11. 父の手記
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「え……」フォーラはドラコが自らそばにやって来たことが信じられなくて、思わずパチパチと瞬きした。それも束の間、彼は何やら意地悪な笑みを浮かべた。
「やあ、元気かい。今日は君たちにプレゼントがあってね。これを是非、来月のグリフィンドール戦で身に付けてくれ」
ドラコが差し出した手のひらの上には例のバッジが三個載せられていた。以前のドラコならこういった代物をフォーラに直接押し付けることは一切しなかった。何故なら彼女がこの手の物を嫌がるということを誰よりも分かっていたからだ。しかし今、目の前の彼は彼女のそんな気持ちを無視している。最近の彼女がグリフィンドール生との接触を絶っているから、この手の他人への誹謗中傷も許容されると勘違いしたのだろうか?いや、そんな筈はない。こんなことをするなんて、彼女の気持ちを忘れたか、あえて嫌がらせしているかのどちらかしかないだろう。フォーラはそのように感じてしまった。
「キーパーのウィーズリーはとんだ間抜けだ。練習も何度か見たことがある。このバッジに書かれているのは、奴がいわば僕らスリザリンを勝利に導く主 、我らが王者という意味だ。なかなかウィットに富んだ言い回しだろう?」
何も言わずにバッジを見つめるフォーラを気遣い、パンジーとルニーが長テーブルの向こう側からドラコに声を掛けた。
「ちょっと、ドラコったらどうしちゃったの」
「フォーラがびっくりして固まってるじゃない」
ドラコはパンジーたちの忠告を無視してフォーラにバッジをずいと差し出した。彼のその瞳は彼女をしっかり捉えていたし、不敵な笑みも残ったままだった。彼女は一瞬の間があった後で一つため息を吐いた。それを受けたドラコは彼女が無表情になってバッジを見つめたままピクリとも動かないのを不審に思い、思わず急かすように声を発した。
「聞いているのか?」
そう尋ねられた途端、フォーラはドラコに差し出されていた手をパシンと払いのけた。その反動で彼の手に載っていたバッジが全てカツーンと音を立てて床に落ちた。そして彼女はパッと顔を上げて彼を真っすぐに見上げると、その手を取って大広間の外へ続く扉へと引っ張っていったのだった。
「お……おい、いきなり何するんだ!」
ドラコの言葉に応えることなく、フォーラは行き違った何人かが彼女らを目で追っているのも無視して大広間の扉を通った。
「おい、聞いて―――」ドラコが痺れを切らして再度フォーラに質問しようとした時、人気のない廊下に着いたのを合図に彼女が彼の方に振り返った。二人の視線が合うと、彼女が切り出した。
「あなたは、私の名前も忘れてしまったの?それとも、呼びたくないのかしら。」
「……名前『も』?何のことだ」ドラコは冷静に言葉を返したが、フォーラの視線から目を逸らしていた。
「ドラコは私がされたら嫌なことを、ずっと知ってくれていると思っていたのだけど。それにあんなバッジを作って、貴方は今までハリーがメインで絡んでいない事で誰かに喧嘩を仕掛けるなんて、殆どしなかった筈でしょう。」
フォーラの言葉にドラコは痛いところを突かれたのか彼女を一瞥し、すぐにまた視線を外した。
「それがどうしたっていうんだ。久々に言葉を交わしたっていうのに、つれないな。申し訳ないが、僕は別にウィーズリーに喧嘩を仕掛けてやり合おうとしているわけじゃない。僕らのチームの指揮を上げて有利に立とうとしているだけだ。それに僕は君の名前だって勿論覚えているし、何が嫌いかも分かっている」
フォーラはドラコのその言葉にピクリと反応した。
「それって……」
ドラコは再びフォーラを見た。今度の彼は視線を逸さなかったし、笑みの欠片もなかった。
「わざとやっている。そういうことだ」
「!」フォーラはドラコのアイスブルーの瞳が、自分に向けてこんなにも冷たく曇るところを見た記憶がなかった。彼女が胸の奥にズキンと痛みを帯びて言葉を発っせない中、彼が続けた。
「それにしても、君はてっきりもうグリフィンドールの奴らと仲良くするのをやめたと思っていたよ。だけど違ったみたいだ。こんな風に僕を呼び出して、そんなに奴らを擁護したいのかい」
ドラコからこんな言葉を投げられる日が来るなんて。去年の今頃ならこんな場面など露程も思い浮かばなかっただろう。フォーラは彼の酷く冷たい視線から目を背けたくて仕方がない中、なんとか勇気を振り絞ってその瞳を見つめた。
「そんなのじゃないわ。私は、ドラコ自身が今までと違うと言っているの。貴方が一年生の時からハリーを打ち負かしたいと思っているのも知っていたし、最初こそ戸惑って仲裁に入ったこともあったけれど、ドラコとハリーのいざこざは年々貴方たちだけの問題なんだと思うようになっていったわ。だけど、最近はロナルド・ウィーズリーのことや、それだけじゃなくて後輩にも今年からきつく当たっているでしょう。それに……私に対しても、そう感じるわ。以前の貴方はむやみに誰でも彼でも敵意を向けてはいなかったのに。」
ドラコはフォーラの言葉を、静かに表情を崩すことなく聞いていた。
「ねえドラコ。最近の貴方、何だか変よ。とっても心が荒れているわ。」
「……そんなことはない。僕は前から変わっていない」
ドラコは冷静に発言したが、これまでの彼を知っているフォーラからすれば強がりにしか見えなかった。
「私はそうは思わない。私たち、最近は殆ど会話らしい会話もできていないし、その原因は……私だったのかもしれない。それでも、私は貴方のことがとても心配。だって、幼馴染なんだもの。何か悩みがあって私に少しでも手助けができるなら、力になりたいと思っているわ。」
フォーラの『原因』という言葉をきっかけに、ドラコもこの時彼女と同じことを思い浮かべた。四年生の最後の夜、ドラコの告白をフォーラが断った時の情景だ。すると彼女が続けた。
「私、あの時……あの日の夜にドラコがくれた言葉、一言一句違わず覚えているの。ドラコは私に、これからも僕の幼馴染みでいてくれるかって、そう聞いてくれたわ。今までと全く同じ関係に戻れなくても、私、貴方と普通に話してもいいんだって分かって、とってもとっても嬉しかった。私たち、本当に幼い頃から色んな悩みを共有して支え合ってきたんだもの。」フォーラは一呼吸した。
「でも、貴方はそう言ってくれたのに、こんなに避けられるなんて聞いていないわ。私には貴方の悩みに手を差し伸べる権利はないの?」
「やあ、元気かい。今日は君たちにプレゼントがあってね。これを是非、来月のグリフィンドール戦で身に付けてくれ」
ドラコが差し出した手のひらの上には例のバッジが三個載せられていた。以前のドラコならこういった代物をフォーラに直接押し付けることは一切しなかった。何故なら彼女がこの手の物を嫌がるということを誰よりも分かっていたからだ。しかし今、目の前の彼は彼女のそんな気持ちを無視している。最近の彼女がグリフィンドール生との接触を絶っているから、この手の他人への誹謗中傷も許容されると勘違いしたのだろうか?いや、そんな筈はない。こんなことをするなんて、彼女の気持ちを忘れたか、あえて嫌がらせしているかのどちらかしかないだろう。フォーラはそのように感じてしまった。
「キーパーのウィーズリーはとんだ間抜けだ。練習も何度か見たことがある。このバッジに書かれているのは、奴がいわば僕らスリザリンを勝利に導く
何も言わずにバッジを見つめるフォーラを気遣い、パンジーとルニーが長テーブルの向こう側からドラコに声を掛けた。
「ちょっと、ドラコったらどうしちゃったの」
「フォーラがびっくりして固まってるじゃない」
ドラコはパンジーたちの忠告を無視してフォーラにバッジをずいと差し出した。彼のその瞳は彼女をしっかり捉えていたし、不敵な笑みも残ったままだった。彼女は一瞬の間があった後で一つため息を吐いた。それを受けたドラコは彼女が無表情になってバッジを見つめたままピクリとも動かないのを不審に思い、思わず急かすように声を発した。
「聞いているのか?」
そう尋ねられた途端、フォーラはドラコに差し出されていた手をパシンと払いのけた。その反動で彼の手に載っていたバッジが全てカツーンと音を立てて床に落ちた。そして彼女はパッと顔を上げて彼を真っすぐに見上げると、その手を取って大広間の外へ続く扉へと引っ張っていったのだった。
「お……おい、いきなり何するんだ!」
ドラコの言葉に応えることなく、フォーラは行き違った何人かが彼女らを目で追っているのも無視して大広間の扉を通った。
「おい、聞いて―――」ドラコが痺れを切らして再度フォーラに質問しようとした時、人気のない廊下に着いたのを合図に彼女が彼の方に振り返った。二人の視線が合うと、彼女が切り出した。
「あなたは、私の名前も忘れてしまったの?それとも、呼びたくないのかしら。」
「……名前『も』?何のことだ」ドラコは冷静に言葉を返したが、フォーラの視線から目を逸らしていた。
「ドラコは私がされたら嫌なことを、ずっと知ってくれていると思っていたのだけど。それにあんなバッジを作って、貴方は今までハリーがメインで絡んでいない事で誰かに喧嘩を仕掛けるなんて、殆どしなかった筈でしょう。」
フォーラの言葉にドラコは痛いところを突かれたのか彼女を一瞥し、すぐにまた視線を外した。
「それがどうしたっていうんだ。久々に言葉を交わしたっていうのに、つれないな。申し訳ないが、僕は別にウィーズリーに喧嘩を仕掛けてやり合おうとしているわけじゃない。僕らのチームの指揮を上げて有利に立とうとしているだけだ。それに僕は君の名前だって勿論覚えているし、何が嫌いかも分かっている」
フォーラはドラコのその言葉にピクリと反応した。
「それって……」
ドラコは再びフォーラを見た。今度の彼は視線を逸さなかったし、笑みの欠片もなかった。
「わざとやっている。そういうことだ」
「!」フォーラはドラコのアイスブルーの瞳が、自分に向けてこんなにも冷たく曇るところを見た記憶がなかった。彼女が胸の奥にズキンと痛みを帯びて言葉を発っせない中、彼が続けた。
「それにしても、君はてっきりもうグリフィンドールの奴らと仲良くするのをやめたと思っていたよ。だけど違ったみたいだ。こんな風に僕を呼び出して、そんなに奴らを擁護したいのかい」
ドラコからこんな言葉を投げられる日が来るなんて。去年の今頃ならこんな場面など露程も思い浮かばなかっただろう。フォーラは彼の酷く冷たい視線から目を背けたくて仕方がない中、なんとか勇気を振り絞ってその瞳を見つめた。
「そんなのじゃないわ。私は、ドラコ自身が今までと違うと言っているの。貴方が一年生の時からハリーを打ち負かしたいと思っているのも知っていたし、最初こそ戸惑って仲裁に入ったこともあったけれど、ドラコとハリーのいざこざは年々貴方たちだけの問題なんだと思うようになっていったわ。だけど、最近はロナルド・ウィーズリーのことや、それだけじゃなくて後輩にも今年からきつく当たっているでしょう。それに……私に対しても、そう感じるわ。以前の貴方はむやみに誰でも彼でも敵意を向けてはいなかったのに。」
ドラコはフォーラの言葉を、静かに表情を崩すことなく聞いていた。
「ねえドラコ。最近の貴方、何だか変よ。とっても心が荒れているわ。」
「……そんなことはない。僕は前から変わっていない」
ドラコは冷静に発言したが、これまでの彼を知っているフォーラからすれば強がりにしか見えなかった。
「私はそうは思わない。私たち、最近は殆ど会話らしい会話もできていないし、その原因は……私だったのかもしれない。それでも、私は貴方のことがとても心配。だって、幼馴染なんだもの。何か悩みがあって私に少しでも手助けができるなら、力になりたいと思っているわ。」
フォーラの『原因』という言葉をきっかけに、ドラコもこの時彼女と同じことを思い浮かべた。四年生の最後の夜、ドラコの告白をフォーラが断った時の情景だ。すると彼女が続けた。
「私、あの時……あの日の夜にドラコがくれた言葉、一言一句違わず覚えているの。ドラコは私に、これからも僕の幼馴染みでいてくれるかって、そう聞いてくれたわ。今までと全く同じ関係に戻れなくても、私、貴方と普通に話してもいいんだって分かって、とってもとっても嬉しかった。私たち、本当に幼い頃から色んな悩みを共有して支え合ってきたんだもの。」フォーラは一呼吸した。
「でも、貴方はそう言ってくれたのに、こんなに避けられるなんて聞いていないわ。私には貴方の悩みに手を差し伸べる権利はないの?」