10. 二つの顔
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それから数日が経ったある日、フォーラはいつもの友人二人と共にスリザリンの談話室にいた。彼女たちは久しぶりに勉強から離れる時間を作ろうとソファに座ってお茶を囲み、リラックスしているところだった。すると離れた所にいたクィディッチのチームメンバーが、グリフィンドールの新しいキーパーについて話している声が聞こえてきた。
「あのヒョロヒョロのロナルド・ウィーズリーにキーパーが務まると思うか?」
「そんな筈ないさ。特にこれまで箒に乗るのが上手かったなんて噂も聞いたことがない。もう少しマシな奴はいなかったのかね」
するとチームメンバーのうちの一人であるドラコが嬉々として切り出した。
「昨日、僕らはグリフィンドールの練習を見てきたんだが、あんな散々なキーパーは初めて見たよ。きっと彼らの試合相手はゴールに得点を入れ放題さ。それに加えてチームの足並みだって全く揃っていなかった。木偶 の棒の方がまだ良い仕事をするんじゃないか」
仕上げにドラコは、同じくチームメンバーのクラッブやゴイルと顔を見合わせて高笑いした。彼はいつもグリフィンドールを忌み嫌っているが、今はフォーラが見る限り、明らかにこれまで以上に彼の放つ言葉や纏っている雰囲気の毒気が強くなっているようだった。
それらの声から意識を離すように、不意にパンジーがルニーに話題を振った。
「ねえそういえば、そろそろスリザリンもクィディッチの選手選抜があるらしいけど。ルニーはテストを受けるわよね?去年は選手になりたいって言っていたでしょう」
するとその問いを受けたルニーは視線をチラとチームメンバーの溜まり場の方へ向け、すぐにこちらに戻した。その表情が幾らか険しさを感じさせたため、フォーラもパンジーも首を傾げた。
「私、今のドラコがいるチームの雰囲気はあんまり好きじゃないから、今年は受けなくていいやって思ってるの」
「えっ?でも、ルニーは飛ぶのが上手なのに、勿体ないんじゃ……?」
フォーラが質問すると、ルニーは頬杖を突きながらため息混じりの笑みを向けた。
「どんな事情があれ、私の友達に冷たい態度を取る人がいるチームには残念だけど入りたいとは思えないわ。きっと私がイライラしちゃうから」
「あ……。」フォーラはその回答から、如何にルニーが自分を想ってくれているかを自覚して申し訳なさと有難さを同時に感じた。するとそれを悟ったルニーが言葉を付け足した。
「それにそもそも、最近のドラコったら新学期が始まってからずっと悪目立ちしてるじゃない?私としてはそこが一番嫌なのよね。勿論、前から口は良い方じゃなかったと思うわよ。でも何ていうか前はもうちょっと紳士的だった気がするのよね。でも今は品がないっていうか、何処でも馬鹿騒ぎしてる感じがするわ。そう思うでしょ?」
フォーラはドラコを一度チラと見た後で小さく頷いた。
「ええ……確かにそうかもしれない。ドラコは元々好き嫌いをハッキリ言うタイプだけど、最近は少し……その、別人みたいに思う時があるわ。」
ルニーとしては、フォーラが普段から色々と心の内側に溜め込みがちな分、自ら不安を漏らしてくれたことを随分珍しく思ったし、すっかり彼女を愛でたい気持ちで一杯になっていた。
「フォーラ、あまり悩みすぎちゃ駄目よ。以前のような彼じゃなくなったことを嫌に思うなら、その心の声は素直に大事にしなきゃ。それに一度好きになったらずっと好きでいなきゃいけない、なんてことも無いわけだし。いっそのこと、これを機に他の人にも目を向けてみてもいいのかもね」
「えっ」フォーラはまさかそんなことを提案されるとは思わず、小さく驚きの声を漏らした。すると今度はパンジーがルニーに加勢した。
「そういえばジョージ・ウィーズリーとは何か進展はないの?グリフィンドールっていうのが癪 だけど、ダンスパーティーは一緒に参加したわけだし。それに最近は他にも周りに良さそうな人が一杯いるじゃない?」
「ええと、良さそうな人って……。それに、そもそもジョージとは特に何もないわ。最近は彼と話す機会もすっかり減ったし……あら?」
その時、フォーラは身体を預けているソファの背もたれが幾らか沈んだことで、背中側に違和感を覚えた。後ろを振り返ってみると、たまに言葉を交わす仲の六年生の男子生徒が、組んだ両腕を背もたれに載せて体重を預け、こちらに「やあ」と微笑みかけていた。どうやら彼は女性陣の話を聞きつけやって来たようで、そのまま会話に加わった。
「お三方、その『良さそうな人』に僕も含まれてるかな?フォーラはどう思う?」
「えっ!?ええと、どうかしら……?」
そんな風に女性陣が比較的楽しそうに会話する様子をドラコは遠目に視認していた。彼はやたらとフォーラに近い先輩しかり、先程ルニーの声と共に一瞬聞こえた『ウィーズリー』の名前しかり、そのどちらにも反応してしまっていた。
「マルフォイ、急に黙ってどうした?」クィディッチのチームメイトが尋ねた。
「いいや……なんでもない。それで、何の話だったかな」
さて、それから幾日かが経った防衛術の授業では、スリザリンの五年生がこれまで同様に授業の後半で生徒同士による実技練習を行った。加えて今日はアンブリッジの指示により、現在練習中の呪文を既に使いこなしている数名の生徒が見回り指導を任されていた。ところでその指導役のメンバーを含め、生徒たちはこれまでの授業で行った実技練習の記憶を一切持ち合わせていなかった。ところが前回習った術を『いつの間にか』使いこなせている自覚はあり、それに対する疑問は特段抱かずにいた。
しかしその中でドラコだけは少し違っていた。周囲の生徒と彼にどういった差があるのか、その真相を知っているのは彼本人とアンブリッジの二人のみだった。
指導役に選ばれたドラコは同級生たちが杖を振って互いに練習し合う様子を眺めながらゆっくりと歩いた。その際に彼は自然とフォーラの方へ視線を向けたのだが、彼女はドラコが予想したとおり、苦手な防衛術に悪戦苦闘しているところだった。
「フォーラ、もう一度やってみて」
パンジーの落ち着かせるような声掛けにより、彼女と対峙しているフォーラは何とか意識を集中させつつ、構えていた杖を言われるがまま振りかぶってみた。するとその瞬間、彼女の手を誰かがパッと掴んで停止させたではないか。彼女が驚いて振り返ってみると、そこには予想外の光景があった。
「あ……ドラコ!」
「相変わらず防衛術が下手だな。パーキンソンはマッケンジーと組んでくれ。フォーラは僕が教える」
パンジーだけでなくその近くで二人の練習の順番待ちをしていたルニーも、突然の事態にすぐには状況が呑み込めなかった。何せドラコの方からフォーラに話し掛けたのは新学期が始まって以来、初めての事だったからだ。ドラコはそんな彼女たちの驚愕の視線をひしひしと受け、これ以上そんな目でこっちを見るなと言いたいのをグッと堪えた。そしてそのままフォーラの手を引くと、少し離れた空きスペースに移動して向き合った。
「あのヒョロヒョロのロナルド・ウィーズリーにキーパーが務まると思うか?」
「そんな筈ないさ。特にこれまで箒に乗るのが上手かったなんて噂も聞いたことがない。もう少しマシな奴はいなかったのかね」
するとチームメンバーのうちの一人であるドラコが嬉々として切り出した。
「昨日、僕らはグリフィンドールの練習を見てきたんだが、あんな散々なキーパーは初めて見たよ。きっと彼らの試合相手はゴールに得点を入れ放題さ。それに加えてチームの足並みだって全く揃っていなかった。
仕上げにドラコは、同じくチームメンバーのクラッブやゴイルと顔を見合わせて高笑いした。彼はいつもグリフィンドールを忌み嫌っているが、今はフォーラが見る限り、明らかにこれまで以上に彼の放つ言葉や纏っている雰囲気の毒気が強くなっているようだった。
それらの声から意識を離すように、不意にパンジーがルニーに話題を振った。
「ねえそういえば、そろそろスリザリンもクィディッチの選手選抜があるらしいけど。ルニーはテストを受けるわよね?去年は選手になりたいって言っていたでしょう」
するとその問いを受けたルニーは視線をチラとチームメンバーの溜まり場の方へ向け、すぐにこちらに戻した。その表情が幾らか険しさを感じさせたため、フォーラもパンジーも首を傾げた。
「私、今のドラコがいるチームの雰囲気はあんまり好きじゃないから、今年は受けなくていいやって思ってるの」
「えっ?でも、ルニーは飛ぶのが上手なのに、勿体ないんじゃ……?」
フォーラが質問すると、ルニーは頬杖を突きながらため息混じりの笑みを向けた。
「どんな事情があれ、私の友達に冷たい態度を取る人がいるチームには残念だけど入りたいとは思えないわ。きっと私がイライラしちゃうから」
「あ……。」フォーラはその回答から、如何にルニーが自分を想ってくれているかを自覚して申し訳なさと有難さを同時に感じた。するとそれを悟ったルニーが言葉を付け足した。
「それにそもそも、最近のドラコったら新学期が始まってからずっと悪目立ちしてるじゃない?私としてはそこが一番嫌なのよね。勿論、前から口は良い方じゃなかったと思うわよ。でも何ていうか前はもうちょっと紳士的だった気がするのよね。でも今は品がないっていうか、何処でも馬鹿騒ぎしてる感じがするわ。そう思うでしょ?」
フォーラはドラコを一度チラと見た後で小さく頷いた。
「ええ……確かにそうかもしれない。ドラコは元々好き嫌いをハッキリ言うタイプだけど、最近は少し……その、別人みたいに思う時があるわ。」
ルニーとしては、フォーラが普段から色々と心の内側に溜め込みがちな分、自ら不安を漏らしてくれたことを随分珍しく思ったし、すっかり彼女を愛でたい気持ちで一杯になっていた。
「フォーラ、あまり悩みすぎちゃ駄目よ。以前のような彼じゃなくなったことを嫌に思うなら、その心の声は素直に大事にしなきゃ。それに一度好きになったらずっと好きでいなきゃいけない、なんてことも無いわけだし。いっそのこと、これを機に他の人にも目を向けてみてもいいのかもね」
「えっ」フォーラはまさかそんなことを提案されるとは思わず、小さく驚きの声を漏らした。すると今度はパンジーがルニーに加勢した。
「そういえばジョージ・ウィーズリーとは何か進展はないの?グリフィンドールっていうのが
「ええと、良さそうな人って……。それに、そもそもジョージとは特に何もないわ。最近は彼と話す機会もすっかり減ったし……あら?」
その時、フォーラは身体を預けているソファの背もたれが幾らか沈んだことで、背中側に違和感を覚えた。後ろを振り返ってみると、たまに言葉を交わす仲の六年生の男子生徒が、組んだ両腕を背もたれに載せて体重を預け、こちらに「やあ」と微笑みかけていた。どうやら彼は女性陣の話を聞きつけやって来たようで、そのまま会話に加わった。
「お三方、その『良さそうな人』に僕も含まれてるかな?フォーラはどう思う?」
「えっ!?ええと、どうかしら……?」
そんな風に女性陣が比較的楽しそうに会話する様子をドラコは遠目に視認していた。彼はやたらとフォーラに近い先輩しかり、先程ルニーの声と共に一瞬聞こえた『ウィーズリー』の名前しかり、そのどちらにも反応してしまっていた。
「マルフォイ、急に黙ってどうした?」クィディッチのチームメイトが尋ねた。
「いいや……なんでもない。それで、何の話だったかな」
さて、それから幾日かが経った防衛術の授業では、スリザリンの五年生がこれまで同様に授業の後半で生徒同士による実技練習を行った。加えて今日はアンブリッジの指示により、現在練習中の呪文を既に使いこなしている数名の生徒が見回り指導を任されていた。ところでその指導役のメンバーを含め、生徒たちはこれまでの授業で行った実技練習の記憶を一切持ち合わせていなかった。ところが前回習った術を『いつの間にか』使いこなせている自覚はあり、それに対する疑問は特段抱かずにいた。
しかしその中でドラコだけは少し違っていた。周囲の生徒と彼にどういった差があるのか、その真相を知っているのは彼本人とアンブリッジの二人のみだった。
指導役に選ばれたドラコは同級生たちが杖を振って互いに練習し合う様子を眺めながらゆっくりと歩いた。その際に彼は自然とフォーラの方へ視線を向けたのだが、彼女はドラコが予想したとおり、苦手な防衛術に悪戦苦闘しているところだった。
「フォーラ、もう一度やってみて」
パンジーの落ち着かせるような声掛けにより、彼女と対峙しているフォーラは何とか意識を集中させつつ、構えていた杖を言われるがまま振りかぶってみた。するとその瞬間、彼女の手を誰かがパッと掴んで停止させたではないか。彼女が驚いて振り返ってみると、そこには予想外の光景があった。
「あ……ドラコ!」
「相変わらず防衛術が下手だな。パーキンソンはマッケンジーと組んでくれ。フォーラは僕が教える」
パンジーだけでなくその近くで二人の練習の順番待ちをしていたルニーも、突然の事態にすぐには状況が呑み込めなかった。何せドラコの方からフォーラに話し掛けたのは新学期が始まって以来、初めての事だったからだ。ドラコはそんな彼女たちの驚愕の視線をひしひしと受け、これ以上そんな目でこっちを見るなと言いたいのをグッと堪えた。そしてそのままフォーラの手を引くと、少し離れた空きスペースに移動して向き合った。