13. マリアお手製のドレス
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クリスマスイブ当日の夕刻、フォーラたち家族と使用人三名は、次第に屋敷に集まり始めた客人を次々に迎え入れた。今日のフォーラは、深いネイビーの繊細なサテンジャガードのマーメイドドレスを身に纏っていて、裾にちりばめられた細かいクリスタルが夜空のように輝いていた。
(マリアの趣味に付き合っているのもあるとはいえ、いつも彼女にドレスを仕立ててもらえて本当に有難いのだけど……。毎回どこか油断ならないデザインなのよね)
フォーラは去年のホグワーツでのダンスパーティー用に、アメリカンスリーブの随分セクシーなドレスがマリアから届けられたのを思い出した。今日は前回とは逆にデコルテが大きく開き、腕は長袖できっちり隠れていた。
そのような出で立ちのフォーラが客人たちに挨拶をしていると、広間の一角でシェードがマルフォイ家を迎え入れている最中だった。そこにはドレスローブ姿のドラコもいて、彼女は思わずその場に固まった。
(大丈夫よフォーラ。マリアに言われたことを思い出して)
それは何時間か前、マリアの作ったドレスに袖を通した時のことだった。パーティーでフォーラがドラコに会うのを不安に思っているが故、マリアがドレスの最終確認の際に元気付けてくれたのだ。
『普段どおり、堂々としてさえいればきっと大丈夫ですよ』
『ええ……。頭では分かっているのだけれど、どうしても自信がなくて……。』
『あらあら、ちゃんとご自身の姿を鏡でご覧になりましたか?こんっなに素敵なのに!ドラコ様は間違いなく褒めてくださると思いますよ』
『でも以前も言ったとおり、私たち完全に仲違いしているのよ。それに学校でのドラコは私に対してとっても冷たいわ。』
するとマリアはフォーラを姿見の方へ向かせ、背後から両肩に手を添えて鏡越しに視線を合わせた。
『いいですか、お嬢様。今まで私がこの手で仕立てたドレスをあなたがお召しになった時、みなさんが何とおっしゃっていたか覚えていますか?』
『それは勿論、よく似合っていると言ってくださったわ。ドラコも含めて。』
フォーラが今までのことを思い出しながら言うと、マリアは満足そうに微笑んでいた。
『そういうことです。私の仕立てたドレスを着たお嬢様の前では、みなさんとっても素直になってしまうんです』
『えっ?』マリアの言っていることがよく分からずフォーラは聞き返したが、マリアは特に詳しい話をしなかった。
『ふふ。それだけお嬢様の魅力の前では誰も抗えないということです。だから今日もきっと大丈夫ですよ』
自信満々に言い放ったマリアにこれ以上何も反論する言葉が見つからず、フォーラはため息交じりに微笑んだ。
『分かったわ、元気付けてくれてどうもありがとう……。折角マリアが仕立ててくれたドレスを着ているんだもの、暗い顔なんてしていられないわよね。』
フォーラは一連のそのようなやり取りの記憶から、意識を現在立っている広間へと戻して小さくため息を吐いた。そして再び遠目にドラコの方へ視線を向けてみると、彼がシェードには笑顔を向けているのが見て取れて、思わず心を痛めた。しかしマリアの言葉に元気をもらった彼女は勇気を振り絞って彼らに近付いた。
「こんばんは。」フォーラが声を掛けると、ドラコとマルフォイ夫妻がこちらを向いた。ルシウスとナルシッサは喜んで挨拶を返してくれたが、ドラコの方は先程までの笑顔が消えていた。その様子に気が付いたルシウスが彼に尋ねた。
「ドラコ 、どうしたんだ。フォーラ嬢に見惚れて言葉も出ないか」
「えっ、いや……その、こんばんは」
フォーラとドラコの目が合うと、彼は思わず視線を逸らした。フォーラはそれが気まずさ故のものだとすぐに分かったが、彼の両親はそう思っていないようだった。
「フォーラさんはついこの間まで可愛らしいドレスだったのに、もう随分レディな着こなしになったわ。ドラコったら照れているのよ。ごめんなさいね」
ナルシッサの発言に、ドラコが心外だという表情でピクリと反応したのをフォーラは見逃さなかった。
(そうよね、私は貴方からあれだけ嫌われているんだもの。こんな格好をしても今更何とも思わないでしょうし、誤解されたら一層気分が悪いわよね……)
「そんな、ありがとうございます。ナルシッサさんもとってもお綺麗でよくお似合いです。」
「あら、ありがとう。少しでも会場が華やかになれば嬉しいわ。そういえば、今日はここではあまり見ない顔ぶれが比較的多いわね。他所ではお話ししたことのある人もいらっしゃるけれど」
ナルシッサがシェードにそう尋ねると、彼は何気ない様子で返答した。
「最近は、私の仕事の関係で新しい付き合いも増えたからね。ノット氏もその内の一人だ。彼もそろそろ到着する頃だと思うが」
フォーラはノット氏を見たことがなかったが、どういう人物であるかは事前に把握していた。彼が死喰い人であることも、ルシウスがファントム家に相談した何らかの依頼に彼も関わっているということも。そしてシェードがノット氏の名を口にするや否や、丁度良いタイミングで彼とその息子が現れて輪に加わった。
「ファントム家のみなさん、こんばんは。」
ノット氏が落ち着いた声で挨拶をした。彼の息子であるセオドール・ノットは多少居心地が悪そうにしながらも同じく挨拶した。何せ普段着慣れないドレスローブを纏っているのに加え、初めて訪れたそこまで親交の深くない異性の同級生の屋敷で過ごすとあっては、その反応も致し方ないだろう。
「やあ、噂をすれば」シェードがノット氏に笑顔を向けた。「会うのは随分久しぶりだね。今日は我々の招待を受けてくれてどうもありがとう」
「こちらこそ、ご招待いただき感謝します」
フォーラはその時のノット氏の少々固い表情が、暗に何かを示しているような気がしてならなかった。シェードは顔色ひとつ変えずに笑顔でセオドールにも声を掛けた。
「セオドール君もようこそ。いつも娘がお世話になっているね。娘から聞いたんだが、君はホグワーツで随分優秀だそうじゃないか。素晴らしいことだ」
「いえ、そんなことは。フォーラさんの方が特に変身術はよっぽど優秀ですよ」
そう言ってセオドールは隣にいたフォーラを見た。彼女は普段彼とはあまり言葉を交わす仲ではなかったが、お世辞でもそんな風に思ってくれていたとは嬉しい限りだった。彼女が「ありがとう」と微笑むと、彼は表情を変えずに「いや……」と行き場のない声を発したが、そのまま意外な言葉を続けた。
「今日は普段と随分雰囲気が違うんだな。そのドレス、よく似合ってると思う」
フォーラやドラコは思わず驚いて目を丸くした。セオドールという人は、普段こんなにも真っすぐにお世辞らしからぬ言葉で相手を褒めることなど滅多にしないのだ。どちらかといえば彼は口数が少なくて、何を考えているか分からないタイプだった。そのらしくない態度にフォーラは不意を突かれて焦ってしまった。
「ええと、そんな風に褒めてもらえると思っていなかったから……少し驚いてしまったわ。でも、ありがとう。セオドールもとっても素敵。勿論、ドラコもよ。」
その言葉を受け、セオドールはこれまた意外にも普段滅多に見せない笑顔をフォーラに返したが、ドラコの方はセオドールのように表情を崩すことはなかった。
(マリアの趣味に付き合っているのもあるとはいえ、いつも彼女にドレスを仕立ててもらえて本当に有難いのだけど……。毎回どこか油断ならないデザインなのよね)
フォーラは去年のホグワーツでのダンスパーティー用に、アメリカンスリーブの随分セクシーなドレスがマリアから届けられたのを思い出した。今日は前回とは逆にデコルテが大きく開き、腕は長袖できっちり隠れていた。
そのような出で立ちのフォーラが客人たちに挨拶をしていると、広間の一角でシェードがマルフォイ家を迎え入れている最中だった。そこにはドレスローブ姿のドラコもいて、彼女は思わずその場に固まった。
(大丈夫よフォーラ。マリアに言われたことを思い出して)
それは何時間か前、マリアの作ったドレスに袖を通した時のことだった。パーティーでフォーラがドラコに会うのを不安に思っているが故、マリアがドレスの最終確認の際に元気付けてくれたのだ。
『普段どおり、堂々としてさえいればきっと大丈夫ですよ』
『ええ……。頭では分かっているのだけれど、どうしても自信がなくて……。』
『あらあら、ちゃんとご自身の姿を鏡でご覧になりましたか?こんっなに素敵なのに!ドラコ様は間違いなく褒めてくださると思いますよ』
『でも以前も言ったとおり、私たち完全に仲違いしているのよ。それに学校でのドラコは私に対してとっても冷たいわ。』
するとマリアはフォーラを姿見の方へ向かせ、背後から両肩に手を添えて鏡越しに視線を合わせた。
『いいですか、お嬢様。今まで私がこの手で仕立てたドレスをあなたがお召しになった時、みなさんが何とおっしゃっていたか覚えていますか?』
『それは勿論、よく似合っていると言ってくださったわ。ドラコも含めて。』
フォーラが今までのことを思い出しながら言うと、マリアは満足そうに微笑んでいた。
『そういうことです。私の仕立てたドレスを着たお嬢様の前では、みなさんとっても素直になってしまうんです』
『えっ?』マリアの言っていることがよく分からずフォーラは聞き返したが、マリアは特に詳しい話をしなかった。
『ふふ。それだけお嬢様の魅力の前では誰も抗えないということです。だから今日もきっと大丈夫ですよ』
自信満々に言い放ったマリアにこれ以上何も反論する言葉が見つからず、フォーラはため息交じりに微笑んだ。
『分かったわ、元気付けてくれてどうもありがとう……。折角マリアが仕立ててくれたドレスを着ているんだもの、暗い顔なんてしていられないわよね。』
フォーラは一連のそのようなやり取りの記憶から、意識を現在立っている広間へと戻して小さくため息を吐いた。そして再び遠目にドラコの方へ視線を向けてみると、彼がシェードには笑顔を向けているのが見て取れて、思わず心を痛めた。しかしマリアの言葉に元気をもらった彼女は勇気を振り絞って彼らに近付いた。
「こんばんは。」フォーラが声を掛けると、ドラコとマルフォイ夫妻がこちらを向いた。ルシウスとナルシッサは喜んで挨拶を返してくれたが、ドラコの方は先程までの笑顔が消えていた。その様子に気が付いたルシウスが彼に尋ねた。
「ドラコ 、どうしたんだ。フォーラ嬢に見惚れて言葉も出ないか」
「えっ、いや……その、こんばんは」
フォーラとドラコの目が合うと、彼は思わず視線を逸らした。フォーラはそれが気まずさ故のものだとすぐに分かったが、彼の両親はそう思っていないようだった。
「フォーラさんはついこの間まで可愛らしいドレスだったのに、もう随分レディな着こなしになったわ。ドラコったら照れているのよ。ごめんなさいね」
ナルシッサの発言に、ドラコが心外だという表情でピクリと反応したのをフォーラは見逃さなかった。
(そうよね、私は貴方からあれだけ嫌われているんだもの。こんな格好をしても今更何とも思わないでしょうし、誤解されたら一層気分が悪いわよね……)
「そんな、ありがとうございます。ナルシッサさんもとってもお綺麗でよくお似合いです。」
「あら、ありがとう。少しでも会場が華やかになれば嬉しいわ。そういえば、今日はここではあまり見ない顔ぶれが比較的多いわね。他所ではお話ししたことのある人もいらっしゃるけれど」
ナルシッサがシェードにそう尋ねると、彼は何気ない様子で返答した。
「最近は、私の仕事の関係で新しい付き合いも増えたからね。ノット氏もその内の一人だ。彼もそろそろ到着する頃だと思うが」
フォーラはノット氏を見たことがなかったが、どういう人物であるかは事前に把握していた。彼が死喰い人であることも、ルシウスがファントム家に相談した何らかの依頼に彼も関わっているということも。そしてシェードがノット氏の名を口にするや否や、丁度良いタイミングで彼とその息子が現れて輪に加わった。
「ファントム家のみなさん、こんばんは。」
ノット氏が落ち着いた声で挨拶をした。彼の息子であるセオドール・ノットは多少居心地が悪そうにしながらも同じく挨拶した。何せ普段着慣れないドレスローブを纏っているのに加え、初めて訪れたそこまで親交の深くない異性の同級生の屋敷で過ごすとあっては、その反応も致し方ないだろう。
「やあ、噂をすれば」シェードがノット氏に笑顔を向けた。「会うのは随分久しぶりだね。今日は我々の招待を受けてくれてどうもありがとう」
「こちらこそ、ご招待いただき感謝します」
フォーラはその時のノット氏の少々固い表情が、暗に何かを示しているような気がしてならなかった。シェードは顔色ひとつ変えずに笑顔でセオドールにも声を掛けた。
「セオドール君もようこそ。いつも娘がお世話になっているね。娘から聞いたんだが、君はホグワーツで随分優秀だそうじゃないか。素晴らしいことだ」
「いえ、そんなことは。フォーラさんの方が特に変身術はよっぽど優秀ですよ」
そう言ってセオドールは隣にいたフォーラを見た。彼女は普段彼とはあまり言葉を交わす仲ではなかったが、お世辞でもそんな風に思ってくれていたとは嬉しい限りだった。彼女が「ありがとう」と微笑むと、彼は表情を変えずに「いや……」と行き場のない声を発したが、そのまま意外な言葉を続けた。
「今日は普段と随分雰囲気が違うんだな。そのドレス、よく似合ってると思う」
フォーラやドラコは思わず驚いて目を丸くした。セオドールという人は、普段こんなにも真っすぐにお世辞らしからぬ言葉で相手を褒めることなど滅多にしないのだ。どちらかといえば彼は口数が少なくて、何を考えているか分からないタイプだった。そのらしくない態度にフォーラは不意を突かれて焦ってしまった。
「ええと、そんな風に褒めてもらえると思っていなかったから……少し驚いてしまったわ。でも、ありがとう。セオドールもとっても素敵。勿論、ドラコもよ。」
その言葉を受け、セオドールはこれまた意外にも普段滅多に見せない笑顔をフォーラに返したが、ドラコの方はセオドールのように表情を崩すことはなかった。