16. ドラコの意志
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そう言い切るのは早計かもしれないが、どうしても都合よく考えてしまう。それによってフォーラの顔が薄っすらと火照ったものだから、そばにいたパンジーとルニーはどうしたのかと彼女を心配した。しかしブレーズはフォーラが自分と手を取り合っている状況を照れていると勘違いし、満足そうに話し掛けた。
「君と僕が似合いすぎて、誰かが嫉妬したからこんな仕打ちをしてきたのかもな」
『誰かが嫉妬して』。フォーラの頭の中で、たった今ブレーズが発した言葉が繰り返された。ドラコが?もしそうだったとしたら願ったり叶ったりだ。フォーラは嬉しさのあまりパッと顔を上げてブレーズを見た。彼は期待の籠った表情の彼女と目が合った途端、その魅力のあまり、先程までの威勢の良さが何処かへ飛んでしまった。
「やっぱり、そう思う?」
フォーラはブレーズの言う『誰か』が、自分に異性を近付けたくなくて嫉妬した可能性を尋ねた。しかし一方のブレーズは、彼が冒頭に発した『君と僕が似合い過ぎて』という部分への確認だと受け取った。そのため彼は彼女の手を両手で固く握ったのだった。
「あ、ああ、勿論!」
フォーラはブレーズが食い気味に頷くのをぼんやり眺め、ゆっくりと口を開いた。
「そう……。私、その『誰か』に嫉妬されるくらい好かれているのかしら。」
「ああ、僕らは似合い過ぎて―――、え?」
ブレーズはフォーラの予想外の発言と期待を込めた嬉しそうな表情に思わず疑問を浮かべた。それと同時に、パンジーとルニーはフォーラの呆けた表情から何かを察していた。
「フォーラ、もしかして今のって……」
パンジーの問いに、フォーラは困惑と喜びを混ぜたような表情で首を横に振った。
「わ、分からないわ。だけど、もしかするかもしれない……。」
フォーラがそう言った途端、パンジーとルニーが期待を込めて顔を見合わせた。そしてブレーズからフォーラを引き剥がすと、そのまま急いで女子寮へ続く階段を駆け上がったのだった。
それからの三人は興奮気味に、先程の魔法がドラコによるものだったのではと推察して意見を交わした。
「多分ドラコは、フォーラに振られたのを恨んでずっとつらく当たってたけど、そうしている間にフォーラが他の男子から声を掛けられる機会が増えたでしょ?だから結局は恨みよりも嫉妬心が勝っちゃったのかも。だからブレーズを引き剥がしたんじゃない?」ルニーが言った。
「要するに、ドラコはまだフォーラを好きでさっきの魔法を使ったってこと?」パンジーが尋ねた。
「十分可能性はあると思わない?あの時、あの場を立ち去ったのが多分ドラコしかいなかったんでしょ?」
フォーラは確かにその可能性を捨てきれないと思ったが、現状はドラコに尋ねてもはぐらかされるに決まっている以上、本当のことは結局分からず仕舞いだった。それに事の真相がどうあれ、彼に恋人がいる事実は変わらない。それならこれ以上追究せず、今日の出来事を一先ず心の片隅に閉まっておくのが得策だと思った。ただ、もし本当に彼が助けてくれたのだとすれば……やはり彼は自分のことを嫌っておらず、まだ多少の関心を持ってくれているのかもしれない。
さて、翌日のフォーラはレイブンクロー寮と合同の変身術の授業の開始を待つ合間、パンジーとルニーが座っている二人掛け椅子のすぐ後ろの席で、低学年用の教科書である変身術入門を見返していた。マクゴナガルの言っていたとおり、背表紙にしっかりと『エメリック・スイッチ』の名が印字されている。フォーラは表紙を開き、著者の紹介文がないか目を通した。すると予想どおり彼の略歴が記されていた。
『エメリック・スイッチ(一九〇〇年~)
生まれ:ウェールズ北部
職業や活動等、その他略歴:変身術の専門家。スイッチ家は代々変身術に長けた家系であり、著者はその長男にあたる。ホグワーツ魔法魔術学校出身。卒業後は非常に複雑で高度かつ専門的な変身術のうち、科学的側面から立証されていなかった幾つかの術を証明した。また、従来の変身術に囚われることなく、最も基礎的とされる術を構成し直し、若手魔法使いの変身術の習得に貢献した。一九二六年には、『人の変身』の科学的側面に関する論文を、学術雑誌『今日の変身』に寄稿し、名誉賞を受賞した』
(著者の略歴なんてあまりしっかり読んだことがなかったけれど。今が一九九五年だから九五歳でご存命なのね、ダンブルドア先生よりも少しお若いわ。それからこの方、私と同じでウェールズの出身だわ。でもウェールズと言っても広いし……私は西海岸の生まれだと教えてもらったけれど、この方は北部の何処の町の出身だったのかしら)
フォーラは夏休みにルーピンに連れられて『姿くらまし』し、産みの両親が眠るウェールズの西海岸沿いのとある町を訪れた時の事を思い返していた。そうして教科書を眺める彼女は自然と笑みが綻んでいたのだが、それに気付いた何人かの生徒がその姿に見とれていたことまでは知らなかった。
フォーラはすっかり巷 では黄色いナルシサス の髪飾りが似合う可憐な存在となっていた。彼女の虜になっている生徒からすれば、彼女の視線の先にあるのが、誰も興味を示さなさそうな著者の紹介文だなんてことは知らずにいる方が良いだろう。しかし彼女が座っている二人掛けの長椅子の空席に偶然にも収まったセオドールは、何に微笑んでいるのか気付くと奇妙な物でも見るかのような目を向けた。そしてフォーラが真隣りからの視線を感じて目が合うと、彼が質問した。
「そんなものを見て嬉しそうにして、一体どうしたんだい」
「えっああ、これね?ええと……ふくろう試験に向けて一、二年生の範囲も復習しなくちゃいけないでしょう?それで眺めていたのだけど、偶然この著者が私の親戚と同じ地域の出身だったから、色々と思い出していたの。」
フォーラの咄嗟の嘘にセオドールは何の違和感もなさそうだった。彼はすらりとした見た目に似合いの手を自身の顎に宛がい、無関心に返答した。
「ふうん、そうだったのか。そんなページを見て笑っていたから、てっきり僕はとうとう君の頭がおかしくなったのかと思ったよ」
「君と僕が似合いすぎて、誰かが嫉妬したからこんな仕打ちをしてきたのかもな」
『誰かが嫉妬して』。フォーラの頭の中で、たった今ブレーズが発した言葉が繰り返された。ドラコが?もしそうだったとしたら願ったり叶ったりだ。フォーラは嬉しさのあまりパッと顔を上げてブレーズを見た。彼は期待の籠った表情の彼女と目が合った途端、その魅力のあまり、先程までの威勢の良さが何処かへ飛んでしまった。
「やっぱり、そう思う?」
フォーラはブレーズの言う『誰か』が、自分に異性を近付けたくなくて嫉妬した可能性を尋ねた。しかし一方のブレーズは、彼が冒頭に発した『君と僕が似合い過ぎて』という部分への確認だと受け取った。そのため彼は彼女の手を両手で固く握ったのだった。
「あ、ああ、勿論!」
フォーラはブレーズが食い気味に頷くのをぼんやり眺め、ゆっくりと口を開いた。
「そう……。私、その『誰か』に嫉妬されるくらい好かれているのかしら。」
「ああ、僕らは似合い過ぎて―――、え?」
ブレーズはフォーラの予想外の発言と期待を込めた嬉しそうな表情に思わず疑問を浮かべた。それと同時に、パンジーとルニーはフォーラの呆けた表情から何かを察していた。
「フォーラ、もしかして今のって……」
パンジーの問いに、フォーラは困惑と喜びを混ぜたような表情で首を横に振った。
「わ、分からないわ。だけど、もしかするかもしれない……。」
フォーラがそう言った途端、パンジーとルニーが期待を込めて顔を見合わせた。そしてブレーズからフォーラを引き剥がすと、そのまま急いで女子寮へ続く階段を駆け上がったのだった。
それからの三人は興奮気味に、先程の魔法がドラコによるものだったのではと推察して意見を交わした。
「多分ドラコは、フォーラに振られたのを恨んでずっとつらく当たってたけど、そうしている間にフォーラが他の男子から声を掛けられる機会が増えたでしょ?だから結局は恨みよりも嫉妬心が勝っちゃったのかも。だからブレーズを引き剥がしたんじゃない?」ルニーが言った。
「要するに、ドラコはまだフォーラを好きでさっきの魔法を使ったってこと?」パンジーが尋ねた。
「十分可能性はあると思わない?あの時、あの場を立ち去ったのが多分ドラコしかいなかったんでしょ?」
フォーラは確かにその可能性を捨てきれないと思ったが、現状はドラコに尋ねてもはぐらかされるに決まっている以上、本当のことは結局分からず仕舞いだった。それに事の真相がどうあれ、彼に恋人がいる事実は変わらない。それならこれ以上追究せず、今日の出来事を一先ず心の片隅に閉まっておくのが得策だと思った。ただ、もし本当に彼が助けてくれたのだとすれば……やはり彼は自分のことを嫌っておらず、まだ多少の関心を持ってくれているのかもしれない。
さて、翌日のフォーラはレイブンクロー寮と合同の変身術の授業の開始を待つ合間、パンジーとルニーが座っている二人掛け椅子のすぐ後ろの席で、低学年用の教科書である変身術入門を見返していた。マクゴナガルの言っていたとおり、背表紙にしっかりと『エメリック・スイッチ』の名が印字されている。フォーラは表紙を開き、著者の紹介文がないか目を通した。すると予想どおり彼の略歴が記されていた。
『エメリック・スイッチ(一九〇〇年~)
生まれ:ウェールズ北部
職業や活動等、その他略歴:変身術の専門家。スイッチ家は代々変身術に長けた家系であり、著者はその長男にあたる。ホグワーツ魔法魔術学校出身。卒業後は非常に複雑で高度かつ専門的な変身術のうち、科学的側面から立証されていなかった幾つかの術を証明した。また、従来の変身術に囚われることなく、最も基礎的とされる術を構成し直し、若手魔法使いの変身術の習得に貢献した。一九二六年には、『人の変身』の科学的側面に関する論文を、学術雑誌『今日の変身』に寄稿し、名誉賞を受賞した』
(著者の略歴なんてあまりしっかり読んだことがなかったけれど。今が一九九五年だから九五歳でご存命なのね、ダンブルドア先生よりも少しお若いわ。それからこの方、私と同じでウェールズの出身だわ。でもウェールズと言っても広いし……私は西海岸の生まれだと教えてもらったけれど、この方は北部の何処の町の出身だったのかしら)
フォーラは夏休みにルーピンに連れられて『姿くらまし』し、産みの両親が眠るウェールズの西海岸沿いのとある町を訪れた時の事を思い返していた。そうして教科書を眺める彼女は自然と笑みが綻んでいたのだが、それに気付いた何人かの生徒がその姿に見とれていたことまでは知らなかった。
フォーラはすっかり
「そんなものを見て嬉しそうにして、一体どうしたんだい」
「えっああ、これね?ええと……ふくろう試験に向けて一、二年生の範囲も復習しなくちゃいけないでしょう?それで眺めていたのだけど、偶然この著者が私の親戚と同じ地域の出身だったから、色々と思い出していたの。」
フォーラの咄嗟の嘘にセオドールは何の違和感もなさそうだった。彼はすらりとした見た目に似合いの手を自身の顎に宛がい、無関心に返答した。
「ふうん、そうだったのか。そんなページを見て笑っていたから、てっきり僕はとうとう君の頭がおかしくなったのかと思ったよ」