13. マリアお手製のドレス
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「ねえマリア。私ね……私、ドラコと仲違いしてしまったみたいなの。」
「えっ?」
フォーラは勇気を振り絞った筈だったが、思わず続きを話すのを躊躇ってしまった。それを見たマリアは少しばかり辺りを見まわし、フォーラの言葉を待たずして声を掛けた。
「お嬢様、あそこの教会のそばに大きな公園があります。寄り道がてら休憩していきませんか?」
フォーラは少し迷ったものの、その提案を受け入れた。今までホグワーツ特急からの帰路で寄り道したことなんて殆どなかったが、家に帰ればマリアと二人きりで話す機会が減ってしまう。そのことを目の前の彼女が気にしてくれているのだと察した。
冬の珍しく晴れた空の下、古く趣のある教会から少し離れたベンチに二人は腰を下ろした。するとマリアがマグルに気付かれぬように魔法で温かい紅茶の入った紙カップを出してくれた。それを二人並んで飲みながら、少しの間だけ往来を眺め、一息ついた頃にようやくフォーラが先程の続きを話し始めた。
昨年度の終わりにドラコに告白されたことや、今年度は冷たく当たられていること、騎士団との関わりがばれているわけではないこと……。
今回のような、フォーラにとって両親に話すのは気が引ける恋愛じみた内容でも、マリアには打ち明けられた。それはフォーラが彼女をある意味本当のお姉さんのように認識している部分があるからだった。
「そうですか……そんなことが。どおりでお嬢様のお顔が暗いわけです」
「やっぱり気付いていたの?」
「当然です。ホグワーツへお出かけになる時はあんなに元気になられていたんですから。でも正直なところ……お嬢様がもう血縁のことでお悩みでないと分かって本当に良かった」
「そのことはもう少しも気にしていないわ。本当よ?」
真剣にそう伝えてくるフォーラを見て、マリアは彼女に優しく微笑んだ。
「ええ、そのようですね。お嬢様を信じられないなんて随分愚かだとも思いました。ですが、お嬢様がホグワーツに行かれてから今日まで、ずっとそのことばかり考えていました。以前のように旦那様や奥様、私たち使用人からお嬢様がいつ離れていってしまうかと思うと、気が気ではありませんでした」
マリアは優しくも少し寂しげな目を向けていた。そしてすぐに神妙な面持ちになると話題を元に戻した。
「それにしてもドラコ様の件に関しては、お話を聞く限り私もお嬢様のご友人と同じ意見ですね。ドラコ様が振られた腹いせとして、お嬢様に八つ当たりしている可能性は捨てきれません」
「そう……。だけど、ドラコには『自惚れるな』と言われてしまったわ。それに、彼にはもうガールフレンドがいるの。だから私のことはもうなんとも思っていない筈だし、むしろ嫌悪感だけを持っているのかもしれない。」
「そうですか……。ところで、お話を聞く限りではドラコ様はお嬢様にだけでなく、現状誰にでも八つ当たりしているのですよね?それについても気になります。もしかすると彼の中で、お嬢様の件以外にも、何か心が荒れるような出来事があったとは考えられませんか?四方に八つ当たりせざるを得ない何かが……」
マリアは紅茶を一口すすりながら考えを巡らせた。
(私がお屋敷に勤め始めてから最近までずっと、ドラコ様はいつでも慈愛に満ちた様子でお嬢様と接されていた。だから、確かに彼からすればお嬢様への告白は一世一代の出来事だったかもしれない。だけど本当に告白を断られたそれだけで、お嬢様のことを嫌いになってしまうものかしら?少なくとも私から見たドラコ様は、お嬢様が思う以上にお嬢様を思いやれるお方だと思っていたのだけど。それがたとえ振られた後だとしても……)
いずれにれにせよ、目の前のフォーラが疲弊していることは間違いない。そのためマリアは目の前で哀しげに悩むフォーラの髪を優しく撫でた。
「マリア……」
「お嬢様、お話ししてくださってありがとうございます。パーティーにはドラコ様もいらっしゃいますし、もどかしいお気持ちを抱えてさぞご不安でしょう。ですが、もしかしたらクリスマスイブには何か気持ちの晴れる事が起こるかもしれません。それこそドラコ様と仲直りとまではいかなくとも、彼の気持ちを知る手がかりが少しは掴めるかもしれませんよ」
そう言ってマリアが優しい笑顔を見せたものだから、フォーラは突然どうしたのかと首を傾げた。マリアの表情からは、どこか自信に満ちた様子が垣間見えた気がした。
「さあ、そろそろお屋敷に戻って旦那様や奥様のお帰りを待ちましょう。お二人がご帰宅なさった時に、一番にお顔を見せてあげないと」
そうしてフォーラはマリアに言われるがまま帰路に着いた。今回マリアに相談したからといって何が解決したわけでもなかったが、それでもフォーラの気が少し晴れたのは間違いなかった。両親にはドラコを想っていることや彼との現状をあまり話したくなかった分、マリアのような数少ない身内から理解を得られたことは、フォーラにとって貴重だったのだ。
その後のフォーラは自宅で両親の帰宅を待ち、夕食前に二人が帰ってくるなり熱い抱擁を受けた。そして互いに会えない間どう過ごしていたかを腰を落ち着けて語り合った。フォーラは学校でのドラコについて多くは触れなかったが、彼が以前より荒れていることや、前ほど言葉を交わしていないことを伝えた。一方の両親はつい先程まで騎士団のアジトに足を運び、二件の用事を済ませてきたという。
「一つ目だが、実はアーサー・ウィーズリーさんが騎士団の任務中に何者かに襲われて、大怪我を負ったようでね。容態を伺ったんだ。モリーから聞く限りでは、彼は一命をとりとめて現在は聖マンゴ病院に入院中で、今は元気に話せているそうだ」
「えっ……そうだったの?ああ、でもご無事そうで良かった。ご家族はみんな気が気じゃなかったでしょうね……。」
「勿論そうだろうとも。私たちがブラック邸を訪れた時には、既にウィーズリー家の子供たちやハリーが滞在していたよ。アーサーはクリスマス休暇中は入院必須でブラック邸にはいらっしゃらないが、クリスマスパーティーの後日にでも一度、フォーラもあの館に顔を出してみるかい」
父の提案にフォーラはパッと顔を明るくして頷いた。
「ええ、行きたいわ。何かお見舞いの品をお預けしたいもの。それに、学校ではグリフィンドールのみんなと敢えて殆どお話しないようにしていたから、話したいことが沢山あるの。」
「よし分かった。ではそうしよう。……それからもう一つの私たちの用事についてだが、我が家のクリスマスパーティーの招待客のことで、騎士団のメンバーに報告をしていたんだよ。今回ルシウスの伝手 を頼って、あえて彼と親しいお客様を何人か招待しているのでね。つまり騎士団の敵対勢力の可能性がある人物たちのことだ」
シェードが紅茶の入ったカップを持ち上げながら言った。フォーラはそれを聞いてすぐに、先日ホグワーツで受けとった父からの手紙の内容を思い出した。
「えっ?」
フォーラは勇気を振り絞った筈だったが、思わず続きを話すのを躊躇ってしまった。それを見たマリアは少しばかり辺りを見まわし、フォーラの言葉を待たずして声を掛けた。
「お嬢様、あそこの教会のそばに大きな公園があります。寄り道がてら休憩していきませんか?」
フォーラは少し迷ったものの、その提案を受け入れた。今までホグワーツ特急からの帰路で寄り道したことなんて殆どなかったが、家に帰ればマリアと二人きりで話す機会が減ってしまう。そのことを目の前の彼女が気にしてくれているのだと察した。
冬の珍しく晴れた空の下、古く趣のある教会から少し離れたベンチに二人は腰を下ろした。するとマリアがマグルに気付かれぬように魔法で温かい紅茶の入った紙カップを出してくれた。それを二人並んで飲みながら、少しの間だけ往来を眺め、一息ついた頃にようやくフォーラが先程の続きを話し始めた。
昨年度の終わりにドラコに告白されたことや、今年度は冷たく当たられていること、騎士団との関わりがばれているわけではないこと……。
今回のような、フォーラにとって両親に話すのは気が引ける恋愛じみた内容でも、マリアには打ち明けられた。それはフォーラが彼女をある意味本当のお姉さんのように認識している部分があるからだった。
「そうですか……そんなことが。どおりでお嬢様のお顔が暗いわけです」
「やっぱり気付いていたの?」
「当然です。ホグワーツへお出かけになる時はあんなに元気になられていたんですから。でも正直なところ……お嬢様がもう血縁のことでお悩みでないと分かって本当に良かった」
「そのことはもう少しも気にしていないわ。本当よ?」
真剣にそう伝えてくるフォーラを見て、マリアは彼女に優しく微笑んだ。
「ええ、そのようですね。お嬢様を信じられないなんて随分愚かだとも思いました。ですが、お嬢様がホグワーツに行かれてから今日まで、ずっとそのことばかり考えていました。以前のように旦那様や奥様、私たち使用人からお嬢様がいつ離れていってしまうかと思うと、気が気ではありませんでした」
マリアは優しくも少し寂しげな目を向けていた。そしてすぐに神妙な面持ちになると話題を元に戻した。
「それにしてもドラコ様の件に関しては、お話を聞く限り私もお嬢様のご友人と同じ意見ですね。ドラコ様が振られた腹いせとして、お嬢様に八つ当たりしている可能性は捨てきれません」
「そう……。だけど、ドラコには『自惚れるな』と言われてしまったわ。それに、彼にはもうガールフレンドがいるの。だから私のことはもうなんとも思っていない筈だし、むしろ嫌悪感だけを持っているのかもしれない。」
「そうですか……。ところで、お話を聞く限りではドラコ様はお嬢様にだけでなく、現状誰にでも八つ当たりしているのですよね?それについても気になります。もしかすると彼の中で、お嬢様の件以外にも、何か心が荒れるような出来事があったとは考えられませんか?四方に八つ当たりせざるを得ない何かが……」
マリアは紅茶を一口すすりながら考えを巡らせた。
(私がお屋敷に勤め始めてから最近までずっと、ドラコ様はいつでも慈愛に満ちた様子でお嬢様と接されていた。だから、確かに彼からすればお嬢様への告白は一世一代の出来事だったかもしれない。だけど本当に告白を断られたそれだけで、お嬢様のことを嫌いになってしまうものかしら?少なくとも私から見たドラコ様は、お嬢様が思う以上にお嬢様を思いやれるお方だと思っていたのだけど。それがたとえ振られた後だとしても……)
いずれにれにせよ、目の前のフォーラが疲弊していることは間違いない。そのためマリアは目の前で哀しげに悩むフォーラの髪を優しく撫でた。
「マリア……」
「お嬢様、お話ししてくださってありがとうございます。パーティーにはドラコ様もいらっしゃいますし、もどかしいお気持ちを抱えてさぞご不安でしょう。ですが、もしかしたらクリスマスイブには何か気持ちの晴れる事が起こるかもしれません。それこそドラコ様と仲直りとまではいかなくとも、彼の気持ちを知る手がかりが少しは掴めるかもしれませんよ」
そう言ってマリアが優しい笑顔を見せたものだから、フォーラは突然どうしたのかと首を傾げた。マリアの表情からは、どこか自信に満ちた様子が垣間見えた気がした。
「さあ、そろそろお屋敷に戻って旦那様や奥様のお帰りを待ちましょう。お二人がご帰宅なさった時に、一番にお顔を見せてあげないと」
そうしてフォーラはマリアに言われるがまま帰路に着いた。今回マリアに相談したからといって何が解決したわけでもなかったが、それでもフォーラの気が少し晴れたのは間違いなかった。両親にはドラコを想っていることや彼との現状をあまり話したくなかった分、マリアのような数少ない身内から理解を得られたことは、フォーラにとって貴重だったのだ。
その後のフォーラは自宅で両親の帰宅を待ち、夕食前に二人が帰ってくるなり熱い抱擁を受けた。そして互いに会えない間どう過ごしていたかを腰を落ち着けて語り合った。フォーラは学校でのドラコについて多くは触れなかったが、彼が以前より荒れていることや、前ほど言葉を交わしていないことを伝えた。一方の両親はつい先程まで騎士団のアジトに足を運び、二件の用事を済ませてきたという。
「一つ目だが、実はアーサー・ウィーズリーさんが騎士団の任務中に何者かに襲われて、大怪我を負ったようでね。容態を伺ったんだ。モリーから聞く限りでは、彼は一命をとりとめて現在は聖マンゴ病院に入院中で、今は元気に話せているそうだ」
「えっ……そうだったの?ああ、でもご無事そうで良かった。ご家族はみんな気が気じゃなかったでしょうね……。」
「勿論そうだろうとも。私たちがブラック邸を訪れた時には、既にウィーズリー家の子供たちやハリーが滞在していたよ。アーサーはクリスマス休暇中は入院必須でブラック邸にはいらっしゃらないが、クリスマスパーティーの後日にでも一度、フォーラもあの館に顔を出してみるかい」
父の提案にフォーラはパッと顔を明るくして頷いた。
「ええ、行きたいわ。何かお見舞いの品をお預けしたいもの。それに、学校ではグリフィンドールのみんなと敢えて殆どお話しないようにしていたから、話したいことが沢山あるの。」
「よし分かった。ではそうしよう。……それからもう一つの私たちの用事についてだが、我が家のクリスマスパーティーの招待客のことで、騎士団のメンバーに報告をしていたんだよ。今回ルシウスの
シェードが紅茶の入ったカップを持ち上げながら言った。フォーラはそれを聞いてすぐに、先日ホグワーツで受けとった父からの手紙の内容を思い出した。