7. 前進
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
フォーラは突如として地に足がつかなくなった。そして次の瞬間にはまるでクネクネとした細い配管を、細長いゴムになって勢いよく通っているような奇妙な体験をしていた。今までに経験したことのない感覚に多少の気持ち悪さが押し寄せて、フォーラは早くこの時間が過ぎ去ってほしいと何度も願った。そして途端にその気持ち悪さから解放されたと思った途端、足が地に着くと同時に地面がカサリと乾いた音を立てた。
「……ここは……」
フォーラとルーピンは手を繋いだまま、崖の上に広がる芝生の上に立っていて、崖の向こうには青い大海原と晴れた早朝の空が広がっていた。海風が幾度か顔や髪を撫で、ルーピンの夏用マントをはためかせた。すると彼が先に口を開いた。
「ウェールズの海岸沿いだ。フォーラの生まれた場所だそうだよ」
元いたロンドンの館から随分移動してきたのを知り、フォーラはルーピンの顔を見上げてからそのまま周囲に視線を向けた。すると、崖の真反対にはレンガ造りの人里の存在を遠くに確認できた。
「行こう」
ルーピンはフォーラの手を引いたまま町の方へと向かった。彼女はされるがまま付いて行くしかなかったが、芝生を踏みしめる足が建物に近付く度、心臓が必要以上につつかれているような感じがした。
「大丈夫。私も一緒にいる」
フォーラがハッとしてルーピンを見ると、彼は繋いだ手を一層しっかり握ってくれた。どうやら自分は押し寄せる不安のせいで、無意識のうちに自ら彼の手を固く握り締めていたらしい。それによって彼はこちらの感情をしっかり認識したのだろう。
「……はい。」
こうして手を握っている理由が、死喰い人にいつ襲われても『付き添い姿くらまし』で逃げられるようにするためとはいえ、今のフォーラにとってはそれが違う意味で本当に有り難かった。
その後の二人は、年季の入った薄い色のレンガ造りの家々が並ぶ、小綺麗な石畳の続く町へ足を踏み入れていた。早朝というのもあって人は殆どおらず、たまに車のエンジンをふかして会社に出勤する音がしたり、パン屋の煙突から白い煙が上がっているのが見えたりした。フォーラは今、これまで記憶にある中でほんの数回しか足を運んだことのないマグルの世界にいるのだと改めて実感していた。数人だけすれ違った人たちは全員、ルーピンの羽織っている夏用マントを訝しげに見ていたし、家の植木には一つも魔法植物が植わっていなかった。頭上には梟だって一羽も飛んでいない。
二人は静けさが広がる町を進んだ。すると、年季の入った看板を掲げた建物が目についた。近付いてみるとそこは孤児院だった。
「私は生まれた町で、そのまま孤児院に預けられたんでしょうか。」
「ああ、シェードたちからそう聞いたよ」
「それじゃあ、父様と母様は、ここで私を引き取ってくれた……?」
ルーピンは首を横に振った。
「赤ん坊の君は、魔法が使えたんだ。マグルは君を恐れて孤児院を転々とさせたそうだ。そして、ダンブルドアがその噂を聞きつけて、君の両親に教えた。ご両親が君を引き取ったのは、全く別の場所の孤児院らしい」ルーピンの手はまだしっかりとフォーラの手を繋いでいた。
フォーラは建物の外観を見上げた。随分古い建物ではあったが、町と同様、綺麗に維持されているのが窺えた。次に建物の入り口である木製の観音扉に視線を移してみると、彼女はじっとそこを眺めながら、ここではない何処か別の孤児院で育ての両親が自分を引き取りに来た時の様子をぼんやりと想像していた。記憶には全く無かったが、想像の中の二人はとても喜んでいた。以前、二人から当時の様子を聞いたことがあったからかもしれない。
一方で、生みの親が何故ここに自分を預けることになったのかは全く想像できなかった。二人は何処で何をしているのだろう?この町で自分を産んで、そのまま別の町に行ってしまったのだろうか。それとも……。
ふとフォーラは以前ボガートが出た日に、ルーピンとこの町へ行く約束をした時のことを思い出した。自分は生みの両親を知りたがったのに、ルーピンは自分の生まれ故郷へと連れてきてくれた。それはつまり、恐らくだが、生みの両親もきっとここに……。
「ルーピン、」フォーラはぽつりと彼の名前を呼び、向き直ると視線を合わせた。
「もしかして……間違っていたらすみません。多分……その、私の生みの両親は、もうとっくの昔に亡くなっているんじゃないかと思ったんです。」
ルーピンはほんの少し驚いた表情を見せた後、じっとフォーラを見つめた。そしてすぐに優しい表情を向けた。
「フォーラ、向こうに教会が見えるかい」
家々の屋根の向こう側に、背の高い三角屋根と十字架が突き出ているのが遠目に見えた。
「あそこまで行って、それから話そう」
フォーラはルーピンに連れられて、教会の敷地内にある芝生で覆われた墓地に足を踏み入れた。そしてルーピンはある墓石の前で足を止めた。
「ここに、君の生みのご両親が眠っているそうだ」
その墓石には初めて見る名前が二人分刻まれていた。ファントムの名は勿論なく、当たり前の筈なのに何だか妙な気分だった。こうして初めて両親の名を目の当たりにして思うのは、意外にも自分の中で二人の死という事実を静かに受け入れられているということだった。これまでにそういったことを何度か予想していたからだろうか。
それにしても、どうして二人は亡くなってしまったのだろう?そしてどうして自分だけが生きているのだろう。自分に親戚はいなかったのだろうか?ここに立つと、改めてそんな数々の疑問が湧いてきた。すると、フォーラはふと暮石にまだ新しい花が添えられていることに気が付いた。それに石も綺麗に磨かれている。
「一体誰が……。」
「これはきっと、シェードとリプトニアだよ」
「!どうして……」
「君の生みのご両親の居場所が分かってからは、定期的にお祈りしにきていると言っていたからね」
フォーラが静かに驚いてそれ以上言葉を発せずにいると、ルーピンが優しく微笑んだ。そして彼は杖を一振りすると、一通の手紙を出現させ、彼女にそれを手渡した。
「育てのご両親からフォーラに宛てた手紙だよ。ここに、君が今知りたがっているだろうことを書いたと言っていた」
フォーラは突然のことに緊張しつつもその手紙を受け取った。そして、何日も顔を合わせていない両親が何を書いたのか不安になりながらも、ルーピンと繋いでいた片手を離して封を開けた。彼はその間、そっと彼女の肩に手を添えてくれていた。
「……ここは……」
フォーラとルーピンは手を繋いだまま、崖の上に広がる芝生の上に立っていて、崖の向こうには青い大海原と晴れた早朝の空が広がっていた。海風が幾度か顔や髪を撫で、ルーピンの夏用マントをはためかせた。すると彼が先に口を開いた。
「ウェールズの海岸沿いだ。フォーラの生まれた場所だそうだよ」
元いたロンドンの館から随分移動してきたのを知り、フォーラはルーピンの顔を見上げてからそのまま周囲に視線を向けた。すると、崖の真反対にはレンガ造りの人里の存在を遠くに確認できた。
「行こう」
ルーピンはフォーラの手を引いたまま町の方へと向かった。彼女はされるがまま付いて行くしかなかったが、芝生を踏みしめる足が建物に近付く度、心臓が必要以上につつかれているような感じがした。
「大丈夫。私も一緒にいる」
フォーラがハッとしてルーピンを見ると、彼は繋いだ手を一層しっかり握ってくれた。どうやら自分は押し寄せる不安のせいで、無意識のうちに自ら彼の手を固く握り締めていたらしい。それによって彼はこちらの感情をしっかり認識したのだろう。
「……はい。」
こうして手を握っている理由が、死喰い人にいつ襲われても『付き添い姿くらまし』で逃げられるようにするためとはいえ、今のフォーラにとってはそれが違う意味で本当に有り難かった。
その後の二人は、年季の入った薄い色のレンガ造りの家々が並ぶ、小綺麗な石畳の続く町へ足を踏み入れていた。早朝というのもあって人は殆どおらず、たまに車のエンジンをふかして会社に出勤する音がしたり、パン屋の煙突から白い煙が上がっているのが見えたりした。フォーラは今、これまで記憶にある中でほんの数回しか足を運んだことのないマグルの世界にいるのだと改めて実感していた。数人だけすれ違った人たちは全員、ルーピンの羽織っている夏用マントを訝しげに見ていたし、家の植木には一つも魔法植物が植わっていなかった。頭上には梟だって一羽も飛んでいない。
二人は静けさが広がる町を進んだ。すると、年季の入った看板を掲げた建物が目についた。近付いてみるとそこは孤児院だった。
「私は生まれた町で、そのまま孤児院に預けられたんでしょうか。」
「ああ、シェードたちからそう聞いたよ」
「それじゃあ、父様と母様は、ここで私を引き取ってくれた……?」
ルーピンは首を横に振った。
「赤ん坊の君は、魔法が使えたんだ。マグルは君を恐れて孤児院を転々とさせたそうだ。そして、ダンブルドアがその噂を聞きつけて、君の両親に教えた。ご両親が君を引き取ったのは、全く別の場所の孤児院らしい」ルーピンの手はまだしっかりとフォーラの手を繋いでいた。
フォーラは建物の外観を見上げた。随分古い建物ではあったが、町と同様、綺麗に維持されているのが窺えた。次に建物の入り口である木製の観音扉に視線を移してみると、彼女はじっとそこを眺めながら、ここではない何処か別の孤児院で育ての両親が自分を引き取りに来た時の様子をぼんやりと想像していた。記憶には全く無かったが、想像の中の二人はとても喜んでいた。以前、二人から当時の様子を聞いたことがあったからかもしれない。
一方で、生みの親が何故ここに自分を預けることになったのかは全く想像できなかった。二人は何処で何をしているのだろう?この町で自分を産んで、そのまま別の町に行ってしまったのだろうか。それとも……。
ふとフォーラは以前ボガートが出た日に、ルーピンとこの町へ行く約束をした時のことを思い出した。自分は生みの両親を知りたがったのに、ルーピンは自分の生まれ故郷へと連れてきてくれた。それはつまり、恐らくだが、生みの両親もきっとここに……。
「ルーピン、」フォーラはぽつりと彼の名前を呼び、向き直ると視線を合わせた。
「もしかして……間違っていたらすみません。多分……その、私の生みの両親は、もうとっくの昔に亡くなっているんじゃないかと思ったんです。」
ルーピンはほんの少し驚いた表情を見せた後、じっとフォーラを見つめた。そしてすぐに優しい表情を向けた。
「フォーラ、向こうに教会が見えるかい」
家々の屋根の向こう側に、背の高い三角屋根と十字架が突き出ているのが遠目に見えた。
「あそこまで行って、それから話そう」
フォーラはルーピンに連れられて、教会の敷地内にある芝生で覆われた墓地に足を踏み入れた。そしてルーピンはある墓石の前で足を止めた。
「ここに、君の生みのご両親が眠っているそうだ」
その墓石には初めて見る名前が二人分刻まれていた。ファントムの名は勿論なく、当たり前の筈なのに何だか妙な気分だった。こうして初めて両親の名を目の当たりにして思うのは、意外にも自分の中で二人の死という事実を静かに受け入れられているということだった。これまでにそういったことを何度か予想していたからだろうか。
それにしても、どうして二人は亡くなってしまったのだろう?そしてどうして自分だけが生きているのだろう。自分に親戚はいなかったのだろうか?ここに立つと、改めてそんな数々の疑問が湧いてきた。すると、フォーラはふと暮石にまだ新しい花が添えられていることに気が付いた。それに石も綺麗に磨かれている。
「一体誰が……。」
「これはきっと、シェードとリプトニアだよ」
「!どうして……」
「君の生みのご両親の居場所が分かってからは、定期的にお祈りしにきていると言っていたからね」
フォーラが静かに驚いてそれ以上言葉を発せずにいると、ルーピンが優しく微笑んだ。そして彼は杖を一振りすると、一通の手紙を出現させ、彼女にそれを手渡した。
「育てのご両親からフォーラに宛てた手紙だよ。ここに、君が今知りたがっているだろうことを書いたと言っていた」
フォーラは突然のことに緊張しつつもその手紙を受け取った。そして、何日も顔を合わせていない両親が何を書いたのか不安になりながらも、ルーピンと繋いでいた片手を離して封を開けた。彼はその間、そっと彼女の肩に手を添えてくれていた。