13. マリアお手製のドレス
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「ええとそれは……こちらのムーニーさんもアニメーガスのような能力をお持ちだというお話を聞いていたところだったんです。」
フォーラはスネイプがムーニーの正体を知っているのか分からず、一先ずありのままを伝えた。するとスネイプはその名にピクリと反応し、目の前の彼をじっと見据えた。ムーニーはスネイプの突き刺さるような視線に苦笑いするしかなかった。
「ほう、アニメーガスとは珍しい。一体何に変身なさるのですかな。まさか『狼だ』などとは言いますまい」
フォーラは二人の様子から、スネイプが既にムーニーの正体を把握しているのだと察した。するとスネイプが続けた。
「兎に角、ムーニー氏。彼女に近付くことはあまりお勧めしない。この屋敷で目立ちたくなければ、パーティー主催者の娘のそばには立たないことだ」
「ミスター・スネイプ、お気遣い痛み入る。勿論私も目立つつもりはないとも。ただ単に私は、屋敷の御主人の娘さんに軽く挨拶をと思っただけだよ。私のことを気に掛けてくれてどうもありがとう」
柔らかく笑ったムーニーに対し、スネイプは鼻をフンと鳴らして嘲笑った。
「我輩が気に掛けているのは貴方のことではない。こちらのお嬢さんの方を心配しているのだ。……貴様のような狼がそばにいると思うと気が気でならん」
スネイプは後半の言葉を、殆ど唇を動かさずに憎しみを込めて静かに口にした。しかしムーニーは特に表情を変えることなく優しく微笑み返した。
「はは、お嬢さんは随分世話焼きなおじ様を持ったものだ。心配しすぎて私があらぬ誤解を受けている状況はあまり好ましくないけれどね。それでは私は忠告どおりこの場を離れることにしますよ。お嬢さん、またお会いしましょう」そう言ってムーニーは人々の間を縫うように消えていった。
「セブルスさん、さっきのってやっぱり……」
スネイプはため息を吐いた後でフォーラに小声で耳打ちした。
「ああ。そのとおりだ。奴め、もう少しマシな名を選べなかったのか。しかしフォーラ、今日は特に無闇やたらに見知らぬ人物と接触するのは避けた方がいい。ああして姿を偽造しているのがこちら側の人間だけとは限らんのだからな」
「分かりました……。ふふ、でもこうして心配して来てくださったこと、とっても嬉しいです。ありがとうございます。」
「当然のことだ」
フォーラはスネイプが照れ隠しでもするだろうかと予想していただけに、存外素直な反応だったためほんの少し驚いてから再び笑みを零した。それと同時に、このパーティー会場が水面下では非常に危険な場所であることも改めて感じずにはいられなかった。
「兎に角、今夜はあまり余計なことは話さず、いつもどおりにしていろ。そして、パーティーが終わればすぐに自室に戻れ。パーティー後の商談の場にはけして近付くな。いいな」
フォーラが頷いた丁度その時、向こうの方から彼女の名を呼ぶ声がした。そのためスネイプは彼女を一瞥した後ですぐにその場を離れていったのだった。
フォーラのそばにやって来たのはアレクシスだった。つい先程まで彼女の母と談笑していたらしい。
「今のはオグワーツの先生だね?」アレクシスがスネイプの立ち去った方を見ながら言った。
「ええ、そうなの。先生でもあり、私が小さい頃からお世話になっている人よ。魔法薬学の担当なの。」
「へえ、そうだったんだ。後で挨拶しておこうかな?もしかすると僕のお客になってくれるかもしれない」
アレクシスはそのように言い終えた際、近くを漂ってきた銀の盆の上にあるグラスを自然な流れで二つ取り、同じ盆に載った葡萄ジュースの瓶とワインの瓶からそれぞれ注ぐと、前者をフォーラに手渡した。
「どうもありがとう。……そういえば、アレクシスは薬草店で働いているのよね?どんなところなの?」
「そうだなあ、ゔぉくのところはおっきな温室があって……丁度この屋敷ぐらいの広さかな、そこで年中色んな魔法植物を育ててるんだ。温室の隣には畑や森もあって、温室じゃ育たないような植物を取りにいくこともあるよ。僕がオグワーツにいた頃、フォーラにあげたクローカスの花を覚えてる?あれと同じ種類のものがその森の近くにもたくさん自生してるんだ。質が良くて、魔法薬の材料にも使えるんだよ」
「そうだったの?あのお花、紫がとっても鮮やかだったから今でも十分思い出せるわ。」
フォーラは昨年度にホグワーツでアレクシスから受け取った、紫色の美しいクロッカスの小さな花束を思い浮かべて微笑んだ。アレクシスはそんな彼女の表情を受け、かつてのように見惚れたが、グイッとワインを飲んですぐに意識を引き戻した。
「ありがとう。ちなみに仕事内容は温室で植物の植え替えをしたり、販売できる状態にしたり。ゔぉくの場合は出張もあるから疲れる時もあるけど、やりがいも大きいよ。この間だって、シェードさんが働く会社からゔぉくたちの育てたクローカスの花を注文してもらえることになったんだ。あの時は本当に嬉しかった」
「まあ、とっても頑張っているのね!そういえば、アレクシスはどうして今のお仕事を選んだの?貴方は防衛術が随分得意みたいだったから、少し気になって。」
「僕は薬草学も好きだよ。ダームストラングにいた頃は、長いお休みの間に、今の職場の温室でよくお手伝いをしてたんだ。ゔぉくのおじさんがそこで働いていて、卒業後に一緒に働こうって言われてた。それに家も近いし、英語も勉強できるし。良いことづくめだったから。今日、こうしてフォーラにもう一度会えたことも含めてね」
「ふふ、そうね。私にとっても間違いなく良いことだったわ。それにしても、アレクシスは早い段階からそうして将来のことを色々と考えて準備していたのね。凄いわ。」
「まあ、少しくらいはね?フォーラの方はなにか、卒業したらやりたいことはあるの?」
「それがまだ全然なの。今学年の終わりに先生との職業面談を控えているのに。私の友人はもう既に色々と候補を考えているみたいだけど……。やっぱり、得意なことを仕事にする方がいいのかしら?」
フォーラは葡萄ジュースを一口飲んで、悩む思考に連動するようにグラスの中身を軽く回した。
フォーラはスネイプがムーニーの正体を知っているのか分からず、一先ずありのままを伝えた。するとスネイプはその名にピクリと反応し、目の前の彼をじっと見据えた。ムーニーはスネイプの突き刺さるような視線に苦笑いするしかなかった。
「ほう、アニメーガスとは珍しい。一体何に変身なさるのですかな。まさか『狼だ』などとは言いますまい」
フォーラは二人の様子から、スネイプが既にムーニーの正体を把握しているのだと察した。するとスネイプが続けた。
「兎に角、ムーニー氏。彼女に近付くことはあまりお勧めしない。この屋敷で目立ちたくなければ、パーティー主催者の娘のそばには立たないことだ」
「ミスター・スネイプ、お気遣い痛み入る。勿論私も目立つつもりはないとも。ただ単に私は、屋敷の御主人の娘さんに軽く挨拶をと思っただけだよ。私のことを気に掛けてくれてどうもありがとう」
柔らかく笑ったムーニーに対し、スネイプは鼻をフンと鳴らして嘲笑った。
「我輩が気に掛けているのは貴方のことではない。こちらのお嬢さんの方を心配しているのだ。……貴様のような狼がそばにいると思うと気が気でならん」
スネイプは後半の言葉を、殆ど唇を動かさずに憎しみを込めて静かに口にした。しかしムーニーは特に表情を変えることなく優しく微笑み返した。
「はは、お嬢さんは随分世話焼きなおじ様を持ったものだ。心配しすぎて私があらぬ誤解を受けている状況はあまり好ましくないけれどね。それでは私は忠告どおりこの場を離れることにしますよ。お嬢さん、またお会いしましょう」そう言ってムーニーは人々の間を縫うように消えていった。
「セブルスさん、さっきのってやっぱり……」
スネイプはため息を吐いた後でフォーラに小声で耳打ちした。
「ああ。そのとおりだ。奴め、もう少しマシな名を選べなかったのか。しかしフォーラ、今日は特に無闇やたらに見知らぬ人物と接触するのは避けた方がいい。ああして姿を偽造しているのがこちら側の人間だけとは限らんのだからな」
「分かりました……。ふふ、でもこうして心配して来てくださったこと、とっても嬉しいです。ありがとうございます。」
「当然のことだ」
フォーラはスネイプが照れ隠しでもするだろうかと予想していただけに、存外素直な反応だったためほんの少し驚いてから再び笑みを零した。それと同時に、このパーティー会場が水面下では非常に危険な場所であることも改めて感じずにはいられなかった。
「兎に角、今夜はあまり余計なことは話さず、いつもどおりにしていろ。そして、パーティーが終わればすぐに自室に戻れ。パーティー後の商談の場にはけして近付くな。いいな」
フォーラが頷いた丁度その時、向こうの方から彼女の名を呼ぶ声がした。そのためスネイプは彼女を一瞥した後ですぐにその場を離れていったのだった。
フォーラのそばにやって来たのはアレクシスだった。つい先程まで彼女の母と談笑していたらしい。
「今のはオグワーツの先生だね?」アレクシスがスネイプの立ち去った方を見ながら言った。
「ええ、そうなの。先生でもあり、私が小さい頃からお世話になっている人よ。魔法薬学の担当なの。」
「へえ、そうだったんだ。後で挨拶しておこうかな?もしかすると僕のお客になってくれるかもしれない」
アレクシスはそのように言い終えた際、近くを漂ってきた銀の盆の上にあるグラスを自然な流れで二つ取り、同じ盆に載った葡萄ジュースの瓶とワインの瓶からそれぞれ注ぐと、前者をフォーラに手渡した。
「どうもありがとう。……そういえば、アレクシスは薬草店で働いているのよね?どんなところなの?」
「そうだなあ、ゔぉくのところはおっきな温室があって……丁度この屋敷ぐらいの広さかな、そこで年中色んな魔法植物を育ててるんだ。温室の隣には畑や森もあって、温室じゃ育たないような植物を取りにいくこともあるよ。僕がオグワーツにいた頃、フォーラにあげたクローカスの花を覚えてる?あれと同じ種類のものがその森の近くにもたくさん自生してるんだ。質が良くて、魔法薬の材料にも使えるんだよ」
「そうだったの?あのお花、紫がとっても鮮やかだったから今でも十分思い出せるわ。」
フォーラは昨年度にホグワーツでアレクシスから受け取った、紫色の美しいクロッカスの小さな花束を思い浮かべて微笑んだ。アレクシスはそんな彼女の表情を受け、かつてのように見惚れたが、グイッとワインを飲んですぐに意識を引き戻した。
「ありがとう。ちなみに仕事内容は温室で植物の植え替えをしたり、販売できる状態にしたり。ゔぉくの場合は出張もあるから疲れる時もあるけど、やりがいも大きいよ。この間だって、シェードさんが働く会社からゔぉくたちの育てたクローカスの花を注文してもらえることになったんだ。あの時は本当に嬉しかった」
「まあ、とっても頑張っているのね!そういえば、アレクシスはどうして今のお仕事を選んだの?貴方は防衛術が随分得意みたいだったから、少し気になって。」
「僕は薬草学も好きだよ。ダームストラングにいた頃は、長いお休みの間に、今の職場の温室でよくお手伝いをしてたんだ。ゔぉくのおじさんがそこで働いていて、卒業後に一緒に働こうって言われてた。それに家も近いし、英語も勉強できるし。良いことづくめだったから。今日、こうしてフォーラにもう一度会えたことも含めてね」
「ふふ、そうね。私にとっても間違いなく良いことだったわ。それにしても、アレクシスは早い段階からそうして将来のことを色々と考えて準備していたのね。凄いわ。」
「まあ、少しくらいはね?フォーラの方はなにか、卒業したらやりたいことはあるの?」
「それがまだ全然なの。今学年の終わりに先生との職業面談を控えているのに。私の友人はもう既に色々と候補を考えているみたいだけど……。やっぱり、得意なことを仕事にする方がいいのかしら?」
フォーラは葡萄ジュースを一口飲んで、悩む思考に連動するようにグラスの中身を軽く回した。