7. 前進
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なんてことはないさ。君が無事で良かったよ。それにしても、何というか……恐ろしい光景だったね。あれは君のご両親だっただろう」
フォーラは両腕で膝を抱えてルーピンを見た後、ゆっくりと頷いた。
「私、今の今まで自分にとって何が一番恐ろしいのか気付けませんでした。だからさっきの二人を見てパニックになってしまって……偽者かどうか分からなくなってしまったんです。折角授業でルーピンに教えてもらった妖怪だったのに……本当にごめんなさい。」
フォーラは先程まで両親の姿をしたボガートが倒れていた辺りを見ながら続けた。
「私、以前ルーピンの部屋でお話しした日から……一旦この館では全て忘れてみてはどうかと提案してもらった日から、なるべく純血に対する執着心や、家族のことは考えないようにしていたつもりでした。でも、あまり上手くいかなくて。ふとした瞬間に沢山今までの事を思い出したりしていました。この間ハリーがやってきた日、夕食の場で貴方に引き止められた時も……。」
フォーラもルーピンも、食堂で騎士団員が子供たちに組織の活動状況を説明した日のことを思い浮かべていた。あの時のフォーラは、純血に執着している自分は騎士団の内情を探りに来たわけではないと、自身が周囲からどう見られているのかを気にして怯えていた。
「あの時は、私も君に随分無理強いをしてしまった。すまないことをしたと、ずっと考えていた」
フォーラがルーピンを見やると、二人の視線がかち合った。ルーピンが言葉を続けた。
「君がこの館に来て、初めて私に純血への執着があるという本音打ち明けてくれた日、私は君に『私がついている』と話したね。必ずなんとかできると」
フォーラが静かに頷いた。するとルーピンはほんの少し苦く微笑んだ後で、自責の念に駆られた表情を覗かせた。
「だが、実際は任務に追われて君に何かしてあげることができなかった。だからハリーが来た日の夜、私は焦って君を引き止めてしまったんだ。その時のフォーラは随分怯えていたから……私は間違えたと思った。でも反対に、少しでも君の刺激になればいいとも思った。君に両親のことをここでは忘れろと伝えたのにね。私はフォーラにどうしてやればいいのか分からずにいたんだ」
するとフォーラは思わず首を横に振って彼の言葉を否定し、声を荒げた。
「そんな。貴方はいつも私を気に掛けてくれているのに。あの時だって、退席しようとする私をルーピンに引き止めてもらったから、だから私は両親のことを……」
フォーラはそこで言葉を切ってしまった。ルーピンはそんな彼女を見て、内心少し驚いた後で今度は優しく微笑んだ。先程のボガートの姿然り、きっと彼女はもう自分の中で家族や血に対する答えを殆ど見つけているのだと感じたからだ。するとフォーラが再び言葉を紡いだ。
「私、ここで過ごしてみて、ルーピンを含むみんなから沢山の気持ちを貰いました。本当に色んなことを。だからそのお陰で気付けたことが沢山ありました。でも、シリウスさんからこのタペストリーを教えてもらって以来、ずっとこれが頭から離れなくて。そうしたら、考える必要のないことも考えるようになってしまって……」
ルーピンは目の前に大きく飾られたタペストリーに改めて目をやった。先程からずっと目についていたそれは、彼女から詳しい話を聞かずとも大いに彼女を惹きつけているのだと汲み取れた。
「この館に来て、今まで親元を離れて過ごした中で、一番両親のことを思い出しました。それにきっと、血が繋がっていなくても私は二人の……」
フォーラは先程同様に自ら言葉を切ってしまった。ルーピンはきっとこのタペストリーが、あと一歩のところで彼女の導こうとしている答えの妨げをしているのだと感じた。だからといってルーピンは彼女の言葉の続きを代わりに口に出したりはしなかった。彼は唯々、フォーラの隣で彼女自身の言葉を待った。
「でも、このタペストリーはここに書かれた人たち同士を繋げていて、私は本当は書かれてはいけなかったんです。なら私は、本当は誰と繋がっているんでしょうか?……もし私が本当の両親を知ってしまったら、私は今愛してくれている両親を、やはり私の家族ではないと思ってしまうんでしょうか?」
フォーラは不安で一杯の表情を浮かべてルーピンを見据えた。彼から見た彼女の瞳の中には、彼女を真剣に見つめる自分の顔が映っていた。彼は映し出された自身の輪郭が、彼女の潤んだ瞳によって歪むのを合図に口を開いた。
「本当のご両親のことが気になるんだね」
フォーラは少しの間ルーピンを見つめた後、小さく首を縦に振った。彼はその正直な返事に微笑んだ。
「ところでフォーラ、私は以前、君にケーキを作ってもらったお礼をまだしていなかったね」
突然、何の脈絡もない質問が飛んできてフォーラは混乱した。そしてその状態でなんとか考えて、お礼なんて要らないと伝えようとした。しかしその後すぐ彼が続けた言葉に反応しないわけにはいかなかった。
「もし君が望むのなら、私と一緒に君の生まれ故郷に行ってみないか」
「えっ」フォーラは最初、彼が何を言っているのか理解できなかった。だが、発言自体はハッキリ聞き取れた。
「どうして、だって私……何処の誰なのかも分からないのに。」
「君の今のご両親が、君が誰なのか、その答えをつい最近ようやく見つけ出してくれたんだ。彼らからは、もし必要な時が来たら、君をそこへ連れて行ってあげてほしいと言われていてね。私が外出している間にフォーラのご両親と会う機会があって、その時に話してくれたんだ」
「で、でも!どうして二人は今更……、それに、どうしてルーピンにわざわざそんな迷惑を―――」
「今更じゃないよ。二人はずっと捜していたんだ。いつか君自身が、一体何処の誰なのかを知りたがると分かっていたのだろう。それに私は一つも迷惑なんかじゃないさ。だから、どうかな」
フォーラの本心としては、両親がルーピンに迷惑を掛けている件よりも、どうして……何故自分たちの口から現地へ行こうと誘ってくれないのかという、疑問と苛立ちの混ざった自分本位な感情の方を強く抱いていた。
「分かりました、あの、それではお願いしてもいいですか?」
フォーラは思い切って少々食い気味にルーピンに尋ねた。すると彼は一瞬驚いた表情を見せた後、にっこりとまるでチョコレートを食べた後のような顔で笑ったのだった。
「ああ、勿論だとも!」
フォーラは両腕で膝を抱えてルーピンを見た後、ゆっくりと頷いた。
「私、今の今まで自分にとって何が一番恐ろしいのか気付けませんでした。だからさっきの二人を見てパニックになってしまって……偽者かどうか分からなくなってしまったんです。折角授業でルーピンに教えてもらった妖怪だったのに……本当にごめんなさい。」
フォーラは先程まで両親の姿をしたボガートが倒れていた辺りを見ながら続けた。
「私、以前ルーピンの部屋でお話しした日から……一旦この館では全て忘れてみてはどうかと提案してもらった日から、なるべく純血に対する執着心や、家族のことは考えないようにしていたつもりでした。でも、あまり上手くいかなくて。ふとした瞬間に沢山今までの事を思い出したりしていました。この間ハリーがやってきた日、夕食の場で貴方に引き止められた時も……。」
フォーラもルーピンも、食堂で騎士団員が子供たちに組織の活動状況を説明した日のことを思い浮かべていた。あの時のフォーラは、純血に執着している自分は騎士団の内情を探りに来たわけではないと、自身が周囲からどう見られているのかを気にして怯えていた。
「あの時は、私も君に随分無理強いをしてしまった。すまないことをしたと、ずっと考えていた」
フォーラがルーピンを見やると、二人の視線がかち合った。ルーピンが言葉を続けた。
「君がこの館に来て、初めて私に純血への執着があるという本音打ち明けてくれた日、私は君に『私がついている』と話したね。必ずなんとかできると」
フォーラが静かに頷いた。するとルーピンはほんの少し苦く微笑んだ後で、自責の念に駆られた表情を覗かせた。
「だが、実際は任務に追われて君に何かしてあげることができなかった。だからハリーが来た日の夜、私は焦って君を引き止めてしまったんだ。その時のフォーラは随分怯えていたから……私は間違えたと思った。でも反対に、少しでも君の刺激になればいいとも思った。君に両親のことをここでは忘れろと伝えたのにね。私はフォーラにどうしてやればいいのか分からずにいたんだ」
するとフォーラは思わず首を横に振って彼の言葉を否定し、声を荒げた。
「そんな。貴方はいつも私を気に掛けてくれているのに。あの時だって、退席しようとする私をルーピンに引き止めてもらったから、だから私は両親のことを……」
フォーラはそこで言葉を切ってしまった。ルーピンはそんな彼女を見て、内心少し驚いた後で今度は優しく微笑んだ。先程のボガートの姿然り、きっと彼女はもう自分の中で家族や血に対する答えを殆ど見つけているのだと感じたからだ。するとフォーラが再び言葉を紡いだ。
「私、ここで過ごしてみて、ルーピンを含むみんなから沢山の気持ちを貰いました。本当に色んなことを。だからそのお陰で気付けたことが沢山ありました。でも、シリウスさんからこのタペストリーを教えてもらって以来、ずっとこれが頭から離れなくて。そうしたら、考える必要のないことも考えるようになってしまって……」
ルーピンは目の前に大きく飾られたタペストリーに改めて目をやった。先程からずっと目についていたそれは、彼女から詳しい話を聞かずとも大いに彼女を惹きつけているのだと汲み取れた。
「この館に来て、今まで親元を離れて過ごした中で、一番両親のことを思い出しました。それにきっと、血が繋がっていなくても私は二人の……」
フォーラは先程同様に自ら言葉を切ってしまった。ルーピンはきっとこのタペストリーが、あと一歩のところで彼女の導こうとしている答えの妨げをしているのだと感じた。だからといってルーピンは彼女の言葉の続きを代わりに口に出したりはしなかった。彼は唯々、フォーラの隣で彼女自身の言葉を待った。
「でも、このタペストリーはここに書かれた人たち同士を繋げていて、私は本当は書かれてはいけなかったんです。なら私は、本当は誰と繋がっているんでしょうか?……もし私が本当の両親を知ってしまったら、私は今愛してくれている両親を、やはり私の家族ではないと思ってしまうんでしょうか?」
フォーラは不安で一杯の表情を浮かべてルーピンを見据えた。彼から見た彼女の瞳の中には、彼女を真剣に見つめる自分の顔が映っていた。彼は映し出された自身の輪郭が、彼女の潤んだ瞳によって歪むのを合図に口を開いた。
「本当のご両親のことが気になるんだね」
フォーラは少しの間ルーピンを見つめた後、小さく首を縦に振った。彼はその正直な返事に微笑んだ。
「ところでフォーラ、私は以前、君にケーキを作ってもらったお礼をまだしていなかったね」
突然、何の脈絡もない質問が飛んできてフォーラは混乱した。そしてその状態でなんとか考えて、お礼なんて要らないと伝えようとした。しかしその後すぐ彼が続けた言葉に反応しないわけにはいかなかった。
「もし君が望むのなら、私と一緒に君の生まれ故郷に行ってみないか」
「えっ」フォーラは最初、彼が何を言っているのか理解できなかった。だが、発言自体はハッキリ聞き取れた。
「どうして、だって私……何処の誰なのかも分からないのに。」
「君の今のご両親が、君が誰なのか、その答えをつい最近ようやく見つけ出してくれたんだ。彼らからは、もし必要な時が来たら、君をそこへ連れて行ってあげてほしいと言われていてね。私が外出している間にフォーラのご両親と会う機会があって、その時に話してくれたんだ」
「で、でも!どうして二人は今更……、それに、どうしてルーピンにわざわざそんな迷惑を―――」
「今更じゃないよ。二人はずっと捜していたんだ。いつか君自身が、一体何処の誰なのかを知りたがると分かっていたのだろう。それに私は一つも迷惑なんかじゃないさ。だから、どうかな」
フォーラの本心としては、両親がルーピンに迷惑を掛けている件よりも、どうして……何故自分たちの口から現地へ行こうと誘ってくれないのかという、疑問と苛立ちの混ざった自分本位な感情の方を強く抱いていた。
「分かりました、あの、それではお願いしてもいいですか?」
フォーラは思い切って少々食い気味にルーピンに尋ねた。すると彼は一瞬驚いた表情を見せた後、にっこりとまるでチョコレートを食べた後のような顔で笑ったのだった。
「ああ、勿論だとも!」