9. 曖昧な記憶
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生徒たちがホグワーツに戻ってきた日の翌朝、スリザリンの女子寮で疲れた表情をしたフォーラは、友人たちと朝の挨拶を交わした。彼女の疲労の原因は、昨晩聞いてしまったあまりにもショックな出来事によって中々寝付けなかったことにあった。まさか就寝前に通りがかった廊下で、ドラコが誰かに告白されるところに出くわすなんて思いもしなかったのだ。
『僕でよければ』
フォーラの脳内であの時のドラコの女生徒に対する返答が思い出され、胸がゆっくりと締め付けられた。前学年の終わりにドラコは自分に告白してくれたのに。昨夜中、彼女はベッドの中で何度かその身勝手な想いが頭の中をよぎっては掻き消すのを繰り返した。
フォーラはパンジーやルニーに昨夜見聞きした出来事を話そうか迷っていたが、それも朝食時の大広間に着けば必要のないことだった。
「ドラコ、おはよう!」
彼女たちがスリザリンの寮テーブルに近付いた時、既に席に着いていたドラコに近寄り挨拶するレイブンクローの女生徒の姿が目に入った。フォーラはその彼女の声に間違いなく聞き覚えがあった。パンジーとルニーの方を見てみると、ドラコの至近距離でニコニコと笑っているその女生徒が昨日のホグワーツ特急で噂した対象だっただけに、二人とも彼女に向かって訝しげな視線を向けていた。
「おい、あんまり近付くな……」
ドラコがそう言って視線を周囲に走らせると、フォーラたちとバッチリ目が合ってしまった。彼は一瞬ばつが悪そうな顔をした後ですぐに視線を外し、目の前の女生徒に挨拶を返した。レイブンクローの彼女は嬉しそうにドラコに微笑んだ後、少しだけ言葉を交わすと「じゃあね」と彼に手を振って踵を返した。その際、彼女は先程ドラコが視線をやった方に目を向け、そこにフォーラが立っているのを視界に捉えた。
その時フォーラは、視線の先にいる彼女がこちらに向かってまるで勝ち誇ったような表情を向けるのを見た。フォーラのそばにいた友人二人は、その女生徒がご機嫌にレイブンクローのテーブルに戻って寮生と話し始めるまで、一切目を離さなかった。
「「何あの子!」」
パンジーとルニーが互いに目を合わせて同時に言った。二人はプリプリ怒りながら、ドラコから幾らか離れた席に着き、フォーラはそれを見て少々戸惑いつつも後に続いて長椅子に腰掛けた。するとドラコの近くに座っているスリザリン生が、先程の女生徒とドラコの間に何かあったのかということをドラコ本人に質問した。
「付き合ってるって!?」
フォーラたちのところまで男子生徒の声が聞こえてきた。それによって女子三人の視線が自然に交わったのだが、フォーラは二人に力なく笑い、何事もなかったかのようにスクランブルエッグを取り分けた。そんな彼女の代わりに思わずパンジーが声を荒げた。
「ああもうドラコったら!」
この日の朝の出来事をきっかけに、数日後にはドラコがフォーラ以外の人と付き合い始めたという噂が一部の生徒の間で瞬く間に広まった。するとそれに比例するかのように、フォーラの周りには以前より彼女に話し掛ける男子生徒が増えていったのだ。それは軽い挨拶だったり、朝食の席に混ざってお喋りしたりという場合もあった。他にも、彼女が図書室から出るタイミングで偶然一緒になった男子に声を掛けられ、途中まで並んで歩くなんてことも増えた気がした。
そんなある日、フォーラが今年から山のように増えた宿題を図書室で片付け終えて廊下に出ると、最近そこでよく出会う他寮の男子生徒が彼女の後ろ姿を追いかけてやって来た。彼女が脚を止めてその呼び掛けに振り返ると、彼はほんの少し息を切らしながら「羽ペン、落としたよ」とそれを差し出した。
「えっ、いつの間に落ちたのかしら。わざわざ追いかけて来てくれてどうもありがとう。」
フォーラが彼に柔らかい笑みを向けた時、丁度彼女らのそばから耳慣れた声が聞こえた。
「小狡い術で追いかけ回して、キングス・クロスの犬の方がよっぽどマシだな」
「まあ、そうかもね」
フォーラと男子生徒が声のした方を振り返ると、ドラコとセオドールが二人の横を通り過ぎるところだった。ドラコは呪文を唱えながら杖を一振りすると、男子生徒の手からフォーラの羽ペンをスルリと遠ざけた。そしてそのまま再び杖を振って彼女の鞄の隙間から羽ペンを元の場所へ戻すと、一度も彼女の目を見ないまま、男子生徒の方を一瞥してその場を立ち去ったのだった。
ドラコに手口を見抜かれた男子生徒は気まずそうにフォーラの名前を呼んだが、一方の彼女は男子生徒のしたことや、ドラコが間接的に釘を刺したことすら殆ど頭の中に残らなかった。
(今……。『キングス・クロスの犬』って言ったわよね?それってもしかしてシリウスさんのこと?それ以外にあり得ないけれど、でも、どうしてドラコもセオドールもあんな言い方を?まるで二人しか知らないことを共有しているような口調だった……)
「フォーラ、さっきのはマルフォイの勘違いなんだ。だから」
隣で必死に弁解する男子生徒の声が聞こえた気がしたが、今の彼女はそれどころではなかった。
「ええ、それじゃ……」フォーラは上の空に近い状態で返答すると、彼を置いてその場を足早に立ち去ったのだった。
フォーラは中庭に続く明るい廊下を進みながら周囲に目もくれず歩いた。ドラコたちは駅のホームを走っていた黒い犬の正体を知っているのだろうか。だからわざわざ含みのある表現を?もし仮にそうだとしたら、彼は他に一体どこまで何を知らされているのだろう?
フォーラがそこまで考えた時、彼女は丁度廊下の向こうからやって来るハーマイオニーの姿を捉えた。すると彼女は急いでハーマイオニーのそばに駆け寄った。
「ハーマイオニー!」
「フォーラ、こんにちは……っていきなりどうしたの!?」
ハーマイオニーは突然腕を掴まれたものだから驚きの声を上げ、有無を言う間もなく腕を引かれて人気のない廊下へと足を運んだ。二人がそのまま誰もいない空き教室に入ると、ようやくフォーラが口を開いた。
「こんなところまで引っ張ってきてごめんなさい。さっき、少し気になることがあって」
『少し気になる』と言った割には、ハーマイオニーから見たフォーラは随分焦っているように見えた。そしてハーマイオニーは先程ドラコの放った言葉について説明を受け、フォーラと同じく焦りの色を浮かべた。
『僕でよければ』
フォーラの脳内であの時のドラコの女生徒に対する返答が思い出され、胸がゆっくりと締め付けられた。前学年の終わりにドラコは自分に告白してくれたのに。昨夜中、彼女はベッドの中で何度かその身勝手な想いが頭の中をよぎっては掻き消すのを繰り返した。
フォーラはパンジーやルニーに昨夜見聞きした出来事を話そうか迷っていたが、それも朝食時の大広間に着けば必要のないことだった。
「ドラコ、おはよう!」
彼女たちがスリザリンの寮テーブルに近付いた時、既に席に着いていたドラコに近寄り挨拶するレイブンクローの女生徒の姿が目に入った。フォーラはその彼女の声に間違いなく聞き覚えがあった。パンジーとルニーの方を見てみると、ドラコの至近距離でニコニコと笑っているその女生徒が昨日のホグワーツ特急で噂した対象だっただけに、二人とも彼女に向かって訝しげな視線を向けていた。
「おい、あんまり近付くな……」
ドラコがそう言って視線を周囲に走らせると、フォーラたちとバッチリ目が合ってしまった。彼は一瞬ばつが悪そうな顔をした後ですぐに視線を外し、目の前の女生徒に挨拶を返した。レイブンクローの彼女は嬉しそうにドラコに微笑んだ後、少しだけ言葉を交わすと「じゃあね」と彼に手を振って踵を返した。その際、彼女は先程ドラコが視線をやった方に目を向け、そこにフォーラが立っているのを視界に捉えた。
その時フォーラは、視線の先にいる彼女がこちらに向かってまるで勝ち誇ったような表情を向けるのを見た。フォーラのそばにいた友人二人は、その女生徒がご機嫌にレイブンクローのテーブルに戻って寮生と話し始めるまで、一切目を離さなかった。
「「何あの子!」」
パンジーとルニーが互いに目を合わせて同時に言った。二人はプリプリ怒りながら、ドラコから幾らか離れた席に着き、フォーラはそれを見て少々戸惑いつつも後に続いて長椅子に腰掛けた。するとドラコの近くに座っているスリザリン生が、先程の女生徒とドラコの間に何かあったのかということをドラコ本人に質問した。
「付き合ってるって!?」
フォーラたちのところまで男子生徒の声が聞こえてきた。それによって女子三人の視線が自然に交わったのだが、フォーラは二人に力なく笑い、何事もなかったかのようにスクランブルエッグを取り分けた。そんな彼女の代わりに思わずパンジーが声を荒げた。
「ああもうドラコったら!」
この日の朝の出来事をきっかけに、数日後にはドラコがフォーラ以外の人と付き合い始めたという噂が一部の生徒の間で瞬く間に広まった。するとそれに比例するかのように、フォーラの周りには以前より彼女に話し掛ける男子生徒が増えていったのだ。それは軽い挨拶だったり、朝食の席に混ざってお喋りしたりという場合もあった。他にも、彼女が図書室から出るタイミングで偶然一緒になった男子に声を掛けられ、途中まで並んで歩くなんてことも増えた気がした。
そんなある日、フォーラが今年から山のように増えた宿題を図書室で片付け終えて廊下に出ると、最近そこでよく出会う他寮の男子生徒が彼女の後ろ姿を追いかけてやって来た。彼女が脚を止めてその呼び掛けに振り返ると、彼はほんの少し息を切らしながら「羽ペン、落としたよ」とそれを差し出した。
「えっ、いつの間に落ちたのかしら。わざわざ追いかけて来てくれてどうもありがとう。」
フォーラが彼に柔らかい笑みを向けた時、丁度彼女らのそばから耳慣れた声が聞こえた。
「小狡い術で追いかけ回して、キングス・クロスの犬の方がよっぽどマシだな」
「まあ、そうかもね」
フォーラと男子生徒が声のした方を振り返ると、ドラコとセオドールが二人の横を通り過ぎるところだった。ドラコは呪文を唱えながら杖を一振りすると、男子生徒の手からフォーラの羽ペンをスルリと遠ざけた。そしてそのまま再び杖を振って彼女の鞄の隙間から羽ペンを元の場所へ戻すと、一度も彼女の目を見ないまま、男子生徒の方を一瞥してその場を立ち去ったのだった。
ドラコに手口を見抜かれた男子生徒は気まずそうにフォーラの名前を呼んだが、一方の彼女は男子生徒のしたことや、ドラコが間接的に釘を刺したことすら殆ど頭の中に残らなかった。
(今……。『キングス・クロスの犬』って言ったわよね?それってもしかしてシリウスさんのこと?それ以外にあり得ないけれど、でも、どうしてドラコもセオドールもあんな言い方を?まるで二人しか知らないことを共有しているような口調だった……)
「フォーラ、さっきのはマルフォイの勘違いなんだ。だから」
隣で必死に弁解する男子生徒の声が聞こえた気がしたが、今の彼女はそれどころではなかった。
「ええ、それじゃ……」フォーラは上の空に近い状態で返答すると、彼を置いてその場を足早に立ち去ったのだった。
フォーラは中庭に続く明るい廊下を進みながら周囲に目もくれず歩いた。ドラコたちは駅のホームを走っていた黒い犬の正体を知っているのだろうか。だからわざわざ含みのある表現を?もし仮にそうだとしたら、彼は他に一体どこまで何を知らされているのだろう?
フォーラがそこまで考えた時、彼女は丁度廊下の向こうからやって来るハーマイオニーの姿を捉えた。すると彼女は急いでハーマイオニーのそばに駆け寄った。
「ハーマイオニー!」
「フォーラ、こんにちは……っていきなりどうしたの!?」
ハーマイオニーは突然腕を掴まれたものだから驚きの声を上げ、有無を言う間もなく腕を引かれて人気のない廊下へと足を運んだ。二人がそのまま誰もいない空き教室に入ると、ようやくフォーラが口を開いた。
「こんなところまで引っ張ってきてごめんなさい。さっき、少し気になることがあって」
『少し気になる』と言った割には、ハーマイオニーから見たフォーラは随分焦っているように見えた。そしてハーマイオニーは先程ドラコの放った言葉について説明を受け、フォーラと同じく焦りの色を浮かべた。