15. スパイ
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親衛隊の活動内容についてパンジーに尋ねると、以前ドラコとアンブリッジが話していたとおり、城内で違反行為をしている生徒がいないか定期的に見回るよう言われているそうだ。パンジーはこの違反行為の取り締まりに不満を漏らした。
「アンブリッジ先生がこれまでに立てた幾つもの規則をきちんと覚えておくよう言われているんだけど、数がありすぎて正直全部は無理よ。だから先生が再三おっしゃっていた、認可を得ていない団体活動は禁止っていうことだけはおさえておこうと思っているわ」
肩を落とすパンジーに、フォーラが労わりの声を掛けた。
「あれだけ条例があれば仕方ないと思う……。パンジー以外のメンバーも同じような認識なのかしら。」
「そうね、ドラコも先生の声が掛かったうちの一人なんだけど、私と同意見だったわ」
「他には誰がいるの?」ルニーの質問にパンジーが唸った。
「同学年からはクラッブとゴイルが参加するのは知っているわ。ミリセント・ブルスロードにも誘いの話がこれからいくと思う。それから、セオドールとブレーズは断ったみたい。セオドールは自分にとってメリットがないって。ブレーズはドラコと一緒に行動する気がないからじゃないかしら。それから先生は上級生の何人かにも話をするつもりみたいだった」
「そう……。パンジーがあまり忙しくならなければ良いのだけど。少し心配だわ。」
「ありがとうフォーラ、だけど私はあなたの方が心配よ。何せ最近は私が目を離した隙にブレーズが要らぬちょっかいを掛けてきてるじゃない」
確かにブレーズは近頃になって急によく話し掛けてくるようになったし、親しげに物理的な距離を近くしていた。だが、フォーラとしては彼が単にふざけているだけだろうと考えていた。
「パンジー、気にしすぎだわ。彼は私をからかって面白がっているだけなんだから。」
「そうかしら?多分、ブレーズが今までフォーラに一切積極的じゃなかったのは、四年生まであなたがドラコとよく一緒にいたからだと思うわよ。ドラコの目が光っていたうちは幼馴染に害を成そうとすれば彼が牽制していた筈だもの」パンジーが真剣に続けた。
「そもそもブレーズは美人に目がないのに、今の一層魅力的になったフォーラを狙わないわけがないじゃないの。彼はドラコがあなたの近くにいないからチャンスだと思ったに違いないわ。まあ、贔屓目に見なくても彼の見た目は良い方だけど、可愛い子を捕まえては泣かせるタイプだから本当に気を付けてね」
「ええ、分かったわ。」フォーラは同じ寮とはいえこれまでブレーズと深く関わってこなかった分、正直言って半信半疑だったが、パンジーを落ち着かせようと一先ずその意見に同意したのだった。
それから幾日かが経ち、ついにアンブリッジの尋問官親衛隊が正式に結成された。メンバーはドラコを筆頭としたスリザリン生だけの組織となっており、アンブリッジの指示のもとで週に二回、放課後に一時間程の見回りを実施した。フォーラはパンジーの活動時間を元手に、例の魔法が掛かった羊皮紙を使ってハーマイオニーにその情報を逐一横流しした。そしてそれを受け取ったグリフィンドール勢は防衛術の自主練習日を親衛隊のパトロール日とずらしたり、練習場所への集合経路を変更したりといった工夫を凝らした。
その間のフォーラは変わらず定期的に四階の空き部屋で変身術の練習に励んでおり、六年生で習う主だった範囲の習得がもうすぐ粗方完了できそうなところまで到達していた。
そして、ある日もフォーラは変身術を練習しに向かおうとしていたのだが、四階へ行く途中で後ろから誰かに呼び止められてしまった。振り返るとそこにはこちらに微笑むブレーズの姿があった。彼の容姿は浅黒い肌に黒髪をしており、アフリカ系の何とも言えない妖艶さがあった。母親譲りの目鼻立ちの良さを売りにしていて、何とも女の子の扱いに慣れていそうだ。そんな彼はフォーラにとって以前からあまり馴染みの良いタイプではなかった。
「こんなところで偶然だな。君に会えるなんて僕は随分ラッキーだ」
「あ……こんにちは。」
フォーラは挨拶を返しながら、先日パンジーに言われたことを不意に思い出した。
『私が目を離した隙にブレーズが要らぬちょっかいを掛けてきてるじゃない』
フォーラは何となく辺りを軽く見回してみた。するとこの廊下には自分たち以外に誰もいないということが分かって、パンジーが過去に残した危険信号が一層強調された。
「フォーラはどうしてこんなところにいるんだ?しかも一人きりで」
その質問に彼女はすぐには答えられなかった。兎に角何か言い訳をしなければと思っていると、ブレーズが言葉を続けた。
「まあ僕としては、君が何のために何処へ行こうがかまわないんだけど。こうして二人きりになれてとっても嬉しいからさ」
ブレーズお得意の甘い言葉がフォーラに囁かれ、彼女の脳内にパンジーの台詞が再生された。
「私は気晴らしに天文台の方へ景色を見にいこうとしていたところだったの。貴方は?」
フォーラは一先ずそのような言い訳をした。彼女の問いにブレーズは嬉しそうに回答した。
「偶然だね、僕も勉強の気分転換に散歩していたんだ。それで何となく君のことを考えていて、もし会えたら幸せだろうとは思っていたんだけどね。そうしたら本当に君に会えた」
ブレーズはきっとこれまで目につけた女の子に同じような台詞を与えてきたのだろう。随分と慣れた様子だ。ドラコだったら口が裂けても同じようなことは言わないだろう。フォーラは今の状況からして、ブレーズを撒いて四階の練習部屋へ行くのは相当難しいと判断した。そのため致し方なく天文台へ一緒に行こうと提案したのだった。
「君からデートに誘ってもらえるなんて嬉しいな。やっと僕が冗談抜きで君に気があるって分かってくれたのか」
するとブレーズは自然な動きでフォーラの肩に手を当てて軽く引き寄せたではないか。彼女は甘い微笑みを向けられ、この状況に戸惑って彼から離れようとした。しかし彼の腕はびくともしなかった。
「アンブリッジ先生がこれまでに立てた幾つもの規則をきちんと覚えておくよう言われているんだけど、数がありすぎて正直全部は無理よ。だから先生が再三おっしゃっていた、認可を得ていない団体活動は禁止っていうことだけはおさえておこうと思っているわ」
肩を落とすパンジーに、フォーラが労わりの声を掛けた。
「あれだけ条例があれば仕方ないと思う……。パンジー以外のメンバーも同じような認識なのかしら。」
「そうね、ドラコも先生の声が掛かったうちの一人なんだけど、私と同意見だったわ」
「他には誰がいるの?」ルニーの質問にパンジーが唸った。
「同学年からはクラッブとゴイルが参加するのは知っているわ。ミリセント・ブルスロードにも誘いの話がこれからいくと思う。それから、セオドールとブレーズは断ったみたい。セオドールは自分にとってメリットがないって。ブレーズはドラコと一緒に行動する気がないからじゃないかしら。それから先生は上級生の何人かにも話をするつもりみたいだった」
「そう……。パンジーがあまり忙しくならなければ良いのだけど。少し心配だわ。」
「ありがとうフォーラ、だけど私はあなたの方が心配よ。何せ最近は私が目を離した隙にブレーズが要らぬちょっかいを掛けてきてるじゃない」
確かにブレーズは近頃になって急によく話し掛けてくるようになったし、親しげに物理的な距離を近くしていた。だが、フォーラとしては彼が単にふざけているだけだろうと考えていた。
「パンジー、気にしすぎだわ。彼は私をからかって面白がっているだけなんだから。」
「そうかしら?多分、ブレーズが今までフォーラに一切積極的じゃなかったのは、四年生まであなたがドラコとよく一緒にいたからだと思うわよ。ドラコの目が光っていたうちは幼馴染に害を成そうとすれば彼が牽制していた筈だもの」パンジーが真剣に続けた。
「そもそもブレーズは美人に目がないのに、今の一層魅力的になったフォーラを狙わないわけがないじゃないの。彼はドラコがあなたの近くにいないからチャンスだと思ったに違いないわ。まあ、贔屓目に見なくても彼の見た目は良い方だけど、可愛い子を捕まえては泣かせるタイプだから本当に気を付けてね」
「ええ、分かったわ。」フォーラは同じ寮とはいえこれまでブレーズと深く関わってこなかった分、正直言って半信半疑だったが、パンジーを落ち着かせようと一先ずその意見に同意したのだった。
それから幾日かが経ち、ついにアンブリッジの尋問官親衛隊が正式に結成された。メンバーはドラコを筆頭としたスリザリン生だけの組織となっており、アンブリッジの指示のもとで週に二回、放課後に一時間程の見回りを実施した。フォーラはパンジーの活動時間を元手に、例の魔法が掛かった羊皮紙を使ってハーマイオニーにその情報を逐一横流しした。そしてそれを受け取ったグリフィンドール勢は防衛術の自主練習日を親衛隊のパトロール日とずらしたり、練習場所への集合経路を変更したりといった工夫を凝らした。
その間のフォーラは変わらず定期的に四階の空き部屋で変身術の練習に励んでおり、六年生で習う主だった範囲の習得がもうすぐ粗方完了できそうなところまで到達していた。
そして、ある日もフォーラは変身術を練習しに向かおうとしていたのだが、四階へ行く途中で後ろから誰かに呼び止められてしまった。振り返るとそこにはこちらに微笑むブレーズの姿があった。彼の容姿は浅黒い肌に黒髪をしており、アフリカ系の何とも言えない妖艶さがあった。母親譲りの目鼻立ちの良さを売りにしていて、何とも女の子の扱いに慣れていそうだ。そんな彼はフォーラにとって以前からあまり馴染みの良いタイプではなかった。
「こんなところで偶然だな。君に会えるなんて僕は随分ラッキーだ」
「あ……こんにちは。」
フォーラは挨拶を返しながら、先日パンジーに言われたことを不意に思い出した。
『私が目を離した隙にブレーズが要らぬちょっかいを掛けてきてるじゃない』
フォーラは何となく辺りを軽く見回してみた。するとこの廊下には自分たち以外に誰もいないということが分かって、パンジーが過去に残した危険信号が一層強調された。
「フォーラはどうしてこんなところにいるんだ?しかも一人きりで」
その質問に彼女はすぐには答えられなかった。兎に角何か言い訳をしなければと思っていると、ブレーズが言葉を続けた。
「まあ僕としては、君が何のために何処へ行こうがかまわないんだけど。こうして二人きりになれてとっても嬉しいからさ」
ブレーズお得意の甘い言葉がフォーラに囁かれ、彼女の脳内にパンジーの台詞が再生された。
「私は気晴らしに天文台の方へ景色を見にいこうとしていたところだったの。貴方は?」
フォーラは一先ずそのような言い訳をした。彼女の問いにブレーズは嬉しそうに回答した。
「偶然だね、僕も勉強の気分転換に散歩していたんだ。それで何となく君のことを考えていて、もし会えたら幸せだろうとは思っていたんだけどね。そうしたら本当に君に会えた」
ブレーズはきっとこれまで目につけた女の子に同じような台詞を与えてきたのだろう。随分と慣れた様子だ。ドラコだったら口が裂けても同じようなことは言わないだろう。フォーラは今の状況からして、ブレーズを撒いて四階の練習部屋へ行くのは相当難しいと判断した。そのため致し方なく天文台へ一緒に行こうと提案したのだった。
「君からデートに誘ってもらえるなんて嬉しいな。やっと僕が冗談抜きで君に気があるって分かってくれたのか」
するとブレーズは自然な動きでフォーラの肩に手を当てて軽く引き寄せたではないか。彼女は甘い微笑みを向けられ、この状況に戸惑って彼から離れようとした。しかし彼の腕はびくともしなかった。