16. ドラコの意志
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「?ええ。論文にこだわっている訳じゃないのだけど、変身術の得意な家系の方だったみたいだから、少し興味があったの。」
「ふうん。……そういえば、君って禁書の棚に入ったことは?」
フォーラはセオドールの脈絡のない話に疑問符を浮かべた。
「一度もないわ。それがどうかしたの?」
「いや、知らないんだなと思ってさ。前に禁書の棚に入った時、古い学術雑誌を沢山見かけたんだ。多分、古いものはそっちに移動させてあるんだよ。
君の手元の教科書の著者は、1926年に『今日の変身』に論文が載ったんだろ?それだったら禁書の棚にあるかもしれないと思っただけさ」
セオドールがフォーラから目を逸らしながら、彼女から距離を取りつつ最低限を伝えるように話した。周囲からの視線も気になったし、何より今、真隣にいる彼女の方を見るのは、自分にとってあまりよろしくないと直感的に感じていた。
セオドールが話し終えたのに、フォーラからは何の返答もなかった。折角良さそうな情報を伝えたというのに失礼な奴だ。彼はそう思いながらフォーラに文句の一つでも言おうと彼女の方を見た。するとフォーラは随分ぽかんとした表情でセオドールを見ているではないか。彼は何事かと疑問を浮かべつつ質問しようとした。ところが彼の言葉はフォーラが勢いよく彼の手を握ったことで霧散し、驚きの声に変った。
「は!?」
「セオドール、知らなかったわ!素敵な情報をありがとう。今度先生に許可を取って行ってみることにするわ。」
フォーラが返事を返さなかった理由が呆気にとられてのことだったと気付き、セオドールは「ああ……」と曖昧に返事をした。
「えーーーと、感謝の意は伝わったから、手、離してくれない?」
「えっ、あ、ごめんなさい!驚いたのと、嬉しくてつい。本当にありがとう。」
「いや、別にいいけどさ。目当てのものがあるとも限らないし」
セオドールは素っ気ない様子でそのように答えた。相変わらず周囲から幾らかの視線を感じてしまい、彼は黒板の方へと一点集中することに決めた。
(もしドラコが今のやり取りを見ていたとしたら、どう思っただろう。ファントムのことを本当に嫌っているなら、何も気にしないだろうけど)
そこまで考えて、セオドールはどうして自分がよく分からない後ろめたさを感じているのかと我に返った。そしてその時、丁度授業開始のベルが鳴った。
この日の変身術の授業は、クリスマス休暇前よりも高度な消失呪文に取り掛かっていた。ふくろう試験本番では哺乳類か大きな爬虫類を消すことになるとマクゴナガルは予想しており、今日は少し大きめのカエルなどの両生類を消失させるといった内容だった。フォーラは彼女の『秘密の部屋』での練習の甲斐あって、一発で消失に成功した。
マクゴナガルは大満足でスリザリンに10点を与えたのだった。
一方、彼女の隣のセオドールは、一度消失したカエルが直ぐに現れてしまうという状況に陥っていた。それを見たフォーラが彼に幾らかアドバイスを提言してみると、何度目かの時にセオドールも無事カエルの消失に成功したのだった。
「やったわセオドール!」
「ありがとう。君のおかげだ」
セオドールがフォーラを見やると、自分の術の成功を心から喜ぶ彼女の姿が目に入った。その様子に、彼は何だか言葉に詰まってしまい、始業ベルが鳴る前も同じ感覚に襲われたことを思い出した。するとそのタイミングで直ぐ前の席に座っているパンジーがこちらを振り返った。
「セオドール、いいなあ。フォーラ、私も上手くいかなくて。ルニーの方が消えてるのよ。悔しいからどうか助言を頂戴!」
「パンジー、私だってフォーラに教えてもらわないと、残りの目玉が消えないの!気持ち悪くて仕方ないからこっちを先に———」
一頻りパンジーとルニーと共に練習をして、パンジーはカエルの姿が先程よりも全体的に透けて見えるまでに達したし、ルニーも残ったカエルの目玉の片方を消失させ、後は残りの目玉を消すだけというところまで来た。セオドールは二人を指導するフォーラの姿を見て気づいたことがあった。
「ファントム、君は人に教えるのが上手いんだな。てっきり天才肌特有の説明下手だと思ってたけど。教師とか向いてるんじゃないか」
フォーラはパンジーとルニーが自机の方を向いて練習に夢中になっているのを見ていたが、セオドールの問いかけに彼の方を向いた。
「教師?初めて言われたわ。それに考えてみたこともなかった……。将来就きたい職業をまだ決めていなかったから、候補にしてみようかしら。
それにしても、セオドールに褒められると、妙な感じね。」
「あのさ、僕だって他人への関心が薄いのは自覚しているけど、お礼も言えるし褒めることだって出来るさ」
フォーラはクリスマスパーティーの時、彼に『他人への関心が薄い』と発言したことを思い出した。
「そんなつもりじゃないのよ。気に障ることを言ってごめんなさい。普段あまりお世辞を言わない人から突然素直な意見を伝えられて、戸惑ってしまっただけなの。
とっても嬉しいわ。だからどうか拗ねないで。」
セオドールはフォーラがあえて冗談として発言した『拗ねる』という言葉に多少の苛立ちを覚え、「そういうところだぞ」と文句の一つでも言おうと彼女の方を見た。しかし、セオドールの言葉はまたもや何処かに行ってしまった様だった。フォーラからはまるで子供をあやすかのような優しい笑顔を向けられていて、その表情が何というか、クリスマスより前の彼女と随分印象が違っていたのだ。フォーラにそこまで関心が無かった筈のセオドールですら、新学期に入ってからの彼女が幾らか魅力的だと思ってしまう程には違っていた。そして、こうして至近距離で彼女と話をする程、以前は感じなかった様な喉の詰まりが表れる気がした。
「ふうん。……そういえば、君って禁書の棚に入ったことは?」
フォーラはセオドールの脈絡のない話に疑問符を浮かべた。
「一度もないわ。それがどうかしたの?」
「いや、知らないんだなと思ってさ。前に禁書の棚に入った時、古い学術雑誌を沢山見かけたんだ。多分、古いものはそっちに移動させてあるんだよ。
君の手元の教科書の著者は、1926年に『今日の変身』に論文が載ったんだろ?それだったら禁書の棚にあるかもしれないと思っただけさ」
セオドールがフォーラから目を逸らしながら、彼女から距離を取りつつ最低限を伝えるように話した。周囲からの視線も気になったし、何より今、真隣にいる彼女の方を見るのは、自分にとってあまりよろしくないと直感的に感じていた。
セオドールが話し終えたのに、フォーラからは何の返答もなかった。折角良さそうな情報を伝えたというのに失礼な奴だ。彼はそう思いながらフォーラに文句の一つでも言おうと彼女の方を見た。するとフォーラは随分ぽかんとした表情でセオドールを見ているではないか。彼は何事かと疑問を浮かべつつ質問しようとした。ところが彼の言葉はフォーラが勢いよく彼の手を握ったことで霧散し、驚きの声に変った。
「は!?」
「セオドール、知らなかったわ!素敵な情報をありがとう。今度先生に許可を取って行ってみることにするわ。」
フォーラが返事を返さなかった理由が呆気にとられてのことだったと気付き、セオドールは「ああ……」と曖昧に返事をした。
「えーーーと、感謝の意は伝わったから、手、離してくれない?」
「えっ、あ、ごめんなさい!驚いたのと、嬉しくてつい。本当にありがとう。」
「いや、別にいいけどさ。目当てのものがあるとも限らないし」
セオドールは素っ気ない様子でそのように答えた。相変わらず周囲から幾らかの視線を感じてしまい、彼は黒板の方へと一点集中することに決めた。
(もしドラコが今のやり取りを見ていたとしたら、どう思っただろう。ファントムのことを本当に嫌っているなら、何も気にしないだろうけど)
そこまで考えて、セオドールはどうして自分がよく分からない後ろめたさを感じているのかと我に返った。そしてその時、丁度授業開始のベルが鳴った。
この日の変身術の授業は、クリスマス休暇前よりも高度な消失呪文に取り掛かっていた。ふくろう試験本番では哺乳類か大きな爬虫類を消すことになるとマクゴナガルは予想しており、今日は少し大きめのカエルなどの両生類を消失させるといった内容だった。フォーラは彼女の『秘密の部屋』での練習の甲斐あって、一発で消失に成功した。
マクゴナガルは大満足でスリザリンに10点を与えたのだった。
一方、彼女の隣のセオドールは、一度消失したカエルが直ぐに現れてしまうという状況に陥っていた。それを見たフォーラが彼に幾らかアドバイスを提言してみると、何度目かの時にセオドールも無事カエルの消失に成功したのだった。
「やったわセオドール!」
「ありがとう。君のおかげだ」
セオドールがフォーラを見やると、自分の術の成功を心から喜ぶ彼女の姿が目に入った。その様子に、彼は何だか言葉に詰まってしまい、始業ベルが鳴る前も同じ感覚に襲われたことを思い出した。するとそのタイミングで直ぐ前の席に座っているパンジーがこちらを振り返った。
「セオドール、いいなあ。フォーラ、私も上手くいかなくて。ルニーの方が消えてるのよ。悔しいからどうか助言を頂戴!」
「パンジー、私だってフォーラに教えてもらわないと、残りの目玉が消えないの!気持ち悪くて仕方ないからこっちを先に———」
一頻りパンジーとルニーと共に練習をして、パンジーはカエルの姿が先程よりも全体的に透けて見えるまでに達したし、ルニーも残ったカエルの目玉の片方を消失させ、後は残りの目玉を消すだけというところまで来た。セオドールは二人を指導するフォーラの姿を見て気づいたことがあった。
「ファントム、君は人に教えるのが上手いんだな。てっきり天才肌特有の説明下手だと思ってたけど。教師とか向いてるんじゃないか」
フォーラはパンジーとルニーが自机の方を向いて練習に夢中になっているのを見ていたが、セオドールの問いかけに彼の方を向いた。
「教師?初めて言われたわ。それに考えてみたこともなかった……。将来就きたい職業をまだ決めていなかったから、候補にしてみようかしら。
それにしても、セオドールに褒められると、妙な感じね。」
「あのさ、僕だって他人への関心が薄いのは自覚しているけど、お礼も言えるし褒めることだって出来るさ」
フォーラはクリスマスパーティーの時、彼に『他人への関心が薄い』と発言したことを思い出した。
「そんなつもりじゃないのよ。気に障ることを言ってごめんなさい。普段あまりお世辞を言わない人から突然素直な意見を伝えられて、戸惑ってしまっただけなの。
とっても嬉しいわ。だからどうか拗ねないで。」
セオドールはフォーラがあえて冗談として発言した『拗ねる』という言葉に多少の苛立ちを覚え、「そういうところだぞ」と文句の一つでも言おうと彼女の方を見た。しかし、セオドールの言葉はまたもや何処かに行ってしまった様だった。フォーラからはまるで子供をあやすかのような優しい笑顔を向けられていて、その表情が何というか、クリスマスより前の彼女と随分印象が違っていたのだ。フォーラにそこまで関心が無かった筈のセオドールですら、新学期に入ってからの彼女が幾らか魅力的だと思ってしまう程には違っていた。そして、こうして至近距離で彼女と話をする程、以前は感じなかった様な喉の詰まりが表れる気がした。