16. ドラコの意志
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ドラコは再び、視界の端にチラつくブレーズとフォーラの方を盗み見た。相変わらずブレーズが妙にフォーラに近い。ドラコはその様子が心の底から気に入らなかった。無意識に利き手がベルトに挟んだ杖に触れていることに気付いて、ドラコはハッとその手を止めた。
(これ以上フォーラに露呈するような行動をしたって、何も良いことはない)
しかし、その後直ぐに浮かんだのは、スネイプに言われた言葉だった。
『もし自分の行動に少しでも躊躇いがあるのなら、その時は自分の意志を尊重しなさい』
ドラコは押し黙ったまま、少しの間身動きせず考えを巡らせた。そして無言で軽く周囲に視線を走らせ、誰もこちらを見ていないことを確認した。
すると彼はサッと杖を抜き取り、周囲に見つからないように小さく杖を振って小声で呪文を唱えた。それと同時にブレーズが以前と同様その場に浮遊して、後ろに軽く飛ばされたではないか。ブレーズが慌てふためいて「まただ!」と何が起こったのか分からず怒るのを、ドラコはいい気味だと一瞥した。
しかしその後直ぐにフォーラがブレーズに近づいて、彼に手を差し出して助け起こしたのは想定外だった。目の前であのような仕打ちを受けた人がいれば、そのようにするのが普通なのかもしれない。ドラコは気に入らない様子で軽くフンと鼻を鳴らし、二人の様子を最後まで見届けることなく男子寮へと向かって行ったのだった。
(今の浮遊呪文、前にも……)
フォーラはブレーズの手を取って起き上がらせながら、思い出していたことがあった。以前、人気のない廊下でブレーズに言い寄られた時、彼女は今と同じように誰かに助られた。あの時は誰か分からないながらもその姿を追いかけて、その人がどうやらスリザリンのローブを羽織っていたことまでは突き止めた。あとの手掛かりは、その残り香がどこか慣れ親しんだ香りということだった。フォーラはその香りが誰のものなのか、分からないわけではなかった———ドラコのものだという確信こそなかったが、心のどこかで「そうかもしれない」と思うくらいには期待していた。
それだから、フォーラはこの談話室にブレーズへ呪文をかけた誰かがいないか見渡した。すると、彼女の視界に丁度男子寮に向かうドラコの後ろ姿が目に入った。
(どうしてこのタイミングで、ドラコは立ち去ろうとしているの?さっきまで、向こうで寛いでいたと思っていたのに。あまりにもタイミングが良すぎて、こんなのまるで、ドラコが魔法をかけたみたいに感じてしまうじゃない。)
いや、そう言い切るのは早計かもしれない。だが、どうしても都合よく期待してしまう。フォーラの顔が薄っすらと火照ったものだから、傍にいたパンジーとルニーはどうしたのかと彼女を心配した。しかしブレーズは自分と手を取り合っている状況をフォーラが照れていると勘違いしたのか、いい気になって彼女に話しかけた。
「君と僕が似合い過ぎて、誰かが嫉妬してこんな仕打ちをしているのかも知れない」
『誰かが嫉妬して』。フォーラの頭の中で、たった今ブレーズが発した言葉が繰り返された。ドラコが?もしそうだったとしたら願ったり叶ったりだ。フォーラはパッと顔を上げてブレーズを見た。彼は期待の籠った表情の彼女と目が合った途端、その麗しさのあまり、威勢の良さが何処かへ飛んで行ってしまった。
「やっぱり、そう思う?」
フォーラはブレーズが言う『誰か』が、自分に異性を近づけたくなくて嫉妬している可能性について尋ねた。しかし一方のブレーズは、彼が冒頭に発した『君と僕が似合い過ぎて』という部分への同意だと受け取った。すると彼はフォーラの手を固く握ったのだった。
「あ、ああ、勿論!」
フォーラはブレーズが食い気味に頷くのをボーッと眺めてから口を開いた。
「そう……。私、その『誰か』に、嫉妬されるくらい好かれているのかしら。」
「ああ、僕らは似合い過ぎて———、え?」
ブレーズは予想外のフォーラの発言と、彼女の期待を込めた嬉しそうな表情に思わず疑問符を浮かべた。てっきり彼女は自分を受け入れてくれたと思ったが、少し考えてみると、そうではなく彼女が別の『誰か』について話しているとようやく気が付いた。それと同時に、パンジーとルニーはフォーラの呆けた表情から何かを察していた。
「フォーラ、もしかして今のって……」
パンジーが尋ねると、フォーラは困惑と喜びを混ぜたような表情で首を横に振った。
「わ、分からないわ。だけど、もしかする、かもしれない……。」
フォーラがそう言った途端、パンジーとルニーが期待を込めて顔を見合わせた。そしてブレーズからフォーラを引き剥がすと、二人は急いで彼女の腕を引いて女子寮へ続く階段を駆け上がって行ったのだった。それからの三人は、興奮気味に先程の魔法がドラコによるものだったのではないかと推察して意見を交わした。三人ともそうであれば嬉しいと思ったが、それならこれまでドラコがフォーラに示してきた態度はどう説明がつくだろうか。
「多分、フォーラに振られたことを恨んで辛く当たっていたのは間違いないと思うの。だけどそうしている間に、フォーラは他の男子から声をかけられる機会が増えたでしょ?ドラコは結局フォーラを恨むよりも嫉妬心が勝ったのかも。だからブレーズを引き剥がしたんじゃない?」
「要するに、ドラコはまだフォーラを好きで、さっきの魔法を使ったってこと?」
「十分可能性はあると思わない?あの時、あの場を立ち去ったのが多分ドラコしかいなかったんでしょ?」
ルニーはパンジーの質問に対して、そのようにドラコの心の内を予想した。確かにその可能性は捨てきれない。しかしドラコに真相を尋ねられない———いや、尋ねてもはぐらかされるに決まっている以上、本当のことは結局分からず仕舞いだった。それに、ことの真相がどうであれ、ドラコに恋人がいる事実は変わらない。それならフォーラはこれ以上追究せず、今日の出来事を一先ず心の片隅に閉まっておくのが得策だと思った。
ただ、もし本当に彼が助けてくれたのだとすれば……やはりドラコは自分のことを嫌っておらず、まだ自分に対して多少は関心を持ってくれているのかもしれない。