17. 特別な君①
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その頃のフォーラは、パンジーやルニーと共にスリザリン寮に戻っている最中だった。三人は先程の教室でのフォーラの発言について意見を交わした。
「私、フォーラの言葉に納得したわ」ルニーが続けた。「あの雑誌の内容が事実かどうかは別として、ドラコたちは死喰い人ではないんだものね。確かに彼ら自身が避けられるのは違うと思ったの。私もちょっと周りの反応につられていたから、ドラコたちには申し訳なかったわ」
「雑誌にそういう記事が載ったのは突然だったし、ドラコも特に反論も否定もしなかったから余計にね……。それにしてもフォーラ、随分勇敢だったわね!あんなに大勢の前で、びっくりしたわ」
今度はパンジーが話し、それを受けてフォーラは少々謙遜気味に微笑んだ。
「実は私も、あんな風に堂々と振る舞えるとは思わなくて少し驚いたの。だけど私だって人のことは言えないわ。現に雑誌が出回ってからはドラコへの接触を避けていたんだから……。とはいえそれでも私はやっぱり、彼の見方でいたかったんだわ。」
フォーラはそのように言いつつも、彼女たちに嘘を吐いたことを心の中で謝罪した。ドラコを避けたのはわざとだったし、加えてそろそろ彼に自分は味方だとアピールする頃合いだと思っていた。ブレーズがあのように大勢の前で声を掛けてきたのは想定外だったが、それをチャンスと思えば人前で意見することなど造作もなかった。今の彼女はドラコのためなら幾らでも自分を偽れたのだ。
するとそんなフォーラの本音を知らないルニーが言葉を引き継いだ。
「それにしても、どうしてドラコは頑なにフォーラを避けるのかしらね?折角人が告白しようとしてるっていうのに、取りつく島もないなんて。絶対まだドラコはフォーラに気があると思ったのに。彼が何を考えてるのか私にはさっぱり分からないわ」
「やっぱり今までフォーラにつらく当たってきた分、素直になれないのかしらね?」パンジーが言った。
正 直言ってフォーラも彼女たちと同じくドラコの本心が分からなかった。ただ、近頃のドラコが以前のように嫌がらせ紛いの行動を取らなくなり、つい先程はなんと少しの間でも自分と見つめ合っていたことを思うと……。彼がこちらを避けるのは、やはり何か事情があると思わずにはいられなかった。
「ドラコが私を避ける理由は分からないけれど、自惚れでなければ、彼は私が味方したことを嫌がっていなかった筈。それどころか、席に着いていなかった私の手を引いて座らせてくれたの。」
これにはパンジーもルニーも驚いたように顔を見合わせた。フォーラが続けた。
「だけど私、もうこれ以上ドラコを追いかけるのは流石につらいの……。私が避けられるきっかけを作ったのに、随分身勝手な話ではあるのだけど。」
「フォーラはよく頑張ったわよ。それこそ頑固な相手と話そうと努力してたわけだし、そんなの心が折れて当然なんだから」ルニーの励ましにパンジーも頷き、フォーラはお礼を伝えた。
「二人とも、ありがとう。……それで実は私、さっきの授業終わりに―――」
フォーラは二人に例のメモの内容と、それをドラコに渡してきた旨を説明した。
「えっ、それってつまり……?」パンジーが不安げに確認すると、フォーラは力なく笑った。
「次を、ドラコに私の気持ちを伝える最後の機会にするわ。」
その後はパンジーとルニーがやきもきしたり、次第に二人の中で沸々と高まるドラコへの苛立ちをフォーラが何とか宥めたりした。
「大体!ドラコが煮え切らない態度だからフォーラはこんなにも頑張ってるのよ?避けて逃げ回るくらいならスッパリ迷惑だって言ってくればいいのに、それもしないなんて!」
「ルニー、私も同じくらい腹が立つけど、それだとフォーラが振られちゃうことになるわよ」
「あっ、そっか!フォーラごめんね、そんなつもりじゃないのよ。兎に角、先ずはドラコが待ち合わせに来てくれればいいんだけど」
本当にこの二人の友人からは自分を思ってくれているのが全面に伝わってきて、心から有難い気持ちで一杯になってしまう。
「ええ、本当にね。二人ともありがとう。」
二人は不安がったが、フォーラとしてはドラコはきっと指定の場所にやって来ると算段していた。というのも、ドラコが明らかに後ろ髪を引かれている様子だったからこそ、彼女はあえて待ち合わせ場所に真冬の寒空の下を指定した。彼が少しでも彼女の身を案じる気持ちがあるのなら、きっとそんな環境に幼馴染を放置しないだろうと思ったのだ。
そして、その待ち合わせを今日や明日ではなく、わざわざ五日後にしたのも理由があった。
(私、土曜日までドラコには話し掛けないわ。その間、きっと彼は嫌でも頭の片隅に私を置くことになる筈。現時点でドラコが私のことを幾らかでも気に掛けてくれていると分かった今、更に彼の意識をこちらに向けようとするなら、そういう状況を作ってしまえばいいのよ……)
とはいえ、もしドラコが現場にやって来ても、好意を受け入れてもらえない可能性だってあり得る。そうなればフォーラは本当に今後、彼に対する想いを振り撒くのをやめようと考えていた。ただし、だからといって彼を闇の陣営から引き離すという願望を諦めたわけではなかった。
(私には、エメリア・スイッチの変身術がついているわ。もしドラコに私を受け入れてもらえなければ、その時は……時間がかかっても彼女の術を何としてでも習得してみせる)
エメリアの本に記述されていた『ポリジュースの呪文』は、魔法薬なしで好きな時に特定の人物に変身でき、その効果もポリジュース薬を飲んだ時の比でないのが強みだった。ただし開発者のエメリア以外の成功者はいないとされている。しかしどういうわけか、フォーラにとってはそれが不可能ではないように思えてならなかった。
エメリアの術を習得するには数々の試練がある。高難易度の変身術を幾つか習得したり、変身する対象者の血が必要だったり……。それでもフォーラはそれらの難題を解決しようという気概があった。それは彼女の持つ変身術のセンスやこれまで培ってきた応用力が自信となっていたからだが、やはり何より一番は、ドラコに対する好意や、彼との長い交友関係、そして彼の力になりたいという想い。それらの強い執着心が彼女の心の支えになっていたからで間違いなかった。
「私、フォーラの言葉に納得したわ」ルニーが続けた。「あの雑誌の内容が事実かどうかは別として、ドラコたちは死喰い人ではないんだものね。確かに彼ら自身が避けられるのは違うと思ったの。私もちょっと周りの反応につられていたから、ドラコたちには申し訳なかったわ」
「雑誌にそういう記事が載ったのは突然だったし、ドラコも特に反論も否定もしなかったから余計にね……。それにしてもフォーラ、随分勇敢だったわね!あんなに大勢の前で、びっくりしたわ」
今度はパンジーが話し、それを受けてフォーラは少々謙遜気味に微笑んだ。
「実は私も、あんな風に堂々と振る舞えるとは思わなくて少し驚いたの。だけど私だって人のことは言えないわ。現に雑誌が出回ってからはドラコへの接触を避けていたんだから……。とはいえそれでも私はやっぱり、彼の見方でいたかったんだわ。」
フォーラはそのように言いつつも、彼女たちに嘘を吐いたことを心の中で謝罪した。ドラコを避けたのはわざとだったし、加えてそろそろ彼に自分は味方だとアピールする頃合いだと思っていた。ブレーズがあのように大勢の前で声を掛けてきたのは想定外だったが、それをチャンスと思えば人前で意見することなど造作もなかった。今の彼女はドラコのためなら幾らでも自分を偽れたのだ。
するとそんなフォーラの本音を知らないルニーが言葉を引き継いだ。
「それにしても、どうしてドラコは頑なにフォーラを避けるのかしらね?折角人が告白しようとしてるっていうのに、取りつく島もないなんて。絶対まだドラコはフォーラに気があると思ったのに。彼が何を考えてるのか私にはさっぱり分からないわ」
「やっぱり今までフォーラにつらく当たってきた分、素直になれないのかしらね?」パンジーが言った。
正 直言ってフォーラも彼女たちと同じくドラコの本心が分からなかった。ただ、近頃のドラコが以前のように嫌がらせ紛いの行動を取らなくなり、つい先程はなんと少しの間でも自分と見つめ合っていたことを思うと……。彼がこちらを避けるのは、やはり何か事情があると思わずにはいられなかった。
「ドラコが私を避ける理由は分からないけれど、自惚れでなければ、彼は私が味方したことを嫌がっていなかった筈。それどころか、席に着いていなかった私の手を引いて座らせてくれたの。」
これにはパンジーもルニーも驚いたように顔を見合わせた。フォーラが続けた。
「だけど私、もうこれ以上ドラコを追いかけるのは流石につらいの……。私が避けられるきっかけを作ったのに、随分身勝手な話ではあるのだけど。」
「フォーラはよく頑張ったわよ。それこそ頑固な相手と話そうと努力してたわけだし、そんなの心が折れて当然なんだから」ルニーの励ましにパンジーも頷き、フォーラはお礼を伝えた。
「二人とも、ありがとう。……それで実は私、さっきの授業終わりに―――」
フォーラは二人に例のメモの内容と、それをドラコに渡してきた旨を説明した。
「えっ、それってつまり……?」パンジーが不安げに確認すると、フォーラは力なく笑った。
「次を、ドラコに私の気持ちを伝える最後の機会にするわ。」
その後はパンジーとルニーがやきもきしたり、次第に二人の中で沸々と高まるドラコへの苛立ちをフォーラが何とか宥めたりした。
「大体!ドラコが煮え切らない態度だからフォーラはこんなにも頑張ってるのよ?避けて逃げ回るくらいならスッパリ迷惑だって言ってくればいいのに、それもしないなんて!」
「ルニー、私も同じくらい腹が立つけど、それだとフォーラが振られちゃうことになるわよ」
「あっ、そっか!フォーラごめんね、そんなつもりじゃないのよ。兎に角、先ずはドラコが待ち合わせに来てくれればいいんだけど」
本当にこの二人の友人からは自分を思ってくれているのが全面に伝わってきて、心から有難い気持ちで一杯になってしまう。
「ええ、本当にね。二人ともありがとう。」
二人は不安がったが、フォーラとしてはドラコはきっと指定の場所にやって来ると算段していた。というのも、ドラコが明らかに後ろ髪を引かれている様子だったからこそ、彼女はあえて待ち合わせ場所に真冬の寒空の下を指定した。彼が少しでも彼女の身を案じる気持ちがあるのなら、きっとそんな環境に幼馴染を放置しないだろうと思ったのだ。
そして、その待ち合わせを今日や明日ではなく、わざわざ五日後にしたのも理由があった。
(私、土曜日までドラコには話し掛けないわ。その間、きっと彼は嫌でも頭の片隅に私を置くことになる筈。現時点でドラコが私のことを幾らかでも気に掛けてくれていると分かった今、更に彼の意識をこちらに向けようとするなら、そういう状況を作ってしまえばいいのよ……)
とはいえ、もしドラコが現場にやって来ても、好意を受け入れてもらえない可能性だってあり得る。そうなればフォーラは本当に今後、彼に対する想いを振り撒くのをやめようと考えていた。ただし、だからといって彼を闇の陣営から引き離すという願望を諦めたわけではなかった。
(私には、エメリア・スイッチの変身術がついているわ。もしドラコに私を受け入れてもらえなければ、その時は……時間がかかっても彼女の術を何としてでも習得してみせる)
エメリアの本に記述されていた『ポリジュースの呪文』は、魔法薬なしで好きな時に特定の人物に変身でき、その効果もポリジュース薬を飲んだ時の比でないのが強みだった。ただし開発者のエメリア以外の成功者はいないとされている。しかしどういうわけか、フォーラにとってはそれが不可能ではないように思えてならなかった。
エメリアの術を習得するには数々の試練がある。高難易度の変身術を幾つか習得したり、変身する対象者の血が必要だったり……。それでもフォーラはそれらの難題を解決しようという気概があった。それは彼女の持つ変身術のセンスやこれまで培ってきた応用力が自信となっていたからだが、やはり何より一番は、ドラコに対する好意や、彼との長い交友関係、そして彼の力になりたいという想い。それらの強い執着心が彼女の心の支えになっていたからで間違いなかった。