11. 父の手記
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十月の中旬を迎えたある日、勉強漬けの五年生に朗報が舞い込んできた。今年度初めてのホグズミード行きの日が決まったのだ。フォーラはいつもどおりパンジーやルニーと共に行こうと考えていたが、ある朝、パンジーがふくろう便で手紙を受け取った後に、嬉しそうな申し訳なさそうな様子で謝罪してきたのだった。
「ごめんなさい!今度のホグズミードは一緒に行けないわ。去年のダンスパーティーでパートナーだったダームストラング校の彼が、学校を卒業してからイギリスで働くことになったの!ロンドンの外れまで引っ越してきたから、休暇を取ってホグズミードまで会いに来てくれるんですって!」
あまりにも突然のニュースに、フォーラとルニーは思わず驚きの声を上げて大広間の長椅子から殆ど立ち上がってしまった。周囲の視線を感じると二人は恥ずかしげにソロソロと腰を下ろし、怒涛の勢いでパンジーに質問攻めした。
「その一日の為にわざわざ来てくれるなんて素敵!パンジーはもう、彼とは付き合ってるってことでいいのよね?」ルニーに続いてフォーラが尋ねた。
「彼のどんなところに惹かれたの?知りたいわ。」
「いっぺんに聞かないでよ、もう!恥ずかしいじゃない」
そう言ったパンジーは言葉に反して随分嬉しそうだった。外国人の想い人が国内に越してきて、しかも自分のために会いに来てくれるとあっては喜ばない筈がなかった。
「きっと、彼はパンジーがいるからイギリスへやってきたのかも。それってとっても凄いことだわ。」
フォーラが幸せそうにパンジーを見つめて言うと、パンジーは照れつつも慌てて首を横に振った。
「そんなまさか。やりたい仕事がこっちにあるって手紙に書いていたんだから。勿論、お互い好き同士なのは多分、間違い無いけど……。兎に角!今度のお休みは二人で楽しんできてほしいのよ。ごめんね」
「分かったわ。その代わりお土産話はたっぷり聞かせてもらうわよ!」ルニーが溌剌とした笑顔を見せた。
フォーラはここ暫く思い悩むことが多かった分、久しぶりの幸せなニュースに胸が温かくなった。フォーラとルニーはその後のパンジーが日々ソワソワと気持ちを昂らせる様子を可愛く思ったし、別の日には二人で中庭を横切りながら、数日後に迫った休暇のデートコースを予想し合ったりした。
「多分、パンジーなら『三本の箒』より『マダム・パディフッドの喫茶店』を選ぶんじゃない?こじんまりしていて話しやすいと思うし」ルニーが言った。
「そうね。カップルも多いでしょうからきっと良い雰囲気になりそう。だけど、彼にとっては少し店の内装が可愛らしすぎるのが難点かもしれないわ。」
「ああ、そうだったわ。確かに彼の方があまり好まない可能性はあるわね?まあ、私たちはランチ時には三本の箒へ行きましょうか。あそこならパンジーと出会ってもあの子がこっちを気にせず彼と話せると思うし」
「いいと思う。そうしましょう―――」
すると不意に、フォーラが完全に言い終える前に誰か男子生徒がこちらに声を掛けてきた。ルニーと二人して振り返ると、他寮の幾らか見知った男子生徒二人組がすぐ目の前までやって来ているところだった。
「やあ。ホグズミードの話をしてるのか?二人は一緒に行くんだろ?」
「あら、馬車で出会って以来かしら。ええそうなの。パンジーがデートに行くことになったから二人でね」
ルニーがそう伝えると、もう一人の男子生徒がフォーラのそばに立ち、彼女の手を取って尋ねた。
「じゃあさ、俺たちと四人で一緒に行かない?俺、前からフォーラともっと話したいと思ってたんだ」
「え?わ、わたし?」フォーラが突然のことに戸惑っていると、最初に声を掛けてきた方の男子生徒もルニーに詰め寄った。
「俺だってルニーに興味津々だとも。な、いいだろ?」そう言って彼はルニーの肩に手を載せたが、彼女は反射的にその手を軽く払い除けてフォーラを自分の方へ引き寄せた。
「ちょっと!気安く触らないで。それにフォーラを困らせないでよ。そういう強引な人と私たちは出かけません。それじゃあね」
そうして彼女たちがその場を離れようとした時、男子生徒の一人が杖を振ってルニーを『呼び寄せ』して受け止めた。
「つれないな?俺たちがそんなに悪い男じゃないって知ってるだろ?お願いだよ」
「この!しつこい男は嫌―――」
ルニーがその場から逃げようとポケットの杖に手を伸ばそうとしたが、男子生徒はその手を掴んで彼女をグイと振り向かせた。その時突然、誰かがルニーと男子生徒の間に割って押し入ってきた。男子生徒が驚いてルニーから離れると、その人は彼女を庇うように杖を構えていた。それはルニーとほぼ同じくらいの背丈をした、顔なじみのない可愛らしい顔立ちの男子生徒だった。
「この人に触るな!」
そう言って彼は呪文を唱えたが、杖が震えて術が上手くいかなかった。しかし彼のおかげで出来た一瞬の隙にフォーラは杖を取り出し、二人の男子生徒の足元の芝生を蔦 に変化させて彼らに絡みつかせた。ルニーとフォーラはその場から走り去ろうとしたが、助けに入った男子が目の前の蔦に驚いてその場に固まってしまっていた。
「何してるの、こっち!」ルニーが急いで彼の手を掴むと、三人はその場から逃げ出したのだった。
「はあ、はあ、ここまで来れば大丈夫。フォーラ、さっきはありがとう。それから貴方も大丈夫だった?」
ルニーの隣で息を切らしていた彼が、その一声を受けてパッと顔を上げた。彼の顔色は途端に胸元の青いネクタイと正反対の赤に染まった。
「は、はい。僕は何とも。その……マッケンジーさんは大丈夫でしたか?」
ルニーは彼が自分の名を知っていたことに少々驚きつつも、微笑んで頷くとお礼を言った。
「ええ勿論!貴方が助けに入ってくれて助かったわ。ありがとう」
「!い、いえ。僕は何もできなくて……。あ!僕、スチュワート・アッカリーと言います。レイブンクローの三年生です」
「スチュワートね、よろしく。でも、どうして助けてくれたの?私たちって初めましてよね」
ルニーは純粋に疑問に思ってスチュワートをじっと見ていたのだが、一方の彼は彼女の視線が自分にだけ向けられている状況に心底落ち着かない様子だった。
「ごめんなさい!今度のホグズミードは一緒に行けないわ。去年のダンスパーティーでパートナーだったダームストラング校の彼が、学校を卒業してからイギリスで働くことになったの!ロンドンの外れまで引っ越してきたから、休暇を取ってホグズミードまで会いに来てくれるんですって!」
あまりにも突然のニュースに、フォーラとルニーは思わず驚きの声を上げて大広間の長椅子から殆ど立ち上がってしまった。周囲の視線を感じると二人は恥ずかしげにソロソロと腰を下ろし、怒涛の勢いでパンジーに質問攻めした。
「その一日の為にわざわざ来てくれるなんて素敵!パンジーはもう、彼とは付き合ってるってことでいいのよね?」ルニーに続いてフォーラが尋ねた。
「彼のどんなところに惹かれたの?知りたいわ。」
「いっぺんに聞かないでよ、もう!恥ずかしいじゃない」
そう言ったパンジーは言葉に反して随分嬉しそうだった。外国人の想い人が国内に越してきて、しかも自分のために会いに来てくれるとあっては喜ばない筈がなかった。
「きっと、彼はパンジーがいるからイギリスへやってきたのかも。それってとっても凄いことだわ。」
フォーラが幸せそうにパンジーを見つめて言うと、パンジーは照れつつも慌てて首を横に振った。
「そんなまさか。やりたい仕事がこっちにあるって手紙に書いていたんだから。勿論、お互い好き同士なのは多分、間違い無いけど……。兎に角!今度のお休みは二人で楽しんできてほしいのよ。ごめんね」
「分かったわ。その代わりお土産話はたっぷり聞かせてもらうわよ!」ルニーが溌剌とした笑顔を見せた。
フォーラはここ暫く思い悩むことが多かった分、久しぶりの幸せなニュースに胸が温かくなった。フォーラとルニーはその後のパンジーが日々ソワソワと気持ちを昂らせる様子を可愛く思ったし、別の日には二人で中庭を横切りながら、数日後に迫った休暇のデートコースを予想し合ったりした。
「多分、パンジーなら『三本の箒』より『マダム・パディフッドの喫茶店』を選ぶんじゃない?こじんまりしていて話しやすいと思うし」ルニーが言った。
「そうね。カップルも多いでしょうからきっと良い雰囲気になりそう。だけど、彼にとっては少し店の内装が可愛らしすぎるのが難点かもしれないわ。」
「ああ、そうだったわ。確かに彼の方があまり好まない可能性はあるわね?まあ、私たちはランチ時には三本の箒へ行きましょうか。あそこならパンジーと出会ってもあの子がこっちを気にせず彼と話せると思うし」
「いいと思う。そうしましょう―――」
すると不意に、フォーラが完全に言い終える前に誰か男子生徒がこちらに声を掛けてきた。ルニーと二人して振り返ると、他寮の幾らか見知った男子生徒二人組がすぐ目の前までやって来ているところだった。
「やあ。ホグズミードの話をしてるのか?二人は一緒に行くんだろ?」
「あら、馬車で出会って以来かしら。ええそうなの。パンジーがデートに行くことになったから二人でね」
ルニーがそう伝えると、もう一人の男子生徒がフォーラのそばに立ち、彼女の手を取って尋ねた。
「じゃあさ、俺たちと四人で一緒に行かない?俺、前からフォーラともっと話したいと思ってたんだ」
「え?わ、わたし?」フォーラが突然のことに戸惑っていると、最初に声を掛けてきた方の男子生徒もルニーに詰め寄った。
「俺だってルニーに興味津々だとも。な、いいだろ?」そう言って彼はルニーの肩に手を載せたが、彼女は反射的にその手を軽く払い除けてフォーラを自分の方へ引き寄せた。
「ちょっと!気安く触らないで。それにフォーラを困らせないでよ。そういう強引な人と私たちは出かけません。それじゃあね」
そうして彼女たちがその場を離れようとした時、男子生徒の一人が杖を振ってルニーを『呼び寄せ』して受け止めた。
「つれないな?俺たちがそんなに悪い男じゃないって知ってるだろ?お願いだよ」
「この!しつこい男は嫌―――」
ルニーがその場から逃げようとポケットの杖に手を伸ばそうとしたが、男子生徒はその手を掴んで彼女をグイと振り向かせた。その時突然、誰かがルニーと男子生徒の間に割って押し入ってきた。男子生徒が驚いてルニーから離れると、その人は彼女を庇うように杖を構えていた。それはルニーとほぼ同じくらいの背丈をした、顔なじみのない可愛らしい顔立ちの男子生徒だった。
「この人に触るな!」
そう言って彼は呪文を唱えたが、杖が震えて術が上手くいかなかった。しかし彼のおかげで出来た一瞬の隙にフォーラは杖を取り出し、二人の男子生徒の足元の芝生を
「何してるの、こっち!」ルニーが急いで彼の手を掴むと、三人はその場から逃げ出したのだった。
「はあ、はあ、ここまで来れば大丈夫。フォーラ、さっきはありがとう。それから貴方も大丈夫だった?」
ルニーの隣で息を切らしていた彼が、その一声を受けてパッと顔を上げた。彼の顔色は途端に胸元の青いネクタイと正反対の赤に染まった。
「は、はい。僕は何とも。その……マッケンジーさんは大丈夫でしたか?」
ルニーは彼が自分の名を知っていたことに少々驚きつつも、微笑んで頷くとお礼を言った。
「ええ勿論!貴方が助けに入ってくれて助かったわ。ありがとう」
「!い、いえ。僕は何もできなくて……。あ!僕、スチュワート・アッカリーと言います。レイブンクローの三年生です」
「スチュワートね、よろしく。でも、どうして助けてくれたの?私たちって初めましてよね」
ルニーは純粋に疑問に思ってスチュワートをじっと見ていたのだが、一方の彼は彼女の視線が自分にだけ向けられている状況に心底落ち着かない様子だった。