7. 前進
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それからほんの数日が経ったこの日、ルーピンは仕事も任務も休みだった。フォーラは出かけるために朝早くから部屋で身支度を済ませ、彼が待つ食堂の扉を開けた。その向こうには待ち合わせしていたルーピンは勿論、他にもモリーやアーサー、シリウスにトンクス、そしてハリーの姿もあった。
フォーラはみんなに朝の挨拶をすると、朝食を摂るために促されるままルーピンの隣に腰掛けた。既に着席していたハリーは、先日、正当防衛とはいえ学校外で魔法を使った件で、朝から魔法省の裁判に出頭しなければならなかった。裁判でもし有罪となればハリーは退学処分になってしまう。しかし決してそんなことにはならないと、みんなハリーに温かな言葉を掛けて安心させようとしていた。
「アメリア・ボーンズは大丈夫よ、ハリー。公平な魔女だから。ちゃんと聞いてくれるわよ」
トンクスの励ましにハリーが頷いた。次にシリウスが声を発した。
「カッとなるなよ。礼儀正しくして、事実だけを言うんだ」
ハリーは再び頷いた。
「法律は君に有利だ」今度はルーピンが静かに言った。「未成年魔法使いでも、命を脅かされる状況では魔法を使うことが許される」
ハリーは唯々頷いた。フォーラから見ても、ハリーが言葉を発するのすら難しいほど緊張しているのが伝わってきた。加えて今の彼女はこの場にいる誰よりも彼の気持ちを汲み取ることができていた。自分もこれからルーピンと向かった先で何を見て、そして自分が今とどう変わってしまうのか、正直とても不安だったからだ。
フォーラはモリーからトーストとコーヒーを受け取って御礼を言った後、ハリーの名を呼んだ。彼はそれまで視線を少々泳がせていたが、すぐに彼女の方へ目を向けた。そしてフォーラもしっかりと彼を見つめた。
「私、今日きちんと自分と向き合ってくる。早めに出かけて、ハリーより早く帰ってくるつもり。そして貴方が帰ってきた時、すぐにお祝いできるようにみんなと待っているわ。」
ハリーは少しの間フォーラを見つめたまま動かずにいた。彼は裁判のことで強張った頭でも、彼女が何を伝えたいのか十分に理解できた。彼女もきっと自分のことで一杯一杯な中、元の元気な状態に戻って、こちらが無事魔法省から帰宅するのを出迎えたいと思ってくれているのだと。
ハリーは改めて頷くと、「ありがとう」と緊張気味な様子で答えた。その声は、今日彼がみんなと交わした言葉の中で一番はっきりとした音をしていたのだった。
さて、とうとうハリーが魔法省へ向かう時刻になった。フォーラは出発前のハリーがみんなに激励される様子を席から眺めていた。シリウスは「裁判官の判決によっては、奴をとんでもない目に合わせるから安心しろ」と殆ど本気で言っていたし、モリーは目に涙を浮かべてしっかりとハリーを抱き締めた。他にもトンクスやルーピンも彼に声を掛けた。そしてようやくハリーはアーサーと共に館の外へと繰り出したのだった。
フォーラはハリーが出ていった食堂の扉をぼうっと眺めた。彼女の目下には、まだ食べかけのトーストが皿の上に残っていた。
「フォーラ?」隣の席に戻ってきたルーピンに声を掛けられ、彼女はハッと意識を引き戻した。すると彼が続けた。「これを食べたら私たちも出かけよう。人通りの少ないうちに移動した方がいい」
「そうでした、ごめんなさい。」
フォーラは再びトーストをかじった。ただ、脳裏には先程のハリーとみんなの姿がまだ映し出されていた。あの場にいた誰一人としてハリーと血が繋がっていない筈なのに、フォーラはまるで目の前に一つの家族を見たような気がしていたのだ。
「それにしてもリーマス、くれぐれも気をつけてね」
「大丈夫だよモリー。目的地に死喰い人がいないことは十分調査済みだ」
フォーラがルーピンに外出を提案された日、二人は彼女の秘密を知る騎士団員に外出の件を相談した。ルーピンは既に何人かに反対されるのを予想していたし、勿論そのとおりになった。みんな死喰い人の存在に非常に神経質になっていたからだ。しかしルーピンは事前にこの件を相談していたシリウスやムーディ、トンクスの計らいによって警備を一人付けるのを条件に、モリーなどの反対派を納得させるのに成功したのだった。子供の安全を想うのは勿論だが、今回はフォーラの両親からの頼みということもあり、特にモリーはそれならばと納得せざるを得なかったのだ。
食事を終えたフォーラはその場にいた全員に挨拶をすると、ルーピンと共に館の玄関扉へと向かった。その際、彼女はジョージの姿が見えなかったのを少々残念に思った。ルーピンとの外出を何人かに反対された際、ジョージは一番最初に賛成の言葉を述べてくれていたのだ。そのおかげもあって場の雰囲気はすぐに前向きな話をする方向に変わった。フォーラは既にジョージにお礼を伝えていたが、それでもまだ伝えきれていなかった。
(帰ってきた時、もしきちんと自分の望む状態になれていたら、そうしたら必ず他のみんなにも改めてお礼を伝えましょう)
フォーラは心にそう決め、ルーピンと共に玄関扉の外にある階段の一番上に立ち、二人で手を繋いだ。
「本当は『煙突飛行ネットワーク』が使えると良かったんだが。あまり魔法省に足が着くのは避けたいのでね。以前も説明したとおり、移動中に気分が悪くなるかもしれないけど、少しの間だけ我慢して」
ルーピンからの言葉にフォーラは頷き、そして彼と共に初めてその場から『付き添い姿くらまし』した。
フォーラはみんなに朝の挨拶をすると、朝食を摂るために促されるままルーピンの隣に腰掛けた。既に着席していたハリーは、先日、正当防衛とはいえ学校外で魔法を使った件で、朝から魔法省の裁判に出頭しなければならなかった。裁判でもし有罪となればハリーは退学処分になってしまう。しかし決してそんなことにはならないと、みんなハリーに温かな言葉を掛けて安心させようとしていた。
「アメリア・ボーンズは大丈夫よ、ハリー。公平な魔女だから。ちゃんと聞いてくれるわよ」
トンクスの励ましにハリーが頷いた。次にシリウスが声を発した。
「カッとなるなよ。礼儀正しくして、事実だけを言うんだ」
ハリーは再び頷いた。
「法律は君に有利だ」今度はルーピンが静かに言った。「未成年魔法使いでも、命を脅かされる状況では魔法を使うことが許される」
ハリーは唯々頷いた。フォーラから見ても、ハリーが言葉を発するのすら難しいほど緊張しているのが伝わってきた。加えて今の彼女はこの場にいる誰よりも彼の気持ちを汲み取ることができていた。自分もこれからルーピンと向かった先で何を見て、そして自分が今とどう変わってしまうのか、正直とても不安だったからだ。
フォーラはモリーからトーストとコーヒーを受け取って御礼を言った後、ハリーの名を呼んだ。彼はそれまで視線を少々泳がせていたが、すぐに彼女の方へ目を向けた。そしてフォーラもしっかりと彼を見つめた。
「私、今日きちんと自分と向き合ってくる。早めに出かけて、ハリーより早く帰ってくるつもり。そして貴方が帰ってきた時、すぐにお祝いできるようにみんなと待っているわ。」
ハリーは少しの間フォーラを見つめたまま動かずにいた。彼は裁判のことで強張った頭でも、彼女が何を伝えたいのか十分に理解できた。彼女もきっと自分のことで一杯一杯な中、元の元気な状態に戻って、こちらが無事魔法省から帰宅するのを出迎えたいと思ってくれているのだと。
ハリーは改めて頷くと、「ありがとう」と緊張気味な様子で答えた。その声は、今日彼がみんなと交わした言葉の中で一番はっきりとした音をしていたのだった。
さて、とうとうハリーが魔法省へ向かう時刻になった。フォーラは出発前のハリーがみんなに激励される様子を席から眺めていた。シリウスは「裁判官の判決によっては、奴をとんでもない目に合わせるから安心しろ」と殆ど本気で言っていたし、モリーは目に涙を浮かべてしっかりとハリーを抱き締めた。他にもトンクスやルーピンも彼に声を掛けた。そしてようやくハリーはアーサーと共に館の外へと繰り出したのだった。
フォーラはハリーが出ていった食堂の扉をぼうっと眺めた。彼女の目下には、まだ食べかけのトーストが皿の上に残っていた。
「フォーラ?」隣の席に戻ってきたルーピンに声を掛けられ、彼女はハッと意識を引き戻した。すると彼が続けた。「これを食べたら私たちも出かけよう。人通りの少ないうちに移動した方がいい」
「そうでした、ごめんなさい。」
フォーラは再びトーストをかじった。ただ、脳裏には先程のハリーとみんなの姿がまだ映し出されていた。あの場にいた誰一人としてハリーと血が繋がっていない筈なのに、フォーラはまるで目の前に一つの家族を見たような気がしていたのだ。
「それにしてもリーマス、くれぐれも気をつけてね」
「大丈夫だよモリー。目的地に死喰い人がいないことは十分調査済みだ」
フォーラがルーピンに外出を提案された日、二人は彼女の秘密を知る騎士団員に外出の件を相談した。ルーピンは既に何人かに反対されるのを予想していたし、勿論そのとおりになった。みんな死喰い人の存在に非常に神経質になっていたからだ。しかしルーピンは事前にこの件を相談していたシリウスやムーディ、トンクスの計らいによって警備を一人付けるのを条件に、モリーなどの反対派を納得させるのに成功したのだった。子供の安全を想うのは勿論だが、今回はフォーラの両親からの頼みということもあり、特にモリーはそれならばと納得せざるを得なかったのだ。
食事を終えたフォーラはその場にいた全員に挨拶をすると、ルーピンと共に館の玄関扉へと向かった。その際、彼女はジョージの姿が見えなかったのを少々残念に思った。ルーピンとの外出を何人かに反対された際、ジョージは一番最初に賛成の言葉を述べてくれていたのだ。そのおかげもあって場の雰囲気はすぐに前向きな話をする方向に変わった。フォーラは既にジョージにお礼を伝えていたが、それでもまだ伝えきれていなかった。
(帰ってきた時、もしきちんと自分の望む状態になれていたら、そうしたら必ず他のみんなにも改めてお礼を伝えましょう)
フォーラは心にそう決め、ルーピンと共に玄関扉の外にある階段の一番上に立ち、二人で手を繋いだ。
「本当は『煙突飛行ネットワーク』が使えると良かったんだが。あまり魔法省に足が着くのは避けたいのでね。以前も説明したとおり、移動中に気分が悪くなるかもしれないけど、少しの間だけ我慢して」
ルーピンからの言葉にフォーラは頷き、そして彼と共に初めてその場から『付き添い姿くらまし』した。