13. マリアお手製のドレス
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フォーラが実家からクリスマスパーティー開催の連絡を受けてから幾日が過ぎ、あっという間にクリスマス休暇が始まる前日となった。五年生は休暇までに絶え間なく出されていた宿題に疲弊しきっていた分、ようやくやって来た長期休暇に大喜びだった。
フォーラも勿論そのうちの一人ではあったが、みんなと同じように心から喜べているわけではなかった。実家のクリスマスパーティーには仲違いしているドラコも参加するからだ。今から考えるだけでも憂鬱な気分になってしまう。とはいえそんなことばかり思ってはいられない。パーティーを機会に、もしかするとドラコとの関係が今より良くなる可能性だって捨てきれないのだから。
フォーラはこの日最後のアンブリッジの授業を受講し終え、友人と教室の出入口に向かった。今日もやはり彼女たちを含めた五学年のスリザリン生はみんな、防衛術の授業で実技練習の時間が設けられていることを教室に入った瞬間に思い出し、授業後に教室から出るや否やそのことをすっかり忘れてしまった。唯一覚えているのは、何故か杖の振り方や注意点などを身をもって理解できているということだ。そしてそれがアンブリッジの魔法によるものだと誰も知る由もなかった。しかしそんな中、周囲の生徒とどこか様子の異なる者が一人だけいた。
「ミスター・マルフォイ、ちょっとよろしいかしら?」
教室でアンブリッジが呼び止めると、ドラコは周囲の友人らに別れの挨拶を交わし、彼女に連れられて準備室へと姿を消した。
アンブリッジは仕事用机に向かうように椅子に腰を下ろして前のめりになると、机を挟んだ真正面に立つドラコを見た。
「貴方の提案を受け入れて正解だったわ」
「というと、つまり?」
ドラコはアンブリッジの発言について詳細を促したが、彼はその提案とやらを忘れたわけではなかった。アンブリッジが答えた。
「城内に、集団で私に反発しようとしている生徒がいる可能性があります。そういった情報が入っているの。それが私や魔法省の悪口を叩く程度なのか、それ以上かは未だ分かりませんけどね」
「そうですか。では今後も引き続き、僕も少しは先生のお役に立てるということですね。嬉しいです」
ドラコは微笑むと、その笑みを不敵なものに変えて続けた。
「その中には当然ハリー・ポッターもいますよね?」
アンブリッジはガマガエルのような口元を弧を描くように横へ伸ばし、ご満悦な表情を浮かべた。ドラコから見ても、彼女が獲物にありつける時を楽しみに待っているのがありありと分かった。
「ええ、その可能性は高いわね。いずれにせよ、その生徒たちの尻尾を掴んで罰する必要があります。そのために、貴方や他のスリザリン生には年明けから色々とお願いすることが増えると思いますよ。誰を頼るかは授業中の実技の習熟度で既に目星をつけています。働きに応じてその分ご褒美として加点するつもりですから、よろしくね」
「ええ、勿論です」
ドラコは素敵な笑顔で頷くとアンブリッジの部屋から退出した。そしてその笑顔は彼女の部屋を出たと同時に消え去ったのだった。
さて、学生たちは待ちに待ったクリスマス休暇を楽しむべく、ホグワーツ特急がロンドンのキングス・クロス駅に到着するなり続々とホームに降り立った。フォーラはコンパートメントで一緒だった友人たちに別れを告げ、いつも両親が待っている場所へと向かった。今日は珍しくメイドのマリアが迎えにきてくれているらしい。事前に受け取った手紙には両親が所用で手を離せないためだと書かれていたが、フォーラはそれが騎士団の用事であることを察した。
とはいえフォーラにとってそれは好都合だった。両親のどちらかが迎えにくれば、彼らはマルフォイ家と立ち話をしながらホグワーツ特急の到着を待っていたことだろう。そうなれば顔を合わせたくないドラコを交えて会話が始まってしまうに違いなかった。
(こんな理由で喜ぶなんて、マリアには申し訳ないけれど……。でも、彼女のお迎えなんて初めてだし、それ自体は間違いなく嬉しいわ)
「……あ、マリア!」
「お嬢様!お帰りなさいませ」
フォーラより少し背が高く、髪をお団子に結い、よそ行きのコートを羽織った女性がこちらに手を振った。はたから見れば彼女はフォーラより少し歳の離れたお姉さんに見えるくらいの風貌をしていた。フォーラは人でごった返す中、彼女の元へ駆け寄った。
「ただいま!迎えにきてくれてありがとう。元気にしていた?」
「ええ勿論ですよ。お嬢様もお元気そうで。そういえばドラコ様はご一緒ではないのですね?」
「えっ……あ、ええ。そうね。ねえマリア、それよりも私がいない間に家では何か変わったことはあった?マリアやお家のみんながどうしていたのか知りたいわ。」
マリアはフォーラの様子に違和感を覚えたが、それ以上触れることはしなかった。
「そうですね。では早く屋敷に帰らなくては。ここではお話しできないようなこともありますから」
二人は屋敷へ向かうべく、駅から少し離れたところにあるさびれた店へと向かった。そこはマグルが寄り付かない程ボロボロで、最早営業している面影はなく、店内にはポツンと暖炉が設置されている。だがその真の姿は、魔法使いや魔女が煙突飛行ネットワークを利用するために、魔法省がマグルよけを施した公共の場だった。因みに、煙突飛行でブラック邸へ行くのは所在地を特定されてしまうため絶対に避けなければならないが、自宅となればその必要性はない。
二人が例の店へ向かう道中、フォーラはマリアに学校でのことを尋ねられ、アンブリッジが魔法省からやって来たことや、五年生は宿題が山積みであること、友人たちと日々課題をこなしていることなどを話した。しかしそれらの話題の中に一度もドラコは登場しなかった。フォーラはマリアが当然そのことに気付いているだろうと思ったが、彼女は一切触れてこなかった。
フォーラはそれに安堵する反面、心の内に溜まった不安定な感情を、両親には無理でもマリアになら吐露してしまいたいという気持ちに駆られた。そのため彼女は例の暖炉がある店に着く前に、とうとう自らドラコに関して口を開いたのだった。
フォーラも勿論そのうちの一人ではあったが、みんなと同じように心から喜べているわけではなかった。実家のクリスマスパーティーには仲違いしているドラコも参加するからだ。今から考えるだけでも憂鬱な気分になってしまう。とはいえそんなことばかり思ってはいられない。パーティーを機会に、もしかするとドラコとの関係が今より良くなる可能性だって捨てきれないのだから。
フォーラはこの日最後のアンブリッジの授業を受講し終え、友人と教室の出入口に向かった。今日もやはり彼女たちを含めた五学年のスリザリン生はみんな、防衛術の授業で実技練習の時間が設けられていることを教室に入った瞬間に思い出し、授業後に教室から出るや否やそのことをすっかり忘れてしまった。唯一覚えているのは、何故か杖の振り方や注意点などを身をもって理解できているということだ。そしてそれがアンブリッジの魔法によるものだと誰も知る由もなかった。しかしそんな中、周囲の生徒とどこか様子の異なる者が一人だけいた。
「ミスター・マルフォイ、ちょっとよろしいかしら?」
教室でアンブリッジが呼び止めると、ドラコは周囲の友人らに別れの挨拶を交わし、彼女に連れられて準備室へと姿を消した。
アンブリッジは仕事用机に向かうように椅子に腰を下ろして前のめりになると、机を挟んだ真正面に立つドラコを見た。
「貴方の提案を受け入れて正解だったわ」
「というと、つまり?」
ドラコはアンブリッジの発言について詳細を促したが、彼はその提案とやらを忘れたわけではなかった。アンブリッジが答えた。
「城内に、集団で私に反発しようとしている生徒がいる可能性があります。そういった情報が入っているの。それが私や魔法省の悪口を叩く程度なのか、それ以上かは未だ分かりませんけどね」
「そうですか。では今後も引き続き、僕も少しは先生のお役に立てるということですね。嬉しいです」
ドラコは微笑むと、その笑みを不敵なものに変えて続けた。
「その中には当然ハリー・ポッターもいますよね?」
アンブリッジはガマガエルのような口元を弧を描くように横へ伸ばし、ご満悦な表情を浮かべた。ドラコから見ても、彼女が獲物にありつける時を楽しみに待っているのがありありと分かった。
「ええ、その可能性は高いわね。いずれにせよ、その生徒たちの尻尾を掴んで罰する必要があります。そのために、貴方や他のスリザリン生には年明けから色々とお願いすることが増えると思いますよ。誰を頼るかは授業中の実技の習熟度で既に目星をつけています。働きに応じてその分ご褒美として加点するつもりですから、よろしくね」
「ええ、勿論です」
ドラコは素敵な笑顔で頷くとアンブリッジの部屋から退出した。そしてその笑顔は彼女の部屋を出たと同時に消え去ったのだった。
さて、学生たちは待ちに待ったクリスマス休暇を楽しむべく、ホグワーツ特急がロンドンのキングス・クロス駅に到着するなり続々とホームに降り立った。フォーラはコンパートメントで一緒だった友人たちに別れを告げ、いつも両親が待っている場所へと向かった。今日は珍しくメイドのマリアが迎えにきてくれているらしい。事前に受け取った手紙には両親が所用で手を離せないためだと書かれていたが、フォーラはそれが騎士団の用事であることを察した。
とはいえフォーラにとってそれは好都合だった。両親のどちらかが迎えにくれば、彼らはマルフォイ家と立ち話をしながらホグワーツ特急の到着を待っていたことだろう。そうなれば顔を合わせたくないドラコを交えて会話が始まってしまうに違いなかった。
(こんな理由で喜ぶなんて、マリアには申し訳ないけれど……。でも、彼女のお迎えなんて初めてだし、それ自体は間違いなく嬉しいわ)
「……あ、マリア!」
「お嬢様!お帰りなさいませ」
フォーラより少し背が高く、髪をお団子に結い、よそ行きのコートを羽織った女性がこちらに手を振った。はたから見れば彼女はフォーラより少し歳の離れたお姉さんに見えるくらいの風貌をしていた。フォーラは人でごった返す中、彼女の元へ駆け寄った。
「ただいま!迎えにきてくれてありがとう。元気にしていた?」
「ええ勿論ですよ。お嬢様もお元気そうで。そういえばドラコ様はご一緒ではないのですね?」
「えっ……あ、ええ。そうね。ねえマリア、それよりも私がいない間に家では何か変わったことはあった?マリアやお家のみんながどうしていたのか知りたいわ。」
マリアはフォーラの様子に違和感を覚えたが、それ以上触れることはしなかった。
「そうですね。では早く屋敷に帰らなくては。ここではお話しできないようなこともありますから」
二人は屋敷へ向かうべく、駅から少し離れたところにあるさびれた店へと向かった。そこはマグルが寄り付かない程ボロボロで、最早営業している面影はなく、店内にはポツンと暖炉が設置されている。だがその真の姿は、魔法使いや魔女が煙突飛行ネットワークを利用するために、魔法省がマグルよけを施した公共の場だった。因みに、煙突飛行でブラック邸へ行くのは所在地を特定されてしまうため絶対に避けなければならないが、自宅となればその必要性はない。
二人が例の店へ向かう道中、フォーラはマリアに学校でのことを尋ねられ、アンブリッジが魔法省からやって来たことや、五年生は宿題が山積みであること、友人たちと日々課題をこなしていることなどを話した。しかしそれらの話題の中に一度もドラコは登場しなかった。フォーラはマリアが当然そのことに気付いているだろうと思ったが、彼女は一切触れてこなかった。
フォーラはそれに安堵する反面、心の内に溜まった不安定な感情を、両親には無理でもマリアになら吐露してしまいたいという気持ちに駆られた。そのため彼女は例の暖炉がある店に着く前に、とうとう自らドラコに関して口を開いたのだった。