20. The beginning of the end
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フォーラは確かにこれまで他の生徒から、純血の苗字を持つことを羨望の眼差しで見られた経験が何度かあった。その理由がフォーラにはよく分かった。
「周囲が僕らを持ち上げるのは、僕ら純血が魔法界の生きる伝統と象徴だからだ。マグルの血が混ざっていない、歴史の長い純粋な魔法使いや魔女だから。父上はその伝統を守りたいと思っているし、僕もできることならそれに倣いたい。
だが反純血主義者や、正義面をした奴ら―――例えば特にハッフルパフ生は、血を重んじるという誇りを『馬鹿げている、マグル含め人は皆等しくあるべきだ』という。
平等を説くのなら、なぜ奴らは歴史的背景のある純血主義の考えにも理解を示そうとしない?それにマグルと対等であるべきなら、なぜ魔法族はマグルの前で堂々とせず、長い間隠れた街や村を作って暮らしてきたんだ?」
「それは歴史が物語っているわよね。……随分昔に魔法の力を恐れたマグルが、数で圧倒して魔女狩りを行った。それ以来、魔法界はマグルの世界からは隔たった空間に閉じこもった。そうでしょう?」
フォーラの問いにドラコは頷くと、言葉を続けた。
「僕の両親が危惧しているのは、そんな数だけの野蛮な存在と魔法族が血を混ぜ続けることで、いつかまた同じ事態を招きかねない可能性があるということなんだ。そしてこのまま魔法界が混血や、野蛮なマグルから生まれた魔法使いや魔女ばかりになって、ただでさえ少ない純血の家系が無くなってしまうことも心配していらっしゃる。
もしそうなってしまいそうな時、人の集団というのは先導する象徴が必要なものなんだ。何より先人たちが何百年も守り続けてきた誇りや伝統―――それが例え純血以外の何かだとしても―――それが無くなってしまうのを避けたいと思うのは、誰もが持つごく自然な人間の考えだと、僕はそう思う」
フォーラは長年、他の生徒らよりは幾らか多く純血主義の考えに触れて過ごしてきた。それだからルシウスたちが守って来た誇りが彼らにどれだけ大切にされているか、彼女がマグル生まれであっても理解できた。かつてはフォーラも、自分が純血であることがドラコと自分を繋いでいるのだと喜んでいた。そのためルシウスたちの考えを、誇りを、生きる糧を、頭ごなしに否定することはできなかった。
フォーラはそのように思うのと同時に、ドラコの話を聞いてより一層、マグル生まれの自分が彼の思想とはかけ離れた存在なのだと思わずにいられなかった。自分は幾らドラコに慕われても、マグル生まれの自分を受け入れてもらえない限り、本当の意味で彼と将来を共にすることはできない。そして自分を受け入れるということは、ドラコが大切にしてきた誇りを自ら捨てなければならないということだ。
「闇の帝王が復活した今、純血の存続を望む者の未来が保証される日も遠くないだろう。父上曰く、純血の地位を確固たるものにするには闇の帝王の力が必要不可欠だそうだ。例えば闇の帝王は、人間以外の存在―――巨人族とか、今はそういう戦力を巡って反抗勢力と争っているらしい。あのお方がいなければ、そういった種族への協力を仰ぐ行動力が死喰い人にはきっとなかっただろう。闇の帝王というのは、そういった統率力を持って組織を引っ張っていける存在なんだそうだ」
「巨人……。そんなことが起こっているなんて知らなかったわ。ううん、普通は知ることもない。だけどドラコがそれを聞かされているということは……。貴方はもう、その『死喰い人』の集団に加わってしまったということなの?」
フォーラがドラコを食い入るように見つめた。彼は彼女が心から自分を心配しているのが伝わってきたが、自分の発言によって心配どころか彼女を悲しませてしまうことに心が痛んだ。
「僕はそこまで多くのことを聞かされてはいないんだ。
だけどこれだけは言える。僕も近い将来、本当に父上や闇の帝王の傘下に入ることになるだろう。何なら僕は最早、その可能性の有る無しを議論する段階はとっくに超えたと思っている」
フォーラはドラコが未だ死喰い人になっていないことに安心したのだが、それも束の間、彼のその後の発言には詰め寄らずにはいられなかった。
「どうして……?ルシウスさんは本当に、ドラコに死喰い人になって欲しいと思っているの?」
フォーラの問いにドラコは首を横に振った。
「寧ろ父上は僕が闇の帝王の下に就くことを、なるべく先延ばしにしたがっている様子だ。だけど僕としては、父上がことを達成してお喜びになる姿を見られるなら、あの人たちがやろうとしていることを手伝いたいんだ。僕は父上の背中を見て育ち、彼が悩む姿もずっと見てきたから。
―――ただ、君の視点で言うなら、僕は比較的中立な君が望まないであろう争いにいつか加わろうとしている、そういう存在だと思う」
「周囲が僕らを持ち上げるのは、僕ら純血が魔法界の生きる伝統と象徴だからだ。マグルの血が混ざっていない、歴史の長い純粋な魔法使いや魔女だから。父上はその伝統を守りたいと思っているし、僕もできることならそれに倣いたい。
だが反純血主義者や、正義面をした奴ら―――例えば特にハッフルパフ生は、血を重んじるという誇りを『馬鹿げている、マグル含め人は皆等しくあるべきだ』という。
平等を説くのなら、なぜ奴らは歴史的背景のある純血主義の考えにも理解を示そうとしない?それにマグルと対等であるべきなら、なぜ魔法族はマグルの前で堂々とせず、長い間隠れた街や村を作って暮らしてきたんだ?」
「それは歴史が物語っているわよね。……随分昔に魔法の力を恐れたマグルが、数で圧倒して魔女狩りを行った。それ以来、魔法界はマグルの世界からは隔たった空間に閉じこもった。そうでしょう?」
フォーラの問いにドラコは頷くと、言葉を続けた。
「僕の両親が危惧しているのは、そんな数だけの野蛮な存在と魔法族が血を混ぜ続けることで、いつかまた同じ事態を招きかねない可能性があるということなんだ。そしてこのまま魔法界が混血や、野蛮なマグルから生まれた魔法使いや魔女ばかりになって、ただでさえ少ない純血の家系が無くなってしまうことも心配していらっしゃる。
もしそうなってしまいそうな時、人の集団というのは先導する象徴が必要なものなんだ。何より先人たちが何百年も守り続けてきた誇りや伝統―――それが例え純血以外の何かだとしても―――それが無くなってしまうのを避けたいと思うのは、誰もが持つごく自然な人間の考えだと、僕はそう思う」
フォーラは長年、他の生徒らよりは幾らか多く純血主義の考えに触れて過ごしてきた。それだからルシウスたちが守って来た誇りが彼らにどれだけ大切にされているか、彼女がマグル生まれであっても理解できた。かつてはフォーラも、自分が純血であることがドラコと自分を繋いでいるのだと喜んでいた。そのためルシウスたちの考えを、誇りを、生きる糧を、頭ごなしに否定することはできなかった。
フォーラはそのように思うのと同時に、ドラコの話を聞いてより一層、マグル生まれの自分が彼の思想とはかけ離れた存在なのだと思わずにいられなかった。自分は幾らドラコに慕われても、マグル生まれの自分を受け入れてもらえない限り、本当の意味で彼と将来を共にすることはできない。そして自分を受け入れるということは、ドラコが大切にしてきた誇りを自ら捨てなければならないということだ。
「闇の帝王が復活した今、純血の存続を望む者の未来が保証される日も遠くないだろう。父上曰く、純血の地位を確固たるものにするには闇の帝王の力が必要不可欠だそうだ。例えば闇の帝王は、人間以外の存在―――巨人族とか、今はそういう戦力を巡って反抗勢力と争っているらしい。あのお方がいなければ、そういった種族への協力を仰ぐ行動力が死喰い人にはきっとなかっただろう。闇の帝王というのは、そういった統率力を持って組織を引っ張っていける存在なんだそうだ」
「巨人……。そんなことが起こっているなんて知らなかったわ。ううん、普通は知ることもない。だけどドラコがそれを聞かされているということは……。貴方はもう、その『死喰い人』の集団に加わってしまったということなの?」
フォーラがドラコを食い入るように見つめた。彼は彼女が心から自分を心配しているのが伝わってきたが、自分の発言によって心配どころか彼女を悲しませてしまうことに心が痛んだ。
「僕はそこまで多くのことを聞かされてはいないんだ。
だけどこれだけは言える。僕も近い将来、本当に父上や闇の帝王の傘下に入ることになるだろう。何なら僕は最早、その可能性の有る無しを議論する段階はとっくに超えたと思っている」
フォーラはドラコが未だ死喰い人になっていないことに安心したのだが、それも束の間、彼のその後の発言には詰め寄らずにはいられなかった。
「どうして……?ルシウスさんは本当に、ドラコに死喰い人になって欲しいと思っているの?」
フォーラの問いにドラコは首を横に振った。
「寧ろ父上は僕が闇の帝王の下に就くことを、なるべく先延ばしにしたがっている様子だ。だけど僕としては、父上がことを達成してお喜びになる姿を見られるなら、あの人たちがやろうとしていることを手伝いたいんだ。僕は父上の背中を見て育ち、彼が悩む姿もずっと見てきたから。
―――ただ、君の視点で言うなら、僕は比較的中立な君が望まないであろう争いにいつか加わろうとしている、そういう存在だと思う」