11. 父の手記
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目くらまし術は難易度の高い技で、習得するのに時間のかかる技だった。この日の彼女は生徒たちがホグズミード村から帰路につき始める時間まで、ひたすら自分の羽ペンや、女子寮から拝借したゴブレットに向かってこの術を練習し続けた。その間、フォーラの脳裏を何度か今日玄関ホールで見かけたドラコと恋人の姿がチラついた。今こうしている間にも二人が楽しげに会話しているのかと思うと、その度にフォーラは無意識のまま杖を振る手を止めてしまっていた。
(この術では、ドラコと話すことはできないのよね……)
フォーラはゴブレットに向かって杖を一振りした。ゴブレットはぼんやりと向こうが透けて見える程度にまで透過した。フォーラはもう一度杖を振ってゴブレットを元の姿に戻した。
(私も、ドラコの恋人や、彼の友人たちが彼と話しているみたいに話せたら……。クラッブやゴイルはドラコの仲間だし、彼の最近の態度について何か心の内を知っているのかしら?でも、きっと二人は口止めされているから何も教えてくれないわ。……彼の恋人も、何か私の知らない彼の一面を見たりしているのかしら。)
フォーラは再び杖を振って呪文をゴブレットに命中させたが、ゴブレットは先程よりも少ししか透けなかった。もう一度杖を振ると、今度のゴブレットは下半分だけ完全に透過した。フォーラは再びゴブレットを元の状態に戻した。
(そもそも、今のドラコは私と話す気なんてもう持ち合わせていないのよ。別の誰かならまだしも。
騎士団のメンバーなら、変身術の得意なトンクスや、マクゴナガル先生なら、こんな時どうするかしら……)
「あっ!!」
フォーラは再び杖を振った際、誤って自分の片手に術をかけてしまった。考えごとをしていたせいで手元が狂ったのだ。その際、彼女は驚いて側の丸テーブルに置いていた六学年用の教科書を杖を持っていた手で弾き落としてしまった。
「ああ……私ったら……」
彼女は術のかかった杖を持っていない方の手元に冷たいものが流れるような感覚を覚えた。するとその手は完全に姿が見えなくなった。この時彼女は的は違えど初めて目くらまし術に成功していて、これには当の本人も驚かざるを得なかった。フォーラは自分の手をまじまじと眺めたがそこにはあるはずの手は見えず、まるで手首を切り落とされたようだった。
床に開けた教科書をその見えなくなった手で持ち上げてみようとした時、彼女は見開かれたページの文字に目を留めた。
「……『人の変身』……」
フォーラはすっかり見落としていたこのページを床に近づいてまじまじと見つめた。そして本を拾い上げて丸テーブルの上に置くと、見えなくなった手を元に戻すことすら忘れ、そのまま覗き込むように教科書の中身を読み漁った。
教科書では、『人の変身』は人の顔や体のパーツを自由に曲げたり伸ばしたり、色を変えたりする術だと書かれていた。ちょっとした整形に利用する人もいれば、危険な場面で素顔を隠すために使用されたり用途は様々なようだ。しかしこの呪文では誰かと同じ顔や骨格になるのは相当無理に等しいとある。
(これなら、ひょっとしてもしかするとーーードラコが私と話してくれないなら、私が私で無くなれば……気付かれずにドラコと話ができるかも?
でも、誰かとそっくりになれるわけではなさそうだし、パーツを変えて知らない人になっても、彼はまともに会話してくれるかしら。)
それならいっそポリジュース薬を煎じて誰かに成りすます方が確実かもしれない。しかし薬は一回一時間しか保たない割に、そもそも材料が貴重でスネイプの保管棚にしかない。
何より彼には騎士団の役に立つ準備期間として『貪欲に学ぶ』ことを約束した手前、自分の力で解決できない部分に手を出そうなんて、そんなこと彼はきっと許さないだろう。
その時フォーラは不意に以前もどこかで誰かとポリジュース薬の話をしたような気がした。
(あれは何時のことだったかしら。確か……そうだわ。ブラック邸でトンクスと『七変化』について話した時だった。)
あの時はトンクスが自身の髪をジニーの赤い髪とそっくりに変化させていた。それを見たハーマイオニーが顔のパーツや見た目も似せられるのか興味津々でトンクスに尋ねたのだ。
『うーん、そうね。肌の年齢も身体の形も変えられるから、出来ないことはーーー人のパーツはとっても複雑だからかなり面倒だけどね。』
『凄いわ!トンクスはポリジュース薬が必要ないのね!』
『そうだね、でもーーーポリジュース薬さえ作れば一時間は楽に変身できるのよ。その人を見た事がなくてもね。
七変化で同じ姿になろうと思うと、はっきり姿形を覚えていないと『似た誰か』になるだけだから、見たことのない人や、うろ覚えの人にはなれないし』
そうだった、七変化のトンクスは時間さえかければ知っている誰かになることが出来るのだ。しかしそれを思い出したからといって、フォーラが七変化になってドラコの友人に成りすませるわけではない。七変化は生まれ持った才能で、途中から習得したのは大昔にただ一人と言われるほど無理に等しいのだ。
「私ったら、欲張り過ぎね……。まだ、何も出来ないからって、焦っちゃ駄目なのに。」
まだ目眩し術をまぐれで成功させた程度の力しか持ち合わせていない。それに、これから何をどうすればいいかも曖昧だ。
フォーラはため息を一つ吐くと術のかかった片手を元に戻した。ふと気になって部屋の窓から城下を見やると、ホグズミードからパラパラと生徒たちが帰路につき始めているのがゴマ粒程の大きさで見えた。今日は時間切れだ。その内友人達が談話室に戻ってくるだろう。彼女は首を横に振りながら開いた本を閉じ、この日の練習を諦めて部屋を後にしたのだった。
(この術では、ドラコと話すことはできないのよね……)
フォーラはゴブレットに向かって杖を一振りした。ゴブレットはぼんやりと向こうが透けて見える程度にまで透過した。フォーラはもう一度杖を振ってゴブレットを元の姿に戻した。
(私も、ドラコの恋人や、彼の友人たちが彼と話しているみたいに話せたら……。クラッブやゴイルはドラコの仲間だし、彼の最近の態度について何か心の内を知っているのかしら?でも、きっと二人は口止めされているから何も教えてくれないわ。……彼の恋人も、何か私の知らない彼の一面を見たりしているのかしら。)
フォーラは再び杖を振って呪文をゴブレットに命中させたが、ゴブレットは先程よりも少ししか透けなかった。もう一度杖を振ると、今度のゴブレットは下半分だけ完全に透過した。フォーラは再びゴブレットを元の状態に戻した。
(そもそも、今のドラコは私と話す気なんてもう持ち合わせていないのよ。別の誰かならまだしも。
騎士団のメンバーなら、変身術の得意なトンクスや、マクゴナガル先生なら、こんな時どうするかしら……)
「あっ!!」
フォーラは再び杖を振った際、誤って自分の片手に術をかけてしまった。考えごとをしていたせいで手元が狂ったのだ。その際、彼女は驚いて側の丸テーブルに置いていた六学年用の教科書を杖を持っていた手で弾き落としてしまった。
「ああ……私ったら……」
彼女は術のかかった杖を持っていない方の手元に冷たいものが流れるような感覚を覚えた。するとその手は完全に姿が見えなくなった。この時彼女は的は違えど初めて目くらまし術に成功していて、これには当の本人も驚かざるを得なかった。フォーラは自分の手をまじまじと眺めたがそこにはあるはずの手は見えず、まるで手首を切り落とされたようだった。
床に開けた教科書をその見えなくなった手で持ち上げてみようとした時、彼女は見開かれたページの文字に目を留めた。
「……『人の変身』……」
フォーラはすっかり見落としていたこのページを床に近づいてまじまじと見つめた。そして本を拾い上げて丸テーブルの上に置くと、見えなくなった手を元に戻すことすら忘れ、そのまま覗き込むように教科書の中身を読み漁った。
教科書では、『人の変身』は人の顔や体のパーツを自由に曲げたり伸ばしたり、色を変えたりする術だと書かれていた。ちょっとした整形に利用する人もいれば、危険な場面で素顔を隠すために使用されたり用途は様々なようだ。しかしこの呪文では誰かと同じ顔や骨格になるのは相当無理に等しいとある。
(これなら、ひょっとしてもしかするとーーードラコが私と話してくれないなら、私が私で無くなれば……気付かれずにドラコと話ができるかも?
でも、誰かとそっくりになれるわけではなさそうだし、パーツを変えて知らない人になっても、彼はまともに会話してくれるかしら。)
それならいっそポリジュース薬を煎じて誰かに成りすます方が確実かもしれない。しかし薬は一回一時間しか保たない割に、そもそも材料が貴重でスネイプの保管棚にしかない。
何より彼には騎士団の役に立つ準備期間として『貪欲に学ぶ』ことを約束した手前、自分の力で解決できない部分に手を出そうなんて、そんなこと彼はきっと許さないだろう。
その時フォーラは不意に以前もどこかで誰かとポリジュース薬の話をしたような気がした。
(あれは何時のことだったかしら。確か……そうだわ。ブラック邸でトンクスと『七変化』について話した時だった。)
あの時はトンクスが自身の髪をジニーの赤い髪とそっくりに変化させていた。それを見たハーマイオニーが顔のパーツや見た目も似せられるのか興味津々でトンクスに尋ねたのだ。
『うーん、そうね。肌の年齢も身体の形も変えられるから、出来ないことはーーー人のパーツはとっても複雑だからかなり面倒だけどね。』
『凄いわ!トンクスはポリジュース薬が必要ないのね!』
『そうだね、でもーーーポリジュース薬さえ作れば一時間は楽に変身できるのよ。その人を見た事がなくてもね。
七変化で同じ姿になろうと思うと、はっきり姿形を覚えていないと『似た誰か』になるだけだから、見たことのない人や、うろ覚えの人にはなれないし』
そうだった、七変化のトンクスは時間さえかければ知っている誰かになることが出来るのだ。しかしそれを思い出したからといって、フォーラが七変化になってドラコの友人に成りすませるわけではない。七変化は生まれ持った才能で、途中から習得したのは大昔にただ一人と言われるほど無理に等しいのだ。
「私ったら、欲張り過ぎね……。まだ、何も出来ないからって、焦っちゃ駄目なのに。」
まだ目眩し術をまぐれで成功させた程度の力しか持ち合わせていない。それに、これから何をどうすればいいかも曖昧だ。
フォーラはため息を一つ吐くと術のかかった片手を元に戻した。ふと気になって部屋の窓から城下を見やると、ホグズミードからパラパラと生徒たちが帰路につき始めているのがゴマ粒程の大きさで見えた。今日は時間切れだ。その内友人達が談話室に戻ってくるだろう。彼女は首を横に振りながら開いた本を閉じ、この日の練習を諦めて部屋を後にしたのだった。