17. 特別な君①
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ドラコはそこまで言いかけて、何かを思い出したかのように口をグッと噤んでしまった。そして躊躇いのせいか彼は視線を泳がせた後、少しの間瞳を閉じた。そうかと思うと今度はそのままフォーラに背を向け、言葉を続けた。
「―――フォーラ、続きは外で話さないか」
「!」
その時、フォーラはドラコがほぼ半年ぶりに自分の名前を呼んでくれたことに気が付いた。それだからその瞬間に彼女の瞳は輝き、期待に胸が膨らんだ。
「ドラコ、今、私の名前―――」
それに加え、フォーラはもう一つ確信していることがあった。ドラコに声をかけた時、彼はあんなに話をするのが嫌そうだったのに、今は既にもう長話することを許されている。場所を変えてまで続きを話そうと提案してくれたことを思うと、もしかして……。ドラコとの長く苦しい関係もとうとう終わりを迎えるかもしれない。告白は受け入れてもらえないかもしれないが、少なくとも以前のように普通に話をする仲には戻れるかもしれない。
フォーラは心臓が期待に早鐘を打つ中、ドラコが足早に教室の出口に向かう後ろ姿を追いかけた。そして彼に続いて教室のドアから廊下に出ると、この辺りにはすっかり他の生徒は誰もいなくなっていた。きっと生徒たちは皆、こんな場所よりも夕食前の自由時間を過ごすのに相応しい場所にたむろしているのだろう。フォーラにとってこの状況は大変有難かった。自分もドラコも、周囲の目を気にせず話ができるのだから。
「ドラコ、ねえ待って。貴方さっき―――」
(私の名前を呼んでくれたわよね?)
フォーラはそのように言葉を続けようとした。しかし次の瞬間、彼女の口からは何の言葉も出てこなかった。いや寧ろ、発言しようとしたことが頭の中から霧散してしまったという方が正しい。そして程なくして彼女は、先程まで教室でドラコと話した内容や、授業で実技練習をしたことなど、殆ど全てのことを忘れてしまったのだった。
彼女がこの教室で過ごした中で唯一覚えていたことと言えば、他のスリザリン生同様、『いつもどおり杖を取り出すことなく、ひたすら教科書に目を通した』という記憶と、『どのように杖を振り、呪文を唱えればいいか分かる』という感覚だけだった。杖を握っていないのに実技を理解した感覚があるというのは随分矛盾しているが、彼女はそのことに特段疑問を抱かなかった―――いや、抱けなかった。
「……えっ、あれ、パンジーとルニーは……?それに他のみんなもいないわ。―――あっ」
フォーラは目の前にドラコの後ろ姿を捉えた。そして今、彼女は彼とこの場に二人きりであることに随分驚いていた。彼女は先程までのことを何も覚えていないのだから、そのような反応になるのは当然のことだった。しかし、ドラコには教室での記憶が『全て欠けることなく』揃っていた。
「……あの、ドラコ?みんなもう、すっかり教室を出てしまったのね?」
フォーラがドラコに近づきながら、おずおずと声をかけた。ドラコは彼女の言葉に反応しなかった。すると彼女が気を取り直して続けた。
「あのね……私、ドラコに伝えたいことがあるの。二人きりの時にしか話したくない内容なのだけど……。だからもし貴方がよければ、この後少しだけ貴方の時間をもらうことはできないかしら。」
フォーラが伝えてきたのは、先程教室で彼女が話しかけてきた内容と殆ど同じだった。その言葉を聞いたドラコは自身の肩をピクリと跳ねさせ、思わずその歩みのスピードを弱めていた。そして妙な動悸が彼の中を搔き乱した。
「?ドラコ……?」
頑なにこちらを見ようとせず返事もしないドラコに、フォーラは小走りで彼の後ろから近づき、仕舞いには勇気を出して彼の隣に並んだ。そして彼女は彼の顔を見上げたのだが、まさか彼の瞳から涙が流れているなんて、彼女は全く予想していなかったのだった。
「えっ、あ……どうかしたの!?何かあったの?」
「!」
ドラコは急いでフォーラから顔を背けると、袖でグイと涙を拭った。
「なんでもない!放っておいてくれ」
「だ、だけど……」
戸惑うフォーラをよそに、ドラコは脇目もふらず彼女から逃げるようにしてその場を後にした。彼は不安な動悸が収まらないまま、手あたり次第目に入った方向の廊下を突き進んだ。あまりに早く進んだものだから、彼は誰かと肩がぶつかっても気にも留めなかったし、目の前が滲んでいてそれどころではなかった。
そしてドラコは人の殆どいない中庭の隅の方までやって来くると、もうとっくにフォーラが後を追いかけて来ていないことに気が付いた。彼はそこでようやく足を止め、近くにあったベンチに座り込んだのだった。
そしてドラコは、四年生の時に父親から寄こされた手紙の内容を自然と思い出していた。
『帝王は確実に復活する。それにあたって私はお前に忠告しておかなければならない。
お前があのお方に仕える時、お前の周りにはあのお方の元にいることを望む同胞しか置いてはならぬ。来るべき時に備え、今周りにいる友人からいつか離れなければならない覚悟を持っておきなさい。
そして、決して心から大切だと思える人間を作ってはいけない。
私のように苦しい想いをしてほしくない。だからこその忠告だ』
あの手紙を受け取った後、ルシウスの言う通り闇の帝王は復活した。そのためドラコは父親の忠告に従い、自分なりに考え、その『心から大切だと思える』フォーラとは距離を取ってきた。
彼女には振られていたし、この際彼女に嫌われてしまえば、もしドラコ自身に何かがあっても彼女が悲しむことはないだろう……そして自分と深く関わることがなければ、今後彼女が争いに巻き込まれることもないだろう……そう思い、ドラコはわざと彼女に必要以上に冷たく接してきた。
ドラコはフォーラに様々な嫌がらせのようなことをしてきたが、そのどれもが彼にとっては、本当に毎回胸が張り裂けそうなくらい心苦しいことだった。加えて周囲からは『フォーラに振られた腹いせにドラコがそのようなことをしている』と思われているのを彼は重々理解していた。彼にはそのような意図は一切なかったが、それを否定しなかったのは、その方がフォーラに要らぬ心配をかけずに嫌われることができると思ったからだし、その内にドラコ自身も本当に彼女を嫌うことができるのではと思ったからだった。
ドラコは最初こそ彼の作戦が上手くいったと思った。ところが、次第にフォーラはドラコに対する自信を取り戻していき、ドラコはとうとう自分が彼女を嫌うことはできないのだと分かった。そして最終的にフォーラは先程の通り、好意を伝えてくるまでになっていた。
「―――フォーラ、続きは外で話さないか」
「!」
その時、フォーラはドラコがほぼ半年ぶりに自分の名前を呼んでくれたことに気が付いた。それだからその瞬間に彼女の瞳は輝き、期待に胸が膨らんだ。
「ドラコ、今、私の名前―――」
それに加え、フォーラはもう一つ確信していることがあった。ドラコに声をかけた時、彼はあんなに話をするのが嫌そうだったのに、今は既にもう長話することを許されている。場所を変えてまで続きを話そうと提案してくれたことを思うと、もしかして……。ドラコとの長く苦しい関係もとうとう終わりを迎えるかもしれない。告白は受け入れてもらえないかもしれないが、少なくとも以前のように普通に話をする仲には戻れるかもしれない。
フォーラは心臓が期待に早鐘を打つ中、ドラコが足早に教室の出口に向かう後ろ姿を追いかけた。そして彼に続いて教室のドアから廊下に出ると、この辺りにはすっかり他の生徒は誰もいなくなっていた。きっと生徒たちは皆、こんな場所よりも夕食前の自由時間を過ごすのに相応しい場所にたむろしているのだろう。フォーラにとってこの状況は大変有難かった。自分もドラコも、周囲の目を気にせず話ができるのだから。
「ドラコ、ねえ待って。貴方さっき―――」
(私の名前を呼んでくれたわよね?)
フォーラはそのように言葉を続けようとした。しかし次の瞬間、彼女の口からは何の言葉も出てこなかった。いや寧ろ、発言しようとしたことが頭の中から霧散してしまったという方が正しい。そして程なくして彼女は、先程まで教室でドラコと話した内容や、授業で実技練習をしたことなど、殆ど全てのことを忘れてしまったのだった。
彼女がこの教室で過ごした中で唯一覚えていたことと言えば、他のスリザリン生同様、『いつもどおり杖を取り出すことなく、ひたすら教科書に目を通した』という記憶と、『どのように杖を振り、呪文を唱えればいいか分かる』という感覚だけだった。杖を握っていないのに実技を理解した感覚があるというのは随分矛盾しているが、彼女はそのことに特段疑問を抱かなかった―――いや、抱けなかった。
「……えっ、あれ、パンジーとルニーは……?それに他のみんなもいないわ。―――あっ」
フォーラは目の前にドラコの後ろ姿を捉えた。そして今、彼女は彼とこの場に二人きりであることに随分驚いていた。彼女は先程までのことを何も覚えていないのだから、そのような反応になるのは当然のことだった。しかし、ドラコには教室での記憶が『全て欠けることなく』揃っていた。
「……あの、ドラコ?みんなもう、すっかり教室を出てしまったのね?」
フォーラがドラコに近づきながら、おずおずと声をかけた。ドラコは彼女の言葉に反応しなかった。すると彼女が気を取り直して続けた。
「あのね……私、ドラコに伝えたいことがあるの。二人きりの時にしか話したくない内容なのだけど……。だからもし貴方がよければ、この後少しだけ貴方の時間をもらうことはできないかしら。」
フォーラが伝えてきたのは、先程教室で彼女が話しかけてきた内容と殆ど同じだった。その言葉を聞いたドラコは自身の肩をピクリと跳ねさせ、思わずその歩みのスピードを弱めていた。そして妙な動悸が彼の中を搔き乱した。
「?ドラコ……?」
頑なにこちらを見ようとせず返事もしないドラコに、フォーラは小走りで彼の後ろから近づき、仕舞いには勇気を出して彼の隣に並んだ。そして彼女は彼の顔を見上げたのだが、まさか彼の瞳から涙が流れているなんて、彼女は全く予想していなかったのだった。
「えっ、あ……どうかしたの!?何かあったの?」
「!」
ドラコは急いでフォーラから顔を背けると、袖でグイと涙を拭った。
「なんでもない!放っておいてくれ」
「だ、だけど……」
戸惑うフォーラをよそに、ドラコは脇目もふらず彼女から逃げるようにしてその場を後にした。彼は不安な動悸が収まらないまま、手あたり次第目に入った方向の廊下を突き進んだ。あまりに早く進んだものだから、彼は誰かと肩がぶつかっても気にも留めなかったし、目の前が滲んでいてそれどころではなかった。
そしてドラコは人の殆どいない中庭の隅の方までやって来くると、もうとっくにフォーラが後を追いかけて来ていないことに気が付いた。彼はそこでようやく足を止め、近くにあったベンチに座り込んだのだった。
そしてドラコは、四年生の時に父親から寄こされた手紙の内容を自然と思い出していた。
『帝王は確実に復活する。それにあたって私はお前に忠告しておかなければならない。
お前があのお方に仕える時、お前の周りにはあのお方の元にいることを望む同胞しか置いてはならぬ。来るべき時に備え、今周りにいる友人からいつか離れなければならない覚悟を持っておきなさい。
そして、決して心から大切だと思える人間を作ってはいけない。
私のように苦しい想いをしてほしくない。だからこその忠告だ』
あの手紙を受け取った後、ルシウスの言う通り闇の帝王は復活した。そのためドラコは父親の忠告に従い、自分なりに考え、その『心から大切だと思える』フォーラとは距離を取ってきた。
彼女には振られていたし、この際彼女に嫌われてしまえば、もしドラコ自身に何かがあっても彼女が悲しむことはないだろう……そして自分と深く関わることがなければ、今後彼女が争いに巻き込まれることもないだろう……そう思い、ドラコはわざと彼女に必要以上に冷たく接してきた。
ドラコはフォーラに様々な嫌がらせのようなことをしてきたが、そのどれもが彼にとっては、本当に毎回胸が張り裂けそうなくらい心苦しいことだった。加えて周囲からは『フォーラに振られた腹いせにドラコがそのようなことをしている』と思われているのを彼は重々理解していた。彼にはそのような意図は一切なかったが、それを否定しなかったのは、その方がフォーラに要らぬ心配をかけずに嫌われることができると思ったからだし、その内にドラコ自身も本当に彼女を嫌うことができるのではと思ったからだった。
ドラコは最初こそ彼の作戦が上手くいったと思った。ところが、次第にフォーラはドラコに対する自信を取り戻していき、ドラコはとうとう自分が彼女を嫌うことはできないのだと分かった。そして最終的にフォーラは先程の通り、好意を伝えてくるまでになっていた。