12. 目くらまし術
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二人の提案にフォーラはパッと顔を明るくした。しかしそれと同時に彼女がパーティーに参加しないと知った時の両親や、特に使用人のマリアが残念がる様子が容易に思い浮かんでしまった。
フォーラは上がっていた口角を自然と元の位置に戻すと、諦めたように一つため息をついた。
「ありがとう、二人共。
でも、やっぱり私も自分の家で過ごすことにするわ。うちも、きっと両親や屋敷の人たちが私の帰りを楽しみに待ってくれている筈だし……それに父様も母様も、私とドラコの仲が良くないことを知らないもの。
あと、もしかしたらパーティーでドラコとの距離を修復出来るかも知れないし。」
諦めたように微笑んだフォーラに二人はなんと声をかければいいか戸惑った。フォーラがドラコにあれだけ否定され、今もこうして彼女が悩むくらい関係が壊れてしまっている。その原因は勿論ドラコにあるし、パンジーやルニーもドラコの態度には愛想が尽きていた。
それなのにフォーラがドラコとの繋がりを求めることを心の底から否定は出来なかった。何故なら二人もまた、これまで皆んなで過ごしてきた時のことを思えば、口には出さずとも今の状況がどこかもの寂しいと感じていたからだ。彼女たちの知っているドラコが突然すっかり居なくなってしまったような、そんな感覚だったのだ。
パンジーが静かに口を開いた。
「ドラコと、何か少しでも話せるといいわね」
「ええ。そうね……ありがとう。」フォーラは優しく笑いかけてくれているパンジーとルニーに笑顔を返した。
その頃、時を同じくしてブルガリアのとある街では、雪の降る中をマントを羽織った魔法使いの往来が賑やかしていた。その内の一人、短髪の明るいブロンドに、鼻が高くすっきりとした輪郭の男性が何やらご機嫌な様子で花束を抱えて街を歩いていた。その際、彼の鮮やかな紫のクロッカスの花びらが一枚宙を舞った。
背格好の良い彼は見た目の良さに加え、その小脇に抱えた差し色でより一層周囲の目を惹きつけていた。
すると、彼に気がついた別の男性が勿論ブルガリア語で彼に声をかけた。
『こんなところで偶然だな。花なんて持ってどうしたんだ?』
『やあ!これかい?さっきまでうちの新しいお客様に見てもらっていてね。今度から定期的に発注してもらえることになったんだ!何とイギリスのお客様なんだ』ブロンドの彼が嬉しそうにクロッカスの花束から一輪抜き取りながらそう言うと、それを目の前の男性の胸ポケットに差し込んだ。
『そりゃあよかった!けど、そういう花は向こうの国にだってあるだろう?それに君の勤め先は薬草を売ってるんじゃなかったか?』
『花だって立派な薬草さ。それに、こっちの土地の良質な花をお望みだったんだ』
『それで随分ご機嫌なんだな?』男性の問いかけに、明るいブロンドの彼は嬉しそうな様子で首を横に振った。『いいや、違う。内緒にしとくよ』彼は笑顔でそう言って男性と別れた。
一瞬の風にブロンドの彼のマントがはためき、内ポケットが垣間見えた。そこには先程ホグワーツでセオドールがドラコに見せていた封蝋付きの白い封筒がちらりと覗いていたのだった。
フォーラは上がっていた口角を自然と元の位置に戻すと、諦めたように一つため息をついた。
「ありがとう、二人共。
でも、やっぱり私も自分の家で過ごすことにするわ。うちも、きっと両親や屋敷の人たちが私の帰りを楽しみに待ってくれている筈だし……それに父様も母様も、私とドラコの仲が良くないことを知らないもの。
あと、もしかしたらパーティーでドラコとの距離を修復出来るかも知れないし。」
諦めたように微笑んだフォーラに二人はなんと声をかければいいか戸惑った。フォーラがドラコにあれだけ否定され、今もこうして彼女が悩むくらい関係が壊れてしまっている。その原因は勿論ドラコにあるし、パンジーやルニーもドラコの態度には愛想が尽きていた。
それなのにフォーラがドラコとの繋がりを求めることを心の底から否定は出来なかった。何故なら二人もまた、これまで皆んなで過ごしてきた時のことを思えば、口には出さずとも今の状況がどこかもの寂しいと感じていたからだ。彼女たちの知っているドラコが突然すっかり居なくなってしまったような、そんな感覚だったのだ。
パンジーが静かに口を開いた。
「ドラコと、何か少しでも話せるといいわね」
「ええ。そうね……ありがとう。」フォーラは優しく笑いかけてくれているパンジーとルニーに笑顔を返した。
その頃、時を同じくしてブルガリアのとある街では、雪の降る中をマントを羽織った魔法使いの往来が賑やかしていた。その内の一人、短髪の明るいブロンドに、鼻が高くすっきりとした輪郭の男性が何やらご機嫌な様子で花束を抱えて街を歩いていた。その際、彼の鮮やかな紫のクロッカスの花びらが一枚宙を舞った。
背格好の良い彼は見た目の良さに加え、その小脇に抱えた差し色でより一層周囲の目を惹きつけていた。
すると、彼に気がついた別の男性が勿論ブルガリア語で彼に声をかけた。
『こんなところで偶然だな。花なんて持ってどうしたんだ?』
『やあ!これかい?さっきまでうちの新しいお客様に見てもらっていてね。今度から定期的に発注してもらえることになったんだ!何とイギリスのお客様なんだ』ブロンドの彼が嬉しそうにクロッカスの花束から一輪抜き取りながらそう言うと、それを目の前の男性の胸ポケットに差し込んだ。
『そりゃあよかった!けど、そういう花は向こうの国にだってあるだろう?それに君の勤め先は薬草を売ってるんじゃなかったか?』
『花だって立派な薬草さ。それに、こっちの土地の良質な花をお望みだったんだ』
『それで随分ご機嫌なんだな?』男性の問いかけに、明るいブロンドの彼は嬉しそうな様子で首を横に振った。『いいや、違う。内緒にしとくよ』彼は笑顔でそう言って男性と別れた。
一瞬の風にブロンドの彼のマントがはためき、内ポケットが垣間見えた。そこには先程ホグワーツでセオドールがドラコに見せていた封蝋付きの白い封筒がちらりと覗いていたのだった。