12. 目くらまし術
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そのままフォーラは誰もいない廊下の陰まで来ると身体を元の人間の姿に戻し、その場に膝を抱えるように俯いてしゃがみ込んだ。彼女は息を切らしながら、無意識のうちに先程の一連の出来事を走馬灯のように思い返していた。
(ああもう、私……ほんの少しのことで動揺して、危険な目にも遭って……。色々なことを覚悟してドラコの話を聞きにいった筈なのに。本当に馬鹿みたいだわ)
フォーラは脳裏に勝手に浮かんでくるドラコの言葉を拒むことができなかった。
『まあ、上手くいっていないわけじゃないさ。話題も普通に合う』
『彼女と話す理由がないだけだ』
心の奥底で自身がドラコに求めていた言葉と正反対の発言を受け、胸が痛み締め付けられた。もう十分拒否されていることは自覚していたが、ドラコが恋人とどうしているかなんて本人の口から聞きたくなかった。
(もうこのことは一旦忘れましょう。それよりも今は、ドラコがルシウスさんに守られていることを喜ばなくちゃ。ルシウスさんがいる限りきっとドラコは安全な筈。……あとは、父様がクリスマスパーティーの日に何か状況を動かすつもりなら、無事に終わることを祈るしかないわ)
その頃、ドラコとセオドールはまだ談話室に残っており、引き続き言葉を交わしていた。
「ファントムといえば、今日の試合に彼女は来てなかったみたいだ。そりゃ、君にあれだけ避けられていたら僕だってそうする」
ドラコは途端に煙たそうな表情でセオドールをあしらった。
「来ていないことくらい知っていたさ。だからなんだっていうんだ?」
「なんだ、しっかり客席を見て彼女を探してたんだな。だからポッターにスニッチを取られたのか?試合に集中しろよ」
「違う!城に戻ってから知ったんだ。彼女がどうしていようが僕には関係ないだろう」
「まあ、君がそう言うならそうなんだろう。だけどクラッブやゴイルが言っていたように、もう少し前みたいに彼女と話したりしたらどうなんだ?今の君たちが近くにいると、妙な空気でやりにくい」
「……」
「どうせ、告白でもして振られた腹いせなんだろ?」
「!」ドラコが不意を突かれたような反応をしたので、セオドールは自身のあてずっぽうな発言が当たって少々驚いた。ドラコはフォーラに告白したことをクラッブやゴイルだけでなく、セオドールにも一つも話していなかったのだ。
「なんだ、図星だったのか?喧嘩したと思っていたけどそういうことか。そんなちっぽけな意地を張って、随分格好悪いな」
「……そう見えるのなら、そう思っていてもらってかまわない。それより、普段他人に関心のない君がそんな話題を振ってくるなんて。急にどうしたっていうんだ」
「そりゃあ、僕だってできることならこんな自分にとってどうでもいいことを君と話したくはないよ。だけど、そうもいかない事情ができたんだ」
セオドールはおもむろに杖を取り出して振り、呼び寄せ呪文を唱えた。すると男子寮の方から白い封筒が一枚緩やかに飛んできて、彼の手中に収まった。上質な封筒の開け口には封蝋の跡があり、そこにはドラコにとって見慣れた家紋が押印されていた。
「……何故君がこれを?」
「封蝋だけで誰からのものか分かるなんて、君たちの付き合いはよっぽど長くて濃いんだな。ファントムの家で開かれるクリスマスパーティーの招待状だ。僕の父さんが送ってきた」
「何故だ?君の父上とファントム家は接点なんて一つも―――。いや、それより今年はパーティーが開かれるのか」
「僕もどうして急に招待されたかなんて知らないよ。君の父親繋がりの交流目的の可能性が高いだろうけど。それより、毎回参加してるドラコが知らないのはどうしてなんだ?勿論君も行くんだろ?」
セオドールの言葉にドラコは一瞬押し黙り、無意識に軽く眉間に皺を寄せた。
「いや、僕は……毎回彼女から直接口頭で招待の連絡を受けていたんだ。だから今年はどうなのかよく分からない」
ドラコはそれ以降何も言わなくなってしまい、セオドールはそんな彼の表情から何を考えているのかさっぱり読み取ることができなかったのだった。
そうして生徒たちがクリスマス休暇の話をするようになった時期のある日の放課後、授業を終えたスリザリンの五年生は教室の机を片付け、自寮や図書室にバラバラと解散していた。そんな中フォーラはというと、パンジーやルニーに挟まれた席で教科書を仕舞い終え、深いため息を吐いたところだった。
「フォーラ、最近どうしちゃったの?随分ため息が目立つけど」ルニーが教科書を詰めた鞄を持ち上げ、席から立ち上がりながら言った。
「あ……ごめんなさい。そんなに多かった?」
するとパンジーがルニーに同意した。
「そうよ、何か悩み事?それとも勉強のしすぎ?あっ、もしかしてまたドラコが何かいらないことを言ってきたの?」
「ううん、ドラコからは何も言われていないから大丈夫よ。ええと……。ねえ、二人はクリスマスイブをどう過ごすか、もう決まっているの?」
遠慮気味に尋ねるフォーラにどうしたのかと二人は首を傾げた。その質問にルニーが先に答えた。
「私はいつもどおり家族で過ごすかな。今年はおばあちゃんの家にクリスマス休暇が終わる直前まで滞在しようって話になってるわ」
「私も同じような感じね」今度はパンジーが続いた。「でも突然そんな話をするなんて、最近のため息とクリスマスが何か関係しているの?」
「フォーラもクリスマス休暇の間はご両親と過ごすんでしょ?それにほら、例年お客さんも呼んでクリスマスパーティーも開いてるって―――……あっ」
ルニーは推測していくうちに、一年生の頃から度々耳に挟んでいたファントム家が主催するパーティーの常連を一人思い出した。ドラコだ。
(ああもう、私……ほんの少しのことで動揺して、危険な目にも遭って……。色々なことを覚悟してドラコの話を聞きにいった筈なのに。本当に馬鹿みたいだわ)
フォーラは脳裏に勝手に浮かんでくるドラコの言葉を拒むことができなかった。
『まあ、上手くいっていないわけじゃないさ。話題も普通に合う』
『彼女と話す理由がないだけだ』
心の奥底で自身がドラコに求めていた言葉と正反対の発言を受け、胸が痛み締め付けられた。もう十分拒否されていることは自覚していたが、ドラコが恋人とどうしているかなんて本人の口から聞きたくなかった。
(もうこのことは一旦忘れましょう。それよりも今は、ドラコがルシウスさんに守られていることを喜ばなくちゃ。ルシウスさんがいる限りきっとドラコは安全な筈。……あとは、父様がクリスマスパーティーの日に何か状況を動かすつもりなら、無事に終わることを祈るしかないわ)
その頃、ドラコとセオドールはまだ談話室に残っており、引き続き言葉を交わしていた。
「ファントムといえば、今日の試合に彼女は来てなかったみたいだ。そりゃ、君にあれだけ避けられていたら僕だってそうする」
ドラコは途端に煙たそうな表情でセオドールをあしらった。
「来ていないことくらい知っていたさ。だからなんだっていうんだ?」
「なんだ、しっかり客席を見て彼女を探してたんだな。だからポッターにスニッチを取られたのか?試合に集中しろよ」
「違う!城に戻ってから知ったんだ。彼女がどうしていようが僕には関係ないだろう」
「まあ、君がそう言うならそうなんだろう。だけどクラッブやゴイルが言っていたように、もう少し前みたいに彼女と話したりしたらどうなんだ?今の君たちが近くにいると、妙な空気でやりにくい」
「……」
「どうせ、告白でもして振られた腹いせなんだろ?」
「!」ドラコが不意を突かれたような反応をしたので、セオドールは自身のあてずっぽうな発言が当たって少々驚いた。ドラコはフォーラに告白したことをクラッブやゴイルだけでなく、セオドールにも一つも話していなかったのだ。
「なんだ、図星だったのか?喧嘩したと思っていたけどそういうことか。そんなちっぽけな意地を張って、随分格好悪いな」
「……そう見えるのなら、そう思っていてもらってかまわない。それより、普段他人に関心のない君がそんな話題を振ってくるなんて。急にどうしたっていうんだ」
「そりゃあ、僕だってできることならこんな自分にとってどうでもいいことを君と話したくはないよ。だけど、そうもいかない事情ができたんだ」
セオドールはおもむろに杖を取り出して振り、呼び寄せ呪文を唱えた。すると男子寮の方から白い封筒が一枚緩やかに飛んできて、彼の手中に収まった。上質な封筒の開け口には封蝋の跡があり、そこにはドラコにとって見慣れた家紋が押印されていた。
「……何故君がこれを?」
「封蝋だけで誰からのものか分かるなんて、君たちの付き合いはよっぽど長くて濃いんだな。ファントムの家で開かれるクリスマスパーティーの招待状だ。僕の父さんが送ってきた」
「何故だ?君の父上とファントム家は接点なんて一つも―――。いや、それより今年はパーティーが開かれるのか」
「僕もどうして急に招待されたかなんて知らないよ。君の父親繋がりの交流目的の可能性が高いだろうけど。それより、毎回参加してるドラコが知らないのはどうしてなんだ?勿論君も行くんだろ?」
セオドールの言葉にドラコは一瞬押し黙り、無意識に軽く眉間に皺を寄せた。
「いや、僕は……毎回彼女から直接口頭で招待の連絡を受けていたんだ。だから今年はどうなのかよく分からない」
ドラコはそれ以降何も言わなくなってしまい、セオドールはそんな彼の表情から何を考えているのかさっぱり読み取ることができなかったのだった。
そうして生徒たちがクリスマス休暇の話をするようになった時期のある日の放課後、授業を終えたスリザリンの五年生は教室の机を片付け、自寮や図書室にバラバラと解散していた。そんな中フォーラはというと、パンジーやルニーに挟まれた席で教科書を仕舞い終え、深いため息を吐いたところだった。
「フォーラ、最近どうしちゃったの?随分ため息が目立つけど」ルニーが教科書を詰めた鞄を持ち上げ、席から立ち上がりながら言った。
「あ……ごめんなさい。そんなに多かった?」
するとパンジーがルニーに同意した。
「そうよ、何か悩み事?それとも勉強のしすぎ?あっ、もしかしてまたドラコが何かいらないことを言ってきたの?」
「ううん、ドラコからは何も言われていないから大丈夫よ。ええと……。ねえ、二人はクリスマスイブをどう過ごすか、もう決まっているの?」
遠慮気味に尋ねるフォーラにどうしたのかと二人は首を傾げた。その質問にルニーが先に答えた。
「私はいつもどおり家族で過ごすかな。今年はおばあちゃんの家にクリスマス休暇が終わる直前まで滞在しようって話になってるわ」
「私も同じような感じね」今度はパンジーが続いた。「でも突然そんな話をするなんて、最近のため息とクリスマスが何か関係しているの?」
「フォーラもクリスマス休暇の間はご両親と過ごすんでしょ?それにほら、例年お客さんも呼んでクリスマスパーティーも開いてるって―――……あっ」
ルニーは推測していくうちに、一年生の頃から度々耳に挟んでいたファントム家が主催するパーティーの常連を一人思い出した。ドラコだ。