17. 特別な君①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そんなある日の変身術の授業前、ドラコは偶然にも一人で二人掛けの最後尾席に収まっていた。最近はスリザリン生含め、周囲の生徒から例の雑誌の件でヒソヒソと噂されることが多かったのもあり、基本はドラコ、クラッブ、ゴイル、セオドールの四人でなるべく身を固めて授業に出席していた。しかし今日はドラコがクラッブたちより遅れて教室に入ったため、彼らから離れた空席を取るしかなかったのだ。
程なくして予鈴が鳴った。もう誰も今日は自分の隣に座らないだろう。ドラコが周囲から向けられるヒソヒソ声を感じながらそのように思った時、教室の一番後ろの扉が軽く開いて誰かが入ってくる音がした。ドラコはそれを気にも留めなかったのだが、その人物は彼の隣の席にやってくると、少々息を切らしながら声を掛けたのだった。
「ドラコ、ここ、座ってもいいかしら?」
「えっ?」
そこにはフォーラが窺うような表情で立っていて、真っすぐドラコの方を見ていたのだ。彼はその瞬間に様々なことが頭を過った―――君はあの雑誌が出回って以降こちらに話し掛けてこなかったではないか。いや、寧ろ黒い噂の的になっている自分に近付かない方がいいだろうに、どうしてわざわざ隣の席に?―――ドラコが突然の事に声が出せずにいると、彼女は自身が授業ギリギリにやって来たのを不思議がられているのだと勘違いし、息を整えながら気恥ずかしそうに言葉を続けた。
「用事に時間がかかって、到着が遅れてしまったの。」
「それは―――」
ドラコが回らない頭で言葉を選ぶ間もなく、咄嗟に「大変だったな」と続けようとした時、不意に前の席の方からブレーズがこちらに声を投げてきた。
「おーいフォーラ!そんな噂の立つ奴の隣なんかより、こっちの席が空いてるぜ?」
フォーラもドラコも反射的にブレーズがいる方に顔を向けた。声の主は前方の席にいて、そこからすぐ近くの空席を指差してフォーラを手招きしていた。ドラコからすれば、どう見てもブレーズがこの状況を喜んでいるように思えてならなかった。どうやらブレーズは周囲の目がある今がまさに、意中のフォーラの意識をドラコから引き離す最大のチャンスだと考えたようだった。
そしてフォーラが首だけでなくとうとう身体ごとブレーズの方を向いたものだから、ドラコはきっと彼女がこのまま前の席に向かうだろうと瞬間的に予想した。ところが彼女はその場に留まったまま、しかも周囲から幾らか視線を浴びた状態で、ブレーズに聞こえるように少々声を張って返答した。
「噂はドラコ本人のことじゃないわ。それなのに、どうしてそれがドラコから離れる理由になるの?彼は何もしていないのに。」
「えっ」ブレーズは思わず驚きの声を発した。まさかフォーラの性格上、そんな風に大勢の前で意見してくるとは思わなかったのだ。それはドラコも、パンジーもルニーも、その場に居合わせた他の同級生も同じくだった。
ドラコはそのような驚きに加え、どういうわけかその瞬間、目の前のフォーラが本当に眩しく見えた。それはもしかすると普段からドラコが周囲に蔑 まれる経験が少ない中、こんな風に庇われたのが殆ど初めてだったからかもしれない。もしくは雑誌の噂が広まって以降、彼女が自分との関りを避けているだろうと思っていたのに、そうではなかったことに心の底から安堵したからかもしれない。
いずれにせよ、ドラコがそれ以上フォーラに見とれている時間はなかった。何故なら本鈴が鳴り、教壇側の扉が開いてマクゴナガルが教室に入ってきたのだ。するとドラコは気付いた時には頭で考えるよりも先に片手が勝手にフォーラの手首を掴み、そのまま自身の方へ引いて彼女を自分の隣に座らせていた。それと入れ違いでマクゴナガルが生徒たちを見渡し、後ろを向いたままのブレーズを注意した。
「ドラコ……」
フォーラは前の生徒の影に隠れてマクゴナガルの視界から外れ、食い入るようにドラコを見た。そして一方の彼は、彼女の視線や表情、無理に手首を引いたせいで少々乱れてしまった髪、そしてその髪に光る黄色いナルシサスの花飾り、その全てを間近に視界に入れていた。目の前の彼女を見ていると、どうにも先日の防衛術の教室で二人きりだった時の彼女の一途さを思い出さないわけにはいかなかった。そのせいで彼は身体がじわじわと火照るのを感じたし、彼女の手首を握ったままの手のひらが、まるで暖炉の火にかざしているかのように熱かった。
「ありがとう、助かったわ。」
フォーラがそのようにお礼を言う意味がドラコには分からなかった。寧ろお礼を言うべきはこちらの方だ。彼女はこんなにも多くの同学年の生徒の前で堂々と庇ってくれたのだから。普通ならそんな正義感のあることをするのは躊躇われるだろうし、そもそも彼女の性格からしても、けしてそういうことを進んでするタイプではない筈なのだ。一体全体、彼女に何があったというのだろう?
(防衛術の教室で、フォーラは僕を諦めたくないと、そう言った。例の雑誌が出回ってからは疎遠だったが……僕に対する気持ちがまだ残っているから、だから僕の見方をしてくれているのか?)
ドラコは一先ずそのような結論に至ったが、誰かにそう言われるならまだしも、自負するには随分恥ずかしい考えだった。今回のフォーラの行動が単に同情からきている可能性は否めないが、ドラコは嬉しさや申し訳なさ、拒否するしかできないもどかしさによって軽く下唇を噛んだ。すると程なくしてマクゴナガルが授業を始めたため、二人はハッと我に返った。そしてドラコがフォーラの手首を掴んでいた自身の手を離すと、その後はどちらからでもなく前方の教壇の方を向いたのだった。
その日の変身術の授業中、二人が言葉を交わすことはなかった。ドラコは先程のような事があってフォーラの隣にいることに気まずさを感じていた。しかし一方の彼女はそうではなく、寧ろ彼の反応に幾らか満足していた。何せドラコ自ら彼女の手を取り、隣の席に引き寄せていたのだから。それはこれまで彼に避けられ続けていた身としては大きな進歩に違いなかった。
程なくして予鈴が鳴った。もう誰も今日は自分の隣に座らないだろう。ドラコが周囲から向けられるヒソヒソ声を感じながらそのように思った時、教室の一番後ろの扉が軽く開いて誰かが入ってくる音がした。ドラコはそれを気にも留めなかったのだが、その人物は彼の隣の席にやってくると、少々息を切らしながら声を掛けたのだった。
「ドラコ、ここ、座ってもいいかしら?」
「えっ?」
そこにはフォーラが窺うような表情で立っていて、真っすぐドラコの方を見ていたのだ。彼はその瞬間に様々なことが頭を過った―――君はあの雑誌が出回って以降こちらに話し掛けてこなかったではないか。いや、寧ろ黒い噂の的になっている自分に近付かない方がいいだろうに、どうしてわざわざ隣の席に?―――ドラコが突然の事に声が出せずにいると、彼女は自身が授業ギリギリにやって来たのを不思議がられているのだと勘違いし、息を整えながら気恥ずかしそうに言葉を続けた。
「用事に時間がかかって、到着が遅れてしまったの。」
「それは―――」
ドラコが回らない頭で言葉を選ぶ間もなく、咄嗟に「大変だったな」と続けようとした時、不意に前の席の方からブレーズがこちらに声を投げてきた。
「おーいフォーラ!そんな噂の立つ奴の隣なんかより、こっちの席が空いてるぜ?」
フォーラもドラコも反射的にブレーズがいる方に顔を向けた。声の主は前方の席にいて、そこからすぐ近くの空席を指差してフォーラを手招きしていた。ドラコからすれば、どう見てもブレーズがこの状況を喜んでいるように思えてならなかった。どうやらブレーズは周囲の目がある今がまさに、意中のフォーラの意識をドラコから引き離す最大のチャンスだと考えたようだった。
そしてフォーラが首だけでなくとうとう身体ごとブレーズの方を向いたものだから、ドラコはきっと彼女がこのまま前の席に向かうだろうと瞬間的に予想した。ところが彼女はその場に留まったまま、しかも周囲から幾らか視線を浴びた状態で、ブレーズに聞こえるように少々声を張って返答した。
「噂はドラコ本人のことじゃないわ。それなのに、どうしてそれがドラコから離れる理由になるの?彼は何もしていないのに。」
「えっ」ブレーズは思わず驚きの声を発した。まさかフォーラの性格上、そんな風に大勢の前で意見してくるとは思わなかったのだ。それはドラコも、パンジーもルニーも、その場に居合わせた他の同級生も同じくだった。
ドラコはそのような驚きに加え、どういうわけかその瞬間、目の前のフォーラが本当に眩しく見えた。それはもしかすると普段からドラコが周囲に
いずれにせよ、ドラコがそれ以上フォーラに見とれている時間はなかった。何故なら本鈴が鳴り、教壇側の扉が開いてマクゴナガルが教室に入ってきたのだ。するとドラコは気付いた時には頭で考えるよりも先に片手が勝手にフォーラの手首を掴み、そのまま自身の方へ引いて彼女を自分の隣に座らせていた。それと入れ違いでマクゴナガルが生徒たちを見渡し、後ろを向いたままのブレーズを注意した。
「ドラコ……」
フォーラは前の生徒の影に隠れてマクゴナガルの視界から外れ、食い入るようにドラコを見た。そして一方の彼は、彼女の視線や表情、無理に手首を引いたせいで少々乱れてしまった髪、そしてその髪に光る黄色いナルシサスの花飾り、その全てを間近に視界に入れていた。目の前の彼女を見ていると、どうにも先日の防衛術の教室で二人きりだった時の彼女の一途さを思い出さないわけにはいかなかった。そのせいで彼は身体がじわじわと火照るのを感じたし、彼女の手首を握ったままの手のひらが、まるで暖炉の火にかざしているかのように熱かった。
「ありがとう、助かったわ。」
フォーラがそのようにお礼を言う意味がドラコには分からなかった。寧ろお礼を言うべきはこちらの方だ。彼女はこんなにも多くの同学年の生徒の前で堂々と庇ってくれたのだから。普通ならそんな正義感のあることをするのは躊躇われるだろうし、そもそも彼女の性格からしても、けしてそういうことを進んでするタイプではない筈なのだ。一体全体、彼女に何があったというのだろう?
(防衛術の教室で、フォーラは僕を諦めたくないと、そう言った。例の雑誌が出回ってからは疎遠だったが……僕に対する気持ちがまだ残っているから、だから僕の見方をしてくれているのか?)
ドラコは一先ずそのような結論に至ったが、誰かにそう言われるならまだしも、自負するには随分恥ずかしい考えだった。今回のフォーラの行動が単に同情からきている可能性は否めないが、ドラコは嬉しさや申し訳なさ、拒否するしかできないもどかしさによって軽く下唇を噛んだ。すると程なくしてマクゴナガルが授業を始めたため、二人はハッと我に返った。そしてドラコがフォーラの手首を掴んでいた自身の手を離すと、その後はどちらからでもなく前方の教壇の方を向いたのだった。
その日の変身術の授業中、二人が言葉を交わすことはなかった。ドラコは先程のような事があってフォーラの隣にいることに気まずさを感じていた。しかし一方の彼女はそうではなく、寧ろ彼の反応に幾らか満足していた。何せドラコ自ら彼女の手を取り、隣の席に引き寄せていたのだから。それはこれまで彼に避けられ続けていた身としては大きな進歩に違いなかった。