15. スパイ
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この一連の出来事はアンブリッジの横暴さを際立たせたのだが、フォーラが気になったのはどちらかというと、その査察の中でアンブリッジがスリザリンのお気に入りの生徒は勿論、これまであまり目を掛けていなかった他のスリザリン生にも教師の出来についてインタビューをしていた点だった。
基本的にアンブリッジのお気に入りの生徒はドラコやパンジーといった愛想がいいタイプで、今回新たに目をつけていたのは、二人とは真逆のセオドール・ノットやブレーズ・ザビニといった面子だった。フォーラは思いつく範囲で同級生のセオドールとブレーズの共通点を考えてみたが、あまり多くは思い当たらなかった。
セオドールはやや一匹狼気質で群れないタイプだが、スリザリンのリーダー的存在であるドラコとは対等に話せる存在だ。一方のブレーズは軟派な性格かつ美人に目がないことで有名で、時折ドラコとは意見が衝突したり敵対関係になったりすることもあり、やや高慢な性格と言えるだろう。
そんなセオドールとブレーズの共通点をあえて挙げるなら、心を開いていない相手であるアンブリッジとの接触にはあまり積極的ではないように見える。それから二人ともが杖を使った魔法を十分にこなせる優秀さを持っている、というくらいだろうか。
アンブリッジが二人を新たなお気に入りにカウントしたのは間違いないとして、そのきっかけは何だったのだろう。ドラコが手引きした何かが関係しているのだろうか?
ところで、実はハグリッド関連のニュース以外にもう一つ密かに生徒間で囁かれていることがあった。それは、クリスマスが明けてからのフォーラが以前にも増して随分魅力に溢れているということだった。その要因は最近彼女が身に着けているナルシサスの花飾りだったが、周囲はその効果を知る由もない。クリスマスイブに誰かから贈られたその花には彼女の魅力を引き立てる魔法が掛けられており、彼女は城内で誰か知り合いに会うと度々その姿を褒められた。とはいえその効果が面識のない生徒ですら視線で追ってしまう程だとは知らなかった。
そうしてすっかりフォーラが魅力的であることが城内の周知の事実となった頃、時を同じくしてブレーズが頻繁に彼女に話し掛けてくるようになった。しかも時折、会話の端々から甘い言葉が飛んでくるのだ。パンジー曰く「あの軟派男のことだから、見目麗しいフォーラを隣に置いて周りに自慢したいだけよ。魂胆が見えてる」とのことだった。
「しかもブレーズはドラコと時々対立してる節があるじゃない?最近フォーラがドラコと一緒にいないからチャンスだと思ったに違いないわ」
フォーラはパンジーの話を聞いて、ブレーズの態度がドラコを焚きつけるきっかけになればいいのにと思った。しかし普段のドラコにはそんな素振りが一切なく、ブレーズがフォーラに積極的に話しかける横を素通りするだけだった。
(ドラコには私が魅力的に映っているわけじゃないんだわ。この花は私のことを嫌っている人には効果がないのかもしれない。……ううん、ドラコは完全に私を嫌っているわけじゃない。……そう思いたいけれど……。それとも、ドラコがアマンダからの好意にきちんと向き合っているから、なのかしら)
そう考えると胸の奥がズキズキした。ナルシサスの花飾りを身に着けていれば、ドラコの関心がこちらを向くかもしれないと期待していたのだが。本当にこの花は彼には効果がないのだろうか。
しかし落ち込んでばかりはいられなかった。そのような状態にあっても、フォーラはドラコに話しかけられる機会があればクリスマス休暇前よりも一層声を掛けるように努めたのだ。とはいえ彼からは大半が短い返答だったため、その状況に耐えうるだけの相当強い精神力が必要だった。幾らパーティーの時に彼が一瞬だけ見せた優しい言葉で希望を持てたとはいえ、休暇前の彼女は挨拶を交わすのも憚られる程に拒絶されていたのだ。彼女はそれを忘れられる程の強靭さまでは持ち合わせていなかった。
加えて五年生は再び学年末のふくろう試験に向けて猛勉強する日々が始まった。宿題が山ほど出された上、フォーラに至っては時間を作って相変わらず四階にある彼女の秘密の部屋で変身術の練習に勤しんでいた。友人たちも課題に追われていたものの、フォーラがとりわけ忙しそうにしていることを心配していた。
そしてそんな中、フォーラを悩ませる出来事がとうとう起こってしまった。アンブリッジがスリザリン生のみで構成された『尋問官親衛隊』を密かに募集し始めたのだ。フォーラはパンジーが親衛隊の一員に加わることを承諾した旨を教えてもらったことでその件を知った。
「先生を手伝うと、寮や自分の内申も融通を利かせてもらえるみたいなの。先生がホグワーツを自分の想いどおりにしたいっていう傲慢さを持っているのは勿論分かっているけど、そうなったところで別にスリザリン生にとっては損がないでしょ?だったら美味しい思いをする方がいいと思って引き受けたの」
「だけどパンジー、今でも監督生で十分先生からの評価は高い筈なのに、これ以上頑張らなくてもいいんじゃない?」ルニーの質問にパンジーは首を横に振った。
「私、将来は魔法省で外交をしたいの。去年の三大魔法学校対抗試合の時にそう思い始めて……。アンブリッジ先生も魔法省でお勤めだったでしょ?もし先生と関わることで少しでも自分が有利になるなら、多少面倒な事でもやろうと思ったわ」
「そっか。まあ確かに内申の話を持ち出されたら断れないわよね。パンジーの言うとおり、使えるものは使っておくのも悪くないか」ルニーが言った。
基本的にアンブリッジのお気に入りの生徒はドラコやパンジーといった愛想がいいタイプで、今回新たに目をつけていたのは、二人とは真逆のセオドール・ノットやブレーズ・ザビニといった面子だった。フォーラは思いつく範囲で同級生のセオドールとブレーズの共通点を考えてみたが、あまり多くは思い当たらなかった。
セオドールはやや一匹狼気質で群れないタイプだが、スリザリンのリーダー的存在であるドラコとは対等に話せる存在だ。一方のブレーズは軟派な性格かつ美人に目がないことで有名で、時折ドラコとは意見が衝突したり敵対関係になったりすることもあり、やや高慢な性格と言えるだろう。
そんなセオドールとブレーズの共通点をあえて挙げるなら、心を開いていない相手であるアンブリッジとの接触にはあまり積極的ではないように見える。それから二人ともが杖を使った魔法を十分にこなせる優秀さを持っている、というくらいだろうか。
アンブリッジが二人を新たなお気に入りにカウントしたのは間違いないとして、そのきっかけは何だったのだろう。ドラコが手引きした何かが関係しているのだろうか?
ところで、実はハグリッド関連のニュース以外にもう一つ密かに生徒間で囁かれていることがあった。それは、クリスマスが明けてからのフォーラが以前にも増して随分魅力に溢れているということだった。その要因は最近彼女が身に着けているナルシサスの花飾りだったが、周囲はその効果を知る由もない。クリスマスイブに誰かから贈られたその花には彼女の魅力を引き立てる魔法が掛けられており、彼女は城内で誰か知り合いに会うと度々その姿を褒められた。とはいえその効果が面識のない生徒ですら視線で追ってしまう程だとは知らなかった。
そうしてすっかりフォーラが魅力的であることが城内の周知の事実となった頃、時を同じくしてブレーズが頻繁に彼女に話し掛けてくるようになった。しかも時折、会話の端々から甘い言葉が飛んでくるのだ。パンジー曰く「あの軟派男のことだから、見目麗しいフォーラを隣に置いて周りに自慢したいだけよ。魂胆が見えてる」とのことだった。
「しかもブレーズはドラコと時々対立してる節があるじゃない?最近フォーラがドラコと一緒にいないからチャンスだと思ったに違いないわ」
フォーラはパンジーの話を聞いて、ブレーズの態度がドラコを焚きつけるきっかけになればいいのにと思った。しかし普段のドラコにはそんな素振りが一切なく、ブレーズがフォーラに積極的に話しかける横を素通りするだけだった。
(ドラコには私が魅力的に映っているわけじゃないんだわ。この花は私のことを嫌っている人には効果がないのかもしれない。……ううん、ドラコは完全に私を嫌っているわけじゃない。……そう思いたいけれど……。それとも、ドラコがアマンダからの好意にきちんと向き合っているから、なのかしら)
そう考えると胸の奥がズキズキした。ナルシサスの花飾りを身に着けていれば、ドラコの関心がこちらを向くかもしれないと期待していたのだが。本当にこの花は彼には効果がないのだろうか。
しかし落ち込んでばかりはいられなかった。そのような状態にあっても、フォーラはドラコに話しかけられる機会があればクリスマス休暇前よりも一層声を掛けるように努めたのだ。とはいえ彼からは大半が短い返答だったため、その状況に耐えうるだけの相当強い精神力が必要だった。幾らパーティーの時に彼が一瞬だけ見せた優しい言葉で希望を持てたとはいえ、休暇前の彼女は挨拶を交わすのも憚られる程に拒絶されていたのだ。彼女はそれを忘れられる程の強靭さまでは持ち合わせていなかった。
加えて五年生は再び学年末のふくろう試験に向けて猛勉強する日々が始まった。宿題が山ほど出された上、フォーラに至っては時間を作って相変わらず四階にある彼女の秘密の部屋で変身術の練習に勤しんでいた。友人たちも課題に追われていたものの、フォーラがとりわけ忙しそうにしていることを心配していた。
そしてそんな中、フォーラを悩ませる出来事がとうとう起こってしまった。アンブリッジがスリザリン生のみで構成された『尋問官親衛隊』を密かに募集し始めたのだ。フォーラはパンジーが親衛隊の一員に加わることを承諾した旨を教えてもらったことでその件を知った。
「先生を手伝うと、寮や自分の内申も融通を利かせてもらえるみたいなの。先生がホグワーツを自分の想いどおりにしたいっていう傲慢さを持っているのは勿論分かっているけど、そうなったところで別にスリザリン生にとっては損がないでしょ?だったら美味しい思いをする方がいいと思って引き受けたの」
「だけどパンジー、今でも監督生で十分先生からの評価は高い筈なのに、これ以上頑張らなくてもいいんじゃない?」ルニーの質問にパンジーは首を横に振った。
「私、将来は魔法省で外交をしたいの。去年の三大魔法学校対抗試合の時にそう思い始めて……。アンブリッジ先生も魔法省でお勤めだったでしょ?もし先生と関わることで少しでも自分が有利になるなら、多少面倒な事でもやろうと思ったわ」
「そっか。まあ確かに内申の話を持ち出されたら断れないわよね。パンジーの言うとおり、使えるものは使っておくのも悪くないか」ルニーが言った。