17. 特別な君①
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するとフォーラが意を決したように口を開いた。
「ねえ二人とも、覚えているかしら。クリスマス休暇明けに私が二人の前で宣言したこと……。もしドラコがアマンダと別れたら、改めてドラコに私の気持ちを伝えたい、という話だけれど。」
「う、うん。覚えてるわ」ルニーが相槌を打った。
「さっきの場面が夢じゃないのなら、その時が来たということよね。」
そう言ったフォーラの声色からして、パンジーとルニーはこんなにも降って湧いたような状況にフォーラがきっと狼狽えているだろうと思った。しかしフォーラは自分でも不思議なくらいに冷静だった。それはやはりクリスマスパーティー以降、ドラコが度々自分に見せてくれた優しさのお陰だった。彼の気遣いが見え隠れしたからこそ気持ちを伝える決意を固められたのだ。それに、本当にドラコがまだ自分のことを想ってくれているのなら……きっとなるべく早くこちらの想いを告げるに越したことはないだろう。
フォーラは自身の髪に付けているナルシサスの花飾りの魔法―――彼女自身の魅力を引き立てる効果が、理由は不明だがドラコには効かないであろうことを把握していた。それでもその花飾りに触れることで、無意味だと分かっていてもあわよくばドラコに良い影響が現れることを期待していたし、彼に接する勇気をもらえている気もしていたのだった。
それから数日後、フォーラはドラコとアマンダが別れたという小さなニュースを校内のどこかで改めて耳にした。彼女はそれが生徒間の周知の事実となるのもそろそろだと思っていたこともあり、とうとう今日ドラコに想いを告げる決心をしていた。もし振られて失敗したってかまわない。少しでもドラコが自分を意識してくれるきっかけを作れるのなら。
そしてフォーラはこの日最後の授業である闇の魔術の防衛術が終わった後、ノロノロと教科書を片付けたり、床に落ちた羽ペンを捜すふりをしたりして、ドラコがアンブリッジとの軽い立ち話を終えるのを教室の片隅で待った。それに気付かずにいたドラコは、先生が先に教室を出る間際にフォーラに挨拶して去ったことでその存在を知った。
ドラコは本来ならもう誰もいない筈の教室にフォーラが一人残っていて随分驚いた。そして彼女と一瞬だけ目が合ったものの、何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうとした。
「ドラコ、待って。」
彼は立ち止まるつもりなど一切なかった筈なのに、フォーラに名前を呼ばれたことで反射的に身体が動かなくなっていた。たとえ魔法が掛けられていなくても、まるで彼女の声自体が魔法のようだと思える程に効果があったのだ。そんな彼は一瞬の戸惑いの後、冷静な表情で彼女の方を振り返った。
「何だ。僕は忙しいんだが」
「急に声を掛けてしまってごめんなさい。私、ドラコに伝えたいことがあって残らせてもらっていたの。」
「伝えたいこと?そんなの、こんな風にわざわざ僕と二人の時を待ち伏せしなくても、談話室でもどこでも、誰がいようが堂々と声を掛ければいいだろう。周りの目を気にするような侮辱でも言おうっていうのか」
ドラコはフォーラと目を合わさずにぶっきらぼうに言った。正直言って彼はこの状況に内心落ち着かなかったし、勿論彼女が誰かに侮辱を言うような人ではないことくらいよく分かっていた。だが、二人きりになってまで伝えたいことが良い内容なのか悪い内容なのかは判断できなかった。しかし彼は次に彼女が発した声色によって、感覚的にそれがどちらなのかを把握した。
「二人きりの時にしか、話したくないことだったから。」
ドラコが思わずフォーラを見やると、彼女は彼の冷たい態度など物ともせず、熱くひたむきな視線を向けていた。その表情や言葉は、クリスマス休暇明けに彼女が伝えてきた言動を自然と思い出させた。
『私ね、いつか時が来たら貴方に伝えたいことがあるの。』
今、目の前にいるフォーラはあの時と同じ顔をしていた。彼女のあまりにも好意的でいじらしい姿は、ドラコからすれば彼自身の身体がジリジリと焼かれるような感覚を思わせた。ずっと何年も欲しかった彼女の表情や視線が今再びこうして自分に向けられていて、動悸がした。
ドラコはこのまま話の続きを促していいのか迷った。というのも、これまでのフォーラのひたむきな姿から、今から彼女に何を言われるのか幾つかの予想が頭をよぎっていたのだ。そしてそのどれもが本心としては願ってもない程に嬉しくて、一方で彼女と関わり合いにならないと決めた心には本当に都合が悪かった。
ドラコが何も言わないものだから、フォーラは続きを話すのを許されたと受け取った。
「もしドラコの時間が許すなら、今日、夕食の後に時間をもらえないかしら……。大切な話なの。」
「君にわざわざ別の時間を設けるのなら、今ここで話を聞こうが変わらないだろう」
ドラコは心から冷酷な声が出るよう意識した。フォーラが今から話そうとする内容を、この部屋以外で絶対に聞いてはいけないと直感したのだ。する彼女はドラコの態度に申し訳なさそうにした。
「急に時間を作ってほしいだなんて迷惑だったわよね。ごめんなさい。だけど、この教室に長居するわけにもいかないし……。だって、アンブリッジ先生が戻ってくるかもしれない。」
「それなら気にしなくていい。先生はいつもこの時間は城の中を見回りに出ているから」
「そう……そういうことなら、お言葉に甘えて今話すわ。」
フォーラが緊張を無理矢理落ち着けようと、浅くひと呼吸した。
「あのね、つい最近、貴方とアマンダが別れたことを小耳に挟んだの。」
「ああ、それで?」
ドラコはなるべくフォーラの方を見ないよう努めたが、その意志とは裏腹に、彼女が一生懸命何かを伝えようとする姿を目に入れたくて仕方なくなっていた。そのせいで結局彼は、無意識のうちに彼女の方を見た。
「ねえ二人とも、覚えているかしら。クリスマス休暇明けに私が二人の前で宣言したこと……。もしドラコがアマンダと別れたら、改めてドラコに私の気持ちを伝えたい、という話だけれど。」
「う、うん。覚えてるわ」ルニーが相槌を打った。
「さっきの場面が夢じゃないのなら、その時が来たということよね。」
そう言ったフォーラの声色からして、パンジーとルニーはこんなにも降って湧いたような状況にフォーラがきっと狼狽えているだろうと思った。しかしフォーラは自分でも不思議なくらいに冷静だった。それはやはりクリスマスパーティー以降、ドラコが度々自分に見せてくれた優しさのお陰だった。彼の気遣いが見え隠れしたからこそ気持ちを伝える決意を固められたのだ。それに、本当にドラコがまだ自分のことを想ってくれているのなら……きっとなるべく早くこちらの想いを告げるに越したことはないだろう。
フォーラは自身の髪に付けているナルシサスの花飾りの魔法―――彼女自身の魅力を引き立てる効果が、理由は不明だがドラコには効かないであろうことを把握していた。それでもその花飾りに触れることで、無意味だと分かっていてもあわよくばドラコに良い影響が現れることを期待していたし、彼に接する勇気をもらえている気もしていたのだった。
それから数日後、フォーラはドラコとアマンダが別れたという小さなニュースを校内のどこかで改めて耳にした。彼女はそれが生徒間の周知の事実となるのもそろそろだと思っていたこともあり、とうとう今日ドラコに想いを告げる決心をしていた。もし振られて失敗したってかまわない。少しでもドラコが自分を意識してくれるきっかけを作れるのなら。
そしてフォーラはこの日最後の授業である闇の魔術の防衛術が終わった後、ノロノロと教科書を片付けたり、床に落ちた羽ペンを捜すふりをしたりして、ドラコがアンブリッジとの軽い立ち話を終えるのを教室の片隅で待った。それに気付かずにいたドラコは、先生が先に教室を出る間際にフォーラに挨拶して去ったことでその存在を知った。
ドラコは本来ならもう誰もいない筈の教室にフォーラが一人残っていて随分驚いた。そして彼女と一瞬だけ目が合ったものの、何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうとした。
「ドラコ、待って。」
彼は立ち止まるつもりなど一切なかった筈なのに、フォーラに名前を呼ばれたことで反射的に身体が動かなくなっていた。たとえ魔法が掛けられていなくても、まるで彼女の声自体が魔法のようだと思える程に効果があったのだ。そんな彼は一瞬の戸惑いの後、冷静な表情で彼女の方を振り返った。
「何だ。僕は忙しいんだが」
「急に声を掛けてしまってごめんなさい。私、ドラコに伝えたいことがあって残らせてもらっていたの。」
「伝えたいこと?そんなの、こんな風にわざわざ僕と二人の時を待ち伏せしなくても、談話室でもどこでも、誰がいようが堂々と声を掛ければいいだろう。周りの目を気にするような侮辱でも言おうっていうのか」
ドラコはフォーラと目を合わさずにぶっきらぼうに言った。正直言って彼はこの状況に内心落ち着かなかったし、勿論彼女が誰かに侮辱を言うような人ではないことくらいよく分かっていた。だが、二人きりになってまで伝えたいことが良い内容なのか悪い内容なのかは判断できなかった。しかし彼は次に彼女が発した声色によって、感覚的にそれがどちらなのかを把握した。
「二人きりの時にしか、話したくないことだったから。」
ドラコが思わずフォーラを見やると、彼女は彼の冷たい態度など物ともせず、熱くひたむきな視線を向けていた。その表情や言葉は、クリスマス休暇明けに彼女が伝えてきた言動を自然と思い出させた。
『私ね、いつか時が来たら貴方に伝えたいことがあるの。』
今、目の前にいるフォーラはあの時と同じ顔をしていた。彼女のあまりにも好意的でいじらしい姿は、ドラコからすれば彼自身の身体がジリジリと焼かれるような感覚を思わせた。ずっと何年も欲しかった彼女の表情や視線が今再びこうして自分に向けられていて、動悸がした。
ドラコはこのまま話の続きを促していいのか迷った。というのも、これまでのフォーラのひたむきな姿から、今から彼女に何を言われるのか幾つかの予想が頭をよぎっていたのだ。そしてそのどれもが本心としては願ってもない程に嬉しくて、一方で彼女と関わり合いにならないと決めた心には本当に都合が悪かった。
ドラコが何も言わないものだから、フォーラは続きを話すのを許されたと受け取った。
「もしドラコの時間が許すなら、今日、夕食の後に時間をもらえないかしら……。大切な話なの。」
「君にわざわざ別の時間を設けるのなら、今ここで話を聞こうが変わらないだろう」
ドラコは心から冷酷な声が出るよう意識した。フォーラが今から話そうとする内容を、この部屋以外で絶対に聞いてはいけないと直感したのだ。する彼女はドラコの態度に申し訳なさそうにした。
「急に時間を作ってほしいだなんて迷惑だったわよね。ごめんなさい。だけど、この教室に長居するわけにもいかないし……。だって、アンブリッジ先生が戻ってくるかもしれない。」
「それなら気にしなくていい。先生はいつもこの時間は城の中を見回りに出ているから」
「そう……そういうことなら、お言葉に甘えて今話すわ。」
フォーラが緊張を無理矢理落ち着けようと、浅くひと呼吸した。
「あのね、つい最近、貴方とアマンダが別れたことを小耳に挟んだの。」
「ああ、それで?」
ドラコはなるべくフォーラの方を見ないよう努めたが、その意志とは裏腹に、彼女が一生懸命何かを伝えようとする姿を目に入れたくて仕方なくなっていた。そのせいで結局彼は、無意識のうちに彼女の方を見た。