17. 特別な君①
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そしてフォーラが首だけでなくとうとう身体ごとブレーズの方を向いたものだから、ドラコは瞬間的に彼女がこのままここから離れて前の席に向かうだろうと、そう思った―――ところがフォーラはその場に立ったまま、しかも周囲から幾らか視線を浴びた状態でブレーズに聞こえるように少々声を張って返答した。
「噂はドラコ本人のことじゃないわ。なのに、どうしてそれがドラコから離れる理由になるの?彼は何もしていないのに。」
「えっ」ブレーズは思わず素っ頓狂な声を出した。
ブレーズはまさかフォーラがそんな風に大勢の前で意見してくるとは思ってもみなかった。それはドラコも、パンジーもルニーも、その場に居合わせた他の生徒も同様の感想だった。
ドラコはそのような驚きに加え、どうしてだかその瞬間、目の前の彼女が本当に眩しく見えた―――それはもしかすると普段からドラコが周囲に蔑まれる経験が少ない中、こんな風に庇われたことが殆ど初めてだったからかもしれない。もしくは、例の噂が広まって以降、フォーラがもう自分に関わりたくなくて話しかけてこないのだろうと思っていたのに、こんな風に慕ってくれたことに胸が締め付けられたからかもしれない。
何れにせよ、ドラコがそれ以上フォーラに見とれている時間はなかった。何故なら本鈴が鳴り、教壇側の扉が開いてマクゴナガルが教室に入って来るところだったからだ。
するとドラコはどういうわけだか、頭で考えるよりも早く身体が勝手にフォーラの手首を掴み、そのままその手を引いて彼女を自分の隣に座らせていた。それと入れ違いでマクゴナガルが生徒たちを見渡し、後ろを向いたままのブレーズを注意した。
「ドラコ……」
フォーラは前の生徒の影に隠れてマクゴナガルの視界から外れ、食い入るようにドラコを見た。そして一方のドラコは、彼女の視線や表情、無理に手を引いたせいで少々乱れた彼女の髪、そしてその髪に光るナルシサスの花飾り、その全てを間近に視界に入れていた。目の前の彼女を見ていると、ドラコは先日の『闇の魔術の防衛術』の教室で告白してきた時の彼女の視線を思い出さないわけにはいかなかった。そのせいで、彼は自身の身体がじわじわと火照るのを感じたし、彼女の手首をまだ握ったままの自身の手のひらが、暖炉の火に手をかざしているのかと思う程に熱かった。
「ありがとう、助かったわ。」
フォーラがそのようにお礼を言う意味がドラコには分からなかった。寧ろお礼を言うべきは自分の方だ。彼女はこんなにも多くの同学年の生徒の前で、堂々とドラコを庇ったのだ。普通はそんなことをするのは躊躇うだろう。そもそも彼女の性格からしても、決してそのようなことを進んでするタイプではない筈なのだ。
一体全体、フォーラに何があったというのだろう?
(防衛術の教室で、フォーラは僕を諦めたくないと、そう言った。例の雑誌が出てからは疎遠だったが……僕に対する気持ちがまだ残っているから、だから僕の見方をしてくれているのか?)
ドラコはそのような結論に至ったが、誰かにそう言われるならまだしも、自負するには随分恥ずかしい考えだった。しかしフォーラの行動はそうとしか思えないくらい露骨だったのだ。ドラコは彼女への嬉しさや、申し訳なさ、拒否するしかできないもどかしさに、彼女から視線を外して下唇を噛んだ。
程なくしてマクゴナガルが授業を始める声が聞こえ、二人はハッと我に返った。ドラコがフォーラを掴んでいた手を離すと、少しだけ互いの視線が重なった。そしてその後、どちらからでもなく前方の教壇の方を向いたのだった。
その日の変身術の授業では、ドラコとフォーラが言葉を交わすことはなかった。ドラコは先程のようなことがあり、彼女の隣にいることに気まずさを感じていた。しかし一方のフォーラはそうではなく、寧ろドラコの反応に幾らか満足していた。何せドラコ自ら彼女の手を取り、隣の席に引き寄せたのだから。これまでドラコに避けられ続けていたフォーラにとって、これは大きな進歩だった。
フォーラは先日の防衛術の教室を出てすぐの廊下で、確かにドラコが涙を流す姿を捉えた。あの時彼女はその涙の理由を知らなかった。しかしその後間もなくして、例の雑誌にドラコの父親の名前が死喰い人として公表されたのを見て、フォーラは合点がいった―――『きっとドラコはあの時既に、ルシウスの名があのような形で世間に知らしめられることを知っていたのだろう。そして手の打ちようがない状況にドラコは思わず涙した』―――彼女はそのように結論付けていた。
ルシウス含む死喰い人の名が校内に広まって直ぐ、彼らを父親に持つドラコたち四人の生徒は肩身の狭い思いをしていた。そしてフォーラはそれを機に、雑誌が発売されてから今日までの間、ドラコに積極的な態度を見せるのを完全に止めていた。
その理由は、フォーラが周囲の生徒のようにルシウスの噂を疑っていたからではない。彼女はルシウスが死喰い人であるとこなど既に知っていたのだから。フォーラは幾らドラコに声をかけて彼への好意を伝えようとしても、ドラコが毎回逃げてしまうことに頭を悩ませていた。押してばかりなせいで避けられているのなら、いっそ一旦引くことも必要ではないか―――彼女がそのように考えていた時、ちょうどザ・クィブラーが発刊されたのだ。
フォーラはあの雑誌を読んだ時から、その内容によってドラコが周囲から疎まれる可能性を強く感じていた。そしてそれが予想通りになったものだから、彼女は周囲に便乗する形で、わざとドラコから距離を置いたのだ。その後は先程の通り、時を見計らって彼女が久しぶりにドラコに再び手を差し伸べたわけだが、彼女は彼が自分を見る様子や態度からして、自分の作戦が上手くいったと確信した。
フォーラの行為は事情を知っている人がいたとすれば、わざとドラコを傷つけているようであまり褒められたものではなかっただろう。しかし、わざとそんなことをしていると知っているのは彼女自身だけだ。それに彼女からすれば、耳も貸してくれないドラコと距離を縮めるには、このような状況を作りでもしないとどうしようもなかった。
フォーラはどんな手段を使ってでもドラコとの仲を戻して、彼の知っている情報や、彼の身に降りかかりそうな危険を直接聞くことができればそれでよかった。彼女が望むのは、ドラコを守りたいという想い、ただそれだけだった。
「噂はドラコ本人のことじゃないわ。なのに、どうしてそれがドラコから離れる理由になるの?彼は何もしていないのに。」
「えっ」ブレーズは思わず素っ頓狂な声を出した。
ブレーズはまさかフォーラがそんな風に大勢の前で意見してくるとは思ってもみなかった。それはドラコも、パンジーもルニーも、その場に居合わせた他の生徒も同様の感想だった。
ドラコはそのような驚きに加え、どうしてだかその瞬間、目の前の彼女が本当に眩しく見えた―――それはもしかすると普段からドラコが周囲に蔑まれる経験が少ない中、こんな風に庇われたことが殆ど初めてだったからかもしれない。もしくは、例の噂が広まって以降、フォーラがもう自分に関わりたくなくて話しかけてこないのだろうと思っていたのに、こんな風に慕ってくれたことに胸が締め付けられたからかもしれない。
何れにせよ、ドラコがそれ以上フォーラに見とれている時間はなかった。何故なら本鈴が鳴り、教壇側の扉が開いてマクゴナガルが教室に入って来るところだったからだ。
するとドラコはどういうわけだか、頭で考えるよりも早く身体が勝手にフォーラの手首を掴み、そのままその手を引いて彼女を自分の隣に座らせていた。それと入れ違いでマクゴナガルが生徒たちを見渡し、後ろを向いたままのブレーズを注意した。
「ドラコ……」
フォーラは前の生徒の影に隠れてマクゴナガルの視界から外れ、食い入るようにドラコを見た。そして一方のドラコは、彼女の視線や表情、無理に手を引いたせいで少々乱れた彼女の髪、そしてその髪に光るナルシサスの花飾り、その全てを間近に視界に入れていた。目の前の彼女を見ていると、ドラコは先日の『闇の魔術の防衛術』の教室で告白してきた時の彼女の視線を思い出さないわけにはいかなかった。そのせいで、彼は自身の身体がじわじわと火照るのを感じたし、彼女の手首をまだ握ったままの自身の手のひらが、暖炉の火に手をかざしているのかと思う程に熱かった。
「ありがとう、助かったわ。」
フォーラがそのようにお礼を言う意味がドラコには分からなかった。寧ろお礼を言うべきは自分の方だ。彼女はこんなにも多くの同学年の生徒の前で、堂々とドラコを庇ったのだ。普通はそんなことをするのは躊躇うだろう。そもそも彼女の性格からしても、決してそのようなことを進んでするタイプではない筈なのだ。
一体全体、フォーラに何があったというのだろう?
(防衛術の教室で、フォーラは僕を諦めたくないと、そう言った。例の雑誌が出てからは疎遠だったが……僕に対する気持ちがまだ残っているから、だから僕の見方をしてくれているのか?)
ドラコはそのような結論に至ったが、誰かにそう言われるならまだしも、自負するには随分恥ずかしい考えだった。しかしフォーラの行動はそうとしか思えないくらい露骨だったのだ。ドラコは彼女への嬉しさや、申し訳なさ、拒否するしかできないもどかしさに、彼女から視線を外して下唇を噛んだ。
程なくしてマクゴナガルが授業を始める声が聞こえ、二人はハッと我に返った。ドラコがフォーラを掴んでいた手を離すと、少しだけ互いの視線が重なった。そしてその後、どちらからでもなく前方の教壇の方を向いたのだった。
その日の変身術の授業では、ドラコとフォーラが言葉を交わすことはなかった。ドラコは先程のようなことがあり、彼女の隣にいることに気まずさを感じていた。しかし一方のフォーラはそうではなく、寧ろドラコの反応に幾らか満足していた。何せドラコ自ら彼女の手を取り、隣の席に引き寄せたのだから。これまでドラコに避けられ続けていたフォーラにとって、これは大きな進歩だった。
フォーラは先日の防衛術の教室を出てすぐの廊下で、確かにドラコが涙を流す姿を捉えた。あの時彼女はその涙の理由を知らなかった。しかしその後間もなくして、例の雑誌にドラコの父親の名前が死喰い人として公表されたのを見て、フォーラは合点がいった―――『きっとドラコはあの時既に、ルシウスの名があのような形で世間に知らしめられることを知っていたのだろう。そして手の打ちようがない状況にドラコは思わず涙した』―――彼女はそのように結論付けていた。
ルシウス含む死喰い人の名が校内に広まって直ぐ、彼らを父親に持つドラコたち四人の生徒は肩身の狭い思いをしていた。そしてフォーラはそれを機に、雑誌が発売されてから今日までの間、ドラコに積極的な態度を見せるのを完全に止めていた。
その理由は、フォーラが周囲の生徒のようにルシウスの噂を疑っていたからではない。彼女はルシウスが死喰い人であるとこなど既に知っていたのだから。フォーラは幾らドラコに声をかけて彼への好意を伝えようとしても、ドラコが毎回逃げてしまうことに頭を悩ませていた。押してばかりなせいで避けられているのなら、いっそ一旦引くことも必要ではないか―――彼女がそのように考えていた時、ちょうどザ・クィブラーが発刊されたのだ。
フォーラはあの雑誌を読んだ時から、その内容によってドラコが周囲から疎まれる可能性を強く感じていた。そしてそれが予想通りになったものだから、彼女は周囲に便乗する形で、わざとドラコから距離を置いたのだ。その後は先程の通り、時を見計らって彼女が久しぶりにドラコに再び手を差し伸べたわけだが、彼女は彼が自分を見る様子や態度からして、自分の作戦が上手くいったと確信した。
フォーラの行為は事情を知っている人がいたとすれば、わざとドラコを傷つけているようであまり褒められたものではなかっただろう。しかし、わざとそんなことをしていると知っているのは彼女自身だけだ。それに彼女からすれば、耳も貸してくれないドラコと距離を縮めるには、このような状況を作りでもしないとどうしようもなかった。
フォーラはどんな手段を使ってでもドラコとの仲を戻して、彼の知っている情報や、彼の身に降りかかりそうな危険を直接聞くことができればそれでよかった。彼女が望むのは、ドラコを守りたいという想い、ただそれだけだった。