15. スパイ
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(!……父様やセブルスさんが危惧していたとおり、アンブリッジ先生はハリーたちが開いた一回目の集会を知っていたんだわ。その件はクラブ活動ではなかったから咎められないとは思うけれど……。それに、彼らが既に防衛術を継続して練習していることまでは知らないのね)
今の話の流れから察するに、アンブリッジは自分の補佐として校内を監視する生徒を募ろうとしているのだろう。そしてフォーラが最も気になったのは、ドラコがそのメンバーの選抜に何か手を貸していそうだということだった。
(ドラコ、あなた本当に大丈夫なの……?)
フォーラは先程の二人の会話に気を取られて考えを巡らせていたが故、ドラコたちが彼女の隠れている方向に歩みを進めていることに気付かなかった。二人の足音と声が極端に近付いた時、ようやくフォーラがハッとしてそちらを見やると、曲がり角を折れたばかりのドラコと黒猫の姿をした彼女の視線がばっちり合ってしまった。その際、ドラコが突然立ち止まったことで彼のローブがふわりと揺れた。
「ドラコ、どうかしたのかしら?」
アンブリッジの猫撫で声が彼のすぐ後ろで聞こえた。まだフォーラからはアンブリッジの姿がギリギリ見えなかったが、突然の事態に身体が強張って動けずにいた。早く走って逃げた方がいいに決まっているのに。こんなことならしっかりと目くらまし術を掛けておくんだった。
フォーラはどうしようもなくその場で思わずギュッと目を瞑ってしまった。きっとドラコはこちらの存在をアンブリッジに伝え、今の会話に聞き耳を立てられていたことを告げるだろう―――。そう思ったのも束の間、黒猫姿のフォーラの小さな身体に大判の布が触れた。
「いえ、何でもありません。少し用事を思い出して、足が止まってしまいました」
その声を聞いてフォーラが恐る恐る目を開けると、彼女の視界には見覚えのある黒い布とドラコの足元が映っていた。彼女は彼の足首まである長いローブの内側にいたのだ。
(もしかしてドラコは私を隠してくれたの……?)
アンブリッジは彼の行動に特に違和感もなく会話を続けた。
「あら、それじゃあここでお別れしましょう。今学期から頼み事が増えるけれど、よろしくね」
「はい、勿論です」
アンブリッジはドラコに笑顔で見送られる形でその場を去った。そしてドラコは彼女が見えなくなったのを確認すると、視線を足元の黒猫に落とし、厳しい口調で言った。
「さあ、人間の姿に戻るんだ」
フォーラは何も言わずに黒猫から人の姿に変身した。そんな彼女の表情は至って冷静に取り繕われていた。
「よく私だとすぐに分かったわね。黒猫なんて珍しくないのに。」
「そんなことより、ご丁寧に変身までして何故こんな所にいるんだ?何かを立ち聞きしていたようにしか思えないが」ドラコの冷たい視線がフォーラに向けられた。
「ごめんなさい、貴方が何かアンブリッジ先生の手助けしている話を聞いてしまったことは認めるわ。ただ、私は貴方の様子が知りたかっただけなの。そんな話を聞くためじゃなかった。私、ドラコがアンブリッジ先生に呼ばれたと聞いて心配になって―――先生には生徒への黒い噂が沢山つきまとっていたから、もしかして何かされているんじゃないかと思ったの。」
するとドラコはフンと鼻を鳴らした。
「ああそうかい。それはそれはご心配いただきどうもありがとう。だが僕はその対象にはなり得ない。何せ僕はあの人のお気に入りだ」
「そう、それなら良かった……。」
フォーラがホッと胸を撫で下ろした。一の方ドラコは彼女の予想外の反応に呆れてフイと視線を逸らした。
「随分お人好しだな。君は僕に相当避けられているのを自覚していないのか?どおりでそんな台詞が言えたものだ」
「ええ。私、貴方に嫌われている自覚がないのかもしれないわ。」
フォーラの言葉を受け、ドラコは再び彼女にパッと視線を戻した。すると彼女が続けた。
「私、確かにドラコには随分嫌われてしまったと思ったわ。だけど、この間のクリスマスパーティーの時は貴方の思わぬ優しさがとっても嬉しかったの。まさかドレスを似合うと言ってもらえたり、転びそうなところを助けてもらったり……。特に、私のことを『心配するに決まっている』と言ってくれた時は、本当に心が躍ったわ。まるで以前のドラコに戻ったみたいで。」
ドラコはファントム家でのパーティーで自分の意思とは関係なくフォーラを褒めたり心配したりしてしまったことを思い出し、思わず顔がグッと熱くなるのを感じた。彼女が続けた。
「今だって、貴方はこうして話したくもない筈の私と会話を続けてくれているわ。だから、私ったらほんの少し浮かれてしまっているのかもしれないわね。ごめんなさい。」
フォーラが力なく笑ってみせると、ドラコは少々声を荒げた。
「ば……馬鹿じゃないのか、パーティーの時は来客の目があったからそうしただけで、君のためじゃなかった!あの時もそう言っただろう。それに今は、君がわざわざこんな所にいる言い訳を聞いておく必要があると思ったから会話しているだけだ。自惚れるんじゃない」
「そう……。なら、たった今私のことを隠してくれたのはどうして?まるで、アンブリッジ先生の目に触れないようにしてくれたみたいだった。」
「ふん、愚問だな。君の存在をわざわざ先生と一緒になって問い詰めるのが面倒だっただけだ。そんなことも分からないのか?」
「そうだったの……。」
ドラコはフォーラが自分の言葉でショックを受ければいいと考えていたため、彼女が視線を下げたことでその通りになったと思った。しかし彼女は顔を上げると笑顔を見せていた。
「助けてくれて、どうもありがとう。」
ドラコはフォーラの発言に一瞬だけ呆気に取られたが、すぐに意識を引き戻した。
「君は……人の話を聞いていたのか?」
「ええ、勿論だわ。だけど私、貴方の前では何を言われてもポジティブでいようって、そう決めたの。だから私の解釈は変わらないわ。」
「……何かを企んでいるんじゃないだろうな」
ドラコにはフォーラが一体何を考えているのかさっぱり読めず、訝しげな表情でそのように尋ねた。すると彼女から返ってきたのは寂しげな微笑みだった。
「ええ、間違いではないのかもしれない。」
「どういうことだ?」
今の話の流れから察するに、アンブリッジは自分の補佐として校内を監視する生徒を募ろうとしているのだろう。そしてフォーラが最も気になったのは、ドラコがそのメンバーの選抜に何か手を貸していそうだということだった。
(ドラコ、あなた本当に大丈夫なの……?)
フォーラは先程の二人の会話に気を取られて考えを巡らせていたが故、ドラコたちが彼女の隠れている方向に歩みを進めていることに気付かなかった。二人の足音と声が極端に近付いた時、ようやくフォーラがハッとしてそちらを見やると、曲がり角を折れたばかりのドラコと黒猫の姿をした彼女の視線がばっちり合ってしまった。その際、ドラコが突然立ち止まったことで彼のローブがふわりと揺れた。
「ドラコ、どうかしたのかしら?」
アンブリッジの猫撫で声が彼のすぐ後ろで聞こえた。まだフォーラからはアンブリッジの姿がギリギリ見えなかったが、突然の事態に身体が強張って動けずにいた。早く走って逃げた方がいいに決まっているのに。こんなことならしっかりと目くらまし術を掛けておくんだった。
フォーラはどうしようもなくその場で思わずギュッと目を瞑ってしまった。きっとドラコはこちらの存在をアンブリッジに伝え、今の会話に聞き耳を立てられていたことを告げるだろう―――。そう思ったのも束の間、黒猫姿のフォーラの小さな身体に大判の布が触れた。
「いえ、何でもありません。少し用事を思い出して、足が止まってしまいました」
その声を聞いてフォーラが恐る恐る目を開けると、彼女の視界には見覚えのある黒い布とドラコの足元が映っていた。彼女は彼の足首まである長いローブの内側にいたのだ。
(もしかしてドラコは私を隠してくれたの……?)
アンブリッジは彼の行動に特に違和感もなく会話を続けた。
「あら、それじゃあここでお別れしましょう。今学期から頼み事が増えるけれど、よろしくね」
「はい、勿論です」
アンブリッジはドラコに笑顔で見送られる形でその場を去った。そしてドラコは彼女が見えなくなったのを確認すると、視線を足元の黒猫に落とし、厳しい口調で言った。
「さあ、人間の姿に戻るんだ」
フォーラは何も言わずに黒猫から人の姿に変身した。そんな彼女の表情は至って冷静に取り繕われていた。
「よく私だとすぐに分かったわね。黒猫なんて珍しくないのに。」
「そんなことより、ご丁寧に変身までして何故こんな所にいるんだ?何かを立ち聞きしていたようにしか思えないが」ドラコの冷たい視線がフォーラに向けられた。
「ごめんなさい、貴方が何かアンブリッジ先生の手助けしている話を聞いてしまったことは認めるわ。ただ、私は貴方の様子が知りたかっただけなの。そんな話を聞くためじゃなかった。私、ドラコがアンブリッジ先生に呼ばれたと聞いて心配になって―――先生には生徒への黒い噂が沢山つきまとっていたから、もしかして何かされているんじゃないかと思ったの。」
するとドラコはフンと鼻を鳴らした。
「ああそうかい。それはそれはご心配いただきどうもありがとう。だが僕はその対象にはなり得ない。何せ僕はあの人のお気に入りだ」
「そう、それなら良かった……。」
フォーラがホッと胸を撫で下ろした。一の方ドラコは彼女の予想外の反応に呆れてフイと視線を逸らした。
「随分お人好しだな。君は僕に相当避けられているのを自覚していないのか?どおりでそんな台詞が言えたものだ」
「ええ。私、貴方に嫌われている自覚がないのかもしれないわ。」
フォーラの言葉を受け、ドラコは再び彼女にパッと視線を戻した。すると彼女が続けた。
「私、確かにドラコには随分嫌われてしまったと思ったわ。だけど、この間のクリスマスパーティーの時は貴方の思わぬ優しさがとっても嬉しかったの。まさかドレスを似合うと言ってもらえたり、転びそうなところを助けてもらったり……。特に、私のことを『心配するに決まっている』と言ってくれた時は、本当に心が躍ったわ。まるで以前のドラコに戻ったみたいで。」
ドラコはファントム家でのパーティーで自分の意思とは関係なくフォーラを褒めたり心配したりしてしまったことを思い出し、思わず顔がグッと熱くなるのを感じた。彼女が続けた。
「今だって、貴方はこうして話したくもない筈の私と会話を続けてくれているわ。だから、私ったらほんの少し浮かれてしまっているのかもしれないわね。ごめんなさい。」
フォーラが力なく笑ってみせると、ドラコは少々声を荒げた。
「ば……馬鹿じゃないのか、パーティーの時は来客の目があったからそうしただけで、君のためじゃなかった!あの時もそう言っただろう。それに今は、君がわざわざこんな所にいる言い訳を聞いておく必要があると思ったから会話しているだけだ。自惚れるんじゃない」
「そう……。なら、たった今私のことを隠してくれたのはどうして?まるで、アンブリッジ先生の目に触れないようにしてくれたみたいだった。」
「ふん、愚問だな。君の存在をわざわざ先生と一緒になって問い詰めるのが面倒だっただけだ。そんなことも分からないのか?」
「そうだったの……。」
ドラコはフォーラが自分の言葉でショックを受ければいいと考えていたため、彼女が視線を下げたことでその通りになったと思った。しかし彼女は顔を上げると笑顔を見せていた。
「助けてくれて、どうもありがとう。」
ドラコはフォーラの発言に一瞬だけ呆気に取られたが、すぐに意識を引き戻した。
「君は……人の話を聞いていたのか?」
「ええ、勿論だわ。だけど私、貴方の前では何を言われてもポジティブでいようって、そう決めたの。だから私の解釈は変わらないわ。」
「……何かを企んでいるんじゃないだろうな」
ドラコにはフォーラが一体何を考えているのかさっぱり読めず、訝しげな表情でそのように尋ねた。すると彼女から返ってきたのは寂しげな微笑みだった。
「ええ、間違いではないのかもしれない。」
「どういうことだ?」