12. 目くらまし術
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その後図書室に辿り着いたフォーラはと言うと、父親の手記にあった『魔法薬のように優れた術』について調べているところだった。この件に関しては本当は優先すべきでないと思いつつ、正直言って学術面でとても惹かれる題材だった。それだから彼女は一先ず手がかりとして父親の手記の内、変身術のページに消し込みされていた『エメリア・スイッチ』という名前からヒントを得ようと考えた。しかし今日目を通した変身術の関連図書では、残念ながらその名前を見つけることは出来なかった。
(もうすっかり夕方だわ。そろそろ寮に戻らなきゃ。それにしても、本当に何処かで聞いたことがある気がする名前なのよね……。それなのに、一つも見つけられないなんて。
もしかすると、まだ手に取っていない本の中に書かれているかもしれないけれど。それとも……)
フォーラは図書室を立ち去る際、チラとだけ木造の格子扉越しに禁書の棚の方を見やった。しかしそのすぐ後に心の中で頭を振った。
(あの名前のことはまた今度調べましょう。今日はこの後、大事なことを試さなきゃいけないんだから)
フォーラは友人達と大広間で夕食を済ませ、スリザリン寮に戻ろうとしていた。その際彼女は図書室に返し忘れていた本を持っていくと友人に告げ、大広間の入り口で分かれた。そしてその足で図書室の方向ではなく人気のない廊下の階段の陰までやって来ると、徐に杖を取り出して自身に呪文を唱えた。
フォーラの目くらまし術は成功し、彼女の姿は背景に同化して自身からも見えなくなった。
(上出来だわ。このままスリザリン寮にいきましょう。決まって食後のドラコは直ぐに談話室に戻るもの)
フォーラは人気のない廊下から数歩踏み出したが、直ぐに廊下に自分の足音が響いていることに気が付いて思わず足を止めてしまった。
(そういえば、物音はこの呪文に関係なく気をつけなくちゃいけないこと、すっかり忘れていたわ。)
このままではドラコのところに行っても直ぐに気付かれてしまう可能性がある。若しくはドラコ以外の誰かにだって見つかる恐れもないとは言い切れない。せめて足音だけでも消すことができれば良いのだが。
(足音……。ちょっと待って。私、足音なら消せるわ。でも、目くらまし術をかけた状態で出来るかどうか)
フォーラは二つの技を同時にこなせるか不安だったが、それよりもドラコが今年に入ってハリー以外にも敵意を抱くに至った理由や、一番は何か危険なことに巻き込まれていないかをを知りたかった。彼女は意思を固めた。
(やってみなきゃ分からないわ)
フォーラは目くらまし術で自分の姿が見えない状態だったが、アニメーガスの力を使って黒猫に変身した。正確にはその姿は見えないままだったため黒猫とは断定できなかったが、彼女の視界がずいぶん床に近づいて、かつ4本足が地に着いたことから成功したとみて間違いなかった。彼女は近くの窓辺に飛び乗ると、ガラスに自分の姿が映っていないことを確認した。
(この姿、もしセブルスさんやマクゴナガル先生に見せたらどれくらい驚いてくれるかしら?
……あ、でも、このままの姿じゃ誰からも分からないんだった。)
フォーラは上出来な自分の姿に気を良くすると、そのままスリザリン寮へと向かって行ったのだった。
黒猫の姿で寮の扉をくぐるのは容易だった。夕食から戻った生徒の合言葉で開いたところをすり抜ければいいだけなのだから。フォーラは談話室に着くと直ぐ視界にドラコの姿を捉えた。彼女が周囲に気をつけながらそろそろと近づくと、彼の座る肘掛け椅子の隣にセオドール、そしてローテーブルを挟んだ反対側にクラッブ、ゴイルも座って何かを話していることに気がついた。
フォーラは狙った場面に出会えたことに喜ぶと同時に、身体に緊張を走らせた。いつもよりほんの少し早く大きな鼓動を感じながら、彼女は静かにドラコが目の前に見える位置へと移動した。そして彼らの真ん中にあるローテーブルの下で静止して聞き耳を立てた。
彼らは今日のグリフィンドール戦について振り返った後、最近の授業の課題の多さについて話したりした。正直言ってフォーラにとっては期待外れな普通の男子生徒同士の会話が暫く続いた。
「さあ、もう少ししたら課題に取り掛からないと。今年はやることが山積みだ」彼等がひとしきり話し終え、丁度会話が一区切りついた時にセオドールが言った。
(やっぱり、そんなに上手く期待したような会話にならないわよね)
フォーラが諦めかけた時、セオドールの言葉にドラコが続いた。
「僕らのやるべきことは学業。そうだとも。耳にタコが出来るほど聞いた台詞だ。父上にも散々言われた」
(!)
フォーラはルシウス・マルフォイの話題が出たことにびくりと身体を跳ねさせた。
「父上は、僕が学業よりも父上の『手伝い』の優先を希望していると思っているらしい」
「ああ、うちもそんな感じだな」セオドールが相槌を打った。「休みの間に父さんとほんの少しその話題になったんだ。因みにうちは卒業したら『手伝い』をするよう勧められたよ」
「ということは、ノットはあんまり乗り気じゃ無いのか」今度はゴイルが静かに尋ねた。
「ああ。だけど、自分が有利に立ち回るのにどうしても必要ならやぶさかじゃないよ。君たちのところはどうなんだい」
フォーラは自分の心臓が次第に早く脈打ち、肉球にじんわりと汗をかいているのを感じた。『手伝い』とは、もしかすると……『闇の陣営』に加わるということだろうか?
彼女は一層息を潜めた。するとドラコがセオドールから言葉を引き継いだ。
「僕も興味がないわけじゃなかったから父上には色々尋ねたこともあった。それでも話してもらったのは多分最低限の範囲だろうね」ドラコが脚を組み直しながら続けた。「とは言え僕も将来的にという意味では、父上から『手伝い』に誘われたようなものだ。
……だけど、父上はどこか後ろめたそうだった。察するに、父上自身は僕や母上をその『仕事』に近づけたく無いらしい。
まあ結局ホグワーツに通っている間、僕たちはどうすることもないだろうね。他に何か大きな動きでもない限りは」
(もうすっかり夕方だわ。そろそろ寮に戻らなきゃ。それにしても、本当に何処かで聞いたことがある気がする名前なのよね……。それなのに、一つも見つけられないなんて。
もしかすると、まだ手に取っていない本の中に書かれているかもしれないけれど。それとも……)
フォーラは図書室を立ち去る際、チラとだけ木造の格子扉越しに禁書の棚の方を見やった。しかしそのすぐ後に心の中で頭を振った。
(あの名前のことはまた今度調べましょう。今日はこの後、大事なことを試さなきゃいけないんだから)
フォーラは友人達と大広間で夕食を済ませ、スリザリン寮に戻ろうとしていた。その際彼女は図書室に返し忘れていた本を持っていくと友人に告げ、大広間の入り口で分かれた。そしてその足で図書室の方向ではなく人気のない廊下の階段の陰までやって来ると、徐に杖を取り出して自身に呪文を唱えた。
フォーラの目くらまし術は成功し、彼女の姿は背景に同化して自身からも見えなくなった。
(上出来だわ。このままスリザリン寮にいきましょう。決まって食後のドラコは直ぐに談話室に戻るもの)
フォーラは人気のない廊下から数歩踏み出したが、直ぐに廊下に自分の足音が響いていることに気が付いて思わず足を止めてしまった。
(そういえば、物音はこの呪文に関係なく気をつけなくちゃいけないこと、すっかり忘れていたわ。)
このままではドラコのところに行っても直ぐに気付かれてしまう可能性がある。若しくはドラコ以外の誰かにだって見つかる恐れもないとは言い切れない。せめて足音だけでも消すことができれば良いのだが。
(足音……。ちょっと待って。私、足音なら消せるわ。でも、目くらまし術をかけた状態で出来るかどうか)
フォーラは二つの技を同時にこなせるか不安だったが、それよりもドラコが今年に入ってハリー以外にも敵意を抱くに至った理由や、一番は何か危険なことに巻き込まれていないかをを知りたかった。彼女は意思を固めた。
(やってみなきゃ分からないわ)
フォーラは目くらまし術で自分の姿が見えない状態だったが、アニメーガスの力を使って黒猫に変身した。正確にはその姿は見えないままだったため黒猫とは断定できなかったが、彼女の視界がずいぶん床に近づいて、かつ4本足が地に着いたことから成功したとみて間違いなかった。彼女は近くの窓辺に飛び乗ると、ガラスに自分の姿が映っていないことを確認した。
(この姿、もしセブルスさんやマクゴナガル先生に見せたらどれくらい驚いてくれるかしら?
……あ、でも、このままの姿じゃ誰からも分からないんだった。)
フォーラは上出来な自分の姿に気を良くすると、そのままスリザリン寮へと向かって行ったのだった。
黒猫の姿で寮の扉をくぐるのは容易だった。夕食から戻った生徒の合言葉で開いたところをすり抜ければいいだけなのだから。フォーラは談話室に着くと直ぐ視界にドラコの姿を捉えた。彼女が周囲に気をつけながらそろそろと近づくと、彼の座る肘掛け椅子の隣にセオドール、そしてローテーブルを挟んだ反対側にクラッブ、ゴイルも座って何かを話していることに気がついた。
フォーラは狙った場面に出会えたことに喜ぶと同時に、身体に緊張を走らせた。いつもよりほんの少し早く大きな鼓動を感じながら、彼女は静かにドラコが目の前に見える位置へと移動した。そして彼らの真ん中にあるローテーブルの下で静止して聞き耳を立てた。
彼らは今日のグリフィンドール戦について振り返った後、最近の授業の課題の多さについて話したりした。正直言ってフォーラにとっては期待外れな普通の男子生徒同士の会話が暫く続いた。
「さあ、もう少ししたら課題に取り掛からないと。今年はやることが山積みだ」彼等がひとしきり話し終え、丁度会話が一区切りついた時にセオドールが言った。
(やっぱり、そんなに上手く期待したような会話にならないわよね)
フォーラが諦めかけた時、セオドールの言葉にドラコが続いた。
「僕らのやるべきことは学業。そうだとも。耳にタコが出来るほど聞いた台詞だ。父上にも散々言われた」
(!)
フォーラはルシウス・マルフォイの話題が出たことにびくりと身体を跳ねさせた。
「父上は、僕が学業よりも父上の『手伝い』の優先を希望していると思っているらしい」
「ああ、うちもそんな感じだな」セオドールが相槌を打った。「休みの間に父さんとほんの少しその話題になったんだ。因みにうちは卒業したら『手伝い』をするよう勧められたよ」
「ということは、ノットはあんまり乗り気じゃ無いのか」今度はゴイルが静かに尋ねた。
「ああ。だけど、自分が有利に立ち回るのにどうしても必要ならやぶさかじゃないよ。君たちのところはどうなんだい」
フォーラは自分の心臓が次第に早く脈打ち、肉球にじんわりと汗をかいているのを感じた。『手伝い』とは、もしかすると……『闇の陣営』に加わるということだろうか?
彼女は一層息を潜めた。するとドラコがセオドールから言葉を引き継いだ。
「僕も興味がないわけじゃなかったから父上には色々尋ねたこともあった。それでも話してもらったのは多分最低限の範囲だろうね」ドラコが脚を組み直しながら続けた。「とは言え僕も将来的にという意味では、父上から『手伝い』に誘われたようなものだ。
……だけど、父上はどこか後ろめたそうだった。察するに、父上自身は僕や母上をその『仕事』に近づけたく無いらしい。
まあ結局ホグワーツに通っている間、僕たちはどうすることもないだろうね。他に何か大きな動きでもない限りは」