16. ドラコの意志
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さて、翌日のフォーラはレイブンクローと合同の変身術の授業の開始を待つ合間に、パンジーとルニーが座っている二人掛けの直ぐ後ろの席で、一・二年生の時に使用していた教科書の『変身術入門』を見返していた。マクゴナガルの言っていたとおり、背表紙にしっかりと「エメリック・スイッチ」の名が刻印されている。フォーラは表紙を開き、著者の紹介文が印字されていないか目を通した。すると、予想通り彼の略歴が記されていた。
『エメリック・スイッチ(XXXX年~198X没)
生まれ:ウェールズ北部
職業や活動等、その他略歴:変身術の専門家。スイッチ家は代々変身術に長けた家系であり、著者はその長男にあたる。ホグワーツ魔法魔術学校出身。卒業後は非常に複雑で高度かつ専門的である変身術の内、科学的側面から立証されていなかった術のいくつかを証明した。また、従来の変身術に囚われることなく、最も基礎的とされる変身術の内容を構成し直し、若手魔法使いの変身術の習得に貢献した。1926年に、人の変身の科学的側面に関する論文を学術雑誌『今日の変身』に寄稿し、名誉賞を受賞した。』
(著者の略歴なんて、あまりしっかり読んだことがなかったけれど。この人、私と同じでウェールズの出身なのね。でも、ウェールズと言っても広いし……私は西海岸の生まれと教えてもらったけれど、この人は北部のどこの町出身だったのかしら)
フォーラは夏休みにルーピンに連れられて、『姿くらまし』で彼女の産みの両親が眠るウェールズの西海岸沿いのとある町へ訪れたことを思い出していた。教科書を見る彼女は自然と笑顔が綻んでいて、それに気づいた何人かの生徒はその姿に思わず見とれていたが、彼女はそのことを知らなかった。
フォーラはすっかり巷では黄色いナルシサス(ラッパ水仙)の髪飾りが似合う可憐な存在となっていた。彼女の虜になっている生徒からすれば、彼女が見ているのが教科書の、しかも著者の紹介文だなんてことは知らずにいる方が良いだろう。しかし、彼女が座っている二人掛けの長椅子の空席に偶然座ったセオドール・ノットは、彼女が何に微笑んでいるのか気づくと、奇妙な物でも見るかのような視線を彼女に向けた。それに気づいたフォーラが顔を上げてセオドールを見ると、彼が質問した。
「そんなものを見て嬉しそうにして、一体どうしたんだい」
「えっ!あ、これ?ええと……ふくろう試験に向けて一・二年生の範囲も復習しなきゃいけないでしょ?それで見ていたのだけど、偶然、この著者が私の親戚と同じ地域の出身だったから、色々と思い出していたの。」
フォーラの咄嗟の嘘に彼は何の違和感も持っていない様子だった。彼はすらりとした見た目に似合いの手を自分の顎に当てがい、さほど関心がない様子で言った。
「ふうん、そうだったのか。てっきり僕は君がそんなページで笑っていたから、とうとう頭がおかしくなったのかと思ったよ」
「もう、そんなのじゃないわ。セオドールったら、クリスマスパーティーの時は随分親切だったのに、すっかりいつも通り。
でも、今の方が貴方らしいかもしれないわ。」
「あ、あの時は……仕方なかったんだ。僕も自分がどうしちゃったのかよく分からなくて。
それより、その人について他にどんなことが書いてあるんだい」
セオドールはついこの間のパーティーで自分が普段見せない姿だったことを話題に出され、咄嗟に話を逸らそうと、全く関心のないことについて尋ねた。
「ええ、この人凄いのよ。『今日の変身』に出した論文が名誉賞を受賞したんですって。」
フォーラがズイと教科書をセオドールに近づけて、その記述の部分を指さした。それと同時にセオドールは同じ分だけ彼女から身体を離すように無意識にのけぞっていた。周囲から幾らか浴びせられる妬みに似た視線を感じて、途端にセオドールは背中に妙な汗をかいている気がした。彼は話題を間違えたと感じながら、のけ反った態勢のまま遠目にフォーラが指さした部分に目を通した。
「あー、『今日の変身』って、マクゴナガル先生やダンブルドア校長も論文を寄稿したことがあるよね」
「そうなの!有名よね。だけど生徒間では以外に知らない人が多くて———」
セオドールは再び選択肢を間違えたと思った。いや、そもそもこの席に座ったことから間違いだったのかもしれない。偶然空いていて、板書の見やすい位置だった、それだけだったのに。嬉しそうに話すフォーラの話を、彼は関心無さげにある程度聞き流していた。幾つかの刺すような視線から逃れたくて仕方なかったのだ。しかし次に彼女が話した内容には反応してしまった。
「私、図書室にある『今日の変身』は粗方目を通したの。だけど、この人の論文は見かけなかったわ。」
フォーラは父の手記にあった『エメリア・スイッチ』の名を探して、図書室にある変身術関連の雑誌のバックナンバーを確認していたのだった。しかし『今日の変身』にも他の雑誌でさえも、エメリアに加えて『エメリック・スイッチ』の名すら見かけなかった。
「図書室にある分って、相当量があっただろ?驚いたな。君、結構凄いよ」
セオドールは周囲の視線を気にして、あまり彼女の方を見ないようにしながら伝えた。
「そうかしら。ふふ。でも、雑誌の量を知っているセオドールも凄いわ。皆はあまり興味を示さないもの。
貴方は魔法薬学が得意だと思っていたけど、変身術も好きなのね。」
「まあ、きっと好きな方だ。だけど、君程変人じゃない」
「ありがとう。」
「別に褒めたわけじゃ———」
セオドールは少しばかり嫌味を込めて伝えた言葉に、まさかお礼の言葉を返されると思わなかった。それだから、苛立ちと共にフォーラの方を見て否定の言葉を言いかけた。しかし、笑顔でこちらを見てくる彼女を視界に入れると、そんな言葉は無意識に途中で消え去ってしまった。それを自覚した彼は、一度だけ視線をうろつかせると話題を雑誌の話に戻した。何か喋っていないと、何故だか自分が妙な雰囲気に吞まれてしまいそうな気がしたのだ。
「……ファントムは、その人の論文を探してるんだよね」
『エメリック・スイッチ(XXXX年~198X没)
生まれ:ウェールズ北部
職業や活動等、その他略歴:変身術の専門家。スイッチ家は代々変身術に長けた家系であり、著者はその長男にあたる。ホグワーツ魔法魔術学校出身。卒業後は非常に複雑で高度かつ専門的である変身術の内、科学的側面から立証されていなかった術のいくつかを証明した。また、従来の変身術に囚われることなく、最も基礎的とされる変身術の内容を構成し直し、若手魔法使いの変身術の習得に貢献した。1926年に、人の変身の科学的側面に関する論文を学術雑誌『今日の変身』に寄稿し、名誉賞を受賞した。』
(著者の略歴なんて、あまりしっかり読んだことがなかったけれど。この人、私と同じでウェールズの出身なのね。でも、ウェールズと言っても広いし……私は西海岸の生まれと教えてもらったけれど、この人は北部のどこの町出身だったのかしら)
フォーラは夏休みにルーピンに連れられて、『姿くらまし』で彼女の産みの両親が眠るウェールズの西海岸沿いのとある町へ訪れたことを思い出していた。教科書を見る彼女は自然と笑顔が綻んでいて、それに気づいた何人かの生徒はその姿に思わず見とれていたが、彼女はそのことを知らなかった。
フォーラはすっかり巷では黄色いナルシサス(ラッパ水仙)の髪飾りが似合う可憐な存在となっていた。彼女の虜になっている生徒からすれば、彼女が見ているのが教科書の、しかも著者の紹介文だなんてことは知らずにいる方が良いだろう。しかし、彼女が座っている二人掛けの長椅子の空席に偶然座ったセオドール・ノットは、彼女が何に微笑んでいるのか気づくと、奇妙な物でも見るかのような視線を彼女に向けた。それに気づいたフォーラが顔を上げてセオドールを見ると、彼が質問した。
「そんなものを見て嬉しそうにして、一体どうしたんだい」
「えっ!あ、これ?ええと……ふくろう試験に向けて一・二年生の範囲も復習しなきゃいけないでしょ?それで見ていたのだけど、偶然、この著者が私の親戚と同じ地域の出身だったから、色々と思い出していたの。」
フォーラの咄嗟の嘘に彼は何の違和感も持っていない様子だった。彼はすらりとした見た目に似合いの手を自分の顎に当てがい、さほど関心がない様子で言った。
「ふうん、そうだったのか。てっきり僕は君がそんなページで笑っていたから、とうとう頭がおかしくなったのかと思ったよ」
「もう、そんなのじゃないわ。セオドールったら、クリスマスパーティーの時は随分親切だったのに、すっかりいつも通り。
でも、今の方が貴方らしいかもしれないわ。」
「あ、あの時は……仕方なかったんだ。僕も自分がどうしちゃったのかよく分からなくて。
それより、その人について他にどんなことが書いてあるんだい」
セオドールはついこの間のパーティーで自分が普段見せない姿だったことを話題に出され、咄嗟に話を逸らそうと、全く関心のないことについて尋ねた。
「ええ、この人凄いのよ。『今日の変身』に出した論文が名誉賞を受賞したんですって。」
フォーラがズイと教科書をセオドールに近づけて、その記述の部分を指さした。それと同時にセオドールは同じ分だけ彼女から身体を離すように無意識にのけぞっていた。周囲から幾らか浴びせられる妬みに似た視線を感じて、途端にセオドールは背中に妙な汗をかいている気がした。彼は話題を間違えたと感じながら、のけ反った態勢のまま遠目にフォーラが指さした部分に目を通した。
「あー、『今日の変身』って、マクゴナガル先生やダンブルドア校長も論文を寄稿したことがあるよね」
「そうなの!有名よね。だけど生徒間では以外に知らない人が多くて———」
セオドールは再び選択肢を間違えたと思った。いや、そもそもこの席に座ったことから間違いだったのかもしれない。偶然空いていて、板書の見やすい位置だった、それだけだったのに。嬉しそうに話すフォーラの話を、彼は関心無さげにある程度聞き流していた。幾つかの刺すような視線から逃れたくて仕方なかったのだ。しかし次に彼女が話した内容には反応してしまった。
「私、図書室にある『今日の変身』は粗方目を通したの。だけど、この人の論文は見かけなかったわ。」
フォーラは父の手記にあった『エメリア・スイッチ』の名を探して、図書室にある変身術関連の雑誌のバックナンバーを確認していたのだった。しかし『今日の変身』にも他の雑誌でさえも、エメリアに加えて『エメリック・スイッチ』の名すら見かけなかった。
「図書室にある分って、相当量があっただろ?驚いたな。君、結構凄いよ」
セオドールは周囲の視線を気にして、あまり彼女の方を見ないようにしながら伝えた。
「そうかしら。ふふ。でも、雑誌の量を知っているセオドールも凄いわ。皆はあまり興味を示さないもの。
貴方は魔法薬学が得意だと思っていたけど、変身術も好きなのね。」
「まあ、きっと好きな方だ。だけど、君程変人じゃない」
「ありがとう。」
「別に褒めたわけじゃ———」
セオドールは少しばかり嫌味を込めて伝えた言葉に、まさかお礼の言葉を返されると思わなかった。それだから、苛立ちと共にフォーラの方を見て否定の言葉を言いかけた。しかし、笑顔でこちらを見てくる彼女を視界に入れると、そんな言葉は無意識に途中で消え去ってしまった。それを自覚した彼は、一度だけ視線をうろつかせると話題を雑誌の話に戻した。何か喋っていないと、何故だか自分が妙な雰囲気に吞まれてしまいそうな気がしたのだ。
「……ファントムは、その人の論文を探してるんだよね」