20. The beginning of the end
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ドラコはフォーラの瞳から、彼女が以前言葉にして伝えてくれたとおり、今はそんな懸念を薙ぎ払って純粋に自分の側にいたいと思ってくれているのだと理解した。きっと彼女も相当悩んでその結論に至ったからこそ、近頃はずっと気持ちを伝えてくれていたのだろう。
しかしドラコは改めて自分の思想を伝えたとしても、彼女の気持ちは変わらないだろうかと不安が過った。
「それで、君に振られてからの僕は結果的に父上の信じた考えに倣うことにした。フォーラに同じ気持ちを向けられていないと分かったし、それならいっそのこと君に嫌われるくらい突き放してしまえば、君と僕の関係は希薄になると思った。そうすればいつしか君は今度こそ僕の弱みでなくなって、君が僕のせいで今後の争いに巻き込まれる確率がグッと低くなると思ったんだ」
「そういうことだったの……。ねえドラコ。貴方は、その争いが具体的にはどういうものか知っているの?」
ドラコはその質問に回答することで、とうとうフォーラに面と向かってきちんと純血に対する自分の考えをさらけ出す時が来たと思った。ホグワーツで共に過ごした五年間、二人は一度も純血への思想について深く議論したことがなかった。多少の話こそすれ、互いの考えが異なると察していたからこそ、お互い無意識のうちに多くを語るのは避けてきた。
フォーラからすればドラコは完全な純血史上主義だった。一方フォーラはマグル生まれや純血主義嫌いな『血を裏切るもの(純血でありながらマグルやマグル生まれと懇意な関係にある者)』であるウィーズリー家にも、頻繁に話すわけではないにしろ分け隔てなく接してきた。その様は、ドラコからすれば彼女自身も時たま『血を裏切るもの』に片足を突っ込んだ状態に見えることもあった。―――とはいえドラコは彼女が純血を誇りに思う一面があることも知っていた。それに、今年度は彼女とウィーズリーらの交流がパッタリと途絶えてしまったように見えた。
ふとドラコはフォーラの両親のことを思い出した。彼らは普段から純血主義者を否定することはなく、かといって血を裏切るものの考え方も『個人の自由』と捉えている様子だった。つまり血筋を守るべきだとか、マグルと平等であれとか、そのどちらも『どうでもいい』ように見えた。しかしながら彼らは普段から純血主義者が使う侮辱の言葉だけは聞きたがらなかった。そのため、彼らが世間の大半が良しとするマナーを優先しているのだとドラコは理解した。
そういった点はフォーラも彼女の両親と同じだとドラコは思った。忘れもしない、二年生の時にドラコが『穢れた血』と言ったことをフォーラは嫌がった。そんな一面があるかと思えばその一方で、今年度を除いて彼女はずっと純血主義のドラコと最も懇意な仲だった。
そういう理由で、最早彼女のことは『血を裏切るもの』かどうか議論する対象に当てはまらない存在なのだと理解する他なかった。ドラコはそのくらいフォーラを特別な存在として自然と受け入れていた。しかし彼はこれから自身の考えをそんなフォーラに伝えることで、逆に彼女が自分を拒絶する可能性に怯えていた。
「……まず、闇の帝王や父上が望んでいるのは遥か昔の時代のように、純血の魔法使いや魔女が魔法界の象徴として確固たる地位を築くことだ。そして、純血が重んじてきた血統をこれからも守ること。僕はそう理解している。だが、今やもう世の中は混血やマグル生まればかりで、ただでさえ少ない純血の家系はほんの一握りになってしまった。
そんな中で父上たちが望みを叶えるためにしなければならないのは、世の中をひっくり返すことなんだ」
「それって……反乱でも起こそうとしているように聞こえるわ。」
フォーラは夏休みに『不死鳥の騎士団』が間近でヴォルデモートと『死喰い人』の企みを防ごうと活動していたことを勿論知っていた。しかし敵が具体的に何を目論んでいるのかまでは騎士団から十分に話を聞かされていなかった。目の前の彼はどこまで知っているのだろう?
フォーラがじっとドラコを見つめて続きを促した。ドラコは彼女の不安げな瞳に、やはり彼女が自分から離れていく姿を再び想像してしまった。
「反乱……ああ、君の言う通りだ。いつかきっと父上たちは反乱を起こすだろう。だけどその時には闇の帝王の反対派―――つまりダンブルドアのような人が反抗勢力になることは目に見えている。つまり争いは避けられないということだ」
この時フォーラは、まさかドラコの口から不死鳥の騎士団のことを把握しているような話が出ると思わなかった。
「『例のあの人』たちはそうなっても構わないと思うくらい、純血が中心の世の中を作ろうとしているということなの?」
「……そういうことになる。僕の考えをベースにして話をすると、魔法は古くからの魔法使いや魔女の血筋が主となって保たれるべきだと、僕はそう教えられてきた。僕やフォーラの家のような昔から続く血統は、知ってのとおり大半の純血の家系が誇りに思い、その歴史を重要視している。勿論純血ではない一般の魔法族の家系からも―――例えばスリザリン生がいい例だが―――僕たちがもてはやされることが少なくない。君もその自覚がある筈だ」
しかしドラコは改めて自分の思想を伝えたとしても、彼女の気持ちは変わらないだろうかと不安が過った。
「それで、君に振られてからの僕は結果的に父上の信じた考えに倣うことにした。フォーラに同じ気持ちを向けられていないと分かったし、それならいっそのこと君に嫌われるくらい突き放してしまえば、君と僕の関係は希薄になると思った。そうすればいつしか君は今度こそ僕の弱みでなくなって、君が僕のせいで今後の争いに巻き込まれる確率がグッと低くなると思ったんだ」
「そういうことだったの……。ねえドラコ。貴方は、その争いが具体的にはどういうものか知っているの?」
ドラコはその質問に回答することで、とうとうフォーラに面と向かってきちんと純血に対する自分の考えをさらけ出す時が来たと思った。ホグワーツで共に過ごした五年間、二人は一度も純血への思想について深く議論したことがなかった。多少の話こそすれ、互いの考えが異なると察していたからこそ、お互い無意識のうちに多くを語るのは避けてきた。
フォーラからすればドラコは完全な純血史上主義だった。一方フォーラはマグル生まれや純血主義嫌いな『血を裏切るもの(純血でありながらマグルやマグル生まれと懇意な関係にある者)』であるウィーズリー家にも、頻繁に話すわけではないにしろ分け隔てなく接してきた。その様は、ドラコからすれば彼女自身も時たま『血を裏切るもの』に片足を突っ込んだ状態に見えることもあった。―――とはいえドラコは彼女が純血を誇りに思う一面があることも知っていた。それに、今年度は彼女とウィーズリーらの交流がパッタリと途絶えてしまったように見えた。
ふとドラコはフォーラの両親のことを思い出した。彼らは普段から純血主義者を否定することはなく、かといって血を裏切るものの考え方も『個人の自由』と捉えている様子だった。つまり血筋を守るべきだとか、マグルと平等であれとか、そのどちらも『どうでもいい』ように見えた。しかしながら彼らは普段から純血主義者が使う侮辱の言葉だけは聞きたがらなかった。そのため、彼らが世間の大半が良しとするマナーを優先しているのだとドラコは理解した。
そういった点はフォーラも彼女の両親と同じだとドラコは思った。忘れもしない、二年生の時にドラコが『穢れた血』と言ったことをフォーラは嫌がった。そんな一面があるかと思えばその一方で、今年度を除いて彼女はずっと純血主義のドラコと最も懇意な仲だった。
そういう理由で、最早彼女のことは『血を裏切るもの』かどうか議論する対象に当てはまらない存在なのだと理解する他なかった。ドラコはそのくらいフォーラを特別な存在として自然と受け入れていた。しかし彼はこれから自身の考えをそんなフォーラに伝えることで、逆に彼女が自分を拒絶する可能性に怯えていた。
「……まず、闇の帝王や父上が望んでいるのは遥か昔の時代のように、純血の魔法使いや魔女が魔法界の象徴として確固たる地位を築くことだ。そして、純血が重んじてきた血統をこれからも守ること。僕はそう理解している。だが、今やもう世の中は混血やマグル生まればかりで、ただでさえ少ない純血の家系はほんの一握りになってしまった。
そんな中で父上たちが望みを叶えるためにしなければならないのは、世の中をひっくり返すことなんだ」
「それって……反乱でも起こそうとしているように聞こえるわ。」
フォーラは夏休みに『不死鳥の騎士団』が間近でヴォルデモートと『死喰い人』の企みを防ごうと活動していたことを勿論知っていた。しかし敵が具体的に何を目論んでいるのかまでは騎士団から十分に話を聞かされていなかった。目の前の彼はどこまで知っているのだろう?
フォーラがじっとドラコを見つめて続きを促した。ドラコは彼女の不安げな瞳に、やはり彼女が自分から離れていく姿を再び想像してしまった。
「反乱……ああ、君の言う通りだ。いつかきっと父上たちは反乱を起こすだろう。だけどその時には闇の帝王の反対派―――つまりダンブルドアのような人が反抗勢力になることは目に見えている。つまり争いは避けられないということだ」
この時フォーラは、まさかドラコの口から不死鳥の騎士団のことを把握しているような話が出ると思わなかった。
「『例のあの人』たちはそうなっても構わないと思うくらい、純血が中心の世の中を作ろうとしているということなの?」
「……そういうことになる。僕の考えをベースにして話をすると、魔法は古くからの魔法使いや魔女の血筋が主となって保たれるべきだと、僕はそう教えられてきた。僕やフォーラの家のような昔から続く血統は、知ってのとおり大半の純血の家系が誇りに思い、その歴史を重要視している。勿論純血ではない一般の魔法族の家系からも―――例えばスリザリン生がいい例だが―――僕たちがもてはやされることが少なくない。君もその自覚がある筈だ」