8. いつもと違う日
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一つは『闇の魔術に対する防衛術』の新しい教師だ。昨年度アラスター・ムーディが座っていた席には、彼とは真逆の夢見がちなピンク色の服を着て、薄茶色の可愛らしいパーマヘアをしたふくよかな女性が座っていたのだ。フォーラは周囲の誰かが教職員テーブルの彼女のことを『ガマガエルっぽい』と言ったのが聞こえた。
フォーラがもう一つ気になったのは、大柄で目立つハグリッドが見当たらないことだった。一体どうしたのだろう。もしかしたら騎士団のことで何か取り組んでいる最中なのかもしれない。
その時、フォーラは教職員テーブルにいるうちの一人を視認した。すると、その黒装束に威圧的な表情をした彼も、寮テーブルの間を縫って歩くフォーラの姿を捉えたではないか。彼女は彼に微笑みかけると、人差し指を下に向けてちょんちょんと上下に動かし、声を発さずに口だけ動かした。
『後で地下牢にお伺いします。』
フォーラにはスネイプがその意味を把握しているかをわざわざ確認する必要がなかった。何故ならそのジェスチャーの後で、彼はすぐに彼女からフイと視線を外してしまったからだ。それがブラック邸で過ごせたことへの御礼を言いに来ると分かっての照れ隠しであることは、彼女にとって想像に難くなかった。
その後、フォーラがルニーと共にスリザリンのテーブルに着席して暫く経つと、パンジーが彼女らに合流した。予想どおりパンジーのそばにはドラコの姿はなかった。彼はフォーラから随分離れた席にいて、クラッブ、ゴイル、そしてセオドールと共に一塊になって着席していた。
ドラコたちが何やらいつもより随分大きめの態度で笑い合う姿がフォーラの目にチラと映った。その際、彼女は不意に彼と視線が合いそうになったものだから、思わずサッと逸らしてしまったのだった。
それからはいつもどおり組分け帽子によって一年生の寮が分けられ、帽子が高らかに歌い上げた。しかしその歌の内容に関してはいつもどおりではなかった。何やら『内側を固めて団結せよ』とでも言いたげな歌詞を聞いて、フォーラはやはりヴォルデモートのことが頭をよぎった。それと同時に、その人物を思い浮かべた生徒がこの大広間に何割いただろうかとも思った。少なくともドラコはきっと何かしらの心当たりがある筈だ。しかしフォーラがそれを彼に尋ねたとしても、今の自分たちの間柄では何も教えてもらえないに違いない。
晩餐を終えると、最後にダンブルドアからお休みの挨拶が行われた。そうしてその場がお開きになると生徒たちのざわめき声が大きくなり、みんなぞろぞろと大広間の扉から寮へ続く道に向かった。フォーラは高学年の男子生徒からの『一緒に寮へ戻らないか』という誘いに申し訳なさそうに断りを入れた後、ルニーとパンジーに「スネイプ先生のところへ寄ってくるわ」と伝え、みんなとは違う方へと進んでいった。
その際、フォーラは一年生を集めるドラコのそばを通り過ぎなければならなかった。するとドラコが彼女の存在に気付いたことで互いの視線がばっちり重なった。しかし彼はフイと視線を外して先程よりも一年生への語気を強めた。彼女としてはその声に一年生が少々怯えているのが目に付いたが、今はこれ以上何か刺激すべきではないと判断し、彼のそんな態度に気付かないふりをしてその横を通り過ぎた。いつもの彼ならそういったフォーラの好きそうにない横柄な態度は公の場ではなるべく抑える筈だが、彼女は自分が近くに来たことで彼の虫の居所を悪くしてしまったのだろうと思った。
人混みを抜けるのに暫く時間を要したものの、フォーラはようやく地下牢のスネイプの部屋を訪れた。誰もいない静かな廊下で扉の前に立つと、独りでにその扉が開かれた。スネイプが彼女の存在に気付いて杖を振ったのだ。彼は丁度大広間から部屋に戻ってきたばかりのようで、脱いだマントを椅子に掛けている最中だった。
フォーラはスネイプの部屋に入ると、彼にブラック邸に関するお礼を伝えた。
「セブルスさん、ブラック邸に滞在することをみなさんに打診していただいて、本当にありがとうございました。セブルスさんが提案してくださらなかったら、私があそこで過ごす選択肢はなかったに等しいです。そのおかげで、この城に戻ってくるまでに何とか自分の気持ちを切り替えられました。」
「我輩はきっかけを与えたに過ぎん」
想像していたとおりの素っ気ない返答にフォーラは微笑んだ。
「そうかもしれませんが、本当に感謝しているんですよ。もうお耳に入れたかもしれませんが、私、生まれ故郷をこの目で見て、そこの教会のお墓に眠っている産みの両親にも挨拶できたんです。ブラック邸で心の整理ができていなければ、叶わないことでした。リーマスさんに連れていってもらったんですけど―――」
それを聞いたスネイプは眉間に皺を寄せたが(特にルーピンのことを今になって下の名前で呼び始めた点が気に入らなかった。スネイプは心の中でルーピンを往生際の悪い奴だと罵った)、フォーラが随分楽しそうに話すものだから、その場は一先ず目を瞑ることにした。
そしてフォーラは純血主義の壁を乗り越えた今、これから自分がどうするべきか戸惑っていることや、兎に角今はひたすら学ぶべきだと父に勧められたこともスネイプに伝えた。すると彼はその言葉に頷いた。
「全くもってそのとおり。こんな時だからこそ真剣に授業に励みたまえ。今年は『ふくろう試験(普通魔法レベル試験)』も控えている。去年のように我輩の板書を無視した手順で、易々と複雑な薬を調合出来ると思わないことだ」
その脅し文句のような台詞を受け、フォーラは怯むどころかそれをスネイプの分かりにくい冗談として捉え、先程よりも笑みを零した。確かに昨年度に彼の授業で出された課題のうち、彼女が板書の手順に少しアレンジを加えて調合してみた薬が幾つかあった。スネイプは彼女のそんな試みを『我輩の板書を無視した手順』と言ったが、それを実行したのはスネイプが教科書の調合手順をそっくりそのまま書き出した時に限った。彼が教科書の内容に自らの最善を加えた本当の意味での『我輩の板書』を彼女はきちんと把握していたし、スネイプもそれを理解していたのだった。
フォーラがもう一つ気になったのは、大柄で目立つハグリッドが見当たらないことだった。一体どうしたのだろう。もしかしたら騎士団のことで何か取り組んでいる最中なのかもしれない。
その時、フォーラは教職員テーブルにいるうちの一人を視認した。すると、その黒装束に威圧的な表情をした彼も、寮テーブルの間を縫って歩くフォーラの姿を捉えたではないか。彼女は彼に微笑みかけると、人差し指を下に向けてちょんちょんと上下に動かし、声を発さずに口だけ動かした。
『後で地下牢にお伺いします。』
フォーラにはスネイプがその意味を把握しているかをわざわざ確認する必要がなかった。何故ならそのジェスチャーの後で、彼はすぐに彼女からフイと視線を外してしまったからだ。それがブラック邸で過ごせたことへの御礼を言いに来ると分かっての照れ隠しであることは、彼女にとって想像に難くなかった。
その後、フォーラがルニーと共にスリザリンのテーブルに着席して暫く経つと、パンジーが彼女らに合流した。予想どおりパンジーのそばにはドラコの姿はなかった。彼はフォーラから随分離れた席にいて、クラッブ、ゴイル、そしてセオドールと共に一塊になって着席していた。
ドラコたちが何やらいつもより随分大きめの態度で笑い合う姿がフォーラの目にチラと映った。その際、彼女は不意に彼と視線が合いそうになったものだから、思わずサッと逸らしてしまったのだった。
それからはいつもどおり組分け帽子によって一年生の寮が分けられ、帽子が高らかに歌い上げた。しかしその歌の内容に関してはいつもどおりではなかった。何やら『内側を固めて団結せよ』とでも言いたげな歌詞を聞いて、フォーラはやはりヴォルデモートのことが頭をよぎった。それと同時に、その人物を思い浮かべた生徒がこの大広間に何割いただろうかとも思った。少なくともドラコはきっと何かしらの心当たりがある筈だ。しかしフォーラがそれを彼に尋ねたとしても、今の自分たちの間柄では何も教えてもらえないに違いない。
晩餐を終えると、最後にダンブルドアからお休みの挨拶が行われた。そうしてその場がお開きになると生徒たちのざわめき声が大きくなり、みんなぞろぞろと大広間の扉から寮へ続く道に向かった。フォーラは高学年の男子生徒からの『一緒に寮へ戻らないか』という誘いに申し訳なさそうに断りを入れた後、ルニーとパンジーに「スネイプ先生のところへ寄ってくるわ」と伝え、みんなとは違う方へと進んでいった。
その際、フォーラは一年生を集めるドラコのそばを通り過ぎなければならなかった。するとドラコが彼女の存在に気付いたことで互いの視線がばっちり重なった。しかし彼はフイと視線を外して先程よりも一年生への語気を強めた。彼女としてはその声に一年生が少々怯えているのが目に付いたが、今はこれ以上何か刺激すべきではないと判断し、彼のそんな態度に気付かないふりをしてその横を通り過ぎた。いつもの彼ならそういったフォーラの好きそうにない横柄な態度は公の場ではなるべく抑える筈だが、彼女は自分が近くに来たことで彼の虫の居所を悪くしてしまったのだろうと思った。
人混みを抜けるのに暫く時間を要したものの、フォーラはようやく地下牢のスネイプの部屋を訪れた。誰もいない静かな廊下で扉の前に立つと、独りでにその扉が開かれた。スネイプが彼女の存在に気付いて杖を振ったのだ。彼は丁度大広間から部屋に戻ってきたばかりのようで、脱いだマントを椅子に掛けている最中だった。
フォーラはスネイプの部屋に入ると、彼にブラック邸に関するお礼を伝えた。
「セブルスさん、ブラック邸に滞在することをみなさんに打診していただいて、本当にありがとうございました。セブルスさんが提案してくださらなかったら、私があそこで過ごす選択肢はなかったに等しいです。そのおかげで、この城に戻ってくるまでに何とか自分の気持ちを切り替えられました。」
「我輩はきっかけを与えたに過ぎん」
想像していたとおりの素っ気ない返答にフォーラは微笑んだ。
「そうかもしれませんが、本当に感謝しているんですよ。もうお耳に入れたかもしれませんが、私、生まれ故郷をこの目で見て、そこの教会のお墓に眠っている産みの両親にも挨拶できたんです。ブラック邸で心の整理ができていなければ、叶わないことでした。リーマスさんに連れていってもらったんですけど―――」
それを聞いたスネイプは眉間に皺を寄せたが(特にルーピンのことを今になって下の名前で呼び始めた点が気に入らなかった。スネイプは心の中でルーピンを往生際の悪い奴だと罵った)、フォーラが随分楽しそうに話すものだから、その場は一先ず目を瞑ることにした。
そしてフォーラは純血主義の壁を乗り越えた今、これから自分がどうするべきか戸惑っていることや、兎に角今はひたすら学ぶべきだと父に勧められたこともスネイプに伝えた。すると彼はその言葉に頷いた。
「全くもってそのとおり。こんな時だからこそ真剣に授業に励みたまえ。今年は『ふくろう試験(普通魔法レベル試験)』も控えている。去年のように我輩の板書を無視した手順で、易々と複雑な薬を調合出来ると思わないことだ」
その脅し文句のような台詞を受け、フォーラは怯むどころかそれをスネイプの分かりにくい冗談として捉え、先程よりも笑みを零した。確かに昨年度に彼の授業で出された課題のうち、彼女が板書の手順に少しアレンジを加えて調合してみた薬が幾つかあった。スネイプは彼女のそんな試みを『我輩の板書を無視した手順』と言ったが、それを実行したのはスネイプが教科書の調合手順をそっくりそのまま書き出した時に限った。彼が教科書の内容に自らの最善を加えた本当の意味での『我輩の板書』を彼女はきちんと把握していたし、スネイプもそれを理解していたのだった。