18. 特別な君②
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「私、今日貴方に伝えたいことがあると言っていたわよね。……実は、去年貴方と見たプリムローズの群生の中で、貴方に伝えようとしていたことと同じ話なの。」
フォーラは怖気づかないよう自分を奮い立たせ、心からの笑顔をドラコに向けた。ドラコは彼女のその表情に既視感を覚えずにはいられなかった。つい先日、フォーラが記憶をなくす前。自分と彼女しかいない『闇の魔術の防衛術』の教室で、彼女が見せて来た表情そのものだったのだ。
「ずっと言えなかったけれど、私ね……長い間、ドラコのことを想ってきたわ。ドラコが四年生の終わりに告白してくれた時、私は貴方の気持ちを断ってしまったけれど、本当は……。それこそ、プリムローズを一緒に見るよりも前から貴方のことを見ていたわ。何なら今も……。」
言い回しこそ若干異なるものの、フォーラが伝えてきた言葉は、あの時教室で彼女が発した言葉と殆ど同じだった。そしてその後の彼女は、これまでドラコのことをどう思っていたか、純血に対する考え方の違いでドラコの告白を断ったこと、そして、クリスマスをきっかけにドラコを諦めたくない思いが勝ったことを、以前と同じように伝えてきたのだった。
「私、ドラコに嫌われていると分かっていたけど、少しでも私の気持ちを知って欲しくて。だからクリスマス以降、目に見えて分かるくらい貴方に積極的になっていたの。そのせいで、余計に貴方を不快にさせる可能性があることも分かっていたけれど……。それはこうして話している今も同じかもしれないわね……。」
そう言って自虐的に笑ったフォーラは、以前教室で会話した時と同様に、これまで冷たくされてきた相手に向かって勇気を振り絞って気持ちを伝えている様子だった。
前回フォーラに同じことを言われたドラコは、彼女の言葉に勢い余って『不快になる筈がない』と否定した。しかしそれは防衛術の教室で学んだ杖の振り方以外の全てが、ドラコ以外の生徒の記憶から消えてしまうことを彼のみが知っていたからだった。
そのためドラコは、今あの時と同じ言葉をフォーラに伝えてしまったら、今度こそ彼女を突き離せなくなってしまうと感じていた。
「君は、どうして僕がこれまで君に厭味をふっかけていたか分かるか?」
(本当はそんなことしたくなかった)
「僕が君に振られた鬱憤を、君にぶつけないと気が済まなかったからだ」
(本当の僕は、そんなクズじゃない)
「君を避けたのは、君が僕の気持ちを拒否したのに、最近になって都合よく掌を返してご機嫌を取ろうとしてきたことが気に入らなかったからだ」
(違う。フォーラに声をかけてもらえることが、どれだけ嬉しかったか)
「だから僕にはとっくに君を特別扱いする気はない」
(いいや、誰よりもフォーラが特別だ。特別だから、僕はこんな風に君を突き放すしか……)
「君は僕に寄こした手紙に『貴方が現れなければ、貴方のことは諦めることにする』と書いていただろう。そもそも僕としては、君が今日倒れなければここに来ることもなかった。
つまり……。君は賢いから、もう僕が何を言いたいか分かる筈だろう」
ドラコはこれ以上フォーラを否定することができなかった。それだから、こうして殆ど『嫌いだ』と言っているも同然の言葉を並べるのが限界だった。
しかしもう既にこれだけ伝えたというのに、フォーラは首を横に振るばかりだった。
「いいえ、分からないわ……。貴方の言いたいことが何なのか、答えを教えて?」
「!き、君は馬鹿なのか!これ以上言わせるな……疲れるんだ!」
「貴方の言う通り、私はお馬鹿さんなの。だから、ドラコの言葉で簡潔に教えてほしいわ。そうすれば、きっと貴方を諦められる気がするもの。」
予想外のフォーラの返答にドラコは内心狼狽えていた。彼女の言動から察するに、ドラコには彼女が自分を諦めるため、ハッキリとした言葉でトドメを刺してほしいと言っているように感じた。
しかし先程の通り、ドラコはもうこれ以上フォーラを拒否できなかった。―――しかしこれで彼女が完全に自分を諦めるなら……。
「そこまで言うなら、お望み通りの言葉を言ってやる」
ドラコは心臓の鼓動がドクンドクンと大きくなるのを感じた。加えて固く握りしめた拳が、この寒さの中でもどういうわけだかじんわりと汗ばんでいるのを感じていた。
「僕は、君が」
(―――嫌いだ。その一言だけ言えばいい。そうすればもう彼女は僕を諦めると言っているんだから)
「君が……」
(嫌いだ。心の底から……)
ドラコが過去、フォーラに『嫌いだ』と言ったのは一度きりだった。三年生の冬、当時の教員だったリーマス・ルーピンにフォーラが好意を寄せていると分かった時のことだ。そのようなフォーラに嫉妬心から言い放った言葉だったが、ドラコはそうして彼女を傷つけると同時に彼女への恋心を初めて自覚したのだった。
あれ以来、ドラコは一度もフォーラに『嫌い』などという言葉を伝えたことがなかった。いや、そもそもそんな風に思ったこともないし、嘘でも二度と伝えたくないと思っていた。
「君なんか……」
ドラコはフォーラの髪にナルシサスの花飾りが煌めくのを見た。その花の『報われぬ恋』という花言葉は、彼女よりも自分の方がよっぽど似合うと思った。ドラコはフォーラから顔を背け、自身の唇を噛んだ。そしておもむろに一筋の涙を流したのだった。
「……嫌いだ」
ドラコは消え入りそうな声でそう言った。彼はフォーラを傷つける言葉を放った筈なのに、自分自身に大きなダメージを受けていた。彼はこんなに弱々しい姿を彼女に見せるつもりなど一切なかった。しかしこれではまるで、彼女に未練があると言っているも同然ではないか。
ドラコはもしかすると、そんな自分を見てフォーラが食い下がって来るかもしれないと思った。『貴方が私のことを嫌いだとは思えない』とか、そういう事を言われると思ったのだ。
フォーラは怖気づかないよう自分を奮い立たせ、心からの笑顔をドラコに向けた。ドラコは彼女のその表情に既視感を覚えずにはいられなかった。つい先日、フォーラが記憶をなくす前。自分と彼女しかいない『闇の魔術の防衛術』の教室で、彼女が見せて来た表情そのものだったのだ。
「ずっと言えなかったけれど、私ね……長い間、ドラコのことを想ってきたわ。ドラコが四年生の終わりに告白してくれた時、私は貴方の気持ちを断ってしまったけれど、本当は……。それこそ、プリムローズを一緒に見るよりも前から貴方のことを見ていたわ。何なら今も……。」
言い回しこそ若干異なるものの、フォーラが伝えてきた言葉は、あの時教室で彼女が発した言葉と殆ど同じだった。そしてその後の彼女は、これまでドラコのことをどう思っていたか、純血に対する考え方の違いでドラコの告白を断ったこと、そして、クリスマスをきっかけにドラコを諦めたくない思いが勝ったことを、以前と同じように伝えてきたのだった。
「私、ドラコに嫌われていると分かっていたけど、少しでも私の気持ちを知って欲しくて。だからクリスマス以降、目に見えて分かるくらい貴方に積極的になっていたの。そのせいで、余計に貴方を不快にさせる可能性があることも分かっていたけれど……。それはこうして話している今も同じかもしれないわね……。」
そう言って自虐的に笑ったフォーラは、以前教室で会話した時と同様に、これまで冷たくされてきた相手に向かって勇気を振り絞って気持ちを伝えている様子だった。
前回フォーラに同じことを言われたドラコは、彼女の言葉に勢い余って『不快になる筈がない』と否定した。しかしそれは防衛術の教室で学んだ杖の振り方以外の全てが、ドラコ以外の生徒の記憶から消えてしまうことを彼のみが知っていたからだった。
そのためドラコは、今あの時と同じ言葉をフォーラに伝えてしまったら、今度こそ彼女を突き離せなくなってしまうと感じていた。
「君は、どうして僕がこれまで君に厭味をふっかけていたか分かるか?」
(本当はそんなことしたくなかった)
「僕が君に振られた鬱憤を、君にぶつけないと気が済まなかったからだ」
(本当の僕は、そんなクズじゃない)
「君を避けたのは、君が僕の気持ちを拒否したのに、最近になって都合よく掌を返してご機嫌を取ろうとしてきたことが気に入らなかったからだ」
(違う。フォーラに声をかけてもらえることが、どれだけ嬉しかったか)
「だから僕にはとっくに君を特別扱いする気はない」
(いいや、誰よりもフォーラが特別だ。特別だから、僕はこんな風に君を突き放すしか……)
「君は僕に寄こした手紙に『貴方が現れなければ、貴方のことは諦めることにする』と書いていただろう。そもそも僕としては、君が今日倒れなければここに来ることもなかった。
つまり……。君は賢いから、もう僕が何を言いたいか分かる筈だろう」
ドラコはこれ以上フォーラを否定することができなかった。それだから、こうして殆ど『嫌いだ』と言っているも同然の言葉を並べるのが限界だった。
しかしもう既にこれだけ伝えたというのに、フォーラは首を横に振るばかりだった。
「いいえ、分からないわ……。貴方の言いたいことが何なのか、答えを教えて?」
「!き、君は馬鹿なのか!これ以上言わせるな……疲れるんだ!」
「貴方の言う通り、私はお馬鹿さんなの。だから、ドラコの言葉で簡潔に教えてほしいわ。そうすれば、きっと貴方を諦められる気がするもの。」
予想外のフォーラの返答にドラコは内心狼狽えていた。彼女の言動から察するに、ドラコには彼女が自分を諦めるため、ハッキリとした言葉でトドメを刺してほしいと言っているように感じた。
しかし先程の通り、ドラコはもうこれ以上フォーラを拒否できなかった。―――しかしこれで彼女が完全に自分を諦めるなら……。
「そこまで言うなら、お望み通りの言葉を言ってやる」
ドラコは心臓の鼓動がドクンドクンと大きくなるのを感じた。加えて固く握りしめた拳が、この寒さの中でもどういうわけだかじんわりと汗ばんでいるのを感じていた。
「僕は、君が」
(―――嫌いだ。その一言だけ言えばいい。そうすればもう彼女は僕を諦めると言っているんだから)
「君が……」
(嫌いだ。心の底から……)
ドラコが過去、フォーラに『嫌いだ』と言ったのは一度きりだった。三年生の冬、当時の教員だったリーマス・ルーピンにフォーラが好意を寄せていると分かった時のことだ。そのようなフォーラに嫉妬心から言い放った言葉だったが、ドラコはそうして彼女を傷つけると同時に彼女への恋心を初めて自覚したのだった。
あれ以来、ドラコは一度もフォーラに『嫌い』などという言葉を伝えたことがなかった。いや、そもそもそんな風に思ったこともないし、嘘でも二度と伝えたくないと思っていた。
「君なんか……」
ドラコはフォーラの髪にナルシサスの花飾りが煌めくのを見た。その花の『報われぬ恋』という花言葉は、彼女よりも自分の方がよっぽど似合うと思った。ドラコはフォーラから顔を背け、自身の唇を噛んだ。そしておもむろに一筋の涙を流したのだった。
「……嫌いだ」
ドラコは消え入りそうな声でそう言った。彼はフォーラを傷つける言葉を放った筈なのに、自分自身に大きなダメージを受けていた。彼はこんなに弱々しい姿を彼女に見せるつもりなど一切なかった。しかしこれではまるで、彼女に未練があると言っているも同然ではないか。
ドラコはもしかすると、そんな自分を見てフォーラが食い下がって来るかもしれないと思った。『貴方が私のことを嫌いだとは思えない』とか、そういう事を言われると思ったのだ。