11. 父の手記
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スリザリン寮の入り口で合言葉を唱えて開いた石の扉を抜けると、談話室には数人の生徒が居るだけだった。ルニーやパンジーの姿はない。同学年のスリザリン生の一人がフォーラの存在に気がつくと、手を振って声をかけてきた。
「フォーラ、随分疲れた顔ね。もしかして夕食も食べずにずっと図書室にいたの?」
「え、ええ。今戻ってきたところなの。読書に集中していたらこんな時間に。」
フォーラは落ち着かない様子で答えたが、声を掛けてきた彼女はそんなことは全く気にしていない様子だった。
「ふうん、前から思っていたけど、フォーラって頑張り屋さんなのか変人なのかよく分からないわね。
それよりお腹空いてるでしょ。パンジーとルニーが貴女にって、夕食を少し取っておいてくれてるわよ。食べたら?」
「えっ、そうなの……?」
同僚の彼女が指差した方のリビングテーブルには、大きめの布がかけられたバスケットが置かれていた。布の上には置き手紙が乗せられている。
『フォーラへ
夕食の後に図書室へ寄ったけど、集中してるみたいだったから軽い食べ物だけ持ったきたわ。勉強も夜中の食事も、詰め込みすぎは厳禁よ!
パンジー&ルニー』
(図書室まで様子を見にきてくれていたのね。)
フォーラは置き手紙に微笑むと、二人に感謝した。
「パンジーたちはもう女子寮に行ってしまったの?」
「ええ、少し前にね。二人共もう寝るって言ってたわ。もし私たちが起きてる間にフォーラが戻ってきたら、バスケットのこと伝えて欲しいって言われていたの。それじゃ、私たちもそろそろ寝るわ。おやすみなさい。遅いしあまり食べ過ぎないようにね」
「ええ、わかったわ。教えてくれてありがとう。」
フォーラは肘掛け椅子に座り、バスケットの布を取り去った。中にはサラダにミートパイが少しと、ポタージュスープが魔法で保温されていた。
(あら……、それに私の好きなパンプキンパイもある。デザートまで用意してもらって、有り難くいただかなきゃ。)
フォーラがこの日の最後に食べたパンプキンパイは、いつもと違って何故だか特別な味がした。あんなに疲れ切っていたのが嘘のように回復して、何とも言えぬ満足感と心地よい微睡みを促しているような気すらした。
その翌日、フォーラは朝一番にルニーとパンジーへ昨日のお礼を伝えた。
「本当にありがとう。空腹で死んでしまうかと思っていたところだったの。」
「もう、夕食前だっていうのに飛んで行っちゃうんだから。そんなに急ぎだったの?」
ルニーの問いかけにフォーラは曖昧に「ええ、ちょっとだけ……」と返答すると、ルニーは少し口の先を尖らせた。
「もう、明日でもいいことは次の日やればいいのよ。根詰めすぎなんだからもう」
「でも、私たち最近のフォーラは今までの倍くらい勉強を頑張ってるの知ってたから。あんまり一生懸命だし、夕食後の図書室でもそっとしておこうって話してたのよ」
パンジーの言葉にフォーラは二人に改めてお礼を言った。
「図書室まで様子を見に来てくれた上に、まさか夕食を取って置いてくれているなんて思わなくって。とっても嬉しかったわ。
それに私の好きなパンプキンパイまで取り分けておいてくれていたから、すっかり元気になったの。いつもより何て言うか、幸せな味がしたわ。」
「そう?それはよかっーーーん?パンプキンパイって何のこと?」ルニーが自分の言葉を遮って尋ねた。
「えっ、二人が用意してくれていたでしょう?とっても美味しかったわ。」
ルニーとパンジーは訝しげに顔を見合わせてからフォーラに向き直ると、何も知らない様子の彼女にパンジーが思い切って伝えた。
「フォーラ?私たち、パンプキンパイは入れてないわ。夜中にデザートなんて気にするかと思ってやめたのよ」
「え、でも、私確かにいただいたわーーーじゃあ、誰かが入れたのかしら……どうしよう、全部すっかり食べてしまったわ!」
フォーラは途端に慌てて思わず喉の辺りを両手でパッと押さえたが、ルニーが気の動転した彼女の背中に手を置いて声をかけた。
「落ち着いて、一先ず毒や呪いがある訳じゃなさそうなんだし。もしそうだったとしたら、とっくに痛みか苦しさは感じてるはずでしょ」
「あ……そ、そうよね。私ったら……。あんなに幸せな味だったんだもの。誰かが善意で入れてくれたと思う方が良いのかもしれない。」
一先ずフォーラが落ち着きを取り戻して首から自分の手を退けたのを確認すると、パンジーはため息混じりの安堵の声を漏らした。
「まあ、とっくに食べちゃった後だもの。今更何も出来ないけど、とりあえず何も無さそうでよかったわ。
でも私たち、図書室に寄った後に厨房まで行って屋敷しもべ妖精に食事を分けてもらったのに。
もし誰かがバスケットにパイを入れるとすれば、私たちが女子寮に行ってからが一番可能性が高いけど……」
ルニーはパンジーの言葉にウーンと軽い唸り声を鳴らした。
「そうね、談話室に来る道中で入れられたとは考え難いしーーーもしかするとスリザリンにフォーラのストーカーがいて、その人がーーー」
フォーラからサッと血の気が引いたものだから、ルニーは慌ててその言葉の続きを言うのをやめた。フォーラはパンジーがルニーに軽く叱咤するのを聞きながら、よくよく考えてみれば、あんなに素敵な幸福感のある魔法のかかったパイに仕上げるなんて、とても何かしらの気持ちが篭っていたに違いないと思った。それがストーカーなのか何なのかはよく分からないし、気持ち悪さや不安が無いわけではない。しかし少なくとも昨日のフォーラにとっては本当にあのパイに助けられたことは間違いなかったし、むしろその気持ちの方が優っていたのだった。
「フォーラ、随分疲れた顔ね。もしかして夕食も食べずにずっと図書室にいたの?」
「え、ええ。今戻ってきたところなの。読書に集中していたらこんな時間に。」
フォーラは落ち着かない様子で答えたが、声を掛けてきた彼女はそんなことは全く気にしていない様子だった。
「ふうん、前から思っていたけど、フォーラって頑張り屋さんなのか変人なのかよく分からないわね。
それよりお腹空いてるでしょ。パンジーとルニーが貴女にって、夕食を少し取っておいてくれてるわよ。食べたら?」
「えっ、そうなの……?」
同僚の彼女が指差した方のリビングテーブルには、大きめの布がかけられたバスケットが置かれていた。布の上には置き手紙が乗せられている。
『フォーラへ
夕食の後に図書室へ寄ったけど、集中してるみたいだったから軽い食べ物だけ持ったきたわ。勉強も夜中の食事も、詰め込みすぎは厳禁よ!
パンジー&ルニー』
(図書室まで様子を見にきてくれていたのね。)
フォーラは置き手紙に微笑むと、二人に感謝した。
「パンジーたちはもう女子寮に行ってしまったの?」
「ええ、少し前にね。二人共もう寝るって言ってたわ。もし私たちが起きてる間にフォーラが戻ってきたら、バスケットのこと伝えて欲しいって言われていたの。それじゃ、私たちもそろそろ寝るわ。おやすみなさい。遅いしあまり食べ過ぎないようにね」
「ええ、わかったわ。教えてくれてありがとう。」
フォーラは肘掛け椅子に座り、バスケットの布を取り去った。中にはサラダにミートパイが少しと、ポタージュスープが魔法で保温されていた。
(あら……、それに私の好きなパンプキンパイもある。デザートまで用意してもらって、有り難くいただかなきゃ。)
フォーラがこの日の最後に食べたパンプキンパイは、いつもと違って何故だか特別な味がした。あんなに疲れ切っていたのが嘘のように回復して、何とも言えぬ満足感と心地よい微睡みを促しているような気すらした。
その翌日、フォーラは朝一番にルニーとパンジーへ昨日のお礼を伝えた。
「本当にありがとう。空腹で死んでしまうかと思っていたところだったの。」
「もう、夕食前だっていうのに飛んで行っちゃうんだから。そんなに急ぎだったの?」
ルニーの問いかけにフォーラは曖昧に「ええ、ちょっとだけ……」と返答すると、ルニーは少し口の先を尖らせた。
「もう、明日でもいいことは次の日やればいいのよ。根詰めすぎなんだからもう」
「でも、私たち最近のフォーラは今までの倍くらい勉強を頑張ってるの知ってたから。あんまり一生懸命だし、夕食後の図書室でもそっとしておこうって話してたのよ」
パンジーの言葉にフォーラは二人に改めてお礼を言った。
「図書室まで様子を見に来てくれた上に、まさか夕食を取って置いてくれているなんて思わなくって。とっても嬉しかったわ。
それに私の好きなパンプキンパイまで取り分けておいてくれていたから、すっかり元気になったの。いつもより何て言うか、幸せな味がしたわ。」
「そう?それはよかっーーーん?パンプキンパイって何のこと?」ルニーが自分の言葉を遮って尋ねた。
「えっ、二人が用意してくれていたでしょう?とっても美味しかったわ。」
ルニーとパンジーは訝しげに顔を見合わせてからフォーラに向き直ると、何も知らない様子の彼女にパンジーが思い切って伝えた。
「フォーラ?私たち、パンプキンパイは入れてないわ。夜中にデザートなんて気にするかと思ってやめたのよ」
「え、でも、私確かにいただいたわーーーじゃあ、誰かが入れたのかしら……どうしよう、全部すっかり食べてしまったわ!」
フォーラは途端に慌てて思わず喉の辺りを両手でパッと押さえたが、ルニーが気の動転した彼女の背中に手を置いて声をかけた。
「落ち着いて、一先ず毒や呪いがある訳じゃなさそうなんだし。もしそうだったとしたら、とっくに痛みか苦しさは感じてるはずでしょ」
「あ……そ、そうよね。私ったら……。あんなに幸せな味だったんだもの。誰かが善意で入れてくれたと思う方が良いのかもしれない。」
一先ずフォーラが落ち着きを取り戻して首から自分の手を退けたのを確認すると、パンジーはため息混じりの安堵の声を漏らした。
「まあ、とっくに食べちゃった後だもの。今更何も出来ないけど、とりあえず何も無さそうでよかったわ。
でも私たち、図書室に寄った後に厨房まで行って屋敷しもべ妖精に食事を分けてもらったのに。
もし誰かがバスケットにパイを入れるとすれば、私たちが女子寮に行ってからが一番可能性が高いけど……」
ルニーはパンジーの言葉にウーンと軽い唸り声を鳴らした。
「そうね、談話室に来る道中で入れられたとは考え難いしーーーもしかするとスリザリンにフォーラのストーカーがいて、その人がーーー」
フォーラからサッと血の気が引いたものだから、ルニーは慌ててその言葉の続きを言うのをやめた。フォーラはパンジーがルニーに軽く叱咤するのを聞きながら、よくよく考えてみれば、あんなに素敵な幸福感のある魔法のかかったパイに仕上げるなんて、とても何かしらの気持ちが篭っていたに違いないと思った。それがストーカーなのか何なのかはよく分からないし、気持ち悪さや不安が無いわけではない。しかし少なくとも昨日のフォーラにとっては本当にあのパイに助けられたことは間違いなかったし、むしろその気持ちの方が優っていたのだった。