9. 曖昧な記憶
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ハーマイオニーと話した次の日から、フォーラの根気強い闘いが始まった。まず、朝は談話室でドラコを見かけたら自ら必ず笑顔で挨拶をした。これには初めこそドラコに驚かれたものの、彼は普通に挨拶を返してくれた。但し、彼のその表情には今までのような微笑みは付いてこなかった。フォーラとしては、最悪の場合ドラコが何の返答もしてくれないのではと思っていたため、一先ずそれで御の字とした。
あとそれから、ドラコがクィディッチの練習に出かける際も、フォーラは近くで彼を見かけたら必ず声をかけた。とはいえ彼女の応援の声に彼は「ああ」と短い返事をするだけだった。因みに談話室以外の玄関ホールや校庭でそのようなやり取りをした際は、ドラコが競技場に向かう後ろ姿をレイブンクローのガールフレンドが追いかける様子が何度か確認できた。それをフォーラは毎回見えないふりをしてやり過ごした。
パンジーとルニーは、フォーラとドラコが(フォーラが声をかけた時だけ)挨拶を交わす関係になったため、一先ず目をつむることにしたようだった。というのも今学年は新学期早々、四年生の時とは比べ物にならない程に、談話室でお喋りを楽しんだり何かに首を突っ込んだりする時間がなかったのだ。
その理由として、ある日の時間割はビンズの受け持つ魔法史に始まり、次にスネイプの魔法薬学が二時限続いた。加えてその後マグゴナガルの変身術も二時限連続で、最後にアンブリッジの闇の魔術に対する防衛術といった濃い内容だった。しかも五学年の生徒は授業に出席する度に大量の宿題を課され、新学期の初日から今年度の大変さを感じ始めていたのだった。
「それにしても」新学期から数週間経ったある日、パンジーが談話室で魔法薬学のレポートを終え、闇の魔術に対する防衛術の宿題を広げながら言った。
「アンブリッジって、どうして頑なに授業で教科書を読ませることしかしないのかしらね?今までの先生は―――まあ大体が変人ばかりだったけど、杖を使わせてくれたわ」
パンジーの発言は、防衛術の授業をもう既に数回受講した上での感想だった。するとルニーが続いた。
「あのオバさん、みんなからチラホラ実技練習をしないのか質問されても一切その気はなさそうだったし。それに『闇の魔術が襲いかかることはない』って言ってたけど、正直頭がお花畑なのかと思っちゃった。襲いかかるとかかからないとかそういう話じゃなくて、何よりも問題なのは、学年末の実技試験を練習もなしにいきなり私たちにさせるつもりっていうところよ。今年用意した指定図書の内容だって、術を使うことについては殆ど書いてないでしょ。実技がパーだと私たちの将来に響くことをあの人は分かってるのかしら?」
五年生が学年末に控える試験の成績は、将来の就職先選びと密接な関係にある。職種によっては六・七年生での受講必須科目が指定されており、五年生のふくろう試験の成績が芳しくない場合、六年生以降に受講できなくなる科目もある。つまり、今年度の試験は彼女たちの将来の幅を決める相当大事なものなのだ。それに、学期の後半には卒業後の進路に関して、寮監であるスネイプとの面談も控えていた。
「私も、実技は絶対に身につけておくべきだと思うわ。」フォーラが続いた。「ルニーの言うことも勿論だし、社会に出てから『実は何もできません』だなんてことになるのを想像したくないもの……。どうにか教えてもらうことはできないかしら……。」
するとルニーが自身の顎に手を当てながら、視線を少し離れた場所に向けた。そこには肘掛け椅子に座っているプラチナブロンドヘアの見慣れた男子生徒がいた。
「あの女の目的がはっきりしないし、なんとも言えないわね。ただ、何となくドラコの頼みなら聞いてくれそうだと思わない?彼女は元魔法省の役人だし、ドラコの父親もその辺りに精通してるでしょ」
たった今ルニーは『アンブリッジの目的が分からない』と言ったが、ブラック邸でこの夏を過ごしたフォーラには、ハーマイオニーからの受け売りもあって目的の予想がついた。そもそも魔法省がホグワーツにアンブリッジを送り込んだのは、ダンブルドアや彼に味方する生徒を監視するためだろう。そしてその生徒たちに防衛術を使わせずにいれば、それだけでダンブルドア側の力を停滞させられると踏んでいるのだ。
アンブリッジの上司に当たる魔法省大臣のファッジは、ダンブルドアに大臣の座を狙われる幻想に取り憑かれていた。ヴォルデモートの復活もその為のデマだと彼が考えている間は、アンブリッジもこの教育方針を曲げないだろうとフォーラは思った。
「私、ドラコに頼んでみようかな」ルニーが先程の続きを言って席を立つと、向こうに座っている彼の隣に腰掛けた。そして暫くの交渉の後、彼女はやれやれといった様子でこちらへ戻ってきた。
「駄目ね。ドラコは興味ないみたい。彼ったら防衛術が得意だからそんなこと言うのよ」
三人は互いに目を見交わせると、小さくため息をついて自身の課題に取り掛かったのだった。
(普段ならドラコも不満を言いそうなものなのに。授業中の彼は何の質問も抗議もアンブリッジ先生に投げかけなかった。彼はアンブリッジ先生の考えを……いえ、魔法省の考えや目論見を何か知っているから、何も声を上げなかったのかしら?)
それから二日後、フォーラは教科書を黙読するだけの『闇の魔術に対する防衛術』の授業を終えた。そして友人たちに「先に次の授業に行っておいて」とお願いすると、教室に殆ど誰もいなくなったタイミングで教壇の方へと歩み寄った。
「あの……アンブリッジ先生?」
魔法で板書や教壇を片付けていたアンブリッジはその声に気付くと、ニッコリと笑顔を作って振り返った。
「あらあなたは……ファントムさんね?どうしたの?授業で何か分からないところでもあったの?」
フォーラはその甘ったるい声色にまだ慣れていないせいで変に緊張したが、学年末に控える実技試験に不安を感じていることを、勇気を出してアンブリッジに伝えた。
「―――なので勿論、先生の方針が間違っているとは思いません。私の問題なんです。防衛術が本当に不得意で……。ですからどうか、先生から術の使い方を教えていただけないでしょうか?」
あとそれから、ドラコがクィディッチの練習に出かける際も、フォーラは近くで彼を見かけたら必ず声をかけた。とはいえ彼女の応援の声に彼は「ああ」と短い返事をするだけだった。因みに談話室以外の玄関ホールや校庭でそのようなやり取りをした際は、ドラコが競技場に向かう後ろ姿をレイブンクローのガールフレンドが追いかける様子が何度か確認できた。それをフォーラは毎回見えないふりをしてやり過ごした。
パンジーとルニーは、フォーラとドラコが(フォーラが声をかけた時だけ)挨拶を交わす関係になったため、一先ず目をつむることにしたようだった。というのも今学年は新学期早々、四年生の時とは比べ物にならない程に、談話室でお喋りを楽しんだり何かに首を突っ込んだりする時間がなかったのだ。
その理由として、ある日の時間割はビンズの受け持つ魔法史に始まり、次にスネイプの魔法薬学が二時限続いた。加えてその後マグゴナガルの変身術も二時限連続で、最後にアンブリッジの闇の魔術に対する防衛術といった濃い内容だった。しかも五学年の生徒は授業に出席する度に大量の宿題を課され、新学期の初日から今年度の大変さを感じ始めていたのだった。
「それにしても」新学期から数週間経ったある日、パンジーが談話室で魔法薬学のレポートを終え、闇の魔術に対する防衛術の宿題を広げながら言った。
「アンブリッジって、どうして頑なに授業で教科書を読ませることしかしないのかしらね?今までの先生は―――まあ大体が変人ばかりだったけど、杖を使わせてくれたわ」
パンジーの発言は、防衛術の授業をもう既に数回受講した上での感想だった。するとルニーが続いた。
「あのオバさん、みんなからチラホラ実技練習をしないのか質問されても一切その気はなさそうだったし。それに『闇の魔術が襲いかかることはない』って言ってたけど、正直頭がお花畑なのかと思っちゃった。襲いかかるとかかからないとかそういう話じゃなくて、何よりも問題なのは、学年末の実技試験を練習もなしにいきなり私たちにさせるつもりっていうところよ。今年用意した指定図書の内容だって、術を使うことについては殆ど書いてないでしょ。実技がパーだと私たちの将来に響くことをあの人は分かってるのかしら?」
五年生が学年末に控える試験の成績は、将来の就職先選びと密接な関係にある。職種によっては六・七年生での受講必須科目が指定されており、五年生のふくろう試験の成績が芳しくない場合、六年生以降に受講できなくなる科目もある。つまり、今年度の試験は彼女たちの将来の幅を決める相当大事なものなのだ。それに、学期の後半には卒業後の進路に関して、寮監であるスネイプとの面談も控えていた。
「私も、実技は絶対に身につけておくべきだと思うわ。」フォーラが続いた。「ルニーの言うことも勿論だし、社会に出てから『実は何もできません』だなんてことになるのを想像したくないもの……。どうにか教えてもらうことはできないかしら……。」
するとルニーが自身の顎に手を当てながら、視線を少し離れた場所に向けた。そこには肘掛け椅子に座っているプラチナブロンドヘアの見慣れた男子生徒がいた。
「あの女の目的がはっきりしないし、なんとも言えないわね。ただ、何となくドラコの頼みなら聞いてくれそうだと思わない?彼女は元魔法省の役人だし、ドラコの父親もその辺りに精通してるでしょ」
たった今ルニーは『アンブリッジの目的が分からない』と言ったが、ブラック邸でこの夏を過ごしたフォーラには、ハーマイオニーからの受け売りもあって目的の予想がついた。そもそも魔法省がホグワーツにアンブリッジを送り込んだのは、ダンブルドアや彼に味方する生徒を監視するためだろう。そしてその生徒たちに防衛術を使わせずにいれば、それだけでダンブルドア側の力を停滞させられると踏んでいるのだ。
アンブリッジの上司に当たる魔法省大臣のファッジは、ダンブルドアに大臣の座を狙われる幻想に取り憑かれていた。ヴォルデモートの復活もその為のデマだと彼が考えている間は、アンブリッジもこの教育方針を曲げないだろうとフォーラは思った。
「私、ドラコに頼んでみようかな」ルニーが先程の続きを言って席を立つと、向こうに座っている彼の隣に腰掛けた。そして暫くの交渉の後、彼女はやれやれといった様子でこちらへ戻ってきた。
「駄目ね。ドラコは興味ないみたい。彼ったら防衛術が得意だからそんなこと言うのよ」
三人は互いに目を見交わせると、小さくため息をついて自身の課題に取り掛かったのだった。
(普段ならドラコも不満を言いそうなものなのに。授業中の彼は何の質問も抗議もアンブリッジ先生に投げかけなかった。彼はアンブリッジ先生の考えを……いえ、魔法省の考えや目論見を何か知っているから、何も声を上げなかったのかしら?)
それから二日後、フォーラは教科書を黙読するだけの『闇の魔術に対する防衛術』の授業を終えた。そして友人たちに「先に次の授業に行っておいて」とお願いすると、教室に殆ど誰もいなくなったタイミングで教壇の方へと歩み寄った。
「あの……アンブリッジ先生?」
魔法で板書や教壇を片付けていたアンブリッジはその声に気付くと、ニッコリと笑顔を作って振り返った。
「あらあなたは……ファントムさんね?どうしたの?授業で何か分からないところでもあったの?」
フォーラはその甘ったるい声色にまだ慣れていないせいで変に緊張したが、学年末に控える実技試験に不安を感じていることを、勇気を出してアンブリッジに伝えた。
「―――なので勿論、先生の方針が間違っているとは思いません。私の問題なんです。防衛術が本当に不得意で……。ですからどうか、先生から術の使い方を教えていただけないでしょうか?」