラコは無理矢理フォーラに『嫌い』と言ったんでしょう?」今度はルニーが言った。「今なら、少し前にフォーラが言っていたことの意味が分かる気がする。ドラコは何か事情があってフォーラから離れているんじゃないかって。私はてっきりドラコが振られた手前、今更素直になれないだけかと思っていたけど、でも、何だかそんなことよりももっと深刻な何かがありそうに思えて仕方ないわ」
ルニーの話にフォーラが静かに頷いた。
「ええ、私もそう思うわ。……だけどね、以前も言った通り、私はもうドラコを追いかけることに疲れてしまったの。それはきっと追いかけられていたドラコだって同じだわ。現に今日、ドラコはあんな様子だったわけだし……。
だから私はこれ以上自分から彼に迫ったり、負担をかけたりすることは止めにしようと思うの。それに、これを機にドラコから離れなきゃ。理由はどうあれドラコがそれを望んでいるんだから。
……勿論、いつかドラコから、何かしら打ち明けてくれれば嬉しいけれどね」
フォーラが最後は笑顔でそのように言ったものだから、パンジーとルニーは本当にどうにかしてあげたい気持ちで一杯になった。しかし二人とも、ドラコに本音を白状するよう迫るのは逆効果だと分かっていた。自分たちではどうしようもない状況に、パンジーとルニーは思わずフォーラを抱きしめた。
「フォーラ、私たちこれくらいしかしてあげられないけど……辛い時は泣いたって良いのよ」
「!」
フォーラはパンジーの言葉に、思わず間近にいる彼女を見た。パンジーは不安げな様子でこちらを見つめ、フォーラの頭を幾らか撫でた。すると今度はルニーが口を開いた。
「ドラコが何を考えているか分からなさ過ぎて、本当は呪ってでも吐かせたいくらい!だけど今はフォーラのために我慢するわ。でも、吹っ切れたらいつでも言ってね。直ぐに彼を呪って憂さ晴らしよ!」
フォーラがルニーを見ると、ルニーは彼女を安心させようとにっこり笑ってみせた。二人からは、長く片想いした相手を諦める辛さを労わってくれているのがひしひしと伝わってきた。
フォーラはドラコから身を引くといっても表面上だけに留めるつもりだった。そのため二人が彼女の事情を知らない分、必要以上に心配させていることを申し訳なく思った。
(ドラコに拒否されることは、ある程度覚悟していたんだもの……だから平気だわ。それにこれからまだやることが沢山あるし、落ち込んでなんていられないもの)
「……二人ともありがとう。だけど私は大丈夫よ―――」
フォーラは二人を宥め返そうとそのように伝えた。しかし、彼女の瞳からは自然と涙が零れていた。これには彼女自身、随分驚いてしまった。
「えっ、あれ、私……。違うの、本当に大丈夫なのよ。寧ろ心配なのはドラコの方だわ。だって……」
フォーラは自分が大丈夫な本当の理由を二人に伝えることはできなかったが、それでも本心から平気であることを訴えた。しかしフォーラの涙は止まる様子がなかった。そしてそんな彼女を見たパンジーとルニーに一層きつく抱き締められた時、フォーラは自分が思っていた以上に強がっていて、全然大丈夫ではなかったのだと気付かされた。
「っ……」
フォーラは声を詰まらせながら二人をぎゅっと抱き締め返した。
「……ありがとう……。」
もうドラコとの約束通り、彼とは自ら積極的に話をすることもない。そう思うと、彼女はドラコと長く続いてきた幼馴染の関係が、今度こそ自分の力では修復できないという現実を突きつけられた気がした。
彼女はそれでもいいと思えるくらい冷静になろうと努めた筈だった。それなのに友人二人の前ではこんな風に涙を流してしまう程、フォーラも今だけは、ドラコへの片想いに敗れたことを悲しむただの少女だったのだ
さて、その日の翌日、フォーラは昨日の涙のせいで幾らか瞳を腫れさせていた。何度も目を洗い流してから就寝したのだが、こればかりはどうしようもなかった。彼女はもう十分変身術の『人の変身』で顔のパーツを長時間変化させることができたが、昨日のことがあっては、それをする元気もなかった。
そしてこの日を境に、フォーラは今まで髪につけていたナルシサスの花飾りを外してしまった。それに気づいた何人かの友人からは、飾りを付けないのかと度々問われた。
「特に深い意味は無いのよ。ただの気分だから……。」
元々、フォーラはあのナルシサスの花を自宅のクリスマスパーティーでいつの間にか誰かに贈られた。そしてその花にフォーラ自身の魅力を引き立てる魔法がかかっていると分かった時から、身に着けることでドラコが再び自分を向いてくれればいいと思っていた。しかし昨日のことがあって、もうこの花飾りを着ける意味がなくなってしまった。
朝食に向かう道中、唯一この学校で髪飾りの効果を知っているセオドールも、フォーラの髪型の変化に気が付いたようだった。彼は彼女の近くを歩いていたパンジーとルニーが話に夢中になっているのを見計らい、フォーラに話しかけた。
「おはよう。今日は例の黄色いラッパ水仙を身に着けていないんだね」
「あら、おはようセオドール。そうなの。良く気がついたわね。」
フォーラが平然とした様子でそう言ったが、セオドールは腑に落ちない様子で続けて質問した。
「それって、ドラコのことはもういいってこと?」
「!……ええ。そういうことになるわ。」
フォーラは昨日散々涙を流しただけあって、毅然とした態度でいつも通り微笑んでみせることができた。セオドールはそのことを知らなかったが、一方でフォーラがドラコに随分執着していたのを知っていただけあって、その違和感に気が付かないわけがなかった。とはいえセオドールは自身の性格上、誰かを心配するのは本当に柄ではないと思っていたため、フォーラが平静を装っているのならそれ以上深く突っ込むつもりもなかった。彼は何か会話を繋ごうと再び口を開いた。