12. 目くらまし術
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「だけど父上は、どうやら僕が学業よりも父上の『手伝い』を優先したがっているとお思いらしい」
「そうなのか」セオドールがため息交じりに相槌を打った。「うちも夏休みの間に、父さんとほんの少しそういった話題にはなった。それで僕が卒業したらその『手伝い』をするよう勧められたよ」
「ノット自身はあんまり乗り気じゃないのか」今度はゴイルが尋ねた。
「うん。だけど、自分が有利に立ち回るのにどうしても必要なら、やぶさかではないよ。君たちのところはどうなんだい」
それを受けてクラッブとゴイルが返答する間、フォーラの心臓はすっかり速く脈打ち、四肢の先の肉球にはじんわりと汗をかいていた。『手伝い』とはもしかすると、彼らが闇の陣営に加わるという意味だろうか?彼女はそのように思いながら一層息をひそめた。するとドラコが会話の流れで口を開いた。
「―――僕もそれに関して父上には色々尋ねてみたが、それでもお話いただけたのは多分、最低限の範囲でしかなかっただろう」彼は脚を組みながら続けた。
「とはいえ僕も将来的にという意味では、最早父上から『手伝い』に誘われたようなものだ。だけど、父上はどこか後ろめたそうでもあった。察するに、父上自身は僕や母上をその『仕事』に近付けたくないんだろうと思う。まあ結局、ホグワーツに通っている間の僕たちは、それに関して何かをしたりさせられたりすることはないだろうね。他に何か大きな動きがない限りは」
クラッブやゴイルの家庭も親から多少の情報はもらっているようだったが、ドラコやセオドールと状況はあまり変わらなかった。その後も彼らは幾つか全く別の雑談をフォーラの頭上で交わしていて、その間の彼女は得も言われぬ安堵感を噛み締めることで精一杯だった。
(ドラコ……。何かさせられているわけじゃなかったのね。良かった。本当に良かった)
フォーラはつい最近ドラコに面と向かって虐げられたが、彼女からすれば、これまでの自分たちの関係を思えば彼を心配しない選択肢などある筈がなかった。しかし一つ引っかかるのは、ドラコが切迫している状況でないと分かった今、それならどうして彼は今までにない程に誰にも彼にもきつく当たっているのだろう、ということだった。
(私のことは気に入らないのだとしても、低学年の生徒や他の寮生のことは?以前はあんな風じゃなかったのに)
フォーラがそこまで考えた時、不意にセオドールが話題を切り替えた。
「ところで、例のガールフレンドとは上手くいってるのか?」
フォーラはその瞬間に再び身体を跳ねさせた。考え事をしていたせいで突然予想だにしない話が降ってきて驚いてしまったのだ。しかもそれは彼女にとって一番耳を塞ぎたくなる内容だった。
「何だ急に……。まあ、上手くいってないわけじゃないさ。話題も普通に合う」
(ああもう、こんな話になるなんて。それ以上は聞きたくない……)
フォーラは思わず俯いてしまい、もうここから立ち去ってしまおうと思った。その時、視界に見えない筈のものが見えていたものだから、彼女は心臓を大きく脈打たせた。
(前足が見えてる……!?)
後ろ足や背中を振り返っても、同様にくっきりと艶やかな黒い毛が目に入った。全身の目くらまし術が解けてしまったことにショックを覚え、フォーラは今のところ誰の視界にも入らないテーブル下で固まった。この時の彼らの会話は、彼女の耳に殆ど残っていなかった。
(どうして?ついさっきまであんなに完璧だったのに!セオドールの話に動揺してしまったから?兎に角、こうなってしまったら見つかる前に一刻も早くここから逃げなくちゃ)
フォーラはサッと周囲を見渡した。テーブルを挟んでドラコとセオドール、そしてクラッブとゴイルが向かい合う形で座っている。もしこのテーブル下から抜けるなら、恐らくクラッブとゴイル側から彼らの座る椅子の下を通り抜けるのが最善だろう。万が一ドラコに見つかれば一発で自分だとばれてしまうのは明らかだったからだ。
(それでも、クラッブとゴイルが足元を見ていない間に抜け出さないといけないわ。ここからでは二人がどこを向いているかも確認できない。辺りにいる他の生徒にだって見つかるかもしれない……。それに寮の出入口の扉はこの姿では開けられないし、逃げ場がないわ。いっそのこと、女子寮まで走り抜ける方がまだマシかもしれないけれど)
するとその時、クラッブがドラコに尋ねた声がフォーラの耳に飛び込んできた。
「マルフォイ。ファントムとすっかり話さなくなったのは、ガールフレンドと上手くいってるからだと思うけど……だけど、あんなに仲が良かったのにどうして」
(わ、私の名前……。クラッブは私たちの仲を心配してくれていたのね。もしかして、クラッブは私がドラコの告白を断ってしまったことを知らされていないのかしら。……駄目よ、こんな話まで聞く予定じゃなかったのに)
すると、クラッブの質問に苛立ちを覚えたのか、ドラコが脚を組み直すのが見えた。
「彼女と話す理由がないだけだ」
その回答を受けて今度はゴイルが尋ねた。
「でも、明らかに避けすぎてる。今のガールフレンドより、ファントムといた時の君の方がよっぽど……」
「うるさい、それ以上言うな。悪いがもうお前たちは席を外してくれ」
ドラコが煙たそうに言い放ち、クラッブとゴイルは互いに顔を見合わせた。二人はこうなったドラコには何を言っても無駄だと判断したようで、揃って椅子から立ち上がった。
(二人が離れていくわ。今なら何とか……でも、寮の扉は閉まっている筈)
その時、偶然にも寮の扉が開き、夕食を終えた二年生の群れが入ってきて談話室を横切ろうとした。フォーラはその瞬間を見逃さなかった。ドラコから死角になっている空席の椅子の下を通って一目散に走り抜け、すぐに二年生の群れに紛れて寮の出入口に滑り込んだのだった。
「そうなのか」セオドールがため息交じりに相槌を打った。「うちも夏休みの間に、父さんとほんの少しそういった話題にはなった。それで僕が卒業したらその『手伝い』をするよう勧められたよ」
「ノット自身はあんまり乗り気じゃないのか」今度はゴイルが尋ねた。
「うん。だけど、自分が有利に立ち回るのにどうしても必要なら、やぶさかではないよ。君たちのところはどうなんだい」
それを受けてクラッブとゴイルが返答する間、フォーラの心臓はすっかり速く脈打ち、四肢の先の肉球にはじんわりと汗をかいていた。『手伝い』とはもしかすると、彼らが闇の陣営に加わるという意味だろうか?彼女はそのように思いながら一層息をひそめた。するとドラコが会話の流れで口を開いた。
「―――僕もそれに関して父上には色々尋ねてみたが、それでもお話いただけたのは多分、最低限の範囲でしかなかっただろう」彼は脚を組みながら続けた。
「とはいえ僕も将来的にという意味では、最早父上から『手伝い』に誘われたようなものだ。だけど、父上はどこか後ろめたそうでもあった。察するに、父上自身は僕や母上をその『仕事』に近付けたくないんだろうと思う。まあ結局、ホグワーツに通っている間の僕たちは、それに関して何かをしたりさせられたりすることはないだろうね。他に何か大きな動きがない限りは」
クラッブやゴイルの家庭も親から多少の情報はもらっているようだったが、ドラコやセオドールと状況はあまり変わらなかった。その後も彼らは幾つか全く別の雑談をフォーラの頭上で交わしていて、その間の彼女は得も言われぬ安堵感を噛み締めることで精一杯だった。
(ドラコ……。何かさせられているわけじゃなかったのね。良かった。本当に良かった)
フォーラはつい最近ドラコに面と向かって虐げられたが、彼女からすれば、これまでの自分たちの関係を思えば彼を心配しない選択肢などある筈がなかった。しかし一つ引っかかるのは、ドラコが切迫している状況でないと分かった今、それならどうして彼は今までにない程に誰にも彼にもきつく当たっているのだろう、ということだった。
(私のことは気に入らないのだとしても、低学年の生徒や他の寮生のことは?以前はあんな風じゃなかったのに)
フォーラがそこまで考えた時、不意にセオドールが話題を切り替えた。
「ところで、例のガールフレンドとは上手くいってるのか?」
フォーラはその瞬間に再び身体を跳ねさせた。考え事をしていたせいで突然予想だにしない話が降ってきて驚いてしまったのだ。しかもそれは彼女にとって一番耳を塞ぎたくなる内容だった。
「何だ急に……。まあ、上手くいってないわけじゃないさ。話題も普通に合う」
(ああもう、こんな話になるなんて。それ以上は聞きたくない……)
フォーラは思わず俯いてしまい、もうここから立ち去ってしまおうと思った。その時、視界に見えない筈のものが見えていたものだから、彼女は心臓を大きく脈打たせた。
(前足が見えてる……!?)
後ろ足や背中を振り返っても、同様にくっきりと艶やかな黒い毛が目に入った。全身の目くらまし術が解けてしまったことにショックを覚え、フォーラは今のところ誰の視界にも入らないテーブル下で固まった。この時の彼らの会話は、彼女の耳に殆ど残っていなかった。
(どうして?ついさっきまであんなに完璧だったのに!セオドールの話に動揺してしまったから?兎に角、こうなってしまったら見つかる前に一刻も早くここから逃げなくちゃ)
フォーラはサッと周囲を見渡した。テーブルを挟んでドラコとセオドール、そしてクラッブとゴイルが向かい合う形で座っている。もしこのテーブル下から抜けるなら、恐らくクラッブとゴイル側から彼らの座る椅子の下を通り抜けるのが最善だろう。万が一ドラコに見つかれば一発で自分だとばれてしまうのは明らかだったからだ。
(それでも、クラッブとゴイルが足元を見ていない間に抜け出さないといけないわ。ここからでは二人がどこを向いているかも確認できない。辺りにいる他の生徒にだって見つかるかもしれない……。それに寮の出入口の扉はこの姿では開けられないし、逃げ場がないわ。いっそのこと、女子寮まで走り抜ける方がまだマシかもしれないけれど)
するとその時、クラッブがドラコに尋ねた声がフォーラの耳に飛び込んできた。
「マルフォイ。ファントムとすっかり話さなくなったのは、ガールフレンドと上手くいってるからだと思うけど……だけど、あんなに仲が良かったのにどうして」
(わ、私の名前……。クラッブは私たちの仲を心配してくれていたのね。もしかして、クラッブは私がドラコの告白を断ってしまったことを知らされていないのかしら。……駄目よ、こんな話まで聞く予定じゃなかったのに)
すると、クラッブの質問に苛立ちを覚えたのか、ドラコが脚を組み直すのが見えた。
「彼女と話す理由がないだけだ」
その回答を受けて今度はゴイルが尋ねた。
「でも、明らかに避けすぎてる。今のガールフレンドより、ファントムといた時の君の方がよっぽど……」
「うるさい、それ以上言うな。悪いがもうお前たちは席を外してくれ」
ドラコが煙たそうに言い放ち、クラッブとゴイルは互いに顔を見合わせた。二人はこうなったドラコには何を言っても無駄だと判断したようで、揃って椅子から立ち上がった。
(二人が離れていくわ。今なら何とか……でも、寮の扉は閉まっている筈)
その時、偶然にも寮の扉が開き、夕食を終えた二年生の群れが入ってきて談話室を横切ろうとした。フォーラはその瞬間を見逃さなかった。ドラコから死角になっている空席の椅子の下を通って一目散に走り抜け、すぐに二年生の群れに紛れて寮の出入口に滑り込んだのだった。